セミナー・発表会・公開授業の記事一覧

241002sikamatyuubutyuusaeki.jpg新聞の写真から一句、 「対立」と「合意」テーマに

  学校でNIE活動に取り組む、姫路市立飾磨中部中学校(姫路市飾磨区細江)で10月2日、二つの公開授業が行われた。3年生約60人が、新聞記事の写真から俳句を作ったり、「対立と合意」をテーマに記事を選んで意見交換したりした。 県内各地から教員ら25人が参加し、授業後に意見交換会もあった。

  兵庫県NIE推進協議会の主催。同校は日本新聞協会のNIE実践指定校になっている。

 3年1組の授業のテーマは「NIE俳句~記事の写真から豊かにイメージしよう~」。国語科の佐伯奈津子教諭(43)=日本新聞協会NIEアドバイザー=が担当し、奥田夕貴教諭(29)がサポート役を務めた。

  新聞は歳時記でもある。佐伯教諭はまず、一面の菜の花畑や、傘の花が咲くまち景色、収穫期を迎えた丹波のクリ園、立山の紅葉、姫路城と花火、浅草・雷門の雪景色など、新聞に掲載された折々の写真を紹介。計12点を黒板に貼り出した。

 「新聞記事の写真からイメージを膨らませ、俳句を作ろう」との呼びかけに、生徒たちはタブレット端末の写真と記事を見ながら俳句を練った。

  生徒たちの俳句を一部紹介すると―。

  五月雨や傘の花咲く交差点
  菜の花の黄色に染まった たつのの町
  白鷺城夜空を彩る花火かな
 
  授業を受けた石田晄大さん(14)は「新聞の写真から句作するのは初めて。写真や記事を詳しく見ると、より深い見方ができる」と話した。

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  3年3組の授業のテーマは「新聞から読み取る対立と合意」で、社会科の皆光潤教諭(45)が担当した。

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  生徒たちはあらかじめ各自が選んだ記事について、班ごとに紹介し合った。生徒たちが関心を寄せたのは、「被爆体験者」の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決や、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチール買収計画を巡り審査を再申請したニュースなど、多岐にわたった。

  班ごとに発表する1本を決め、対立のポイントや合意に向けた動きについて活発に議論し、ワークシートやスライドの作成に取り組んだ。
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 「NIE俳句」を担当した佐伯教諭は兵庫で約15年、NIEに取り組んできた。来年夏の「第30回NIE全国大会神戸大会」でも、同校は「NIE俳句」の取り組みを実践発表する予定だ。「俳句の聖地」といわれる愛媛県のNIE関係者に講評いただくことになっている。

 ◆実践された飾磨中部中学校・佐伯奈津子教諭と皆光潤教諭の寄稿(授業のめあてや感想、展望)はこちら=佐伯教諭の寄稿皆光教諭の寄稿

◆参加者の感想はこちら

網 麻子(神戸新聞社NIE・NIB推進部次長)(10月11日)

[写真㊤]新聞記事の写真からイメージを膨らませ、俳句を作る授業=いずれも姫路市立飾磨中部中学校[写真㊨㊤]「対立と合意」をテーマに選んだ新聞記事について話し合う生徒たち(写真はいずれも画像を一部加工しています)

※飾磨中部中学校の公開授業は、10月3日付朝日新聞朝刊ひょうご版、10月9日付神戸新聞朝刊姫路版に記事を掲載していただきました。ありがとうございました。

伍賀 正晃・神戸市教育委員会事務局学校教育部教科指導課指導主事

 「個別最適な学びと協働的な学びの一体化」を進める現在において、多様な意見・見解に触れることや、他者に向けて自分の考えを伝えること、またそれらの活動の土台となる語彙力や表現力、感性を磨くことは非常に重要である。今回の公開授業では、その語彙力・表現力・感性を高める授業が目指されていた。

 国語の授業では、新聞の中の写真からイメージを膨らませ、記事の内容を織り込みながら、俳句を作る学習が行われていた。頭で考えるよりも写真を見た方がイメージしやすく、生徒たちが独自の感性を働かせながら、17文字の制限の中で自分にある語彙力を注ぎ込む様子が見られた。社会の授業では、新聞から「対立と合意」に関係する記事を選び、背景やポイントをまとめる活動が行われていた。記事に記されている内容は端的であるため、生徒たちはわかりやすく伝えることに苦心しながらも、グループで協力して活動を進めることができていた。

 新聞のよさとは、写真や文章がコンパクトにまとめられていることや、情報の信頼性が高いこと、紙ならではの手触りやぬくもりなどが挙げられる。各紙を比較することによって、一つの出来事でも見方や表現の仕方が様々で、いろいろな考え方があることに気付くこともできる。新聞は社会につながるための一つの入り口である。各自の興味・関心に応じて学習を深めたり、ICTの活用を通して気になる記事を見せ合い、意見を交換したりするなど、「何のために使うのか」ということを意識して活用することによって、新聞が各教科等の見方・考え方を育むうえでの強力なツールになると改めて感じた。

小島 幹子・姫路市立城山中学校教諭  

 N IE教育について改めて考え直す貴重な機会となりました。ありがとうございました。

 それぞれの授業で新聞を効果的に活用されており、身近に新聞があれば、自分事として深い学びを得ることができると実感しました。

 自由に新聞が読める環境があることが何より幸せなことだと思います。ただ、目の前の子ども達は普段から新聞にふれていないがために敷居が高くなってしまっています。

 今、私たちが生きている社会でどんなことが起こっているのか、まずは知ることで自分の見方や考え方ができ、意見をもつことができます。新聞を各教科の中で効果的に扱ったり、教科横断的に取り入れていくような少しの工夫があれば、新聞は子どもたちにとって身近な存在に変わっていくと感じます。

※10月2日の姫路市立飾磨中部中学校の公開授業を担当した皆光潤教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

           新聞から読み取る「対立」と「合意」
                          授業者:皆光 潤

◎ねらい
 生徒にアンケートを取ったところ、家で新聞を取っているは約40%で、そのうち毎日読むは0%、週に1度程度読むは約11%、であったことから、新聞に触れる機会も少ないこと、新聞に触れる機会があるのに触れていない生徒が多いことが分かる。また「ニュースの情報源は何か」の質問に、新聞と答えたのは約3%で、テレビは約22%、インターネットは約74%であった。その一方で、「信用できるメディアは何か「の質問には、新聞と答えたのは約40%で、テレビは約44%、インターネットは約15%であった。生徒の主な情報源はインターネットであるが、信用できる情報ではないとの認識を持っている。
 社会ではいつの時代も、あらゆる場所で「対立」があり、その度に「合意」が図られる。新聞記事は今起こっている「対立」や「合意」を事実に基づいて、多面的・多角的に報じている。この授業は、「対立」・「合意」が何であるか、新聞を読み解く中で理解を深めるとともに、新聞に関心を持つ生徒を増やすことを目的としている。
 社会科は暗記科目だとよく言われるが、そうではない。授業中に学習した「対立」や「合意」といった用語(概念的知識)の解説に終始する授業は、社会科嫌いを生む要因である。概念的知識とは社会における公式・法則であり、社会における具体的事象を当てはめ、一般化することで思考力を高めることができる。社会科的思考が働くことで、自分の生きている社会をより深く理解でき、関心を持つことができる。また、そのことが国民一人一人の社会参画を促すことにもつながる。この授業を通じて、新聞に興味を持つ生徒が少しでも増え、社会問題を自分事として捉え、社会を主体的に生きる公民の育成につながればと思う。

◎実践内容
 3年生の生徒30人を対象に、新聞記事から「対立」と「合意」を読み取り、その背景にあるものや今後の見通し、調べて思ったことなどを班ごとにまとめ、プレゼンする授業を行った。①個人で自分の興味を持った新聞記事を1つ選び、「対立」「合意」のポイントを個人用ワークシートにまとめる。②班員(3~4名)に紹介する。その後、班の中で他班にプレゼンする記事を選ぶ。班員でさらにニュースを追求し、プレゼン用ワークシートを協力してまとめる。③ワークシートを基にプレゼン用のスライドや発表原稿を作成する。④すべての班のワークシートと新聞記事を全生徒に配布し、目を通して他班のプレゼンもある程度理解する。全体でのプレゼンをおこなう。
 4時間の構成で実践したが、公開授業を行ったのは②であった。新聞の見出しから「対立」を読み取るのが難しく、苦戦した生徒が多かったが、それぞれが何らかの対立を含む記事を紹介した。「レバノンのイスラエル爆撃」や「リニア建設をめぐる静岡県とJR東海の対立」など、深い歴史を紐解く必要があるものや地下調査に関する高度な科学的知識が必要とされるものなど、難解なテーマを選んだ班もあったが、こちらが何を明らかにすべきか、どのように検索すべきかなどのヒントを与えていく中で、何をすべきかを思いついた生徒が班員に指示を出し、発表の準備を進めていた。

◎さらなる発展へ
 今回の実践のほかにも、1つの記事を多面的、多角的にみんなで検証することや同じ出来事の新聞記事を各新聞社の比較することなど、さまざまな手法が考えられる。今回の実践とは逆にこちらが意図的に提示した複数の新聞記事から、授業で学習する概念的知識を抽出する手法も考えられる。どの単元で、どの手法を用いて学習させるのが最も効率的なのか、これからの実践の中でも探っていきたい。ともあれ、生徒と新聞の距離をいかに近づけるかも課題である。廊下に設置しているだけでは、手に取る生徒も少ない。本校では、新聞記事の書き写しや感想を書くなどの取り組みをしているが、まだ不十分である。いかに新聞を身近なものとするかの取り組みも模索していく必要がある。

◎全体の感想
 新聞にふれる機会が少ないこともあり、新聞から読み取ることに苦戦している生徒が多かった。特に語彙力に乏しい生徒には、新聞に使われている言葉の壁にぶつかり、読む気力を失う者も少なからずいた。その一方で、写真やグラフから興味を持つ生徒、インターネットなどでも話題になっている記事を選ぶ生徒、中にはある記事の出来事に自分の親類が深く関わっているという生徒もいた。一度そのニュースを理解すれば、それに関連するニュースや類似するニュースにも興味を持ち、再度新聞を手に取ることに繋がる。新聞にはそれ以外の記事もたくさんあり、次第にそれが目に入るようになり、視野が広がっていく。また、新聞を読む中で、これは授業で習ったあのことと関連していると気付けば、既習事項が自分のものとなり、それを活用する力(=思考力)にも繋がっていく。今回の研究授業を受けて、社会科の思考力を高めるうえで、新聞を利用することは大変有益であることを実感した。

※10月2日の姫路市立飾磨中部中学校の公開授業を担当した佐伯奈津子教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

                          「NIE俳句 ~記事の写真から豊かにイメージしよう~」
                                                                                                    授業者:佐伯奈津子
◎ねらい
 新聞になじみがない生徒が増える一方で、新聞をめくると目を奪われるような美しい写真とたびたび出合うことがある。「この写真をたくさんの人に見てもらいたい」という思いがこみ上げるとともに、「この写真を使って何か授業ができないだろうか」と考え、毎月切り貯めた写真記事を活用して「俳句作り」をする授業を計画した。美しい写真から豊かにイメージを膨らませ、新聞記事を通して語彙が豊かになってもらいたいというのがねらいである。

◎実践内容
 新聞の写真パネルを提示しながら、作品作りに必要な「季節」、「季語」、「どんな様子か」などを紹介し、俳句作りのヒントを与えた。そして1学期で学習した俳句の復習(「季語」「音の数え方」「切れ字」)をしたのち、記事を参考に俳句作りをするという学習活動をした。俳句作りに苦戦する生徒には、マス目にひらがなを入れると俳句ができる補助プリントを渡し、いろいろな言葉をあてはめていくように助言をした。
 最後に次の時間に句会をすることをクラス全体に伝え、自分の作った作品の中で、良いものを選ぶように伝えた。

◎さらなる発展へ
 今回で俳句を創作するのは2回目であった。俳句を作ることには慣れてきたけれども、句会をする際、友達の俳句を選んでしまったり、面白おかしい句を選んでしまったりして、よい句を選ぶ力はまだまだであると感じた。今後、創作された俳句を取り上げてその作品の良いところ、直すべきところを教師が指摘したり、生徒間で話し合いの時間をもったりしてよい句を選ぶ力を育てていけたらと思う。
 また、切れ字の使い方に苦戦する生徒の姿も見られた。俳人の作品で切れ字が使われているものを提示し、切れ字の使い方や位置、上五、中七、下五のどこで使われているのかを確認すると更なる作品創作のレベルが向上するかと思われる。

◎全体の感想
 新聞の写真を使っての俳句作りをしてみて56%の生徒が「新聞の写真があっていつもより俳句作りが簡単になった」と答えた。言葉だけではなく、映像から「色」や「形」を俳句の中に折り込み豊かに作品作りができたのではないかと思う。
 俳句作りで大切にしていることは「作って楽しかったという体験」や「表現の違いの面白さ」を生徒自身が実感してもらうことである。今回幸いにも授業の感想で「俳句作りが楽しかった、またしたい」という感想が多数見られた。教科書に載っている出来上がった作品ではなく、同級生の作った作品が新鮮に思えたからだろう。俳句に触れる機会が授業の中の1回だけではなく、今後の人生で何度も折に触れてもてるようになってほしいと考えている。
 公開授業後の意見交換会の中で、「私たちは学校や仕事といった日常生活に追われ、四季の移ろいを感じにくくなっている中、ふと新聞に目をやれば、その季節らしい写真を見つけることができ、新聞が歳時記の代わりをしてくれている」という意見があった。実際に出かけたりすることはできなくても、日本が持つ四季の美しさを新聞の写真を通して感じ取ってもらえたらと思う。
 今回授業をするにあたって、生徒に多くの選択肢を与えたいと12枚の写真を用意したが、今後授業をするならば、もっと少ない枚数でもよいかと思った。じっくりと写真に注目し、「言葉で風景を描く」という活動を生徒たちとしていけたら...と思う。最後に公開授業の中で創作された作品を紹介して終わりたい。

〇五月雨や 傘の花咲く 交差点

〇あつい夏 闘志あふれる 甲子園

〇あせなみだ 皆でながす 甲子園

〇菜の花の 黄色に染まった たつのの町
 
〇白鷺城 夜空を彩る 花火かな

 教育現場で新聞を活用するNIEの第29回全国大会京都大会(日本新聞協会主催、京都府NIE推進協議会、京都新聞社主管)が8月1、2日、京都市で開かれた。「探究と対話を深めるNIE」を大会スローガンに開催。全国から教育・新聞関係者ら約1200人が参加し、基調講演やパネル討議、公開授業、実践発表を通じ、NIEの可能性を探った。

 来年夏の神戸大会を控え、兵庫からは教員ら約80人が参加、関心の高さがうかがえた。参加者の感想を紹介する。

古寺和子・姫路市立豊富小中学校(後期課程)教諭
 最高気温が38度を超えた京都でNIE全国大会が行われた。外も暑いが会場の熱気も想像以上で、圧倒されながら2日目の公開授業を見学させていただいた。
 多様性を学ぶ授業では、国際女性デー(3月8日)における全国紙・地方紙・海外紙の1面記事での取り上げ方を比較し、発信者にどのような意図があるか、海外研修に参加した生徒の実体験もふまえながら中高生が意見を述べていた。
 新聞を活用して「随筆」を読む授業では、時代背景やさまざまな人の思いを知るために、真珠湾攻撃の翌日の新聞、その10年後、50年後の新聞を活用していた。それぞれの公開授業ごとに観客は100人を超えていたのではないだろうか。そんな中で生徒が自分の言葉で堂々と対話している姿に感心させられた。
新聞は「今」を伝えくれる。さまざまな新聞を読むことで、自分のいる場所や時代とは異なる「今」を感じ取ることができる。その利点を授業の中でどのように活用していくか、来年の神戸大会に向けて考えていきたいと思う。

三嶋祐貴子・明石市立大蔵中学校教諭
 昨年の松山大会に続き、京都大会でもNIEの活動において、新聞とICTの両立がはかられた取り組みが多かった。
 さまざまな分科会があった中でも、京都先端科学大学附属中学高校が行った「多様性を問う 新聞記事のジェンダー表現」では、ニュースパーク(日本新聞博物館)=横浜市=の協力のもと「国際女性デー」にあたる3月8日の日本の国内新聞、海外の新聞の報道のされ方を比較し、各国・地域の特徴を調べ、そこから自分たちが疑問に思った「ジェンダーギャップ指数とGDPの相関関係」を発展して調べ、発表していた。
 新聞だけでなく、生徒の海外研修を踏まえた問題提起がされており、基調講演で歴史家の磯田道史氏が言われた「AIにはできない体験」を通じた学びが生まれていた。
 今回の研修で得た学びを生かし、ICTやAIが進歩している現代、なぜ新聞なのかということが問われ続けている中で、さまざまなことを模索し、新聞を使うことで生まれる対話を生かした授業ができるように取り組んでいきたいと感じた。

福田浩三・県立伊川谷高校主幹教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)
 NIE京都大会では他都道府県からもポスターセッションに参加できるということで、私は大会実行委員会からの正式な案内が公開されるとほぼ同時に申し込んだ。
 実際にポスター発表を行って驚かされたのは、聴きに来られた方々の熱量の大きさ。私は生徒が書くことを主体にしたはがき新聞の活用実践について報告したが、「なぜ、はがきサイズがいいのですか?」(返答:1コマの授業で完結できる量)、「はがきは本物ですか?」(返答:本物のはがきを年2回、他は無料で助成を受けているはがき新聞のセットを使用)、「繰り返すのがポイントなのですね」「うち(の職場)でも使わせてください!」など、教育関係(小~高まで幅広く)やメディア関係の方々を中心に、とても多くの意見交換ができた。
 5時間という時間が本当にあっという間に感じた。「見る」「聴く」だけの大会にならず、「自由に意見を交わす」機会が得られた今回のポスターセッションへの参加は、私にとってとても学びの多き時間となった。

佐々木浩二・県立網干高校教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー) 
 京都大会のスローガンは「探究と対話を深めるNIE」となっており、各学校での探究的な学習活動に注目して参加した。
 2日目の分科会、第1部の実践発表の京都市立塔南・開建高校では、の中村顕教諭から「地理探究」での実践発表で、日経新聞・BBCNewsJapan・日本海事新聞を活用した地理探究や「総合的な探究の時間」の授業実践を聞いた。授業では「問いから始まる授業」をコンセプトとして、新聞記事から自ら考え、学ぶ力を育んでいる授業実践をされていた。
 第2部では、亀岡市立詳徳小学校の東哲平教諭から総合的学習の時間で、「地域で取材・交流柏原平和池水害と私たち」の実践発表を聞き、地域で起こった災害を題材に、先人の苦労を後世へと伝える取り組みを発表していた。特に小学生が地域を取材しながら、現地を調査する総合学習の活動は、中学校や高校でも「防災・減災」という視点で、NIE実践が広がる可能が大いにあると考える。
 自校での総合的な探究の時間が、NIE実践とともに深化していけるようにしたいと考えている。生徒や教師・保護者・地域社会にも多くの気付きや示唆を与える活動になると考えている。
 来年のNIE全国大会の開催地が神戸ということで、兵庫県の強み、自校での取り組みの特徴は何かということを考えながら発表を拝見させてもらった。来年、兵庫県に来てよかったと言ってもらえる全国大会にしたい。

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 和歌山県内の教員らを対象にした、NIE(教育に新聞を)の実践セミナーが7月30日、和歌山市であった。防災・減災とNIEについてのシンポジウムでは「新聞から災害の教訓を学んでほしい」などと話し合われた。

 県NIE推進協議会が主催、紀伊民報など後援。兵庫県NIE推進協議会の事務局長で、神戸新聞記者として阪神・淡路大震災(1995年)を取材した三好正文さんが、同震災について話した後、「防災・減災とこれからのNIE」をテーマにしたシンポジウムがあった。三好さんと、此松昌彦・和歌山大学教授、紀伊民報の川本敦史編集局長が登壇。和歌山県NIE推進協議会会長の舩越勝・和歌山大学教授が司会した。

 三好さんは「阪神・淡路大震災で被災した新聞社として、災害の文化(災害からの教訓や考え方)を発信していくことが求められている」と強調。大災害発生時に一人でも多くの命を助けることが新聞の役割だとし「NIEを通じ小中高校生に伝えていくことが大事だ」と話した。

 此松教授は大手新聞社の協力で、東日本大震災の報道写真を使った防災研修用のDVDを作成した取り組みを紹介。「まず感じてもらうことが大事。災害に備えないといけないという動機付けになり防災教育につながる」とした。また「地元紙には(災害について)教訓になることがたくさん詰まっている」ともいい、新聞は記録になる役割も大きいとも述べた。

 川本編集局長は「自分たちが住む地域で過去にどんな災害や被害があったのか、特に地元紙に詳しく載っている」と話した。災害時に中高生の力が期待されているとし「何を準備し、どういう行動を取るべきかなど、過去の災害から学んでほしい。その教材として、新聞を用いてもらいたい」と呼びかけた。

 セミナーには教員ら約30人が参加した。

 この日は、他にNIE実践報告として県内の中学校3校と高校1校の教員がそれぞれの取り組みを発表した。=8月1日付紀伊民報社会面

[写真説明]NIE実践セミナーで「防災・減災とこれからのNIE」について討論する登壇者(30日、和歌山市で)

新谷 史奈・東洋大学附属姫路中学校・高等学校教諭

私自身、新聞を教育活動に取り入れたいという気持ちはあるものの、その方法を模索している状態です。そんな中、今回のセミナーに参加させていただき、多くの気づきと学びを得ることができました。特に、のじぎく特別支援学校の藤本先生の「スモールステップで取り組む」という実践事例発表が印象的でした。

また、伊藤様による記者講演では、NIEの活動を通して世界や日本を知ることができるということを改めて実感しました。

今回のセミナーで学んだことをしっかりと吸収し、自分なりのNIEのあり方を見つけられるよう取り組んでいきたいと思います。

大石 昇平・兵庫県立洲本高等学校教諭

 今回のセミナーを通して、私は生徒と新聞の距離を近づけるにはどうすればよいのかを考えさせられました。記者講演での伊藤様のお話からは、取材は自分の興味や問題意識からスタートしていることを知りました。そのような取材の背景を知れば、生徒の新聞への興味も高くなるのではないかと思いました。また、実践発表でも、校種を問わず、この点に尽力されている様子が伝わってきました。

 本校の生徒も、新聞に触れる機会が少しでも増えるよう、今回のセミナーを参考にしながら実践してまいります。

岩崎 未来・兵庫県立湊川高等学校教諭 

 本校は今年度より実践校に選んでいただきました。これから本格的に活用しようとしている段階で、今回このセミナーに参加させていただいて特に印象に残ったのは、「スモールステップで取り組む」という、のじぎく特別支援学校の先生の取り組み発表です。私は、NIE実践を通して、自校の生徒にまずは「知る」ということの大切さと楽しさを理解してほしいなと考えています。そしてそれを「伝える」「聞く」力を(欲張らずスモールステップで!)少しでも身に付けて、自分に自信を持ってもらえるような手助けができる実践に取り組んでみたいと感じました。

片山 拓朗・近畿大学附属豊岡高等学校教諭

 本校でも新聞を読む生徒は年々減少し、社会への関心の低下や偏りに危機感を持っています。一方で社会はますます複雑化し、高度な情報活用力が問われてもいます。こうした現状の中で、NIEの取り組みから学べることは多いのではないかと考え、初めてこの会に参加させていただきました。実践校の取り組みはもちろん、意見交換会では各校の取り組みを聞き、さまざまなヒントをいただきました。何より会場の熱気に触れ、NIEに大きな可能性を感じることができました。ありがとうございました。

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 NIE(教育に新聞を)活動を学び合う2024年度のNIE兵庫セミナーが7月5日、神戸市中央区の神戸新聞社で開かれた。兵庫県内の小中高校の教員ら50人が参加し、実践例や工夫している手法を共有した。

 県NIE推進協議会が毎年主催している。

 共同通信社神戸支局の伊藤愛莉記者が講演し、西宮市立浜脇中学校で行った出前授業を紹介した。障害者の災害時避難について調査した記事などを例に仕事のやりがいを語り「自分らしさを強みにできる記者の仕事を伝え、生徒に興味を持ってもらえた」と語った。

 県内3校の教員らはNIEの実践事例を発表した。県立のじぎく特別支援学校の藤本友美教諭は生徒が新聞に親しむために写真だけを見ることから始め、自ら新聞を作るまで段階的に課題を設定したと紹介。明石市立高丘中学校の米村貴之校長は、生徒が気になった記事を貼って意見を書き込み、廊下に掲示して表現する指導を行ったという。

 甲南高校・中学校の足立恵英副校長は「新聞トーク」と題し、高校3年生が新聞の利点を中学生向けにオンライン配信で語る取り組みを行い、理解を深めている事例を発表した。

 意見交換会では参加者が6班に分かれ、各校の実践例を熱心に語り合った。(岩崎昂志)=6日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]NIE活動の実践例を語り合う参加者=神戸市中央区東川崎町1

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小中高の教諭、記者ら 活動を紹介 神戸でNIEセミナー

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 学校で新聞を教材として活用するNIE(教育に新聞を)の兵庫セミナーが7月5日、神戸市中央区の神戸新聞本社で開かれた。小中高校の教諭ら約50人が参加し、新聞記事を使った授業の取り組みを発表するなどし、NIE活動への理解を深めた。

 セミナーは、県NIE推進協議会が主催。県立のじぎく特別支援学校など3校の教諭らが昨年度のNIE活動の取り組みを発表したほか、小学校、中学校、高校などの校種別のグループに分かれ、活動を紹介し合い、意見交換などを行った。

 また、共同通信社神戸支局の伊藤愛莉記者が、昨年行われた浜脇中学校(西宮市)での出前授業の体験をもとに「記者の仕事を伝える」と題して講演した。

 「自分の興味がある内容を知って、伝えることが記者の仕事。自分らしさを強みにできる」と記者の仕事の醍醐味(だいごみ)について体験談を交えながら説明した。=6日付7産経新聞朝刊神戸・阪神版、淡路版、播州版、但丹版

[写真説明]講演を行った共同通信社神戸支局の伊藤愛莉記者=神戸市中央区

2024年度NIE兵庫セミナー(7月5日、神戸新聞本社)の様子をグラフィックで振り返ります。作成ただいたのは、井上幸史・日本新聞協会NIEアドバイザー(姫路市立城北小学校教頭)です。

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2024.7.5NIE兵庫セミナーグラフィック.pdf

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紙とデジタル生かす活用例 中央区で実践発表会

 新聞を授業で活用するNIE活動に取り組む学校の実践発表会が2月8日、神戸市中央区の神戸新聞社で開かれ、学校関係者ら約50人が事例報告に聞き入った=写真=。

 県NI推進協議会の主催。3人の教諭が登壇し、紙とデジタルの両方の特性を交えて活用例を語った。

 姫路市立豊富小中の川村かおり教諭は、壁新聞や専用アプリによる新聞制作を報告。「記事を紙にまとめるか、デジタル機器を使うかは子どもたち自身に考えさせている」と話した。

 尼崎市立南武庫之荘中の中嶋勝教諭は、記事スクラップに感想を添える「新聞ノート」を紹介。回し読みの後、意見集約にデジタル技術を取り入れ、「効率が上がった」と語った。

 県立西宮高の三木美穂教諭は、SDGs(持続可能な開発目標)に関するテーマを記事から探し出し、「新聞ポスター」を作る事例を報告。「一覧性のある紙と便利なデジタルの両方を使い分けたい」と話した。=9日付読売新聞朝刊神戸・明石版

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 「NIE(教育に新聞を)」活動を進める兵庫県内の学校の取り組みを紹介する実践発表会が2月8日、神戸新聞社(神戸市中央区東川崎町1)であった。学校関係者ら約50人が参加し、児童・生徒の学びに新聞を活用する方法を共有しあった=写真。

 新聞社や教育関係者でつくる兵庫県NIE推進協議会が開催。小中学校、高校が3事例を発表した。

 豊富小中学校(姫路市)の川村かおり教諭は、記事の中から特定の文字を探すゲームなど、新聞に触れ合う機会を増やす事例を紹介。児童が校内の委員会活動を取材して記事にするなど、情報発信の担い手にもなっているという。

 南武庫之荘中(尼崎市)では投書欄の記事の「分解」に取り組む。段落を分けているうちに上手な文章の構成に気付き、中嶋勝教諭は「生徒たちが構成をまねして文章を書けるようになった」と効果を語った。

 県立西宮高(西宮市)は持続可能な開発目標(SDGs)をテーマに、課題研究授業で新聞を活用。身近なSDGsの問題を新聞記事から拾い上げて、まとめているという。三木美穂教諭は「紙をめくって飛び込んでくる情報から新たな関心を抱くなど、デジタルと紙をうまく活用できるようになっている」と話した。(鈴木雅之)=9日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

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 新聞を日常に読解能力養う 神戸で実践発表会 

 学校教育に新聞を活用するNIE(教育に新聞を)活動の実践発表会(県NIE推進協議会主催)が2月8日、神戸市中央区で開催され、約50人が参加した。

 姫路市立豊富小中学校の川村かおり教諭は、新聞という紙素材を身近な存在としている学校の日常を最初に紹介。紙とICT(情報通信技術)をうまく使い分ける時期にきていることやメディアリテラシー教育の重要性に触れ、「新聞を通して多角的・多面的な情報を読み取る力をつけたい」と話した。

 尼崎市立南武庫之荘中の中嶋勝教諭は、新聞コラムを書き写すことを通じて見出しを考える取り組みを紹介し、「新聞を読めば人生が変わる」と強調した。県立西宮高の三木美穂教諭は、SDGs(持続可能な開発目標)のテーマに関連する新聞記事を活用して「新聞ポスター」をつくる授業を報告した。=10日付毎日新聞朝刊神戸・明石、阪神、播磨、丹波・但馬版

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NIE授業 先進事例を紹介 神戸 県内学校が実践発表会240208jixtusennhaxtupyoukaisannkei.jpeg

 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)に取り組む県内の学校による実践発表会が、神戸市中央区で開かれた=写真。教育関係者ら約50人が参加し、工夫を凝らした先進的な事例報告に耳を傾けた。

 冒頭、県NIE推進協議会の竹内弘明会長が、「新聞は、記者がしっかり足を運んで取材し、ニュースの価値を判断したうえで公平・公正に伝えている。新聞を教育に活用することはすばらしい取り組み」とあいさつ。記者講演では、同協議会の三好正文事務局長が新聞の特長として政治、文化など掲載対象が森羅万象であることをあげ、「紙面全体を眺めるだけでも社会の動きを知ることができる」と説明した。

 実践発表では、姫路市立豊富小中学校の川村かおり教諭が、紙面の中から指定した平仮名を探す低学年の授業などを紹介し、新聞に親しむ環境づくりの大切さを訴えた。

 尼崎市立南武庫之荘中学の中嶋勝教諭は、ニュース面だけでなく、投書欄やコラム欄の活用方法を紹介し、教科書では得ることができない学びの利点をあげた。県立西宮高校の三木美穂教諭は、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマに、切り取った記事を貼り付ける「新聞ポスター」の取り組みを紹介した。=10日付産経新聞朝刊神戸・阪神、播州、但丹、淡路版

※「グラフィックで振り返る、NIE実践発表会」をこちらに掲載しています。参加者の感想はこちら 当協議会・竹内弘明会長のあいさつはこちらに掲載しています。

2月8日:神戸新聞本社で開催 参加者50人

【参加者の感想】順不同

兵庫県立家島高校教諭 吉崎 瑞希

 本校は地域の方々からの支援で、毎朝、新聞が4社分届くようになっています。しかし、どう活用するかなど私自身も模索しているところでした。現在は朝の時間に教員が選んだ記事を生徒に読ませることや、総合的な探究の時間に情報収集の手段として新聞を使っています。地歴・公民科の教員として新聞を活用する手法をもう少し勉強したいと思い、今回、NIE(教育に新聞を)実践発表会に参加させていただきました。

 まず、三好正文事務局長の記者講演では朝刊1つでたくさんの活用があることを知りました。実際に私も〇〇の記事を探すなどやってみて楽しかったです。最近はネットニュースなどによって情報が簡単に手に入りますが、新聞の特徴である「網羅性」「一覧性」などは生徒にも実感してほしいと感じました。

 次に小中高それぞれの実践について発表がありました。特に小学校の実践発表の中で、紙かデジタルか子どもたちに委ねることや、「情報の作り手」として情報処理の力を養う取り組みをされていることなどは非常に驚きました。小学校・中学校での積み重ねが高校につながっていると実感しました。

 私は、これまで新聞を教材の1つとして、こちらから与えるという方法しか考えていませんでした。しかし、生徒自身に興味のある記事を探してもらって調べ学習により内容を深める、それを生徒間で共有して、さらに深めるなど、多様な活用方法があることを知りました。ぜひ、学校でチャレンジしてみたいです。実践発表の先生方、貴重なお話をありがとうございました。 

佐用町教育委員会 古河 光弘

 初めてNIEの会に参加させていただいたのですが、本当に密度が濃いので驚きました。

 三好正文事務局長からは、新聞を使って授業を盛り上げるアイデアをたくさんいただきました。

 豊富小中学校の川村先生からは、「子どもたち自身で新聞をつくる」という取り組みを学ばせいただきました。

 南武庫之荘中学校の中嶋先生からは、言葉を大切にした「新聞を使った授業」の数々を教えていただきました。

 県立西宮高校の三木先生からは、新聞を使った「総合的な探求の時間」についての取組を教えていただきました。

 新聞の価値については、もちろん知っていたつもりですが、使い方を工夫するだけで、こんなにも有効なアイテムになるとは、目から鱗の連続でした。

 学んだ視点を現場へ伝達することにより、新聞への認識を高めたいと思いました。

 貴重なご提言の数々、本当にありがとうございました。

 兵庫県NIE実践発表会(2月8日、神戸新聞本社)の様子をグラフィックで振り返ります。作成いただいたのは、井上幸史・日本新聞協会NIEアドバイザー(姫路市立城北小学校教頭)です。

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2024.2.8NIE実践発表会グラフィック.pdf

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 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の公開授業が1月26日、神戸市垂水区の愛徳学園小学校で行われた=写真。4年生の児童らが新聞から冬をテーマに記事を選んで2年生に紹介するなどした。

 授業のテーマは「冬新聞スクラップを作ろう」。4年生が新聞の中から選んだ「ユズ湯」や「かるた始め」などの記事を写真や動画を交えて2年生に丁寧に説明した。2年生は真剣な表情で発表を聞き「ユズ湯の効果を初めて知りました」などと感想を話した。

 4年生の名村ゆあさん(10)は「新聞には、いろいろな記事や写真があって面白かった。新聞を身近に感じるきっかけになった」と振り返った。=27日付産経新聞朝刊神戸・阪神、淡路、播州版

                   ◆

「冬」テーマにスクラップ 垂水・愛徳学園小で公開授業240126aitokugakuennkobe.jpg

 新聞を教育に生かすNIEの一環として、愛徳学園小学校(神戸市垂水区)で公開授業「冬新聞スクラップを作ろう」があった。紙面から冬を感じさせる記事を切り抜き、感想や解説を添えながらまとめた。

 同校は2023年度からNIEの県独自認定校となり、授業で新聞の活用を進めている。

 4年生はゆず湯やクリスマスイベント、かるた大会など気に入った記事の切り抜きを手に、自分なりの言葉でかみ砕いて2年生に紹介。社会への視野を広げながら、伝える力や聞く力を養う狙いがあるという。

  成人式の記事を選んだ4年の田中菜々美さん(10)は「振り袖がきれいだから選びました。記事の内容を自分で理解することはできるけど、誰かに分かりやすく伝えるのは難しかったです」と話した。

 授業は県内の教育関係者らに公開され、25人が見学した。(大田将之)=1月29日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]「冬」をテーマに新聞記事をまとめる児童たち=神戸市垂水区歌敷山3、愛徳学園

※公開授業を担当された愛徳学園小学校・彦野周子教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちら 参加者の感想をこちら 児童のみなさんの感想をこちらに掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

川村かおり・姫路市立豊富小中学校教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)

 「もう一度説明しますね」。優しく丁寧に記事の内容を伝えようとする4年生。どんな内容かしっかり聞き取ろうと目をキラキラさせている2年生。お互いにうれしそうな表情でやりとりする姿が印象的でした。「伝え合う力」を育むために新聞はとても適した教材だということ、一般紙でもテーマを設定し、写真に限定することで低学年でも十分新聞を活用できるということなど、改めて感じることができました。

 本校も、施設一体型の小中一貫校として異学年での交流をさらに進め、子ども同士でつながり、深め合うための新聞活用法を今後も考えていきたいと思います。このたびは、貴重な学びの機会をいただきありがとうございました。

若生 佳久・明石市立大久保小学校教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)

 今回の授業では45 分は短かったなということが一番です。2年生と4年生の交流といった意味では、十分な活動だったといえます。

 4年生が2年生に自分の選んだ記事をていねいに説明し、それを聞いた2年生が応えていくという学習は、対話という形ではとても有用であったと思えます。

 事後の意見交換会でも出ていましたが、「主体的・対話的・深い学び」といった言葉が文部科学省から出されています。そういった意味で「対話的」なよい授業であったと言えます。

 しかし、スクラップを作るときにはもう少し時間が欲しいなと思いました。今回の授業での一番の課題ではないでしょうか。

 子どもたちは、とても一生懸命「わかるように説明(4年)」し、「聞き(2年)」、「考え(2年)」、「意見を言い(2年)」、「スクラップのレイアウトを考え(4年)」、「字やイラストをかいて(2・4年)」あの短時間にあそこまで仕上げたのは素晴らしかったと思います。

 力のある子どもたちだと思いました。

 また、担任の先生方も適切な助言を適切なタイミングでしていたのが素晴らしかったと思いました。日ごろから子どもたちの学習状況を十分に把握していたからこその助言であるのだと思いました。2年生の子どもがなかなか作業をしていないところをしっかりと見て、把握して4年生に助言したところにも感心しました。子どもたちへの語りかけの口調もとても丁寧でした。これは私にとっても反省の部分です。子どもたちへのかける言葉の丁寧さをもっと気をつけねばとあの授業をみて反省しました。

 もう一つ、事後の意見交換会でも話をしましたが、「書く」という活動は、学習活動にとって非常に大切な活動です。授業内で自分の考えや思いを「書く」ことで表出するまでには、頭の中でいろいろなことを思っていた内容を取捨選択し、その場で「言葉」として表出する行為です。この行為があることで、考えが定着するともいわれています。そういった意味で「書く」という活動は、授業内では必ず実施しなければならないと思っています。

 スクラップを作るときも、「題字」や「メンバーの名前」を書いたり、イラストを描いたりするほかに、「まわしよみ新聞」のように「感想」や「思い」、「分かったこと」などを紙に書くことが、新聞記事の内容を理解し、自分なりに「分かる」ことになるのではないかと思います。

田代 弘子・甲南小学校司書教諭・学校司書

 初めてNIEの公開授業を拝見し、新聞の活用は学年によって効果が異なるということがわかりました。

 今回の授業では、4年生は2年生にわかりやすく冬の新聞記事を伝えるために、言葉を選んだり、ipadで調べたりして文章を再構成していました。2年生にとって難しいことについて、どうにかして伝えようと試行錯誤することで逆に理解を深めているようでした。

 2年生も一生懸命、耳を傾けて理解しようと努力していました。そのことで、2年生だけでは知ることがなかった冬を題材にした新聞記事に出合い、世界が広がっているように感じました

 両者の心に芽生えた「新聞っておもしろいな」という気持ちは、「また新聞を読んでおもしろいことを見つけたいな」という知的好奇心につながっていくのだろうと思います。

 早速、本校の児童と新聞を楽しみたくなりました。ありがとうございました。

※1月26日の愛徳学園小学校の公開授業を担当した先生のうちのお一人、彦野周子教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

 2023年度、本校は兵庫県NIE推進協議会のNIE独自認定校に指定された。

 NIEを通して子どもたちに身につけさせたい力は、膨大な情報に誰もが簡単にアクセスできる現代社会において、正しい情報を取捨選択し読み解く力だ。

 そのため、低学年では、新聞の写真を見て社会で起こっているさまざまな事象に興味をもつこと。中学年では、興味のある記事を読むことで語彙(ごい)を増やし、その内容を人に伝えること。高学年では、記事に書かれている内容の事実と意見を区別して読むことや、複数の新聞を読み比べて多面的に物事を捉えること。これらの学習活動を取り入れていきたいと考えている。

 今回の公開授業は児童の興味の幅を広げ、聞く・話す力を高めることを目標に、2年生と4年生で行った。

 4年生は、冬に関する記事の中から2年生に紹介したいものを選び、その内容について、2年生にも分かるように紹介文を書いた。2年生は紹介を聞いたり、写真を見たりして、その感想を4年生に伝えた。最後に2年生と4年生で、選んだ記事や感想を大きな紙に貼り、「冬新聞スクラップ」を作った。

 授業を振り返って、一般の新聞は4年生には語句も文も難しいけれど、写真や見出しを手がかりに内容の大体を読み取ることが記事によっては可能だと感じた。

 授業後に行われた参加された先生たちとの意見交換会でも、たくさんの貴重なご意見をいただき、今後取り組んでみたいことが増えた。

西宮市立浜脇中学校

youtube 浜脇スクリーンショット.png

https://www.youtube.com/watch?v=BohihWRMJqg&t=4s

上記URLを範囲指定して右クリックから開いてください。

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※公開授業の新聞各紙の記事はこちら 公開授業を担当された浜脇中学校・渋谷仁崇主幹教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちら 参加者の感想をこちらに掲載しています。

辻井昭也・市川町立市川中学校長

 NIEの公開授業に参加したのは初めてだったので、教育的効果や県下の実践状況などをまずご説明いただき、その後に授業参観へとつながればよかったように思います。 時間的な制約もあったと思いますが、会自体は淡々と進んでしまいました。 授業を参観し、まさしくこれが「主体的・対話的で深い学び」だと感銘しました。加えて、「思考力・判断力・表現力」の育成にも大変効果的であることがわかりました。ICTもうまく活用され、今、学校現場で育成が求められている子供たちの資質・能力の多くが、あの授業で育成できているように感じました。  多くの示唆を与えていただきましたので、来年度に向けた経営方針や指導計画に反映させていきたいと思っているところです。

宮本直子・小野市立旭丘中学校教諭 

 公開授業では、幅広いジャンルの新聞記事をもとに、自分の考えを広げたり、深める生徒の姿に非常に感銘を受けました。目を輝かせながら、自信をもって自分の意見を発表する姿は本当に頼もしかったです。
 これまで私自身、新聞を活用することは生徒の成長にとって有効であるということは感じていましたが、なかなか形にするところまで至らずじまいでした。しかし、今回の参観授業を通して、新聞の具体的な活用を目にし、ぜひ自身の授業でも実践したいと思いました。
 新聞は、生徒の視野を広げさせてくれる存在だと改めて感じました。日々社会の情勢が大きく変化し行く中で、生徒たちには社会の様子を的確にとらえ、自分ごととして考え行動できる人に育ってほしいと考えています。そのためにも、まず1歩として、社会科授業で新聞記事クイズや、記事を読んだ感想を書かせたいと思います。

中嶋 勝・尼崎市立南武庫之荘中学校教諭

 新聞を活用することによって、「思考力・判断力・表現力等」が育成されることはもちろんのこと、自分たちの社会をより良いものにするためという、明確な目標がその授業にあるなら、生徒たちは生き生きと取り組み、学習する過程で「主体的・対話的で深い学び」を生徒自身が実感する。ということを私も学ぶことができました。
 問題意識をもって新聞記事を読み、見つけた身近な問題を解決するためには何が必要かを考える。そして、そのアイデアを交流しあって具体的に提案するという、新聞とICT、SDGsとを使った質の高い授業でした。
   他にも驚かされたことはたくさんあります。発表した生徒の感想をタブレットを使って素早く打ち込む生徒や、スライド作成の技術の高さなど、ICTを日ごろから使いこなしていることです。そして、大勢の見学者に取り囲まれても楽しそうな表情で意見を出し合う様子や、手際よく司会をする生徒、前で堂々と発表する生徒の姿から、日々の授業の積み重ねを見ることができました。1年生集団とはとても思えないはるかにレベルの高いものでした。
  渋谷先生や他の先生方が日ごろから授業改善に取り組まれることで、先生同士がつながり、生徒とつながる。さらに保護者、地域ともつながっていく。そんな素敵な授業づくりをしている雰囲気を肌で感じ取ることができました。今回学んだことを、私も日々の授業づくりに生かせるようにしていきたいと思います。

矢延和樹・神戸市立高倉中学校教諭 

 渋谷先生のされる授業名を始めてみたとき、「1年生の歴史分野なのに主権者教育?」と疑問を感じました。1年生にとって、「主権者」という言葉は難しく、理解するのに苦戦すると考えられます。そんな題材に、どのようなところで新聞を活用していくのか、とても興味深い気持ちをもって授業に臨みました。
 授業が終わり、真っ先に感じたことは「子供たちのゴール」です。生徒は中学校を卒業することがゴールではなく、社会の一員として、よりよい未来を切り開くことがゴールになります。それに向けて、中学校3年間で公民分野だけの「主権者教育」で十分ではなく、1年生からの積み上げが必要になってきます。どのようにすれば、1年生であっても主体的に「主権者」の意味・役割を理解できるのか、そして思考・表現することができるのかが、渋谷先生の姿を見てイメージすることができました。また、新聞の持つ、子供たちの力をもう一段階引き上げる凄味を実感させられました。
 今回の学びを、同じ1年生を担当している社会科教員として、子供たちに返していきたいと思います。素晴らしく、勉強になる授業をありがとうございました。

※10月26日の西宮市立浜脇中学校の公開授業を担当した渋谷仁崇主幹教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう~NIE活動を通して協働的な学びを基盤として「深い学び」を目指した授業づくり~」

概要
 本校は2021年度から全生徒を対象に「NIEノート」活動を展開し、社会の動きに関心をもち、自らの意見やアイデアを表現できる人物の育成を目指している(「NIEノート」については後述)。この数年は、日本万国博覧会協会との万博リサーチ企業ミーティングや、おおさかATCグリーンエコプラザとの持続可能な開発目標(SDGs)連携講座、桃山学院大学ビジネスデザイン学部のSDGsアイデアコンテストへの参加など、大学や企業との連携を図り、生徒が「主権者としての学び」を深めてきた。

 公開授業も「NIEノート」活動を中心に据えた。生徒が新聞記事から社会的な課題を取り上げ、SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」の実現に向け、アイデアを出し合い、お互いの考えを深めることを目指した。

NIEノート
 「NIEノート」活動は週に一度、生徒各自が興味関心のある新聞記事を選び、考察し意見や提案をまとめる。その内容を社会科の授業でプレゼンテーションし、クラスメートと意見交流することで、考えを深めている。

「 NIEノート」にみられる生徒の感想 「普段ニュースを見ないから、いろんなことが知れて楽しい」「新聞を読む機会が増え、起きている出来事などが分かる」「普段テレビのニュースを流し見している。自分から新聞記事にしっかり目を通すことで新しい発見があったり、そのニュースとしっかり向き合って自分の意見を持てる」「ニュースを調べて感想を書くだけじゃなくて、知らなかったことを共有できて楽しいし、いろんな人の感想が聞ける」「自分が選んだのとは違う新聞のニュースを知れる」「NIEノートを使うことで新聞を読む機会が増え、家族とのニュースや記事の会話がより弾むようになった」「いろいろなニュースを知れて好きな特集(記事)も見つけられる」「ニュースを知ろうとすることは、普段は時間がなかったり面倒だったりする」

 生徒たちは好奇心旺盛で現代の社会的な課題に興味を抱くが、その解決にどう貢献できるかという自信が必要だと考える。個々の関心やアイデンティティーを尊重しながら、「NIEノート」で自らの意見やアイデアを発信できる環境を提供し、共感することや協力し合うことの大切さを育み、自己実現への道を支援していきたい。

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[写真説明]各自での新聞記事選びの様子

公開授業について
 事前の学習では、習得した知識を活用しきれないグループが多く見られたことから、まとめ方を見直した。生徒一人に一つのテーマを設定させ、プリントに学習した内容をまとめさせておく。地域社会の未来を予想するにあたって、「住み続けられるまちづくりを」のアイデアを出すのに活用できそうな具体事例をまとめさせておく、などだ。

[写真説明]授業で活用した資料 

本時の学習では、住み続けられる地域社会について何に取り組んだらいいか、まずは個人で考え,次に小グループ(5~6人)で考える。新聞記事で知った社会的事象について、まずはこれまでの学習で得た知識をあてはめて、地域社会がよりよく発展するための方向性を見いだしていく。さらに生徒がさまざまな意見を聞く中で、自分の考えの変容や深まりを実感し、新たな提案へとつなげることを目指した。  

 特に先進的な技術開発が進む社会のイメージについて、毎授業での「NIEノート」を活用した発表のほか、5月、おおさかATCグリーンエコプラザでのSDGs学習、日本万国博覧会協会による講座を通し、将来生まれる課題やそれを解決する可能性(ビジネスチャンス)を生徒に考えさせたいと考えた。

 アイデアを出すにあたっては、四つの視点―地域(浜脇、香櫨園、西宮、兵庫▽日本(各都道府県)▽万国博覧会(最新技術)▽世界(各州)―を提示し思考の助けにする。これらの視点は、歴史学習で近世・近代・現代の単元に入ったときの深い学びにもつながるのではないか。

 グループの話し合い活動では「司会」「計時」「記録・発表」「ムードメーカー」と役割分担を明確にした上で、途中で議論が止まったり、うまく意見を表せなかったりしたときの生徒の考えの引き出し方をどうするか。指導者がファシリテーションの技術を使い、生徒の動機づけをうまく維持させ、考えを上手に引き出して提案につなげさせることが大切である。

さらなる発展へ
 11月21日、日本博覧会協会ジュニアEXPO主催のリサーチ企業ミーティングを全校生で実施し、日本の大手企業4社のSDGsの取り組みについて企業側と質疑応答も行う。日々の学びやアイデアを社会へ直接発信することで、さらなる深い学びにつなげていく。また、クラス内で行ったアイデアミーティングの成果を学年や学校単位で共有し、優秀な作品は地域やスタートアップ企業に発信していく。

全体の感想
 授業者として4月、生徒たちと出会った当初から「進取果敢」をスローガンとして「人に言われる前に進んで行動する」を意識して生活してほしいと伝えている。日頃から学校の教職員、管理職、地域、保護者の支えと理解があってこそのNIE活動であり、その中で伸び伸びと学習活動をする生徒たちの成長を感じている。今日の公開授業でも、日常の彼らの姿があった。日頃より新聞・ニュースに触れ、社会的な事象を考え、地域課題に向き合い、その中で「住み続けられるまちづくりを」について、主権者として考える人間になってほしい。そのために、各教科を主体的に学び、物事を多面的・多角的にとらえる力をつけてほしい。日本博覧会協会や兵庫県NIE推進協議会の多大なるバックアップがあってこその学習活動である。この場を借りて、日頃の感謝をお伝えしたい。

 さらなる授業改善を目指して、今後も研さんを積んでいきたい。

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 新聞を教材として授業に生かすNIEの公開授業が10月26日、西宮市の市立浜脇中学校であった。1年生約40人が新聞などで関心を持ったニュースをそれぞれ発表し、意見を交わした。

 この日は、渋谷仁崇主幹教諭(44)の社会科の授業で「住み続けられるまちづくり」をテーマに関心を持った記事を持ち寄り、6班に分かれて意見交換した。生徒からは「ドローンで薬を運ぶ」「3Dプリンターでグランピングや休憩の施設をつくって観光スポットにする」などの案が出た。

 島本陽葵さんは、西宮市と飲料メーカーがペットボトルのリサイクル協定を結んだニュースに着目。高齢者が歩きやすいよう歩道にユニバーサルレーンを設け、ペットボトルを原料につくった手すりを備え付けるアイデアを披露した。(勝亦邦夫)=27日付朝日新聞朝刊阪神・神戸版

                                                               ◆

231026hamawakityuusannkei.jpg 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の公開授業が10月26日、西宮市の市立浜脇中学校で行われた。1年生の生徒らが新聞記事を活用し、持続可能なまちづくりや社会課題について考え、活発な議論を交わした。

 授業のテーマは「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう」。生徒らは気になる記事についてのアイデアや提言を考え、グループ内で議論した後、それぞれ発表した。

 2025年大阪・関西万博で会場周辺に約600台が止められる駐輪場を整備するとのニュースに対して、「スポーツバイクも止めやすいように固定力の高いものをつくる」といったアイデアが披露されるなどした。

 授業を受けた見﨑一椛さん(13)は「新聞で今どんなことが起こっているのかを知って、それをどう解決できるかを考えるのが楽しかった」と振り返った。=28日付産経新聞朝刊阪神・神戸版、播州版

[写真説明]グループ内で議論する生徒たち=西宮市宮前町

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 新聞を教育現場で活用するNIE(教育に新聞を)に取り組む西宮市立浜脇中学校で10月26日、生徒が記事をヒントにアイデアを出し合い、互いに考えを深める公開授業があった。「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう」をテーマに、1年の約30人が活発に話し合った。

 浜脇中は日本新聞協会のNIE実践指定校。興味のある記事をノートに貼って考えをまとめ、クラスで意見交換する「NIEノート」など、日常的に新聞を生かしている。

 公開授業は県NIE推進協議会が企画。渋谷仁崇教諭(44 )が受け持つ社会科の単元で行われ、教育関係者ら数十人が見学した。

 生徒は6班に分かれ、まずはNIEノートやタブレット端末を使って、興味のあるニュースを互いに紹介した。貧困にあえぐ世界の子どもたちや臓器移植のドナー数、人工知能(AI)で生成された架空のタレントを起用したCM、スポーツ、事件など幅広い話題が飛び交った。

 続くアイデアミーティングでは「住みやすい街」の実現に向け、記事から着想した案を1人ずつ発表。2025年大阪・関西万博に絡む話題も多く、生徒からは「街にAIカメラをつけ、燃えやすい物を感知したら火災が防げる」「その人ごとに最適な食事を提案し、健康維持に役立つアプリ開発を」など独創的な案が次々に飛び出した。

 「こうすれば実現できるかも」と補足する意見や質問も相次ぎ、議論を発展させた。最後は各班が発表し、クラスで共有した。

 本宮颯馬さん(13)は、関西一円の街や空港に空飛ぶクルマの拠点となる「ドローンステーション」を設け、訪日外国人が便利に移動できる仕組みを提案。「国際交流や経済活性化につながる」とアピールした。

 本宮さんは「毎朝ニュースを見て、家族と話し合ったり調べものをしたりするのがすごく楽しい」と話していた。(山岸洋介)=30日付神戸新聞朝刊阪神版

[写真説明]記事からアイデアを出し合い、意見を交わす生徒ら=西宮市宮前町、浜脇中学校

※公開授業の動画配信中。動画はこちら 公開授業を担当された浜脇中学校・渋谷仁崇主幹教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちら 参加者の感想をこちらに掲載しています。

阿部俊之・神戸市立丸山中学校西野分校教諭

 「A5用紙の大きさで新聞を書く」。この発想に驚きました。

 この大きさで書いたことにより、新聞を書くというよりも友達にニュースを届けるような感覚で書けたことが、自由な発想と構想につながったような気がしました。

 文字フォントや大きさだけではなく、色を上手に使って見出しを工夫していた作品も多くて見ごたえがありました。

 また「やさしい日本語」を用いることへの書き換えは、授業だけにとどまらず、これからの生活においてもこの経験が活かされていくような気がしました。

三嶋祐貴子・明石市立高丘中学校教諭

 県立伊川谷高等学校による「やさしい日本語」新聞書き換え講座があった。母語としての日本語の理解を深め、グローバル社会における多文化共生の意義を考える授業だった。「やさしい日本語」講座講演会を行い、母語である日本語について考えなおし、実際に自分が気になる新聞記事を「やさしい日本語」に置き換えたはがき新聞を作っていた。どの作品も相手がわかりやすいように文字を大きくしたり、絵を挿入したりと工夫がされていた。また、新聞記事の要約だけでなく、その記事について自分がどう思うかも書かれており、班や全体で意見を交流するときに自分の意見を発表することで、互いの価値観を理解できる授業だった。

 本校も、本年度から委員会や総合の時間に新聞を活用した取り組みを行っている。生徒の表現力、発想力、発信力、コミュニケーション能力を高められるように、新聞記事を活用していきたいと思う。

岩本 隆・日本経済新聞社神戸支社支局長

 授業前、配られたタブレットで生徒が書き換えた記事を見て驚いた。「相手にわかりやすく伝えよう」という気持ちにあふれていたからだ。見出しをつけたり、イラストを描いたり、大事な文章をマーカーで囲んだり...。外国人でも読みやすいように、漢字にふりがなをつける工夫をした生徒もいた。

 授業が始まると、各班の中で生徒が熱心に発表。各班で決めた5人の代表者が自分の書き換え記事をみんなの前で堂々と発表する姿にまた驚いた。

 少し残念だったのは、記事が伝えたいポイントに触れずに書き換えていたものがあったこと。「高校1年生にそれを求めるのは少しハードルが高いかな...」と思った後、「むしろポイントがわかりやすいように、我々記者が努力しなければ...」と思い直した。

村上ともこ・愛媛県NIE推進協議会事務局長、愛媛新聞社地域読者局読者部副部長

 「やさしい日本語」への記事書き換えを通して、「相手に伝わるように伝える」ことに真摯(しんし)に向き合う生徒たちの姿が印象的でした。記事を書き換えるためには、元の記事を読み込み理解し、ポイントを絞り、わかりやすい言葉に置き換えるなどたくさんの工夫が必要で、有効な言葉のトレーニングになると思います。また、読み手を想像しながら表現することは、生徒の視野の広がりに繋がると感じました。今後夜間中学との交流も予定されているとのこと、どのような交流が行われるのかも気になります。

 オンラインでの参加だったため、スクリーンに投影されたはがき新聞の文字があまり読めませんでしたが、大きな文字で書かれ「伝わるように大きく書いた」と発言していた生徒の発表はよく理解できました。文章の内容だけにとどまらず、さまざまな工夫で相手に伝えようとする姿勢は大切だと感じました。今回は貴重な学びの機会をいただきありがとうございました。

木場翔太・兵庫県立相生産業高等学校定時制課程教諭 

  初めてNIE実践指定校の公開授業に参加させていただきました。本校はNIE実践指定校ではありませんが、県の「心のサポート推進事業」の一環として、新聞を活用した行事を月2回実施しています。内容は、当番の学年が選んだ新聞記事をその学年以外の生徒が読み、感想を書くといったものです。選んだ記事にはその理由も書くように指導しています。この取り組みの中で「文章を読む練習」「文字を書く練習」「文章の内容を理解する」「他者の考えを吸収する」の4つの力を身につけることを目標にしています。特に「文章の内容を理解する」「他者の考えを吸収する」の2つを身につけさせることに苦労していますが、伊川谷高校の生徒さんは1年生で新聞の記事をしっかり理解され、伝え方にも自分なりに工夫されており、大変驚きました。

 私自身、今の勤務校までは新聞を活用した授業等の経験がなかったので、今回の公開授業はどの内容も新鮮で今後の本校の実践にぜひ活かしたいと思いました。伊川谷高校、福田先生をはじめ大変有意義な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

 ※10月10日の伊川谷高校の公開授業を担当した福田浩三教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。 

多文化共生への橋がけ
-新聞記事のやさしい日本語書き換えを通して-

 ◇ねらい
 伊川谷高校は現在、日本新聞協会のNIE実践指定校3年目であり、これまで日本のグローバル化・情報化社会に必要なコミュニケーション能力を生徒が獲得することを目指してきた。この公開授業では近年、在留外国人とのコミュニケーション促進に効果が期待される「やさしい日本語」をNIE実践に取り入れることで、生徒による多文化共生・国際理解への意識付けを目指した。

 ◇実践内容
 1年コミュニケーション類型生徒30名を対象に、これからの社会のグローバル化を見据え、生徒が日常的に、幼い子どもや日本語を母語としない他者の観点で日本語を捉えることを目的に、「やさしい日本語」を用いた新聞記事の書き換えを行った。
 生徒が興味を持った新聞記事(神戸新聞社主催「ひょうご新聞感想文コンクール」応募用に選んだ記事)を書き換え記事として活用し、「やさしい日本語」を用いるだけでなく、A5用紙という制約の中で、より読み手に内容が伝わるようなまとめの工夫を行い、最後にその発表まで行った。
 初回は「やさしい日本語講演会」を基に、文章の「やさしい日本語」を用いた書き換え演習を行い、2~4回目で生徒は選んだ新聞記事を基に、その伝えたい内容や要約として必要な箇所を選び出し、その内容を「やさしい日本語」を用いてA5用紙にまとめ直した。この際、新聞紙面を参考に、より内容が伝わりやすいように見出しや文言、紙面レイアウト等について検討した。
 最終回となる5回目がこの公開授業であり、まとめ直したA5紙面を用いて、生徒各自が興味を持った新聞記事の発表を行った。初めに班内発表を行い、その後各班より代表者を選出し、その代表者がプロジェクターで拡大提示された自作品の紙面を用いて全体発表を行った。発表で、生徒は記事の興味を持った点に触れながら書き換え記事の読み上げを行い、書き換え時の工夫点などを説明した。

 ◇さらなる発展へ
 「やさしい日本語」の活用実践として、在留外国人との交流を希望する生徒を募り、地元の夜間中学校生との交流を行った。この中学校は在籍生徒の8割が外国籍であり、本校と同じくNIE実践指定校として新聞を活用した日本語教育にも力を入れているため、交流した生徒も「やさしい日本語」を通して、多文化共生・国際理解について考えることができた。今後も「やさしい日本語」を通した交流の機会が増えていくことを望んでいる。

 ◇全体の感想
 近年、新聞記事もデジタル配信が浸透しつつあるが、紙面としての新聞のもつ一覧性・網羅性と、読者を意識した見出しやレイアウトなどの表現力は、NIEの実践に欠かすことのできない大事なポイントである。その点で、今回の「やさしい日本語」を用いたNIE実践は、「読む・まとめる・書く」の一連の流れにおいて新聞のもつ表現力を学び、多文化共生・国際理解にまで繋げることができ、実践者として一定の満足を得ることができた。本実践で「やさしい日本語」を学んだ生徒たちが、今度はこれを伝える側になっていくことに期待したい。

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生徒ら工夫点紹介

 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、新聞記事を「やさしい日本語」に書き換える取り組みを進めている伊川谷高校(神戸市西区)の公開授業が10月10日、同校であった。県内の学校教諭を中心に、オンラインも含めて33人が参加した。

 県NIE推進協議会が企画。同校では2学期から、自身が興味をもった新聞記事をまとめ直す授業を継続実施しており、総まとめの回を公開した。

 この日は1年生29人が5班に分かれて各自の記事を紹介し、工夫した点などを説明。代表者が発表したテーマは、ヤングケアラーや中国のゼロコロナ政策、戦争と原爆などさまざま。「漢字にふりがなを付けた」「イラストを添えた」などの工夫点も述べた。

 瀬戸口淳宏(あつひろ)さん(16)は「新聞記事は難しかったが、自分で調べたり班の仲間と話したりして気付くことも多かった。きょうの発表も含めて良い経験になった」と振り返った。

 愛徳学園中学・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は「難しい記事内容を本当に理解していなければ自分なりのアウトプットはできない。NIEの取り組みの中でも斬新な切り口だと感じた」と感心していた。(安福直剛)=13日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]やさしい言葉でまとめ直した記事を紹介し合う生徒たち=伊川谷高校

 公開授業の後、現地参加者など20人で意見交換会を実施した。「記事の内容を在留外国人などに『やさしい日本語』で説明するには、自分が記事の内容をよく理解し、自分の言葉で的確にまとめる練習を行うことが大事だ」との意見があった。評価については「評価基準を明確にし、評価をもとに、発表の仕方や内容を改善していくことが大切である」との意見が出された。

 締めくくりに、この授業の最初から、指導や助言を行っていた塩川雅美(しおかわ・ まさみ)・ 大学未来創造研究所代表、吉開章(よしかい・あきら)・やさしい日本語普及連絡会代表理事、藤原孝章(ふじわら・たかあき)・同志社女子大学名誉教授から講評があった。(この稿、兵庫県NIE推進協議会事務局)

  ※公開授業を担当された伊川谷高校・福田浩三教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちらに掲載しています。参加者の感想をこちらに掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

    

230803matuyamataikai1.jpg全体会のパネル討議で「ICT時代のNIE」について意見交換する登壇者ら=8月3日、愛媛県県民文化会館

 新聞を学校教育に活用するNIEの第28回全国大会(日本新聞協会主催、愛媛県NIE推進協議会、愛媛新聞社主管)が8月3、4日、松山市の愛媛県県民文化会館で開かれた。「ICT(情報通信技術)でひらくNIE」を大会スローガンに開催。全国から教員や新聞・通信社の関係者ら約1200人が参加し、パネル討議や公開授業、実践発表を通じ、NIEの可能性を探った。

 兵庫県NIE推進協議会からは3人が参加した。聴講した公開事業について報告する。

 

▼愛媛大学教育学部付属小 地域の魅力、見出しで発信230804matuyamataikai1.jpg

 愛媛大学教育学部付属小学校の3年生29人は、幸島恭輔教諭(34)による公開授業で、松山の魅力を愛媛県外の人に伝えよう―と自らが書いた記事に見出しを付けるワークに取り組んだ=写真

 児童たちは事前学習でチームに分かれ、道後商店街や松山城、路面電車、松山の名産・名所など「わがまちの魅力」をテーマに取材。観光客にインタビューもしたという。

 授業では、各自が手書きや学習支援アプリで作った紙面を持ち寄り、仕上げの作業として見出しを考えた。

 児童たちは「10文字以内」を目標に、キーワードは何かを考えながら、読み手の興味を引く言葉をひねり出した。男子児童は松山城の記事に「松山城だけの守る工夫」、女子児童は道後商店街の記事に「見たこともない食べ物」と付けた。

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 出来上がった新聞は会場で県外からの参加者にも配布され、大会後には、新聞を手に松山城観光などに出かけた人もいたようだ。

 学びの振り返りで、幸島教諭は「児童たちに、無駄なく正確に伝える新聞の手法を通して『言葉の力』を感じ取ってほしい」と話した。(三好正文)

[写真㊨]児童が見出しを付けた新聞

愛媛県立伊予高 特産品の知名度向上考える

230804matuyamataikai2.jpg 愛媛県立伊予高校が立地する松前町には、県が生産量日本一を誇る特産品「はだか麦」がある。作付面積は町土の1割に及ぶ。生徒たちは「給食利用推進」「スーパーでの販売促進」を目指す班に分かれて、知名度向上案を競った=写真

 給食班は、学校給食センターで献立の開発やアレルギー対策などを取材。松山東雲短大では、はだか麦のグラタンやミネストローネの調理方法、使用器具などについて取材した。

 分科会には給食センターの職員2人が参加し、生徒考案のレシピにプロの目から調理時間や材料について助言。交流会では、キッチンカーで調理したはだか麦のグラタンやキーマカレー、カナッペなどを参加者に振る舞った。

 スーパーでの販促班は、チラシのほか、作詞作曲したはだか麦の歌を動画で発表。地元ショッピングセンター職員から、視覚、聴覚に加え、味覚にも訴える宣伝を考えてみては―とアドバイスされた。

 松本直美指導教諭は「地域課題への関心を育てるには新聞の活用が有用。取材を重ねることで、解決すべき課題を立体化していくことができた」と振り返った。(吉田尚美)

                                                 ◆

 来年の全国大会は京都市、2025年の第30回大会は神戸市で開かれる予定。

※兵庫からの参加者の感想はこちら

 教育現場で新聞を活用するNIEの第28回全国大会が8月3、4日、松山市で開かれた。兵庫県内からも教育関係者が数多く参加した。参加者の感想を紹介する。

 佐伯奈津子・姫路市立飾磨中部中学校教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー) 今年のNIE全国大会は、松山の地で行われた。夏目漱石の「坊ちゃん」の舞台であり、正岡子規生誕の地でもある文学の香りが高いこの地での開催ということで期待せずにはいられなかった。なかでも俳人の夏井いつきさんの講演が楽しみで、どのようなお話が聞けるのかと大変楽しみであった。松山は俳句の盛んな地である。兵庫県伊丹市と同様、俳句を大切にするとともに、「ことば」を通してのまちづくりをしようという姿勢が強く感じられた。行政面からのバックアップも頼もしく、開会式では愛媛県知事と松山市長があいさつされ、教育面にもとても力を入れられている様子であった。
 NIEの実践発表においても「クロヌリハイク」のワークショップが1部、2部ともに開かれ、多くの教師が楽しく「クロヌリハイク」に参加できた。紙面を黒く塗りつぶして言葉を選び俳句を作るというもので、語彙が少ない生徒にも言葉の選択肢が増え、俳句作りに取り組みやすい仕掛けとなっていた。
 今回、たびたび話題に上ったのが、新聞を読んでいくにあたって「紙」か「デジタル」どちらがよりよいかという内容であった。もはや教育界にICTの使用は必要不可欠なのはいうまでもないが、やはり「紙」であるアナログもじっくり見直すにはこちらが良いと見直され、有意義な発表であったように思う。
 2年後のNIE全国大会の開催地が神戸ということで、兵庫県の強み、姫路に特色は何かということを考えながら発表を拝見させてもらった。2年後、兵庫県に来てよかったと言ってもらえる全国大会にしたい。

  ほかの参加者の感想についてはこちらからお読みください。

 7月6日、神戸新聞本社で開催、参加者45人

 【参加者の感想】

 奥藤 美預子・神戸市立白川小学校・横尾小学校 学校司書

 大変有意義でした。

 新聞を活用した教育というとイベント的な授業を思い浮かべがちなのですが(少なくとも私はそう思い込んでいました)、他校様の取り組みを知るにつれ、新聞記事をタブレットを使って日常的に配信し、週に何度か時間を決めて(朝の会や業間休みなど)視写や要約などを行い、学力を底上げするなど、日常的に新聞を活用して学びを積み重ねていく方法もあるんだな、と目からうろこが落ちるようでした。

 このようなセミナーを通じて、他校様と交流させていただけたことで、改めて、司書としてできることは何かということを考えさせられました。

 この情報を早速本校教員と共有し、新聞を活用した教育として私たちに何ができるかということを考えていきたいと思います。

 赤木 富美子・兵庫県立山崎高校教諭

 去る7月6日、NIE兵庫セミナーに参加させていただき、ありがとうございました。他校の取り組みや新聞記者の方のお話を聞けて、とても勉強になり充実した時間となりました。日頃、生徒の視野を広げようと、新聞記事を素材とした課題を作成しています。将来のことを具体的に考え始めた生徒ほど、意欲的に取り組んでくれています。人口減少に悩む宍粟市にある高校の使命としては、地域課題に関心を持つ生徒を育てていくことが急務です。新聞を利用した他校の取り組みを参考にしながら、これから探究活動として何ができるかを考えていきたいと思っています。

 澤田 祥司・神戸市教委教科指導課主事

 新聞教育を通して子どもたちの社会への興味、関心を高め、考えを深めようとする先生方の実践に感銘を受けた。記事を要約したり、自分の考えを書いたりする活動や、見出しやリード文を考えたり構成を考えたりする活動などを通じて、現座の子どもたちの課題となっている書く力や表現する力を育むことができると感じた。

 社会全般で新聞離れが叫ばれる昨今だが、学校と社会をつなぎ、子どもたちが探究的な学びを追究していくためにも、正しい情報が掲載されている新聞は必要不可欠なものだと改めて感じた。子どもたちにとって新聞がもっと身近なものとなるよう、新聞を通して学習することのよさを発信していきたい。

 伊東 広路・日本NIE学会

 大手新聞社で学事支援業務を約12年間担当し、現在は日本NIE学会で私的に研さんを重ねている。

 セミナーの発表で印象に残ったのは、授業内容を記者と構築した実践。NIEを検討したい教員にも、人材育成を要する新聞社にも参考になるのではないか。ICTの活用例も参考になった。情報から探究活動まで、教科横断型や単元学習を考える手法の一つとして有効だろう。新聞社もDXを進める中、次世代読者の育成のあり方を考えさせられた。

 所属に分かれての意見交換は、多くの感想や意見が聞けて、新聞活用の課題や要望も共有できた。新聞社に所属する者として「もう少し現場の話を聞きたい」と感じている間に終了。自身の探究もさらに深めたい。

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 2023年度のNIE兵庫セミナー(兵庫県NIE推進協議会主催)が7月6日、神戸ハーバーランドの神戸新聞社で開かれ、県内外から教育関係者約45人が参加した。

 会長に就任したばかりの竹内弘明氏の「新聞につづられる熱い思い、人の心を子どもたちへ伝えたい」という温かいメッセージで幕開け。記者講演は、時事通信社神戸総局の水島信総局長が登壇した。本社政治部記者として長年取材した体験から「政治家のエピソードもおもしろおかしく伝えられることがある」として、全ての情報の真贋(しんがん)を見極める▽無責任に拡散しない―などの留意点を挙げた。「情報リテラシー」をテーマにNIE展開するときにも活用できそうだ。

 続いて、小中高校各1校から実践報告があった。神戸市立白川小学校の長﨑康子校長は、推進協議会による記者派遣事業(出前授業)の取り組みなどを発表。出前授業が初めての記者からの提案で、記者が担当教諭にインタビューし、その場で記事にしたことを紹介。5分で記事を書き上げたときの子どもたちの驚きなど、発表からは「ゼロから創り上げる出前授業」の楽しさが伝わってきた。

 姫路市立飾磨中部中学校の佐伯奈津子教諭は、長年にわたるNIE実践について報告。新聞から魅力ある写真を切り抜いて校内に掲示したり、授業で新聞の読者欄へ投稿したり、地元新聞社の報道展示室を訪ねたり、多様な取り組みを紹介した。「誰でもできる、継続的に」というキーワードが印象的で、多くの人を巻き込んで、楽しみながらできる活動は、すぐにまねできそうだった。

 愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は、電子版の新聞を活用した事例を報告した。「週刊国語表現」と題し、生徒用端末に記事を配信し、日常の中でより多くのニュースに触れさせることで、生徒たちは新聞の面白さに気づく。そうすると、生徒たちは主体的に新聞を読み、コメントを考えて書くようになる。新聞活用の効果は計り知れない―という報告だった。

 その後、参加者は4グループに分かれ、意見交換会を行った。テーマは、「わが校の〝探究〟を紹介しあい、企画を磨く」。中学校グループでは、主権者教育や防災教育、人権教育、道徳教育、ICT教育など、多岐にわたる新聞活用のアイデアを知ることができた。もう20年以上もNIE活動に取り組んでいる先生、これから取り組もう―とセミナーに初参加したという先生、NIE実践指定校の校長先生、新聞社の方などと「さらなるNIE実践を持ち寄り、ぜひまた会いましょう」と再会を約束するほど、話が盛り上がった。

 小学校グループからは、こども新聞の活用の実際、高校グループからは「総合的な探究の時間の情報源として新聞は欠かせない」などの報告があり、新聞活用の場面が広がりをみせていることを参加者全員で共有した。

 学習指導要領では、新しい時代に必要となる資質・能力として、生きて働く知識・技能の習得▽未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成▽学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養(かんよう)―の三つの柱が掲げられている。これらの資質・能力の育成のため、NIEが果たす役割や可能性を改めて感じることのできるセミナーとなった。

赤松 三菜子(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー/神戸市立高倉中学校長)(7月11日)

[写真説明]NIEの取り組みについて校種別に意見交換する参加者=神戸新聞社

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 2023年度のNIE兵庫セミナーが7月6日、神戸市中央区の神戸新聞社で開かれた。兵庫県内の小中高校などの教員ら45人が参加し、教育現場での新聞活用について話し合った。

 NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会が主催。NIE実践の知見を広げるため、毎年実施している。

 時事通信社の水島信(まこと)神戸総局長が「通信社から見たNIE」と題し、情報リテラシー(読解力)の重要性について講演。続いて、学校での実践事例を教員ら3人が発表した。

 うち神戸市立白川小学校(同市須磨区)の長崎康子校長は、新聞記者の出前授業を実例に挙げ「災害などの現場を経験した記者から直接聞く話に、勝る学びはない」と魅力を語った。電子版の新聞を活用した事例なども報告された。

 参加者は四つの班に分かれて意見交換。「どうすれば新聞に親しんでもらえるか」といった共通の課題を巡り、各校の取り組みを紹介しながら考えた。(小野坂海斗)=7日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]NIE活動について意見を交わす参加者=神戸市中央区東川崎町1

※セミナーの実践発表のうち、愛徳学園中・高校・米田俊彦教諭の活動報告はこちら。

※セミナーに参加された神戸市立高倉中学校・赤松三菜子校長の寄稿はこちら。

※参加者の感想はこちら。

                                                                ◆

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出前授業やNIE実践例を報告 NIE兵庫セミナーに45人 記者講演も

 2023年度のNIE兵庫セミナーが7月6日、神戸市内で開かれ、兵庫県内外の小中高校や特別支援学校、新聞・通信各社から約45人が参加した。教育現場での新聞活用に取り組む、兵庫県NIE推進協議会(竹内弘明会長)が主催。小中高校3校からは、記者の出前授業やNIE実践の報告があった。

 報告のうち、神戸市立白川小学校の長﨑康子校長は、同推進協議会による記者派遣事業(出前授業)の活用法を紹介した。

 出前授業が初めてだった記者と事前打ち合わせし、記者が担当教諭にインタビューし、その場で記事を執筆することになった。記者は5分で記事を書き上げ、児童たちから歓声が上がった。試みは大成功。児童たちも記者がどう質問したか、それをどう記事にしたかを参考にしながら、お互いにインタビューし記事を書いたという。長﨑校長は「受け身でない出前授業」の魅力を語り、その記者にはその後も出前授業を依頼したという。

 姫路市立飾磨中部中学校の佐伯奈津子教諭は、新聞から魅力ある写真を切り抜いて校内に掲示する▽新聞の読者投稿欄に応募する―など、自身が長年続けてきた、肩ひじ張らないNIEの取り組みを紹介した。

 愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は、電子版の新聞を活用し、生徒用の端末に数多くの記事を配信している。日を追うごとに、生徒が「新聞の面白さ」に気づき、記事に対するコメントの行数が増えていく様子を報告。目に見えるNIEの効果が、参加者の関心を集めた。

 その後、参加者は4グループに分かれて意見交換。各校の取り組みが紹介され、初参加の教員も熱心に耳を傾けた。

 記者講演もあった。時事通信神戸総局の水島信総局長が「通信社から見たNIE」と題し、情報リテラシーの重要性について話した。フェイクニュースの取り扱いについて、実例を示しながら、すべての情報の真偽を見極めるとともに、無責任に拡散しない―などのポイントを挙げた。=新聞情報7月22日号

[写真説明]学校でのNIEの取り組みについて意見を交わす参加者=神戸市中央区東川崎町1、神戸新聞社

 NIE実践発表会(2月4日、神戸・よみうり神戸ホール)の様子をグラフィックで振り返ります。作成いただいたのは、井上幸史・日本新聞協会NIEアドバイザー(姫路市立城北小学校教頭)です。

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※新聞各紙の記事はこちらに掲載しています。

 2月4日・よみうり神戸ホールで開催 参加者51人

 【参加者の感想】順不同

 川崎 芳徳・県立須磨友が丘高校校長

 このたびは、大変お世話になりました。素晴らしい発表の舞台を与えていただけましたこと、深く感謝申し上げます。

 岸本総局長様の、わかりやすく、「なるほど!」と目から鱗のお話。そして、心打たれる投稿のご紹介と、実に学び多いご講演でした。

 そして、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に夜間中学校・・・実に多様な生徒の取組を見させていただくことができました。新聞を通した学びの輪がますます広がり、「『人として』いかに生きていくのか」のヒントや、そのエネルギーを、互いに供給しあえる関係を、さらに確立していくことの重要性を実感しました。

 ありがとうございました。

 齋藤 隆夫・神戸市立いぶき明生支援学校教諭

 先日は、NIE実践発表会に参加させていただき、ありがとうございました。このような貴重な機会に参加できたことをうれしく思います。小学校や高等学校、特別支援学校や夜間中学校まで多校園種にわたる実践が聞けて大変勉強になりました。

 個人的になりますが、以前、阿部先生(丸山中学校西野分校)と同じ学校に勤めていたこともあり、夜間中学校の取り組みに非常に興味を持ちました。

 学ぶことへの意欲の引き出し方や、発見から共感し、ともに学び合う姿に感動いたしました。新聞を通した学びには、とても多くの学びがあることに改めて驚かされました。

 今回学んだことを自分自身の取り組みに生かしていきたいと思います。

 本当にありがとうございました。

 古米 弘明・神戸市教育委員会事務局教科指導課担当係長

 各校の実践発表をすべて聞くことができて良かったです。

 特別支援学校と夜間中学校においては、教育に新聞をどのように取り入れるのかについての発表でその取り組みについて関心を持って聞かせていただき、そして感心いたしました。

 特別支援学校の「まずは新聞に触れてみる」という取り組みはどの学校においても実践できることだと思いました。

 夜間中学校の「新聞がどのように生徒に見えているのか」という教師の気づきから、活字を読むことを苦手に感じている生徒に対して、どのようにすれば、情報を手に入れて考えたり、理解したりすることができるかという視点できめ細やかな取り組みを行っていました。

 小学校と高等学校については、防災をテーマとしたに取り組みでしたが、これ以外にもいろいろなテーマを取り扱うことができるため、どの校種においても今後の新聞教育を考える手掛かりとなりました。

 西宮市の中学校の取り組みは新聞を通して生徒が工夫や発想をいだき、そこで見いだした考えを社会へ発信して、関与していくというものでした。新聞教育を今後発展させていく上で、その在り方の一例を示した取り組みであったと感じました。

 各学校の特色ある取り組みは、神戸にとどまらず、日本へ、さらには世界へと発信できる内容であり、そのことに感銘を受けました。

 4校の新聞教育に携われた先生方に改めて敬意を表します。ありがとうございました。

 若生 佳久・日本新聞協会NIEアドバイザー(明石市立大久保小学校教諭)

 一番印象に残ったのは、なんといっても夜間中学校の実践です。外国籍の人への実践は、小学校低学年の実践に通じるものがたくさんあります。あの実践をヒントに低学年では、どのような授業ができるのかを考えてみるのも面白いなと思いました。

 また、特別支援学校の実践もやってみたいとも思いました。特に、1面にシールを貼るといういうのがすぐにできて子どもへの社会への関心を高めるにも効果があると思いました。

 再任用ですから、来年度担任も怪しいところですが、担任をもてればやってみたいなと思いました。

 赤松 三菜子・兵庫県NIE特任アドバイザー(神戸市立高倉中学校校長)

 「教科学習にNIEをプラスする!」と銘打って行われたNIE実践発表会では、多種多様な興味深い実践報告がありました。

 記者講演では、読者投稿欄の魅力を発信していただき、まさに学習の場を開く契機としてオープニングにふさわしい内容でした。

 特別支援学校でのNIE、小高連携のNIE、夜間中学校のNIE、大学や企業と連携する中学校のNIE、どれもが新聞の力を大いに活用して学習の場を開き、学びのセーフティーネットにアクセスしている実践でした。

 先生方の発表はもちろん素晴らしかったですが、なかでも高校生の発表は秀逸でした。未来を担う世代がNIEを通して社会に関心を寄せ、自他の思いに触れることは、人と人がつながる温かい社会を創り出すことでしょう。

 本年度のNIE実践指定校の発表がさらなる発展を遂げ、今後のNIE実践につながることを大いに期待しています。

 井上 幸史・日本新聞協会NIEアドバイザー(姫路市立城北小学校教頭)

 「社会へアクセスする端子・セーフティーネットとして」のNIEについて、人と人・個人と社会・知識と体験・過去と未来...など、様々な要素をつなぐ役割を果たしていることを4つの実践を通して学ぶことができました。

 NIEアドバイザーとして勉強になりました。ありがとうございました。

 坂本 多津子・県立有馬高校教頭

 このたびの発表会では、はじめに、秋田会長様のごあいさつを通して、生徒と社会をつなぐことをはじめとする、NIEの意義について学ばせていただくことができました。

 次に、新聞エッセー投稿についてのご講演では、エッセー投稿記事をふまえてご説明くださり、その記事に感銘を受け、エッセー投稿の奥深さを知ることができました。

 続いて、実践発表においては、特別支援学校、夜間中学校、中学校、高等学校と多様な校種における発表を拝聴させていただくことができましたが、それぞれの学校において、日々の教育活動に生かしたいと思える多くの事例がありました。なかでも、県立須磨友が丘高等学校においては、NIEを中心として、地域とつながり、兵庫の課題である「防災」の取り組みに発展されたことは素晴らしいものであり、大変刺激を受けました。

 全体を通して、NIEの教育的意義と今後の広がりが未知数であることを感じております。

230204jixtusenhaxtupyoukai.jpg毎日トップ記事記録/当時の紙面で震災学ぶ

 NIE(教育に新聞を)活動を進める県内の学校による実践発表会(神戸新聞社など後援)が2月4日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールであった。新聞社や教育関係者でつくる兵庫県NIE推進協議会が毎年開催し、教員ら50人が参加。小中学校、高校、特別支援学校の教諭らが4事例を報告した。(小尾絵生)

 播磨特別支援学校(たつの市)は、高等部の生徒を対象にした授業について紹介。担当の志水幸広教諭は「生徒はほぼ新聞を読む習慣がない。肢体不自由な生徒もおり、まず新聞の扱い方から慣れる必要があった」と振り返った。

 生徒が毎日、当番制でトップ記事をノートに記録する仕組みを作るなど工夫。新聞を読むことの習慣づけを進めたという。

 須磨友が丘高校(神戸市須磨区)では、生徒が横尾小学校(同)の児童に、1995年の阪神・淡路大震災をテーマに授業を実施。避難所や救助といったテーマごとに、当時の新聞記事などを調べた。

 担当した岩本和也教諭は「震災は未経験の世代間だが、新聞記事を通して多角的に出来事を捉え、記憶の継承につなげられた」などと意義を強調した。

 夜間中学校の取り組みについては、神戸市立丸山中学西野分校(同)が発表。生徒の約8割が外国人のため、分かりやすい日本語で書かれた小学生新聞が役立ったことを伝えた。

 西宮市立浜脇中学校では持続可能な開発目標(SDGs)をテーマに、総合的な学習や社会科を展開。新聞記事やニュースをまとめたNIEノートを、アイデアを考えたり発表したりする時に活用していると報告した。=2月6日付神戸新聞朝刊広域版

[写真説明]小学生に防災をテーマにした授業を行った須磨友が丘高校の生徒も登壇した=神戸市中央区栄町通1

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NIE通じ学び深める 神戸で実践発表会

 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)に取り組む県内の学校による実践発表会が、神戸市中央区でひらかれた。教育関係者ら約50人が参加し、先進的な事例報告に耳を傾けた。

 県NIE推進協議会が主催。2月4日に行われた発表会では冒頭、秋田久子同協議会長があいさつに立ち、「教科学習にNIEをプラスすることで、社会にアクセスする端子を付けることになる。社会を視野にいれた学びが大切」とNIEへの期待を語った。

 実践発表では、県立須磨友が丘高校の岩本和也教諭が、同校の生徒たちが近隣の小学生を対象に行った、阪神淡路大震災当時の新聞紙面を活用した防災授業について報告。高校生2人も登壇し、授業でこだわった点などを語った。

 また、西宮市立浜脇中学校の渋谷仁崇教諭は、気になる記事を切り抜いて貼り自分の考えを書き込む「NIEノート」の取り組みや、企業と連携したSDGsの学習など、NIEを通じて生徒たちが学びを深める様子を伝えた。このほか、県立播磨特別支援学校、神戸市立丸山中学校西野分校からも実践報告が行われた。=9日付産経新聞朝刊阪神・神戸版、播州版、但丹版、淡路版

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「社会に関心 きっかけ」 神戸市中央区 5校教諭ら活動報告

 新聞を授業で活用するNIE(教育に新聞を)活動を進めている県内の学校による実践発表会が12月4日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールで開かれ、学校関係者ら約50人が参加した。

 県NIE推進協議会の主催。県内の小中学校、高校、特別支援学校計5校の教諭らが、活動を報告し合った。県立播磨特別支援学校(たつの市)の志水幸広教諭は、各クラスに模造紙を用意し、生徒たちが新聞記事の見出しを手書きした横に、内容を読んだ感想を記入してもらう取り組みを紹介。「新聞を通して、生徒が社会に関心を持つきっかけになった」と述べた。

 高校生から小学生に、新聞を通じた授業を実施したのは、県立須磨友が丘高と神戸市立横尾小(いずれも神戸市須磨区)。発表会では、同高の生徒が、阪神大震災が起きた当時の記事を児童と一緒に読み、震災や防災のことを学ぶ「小高連携」の成果を披露した。=2月5日付読売新聞朝刊神戸・明石版

[写真説明]学校でのNIEの取り組みを発表する高校生ら(神戸市中央区で)

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小中高の教諭ら実践発表 神戸でNIE実践発表会 産経新聞総局長の記者講演も

 2022年度兵庫県NIE実践発表会が2月4日、神戸市のよみうり神戸ホールで開かれ、兵庫県内外から教育関係者ら約50人が参加した。小中学校、高校、特別支援学校の教諭らが4事例を発表した。

 兵庫県NIE推進協議会(秋田久子会長)が主催する恒例の発表会。21年度はコロナ禍の影響で中止を余儀なくされ、2年ぶりの開催となった。

 夜間中学校の神戸市立丸山中学校西野分校(神戸市須磨区)の発表では、阿部俊之教諭が登壇。外国籍の生徒が8割を占める中、「波紋読み」と名付け、すべての漢字にルビが付いている小学生新聞も活用しながら、日本語の習熟度を広げていく取り組みを報告した。夜間中学でのNIE実践は珍しく、関心を呼んだ。

 兵庫県立播磨特別支援学校(たつの市)の発表では、志水幸広教諭が高等部の生徒を対象にした授業の中で、毎日、当番制でトップ記事をノートに記録しているなどのNIE活動を報告。志水教諭は「肢体不自由な生徒はまず、新聞の扱い方から慣れる必要があった」と話した。

 兵庫県立須磨友が丘高校(神戸市須磨区)では、生徒が神戸市立横尾小学校(同)の児童に、28年前の阪神・淡路大震災をテーマに授業を行った。当時、新聞各紙やラジオが震災をどう報じたかを伝え、児童は「災害時に自分ならどう行動するか」を考えた。

 発表した須磨友が丘高校の岩本和也教諭は「震災は未経験の世代間だが、新聞記事を通して記憶の継承につなげられた」と意義を強調。横尾小学校の酒井秀幸校長は「年齢が近い高校生なので質問もしやすく双方向の授業ができた」「これまでの震災学習をより自分ごととしてとらえることができた」と振り返った。

 西宮市立浜脇中学校の渋谷仁崇教諭は、新聞記事やニュースをまとめた「NIEノート」の取り組みや、企業と連携したSDGs(持続可能な開発目標)の学習など多様なNIE展開を報告した。

 産経新聞神戸総局の岸本佳子総局長は「読者投稿のススメ~『朝晴れエッセー』の現場から」と題して講演した。

 兵庫県教委高校教育課指導主事の上月さやこさんと、神戸市教委教科指導課指導主事の松田信吾さんが講評。上月さんは「播磨特別支援学校の取り組みは新聞活用のヒントが満載だった」、松田さんは「丸山中学校西野分校の『波紋読み』が素晴らしかった」など、いずれも各校のNIE活動を高く評価した。=新聞情報2月25日号

[写真説明]小学生を対象に「震災授業」を行った須磨友が丘高校の生徒も登壇した=神戸市中央区栄町通1            

※「グラフィックで振り返る、NIE実践発表会」をこちらに掲載しています。

※参加者の感想はこちら

中野 晴美・神戸市立多聞東小学校校長

 「教育に新聞を」というキャッチフレーズと共にNIEの活動を意識し始めてから30年近くになります。古くから重宝されてきた教育の手段が、昨今簡単に教育現場から切り捨てられていく中で、長い年月をかけて守られてきた「新聞と共に学ぶ」学習スタイルは意味あるものです。ドキュメンタリーでありタイムリーであり、さらには真実や証拠に裏付けされたその内容は、緊張感を持って、読み手の心の奥に迫ってきます。だからこそ児童・生徒にとって一生ものの価値ある学びと経験をもたらすことになると考えています。同時に、教師が意図して授業を行うことの技術力や責任の重さも感じます。行元の報道の責任の重大さも感じます。

 私の学校でも必要に応じて、少しずつですが活用しています。例えば、防災学習を5年生が総合的な学習の時間に行っていますが、一人一人が、心を打たれた新聞記事をもとに、持論を書き添えるミニ新聞作りの学習があります。しかし、子どもの視点は濁りなく素直で、「なるほど、そうか」と原点に戻って反省し、修正し、真実を見つめ直すきっかけをくれたり、初めて気付かされ、学びや研究のチャンスをもらったりすることにもなるときがあります。子どもたちの書いた記事は学級内でシェアされ、学年掲示板で全校に向けて発信され、最後は家庭に持ち帰って、家族にも伝えられて広がっていきます。

 NIE公開授業を参観し、自分が想像していた以上に高校生のファシリテーション力の高さや、授業に関する準備の素晴らしかったことに感動しました。何より小学生という難関な相手に自分たちの意図した一番伝えたいことを届けていくコミュニケーション力に驚かされました。各グループに配置された高校生が舵取り役となり、小学生に考えさせました。それを人前で自分の言葉で自信を持って表現させるところに一部課題は残ったものの、「震災」をテーマにしたした協働学習は十分意味を成していたといえます。このNIEを活用した協働学習により改善が加えられ、発展していくことを願っています。

阿部 俊之・神戸市立丸山中学校西野分校教諭

 横尾小学校5年生×須磨友が丘高校のコラボ授業は、非常に心地よい授業でした。

 防災ジュニアリーダーを中心とした高校生による「防災授業」は、教える側、教えられる側という立場ではなく、互いが新聞記事を通して、「震災」という事実に向き合い、そこで起こった出来事、そこから学べる教訓を探しだす共有目線に立ったすてきな授業でした。

 横尾小学校の児童のみなさんが、真剣に考えて出してきた意見に、笑顔で「そうだね」と言葉を添える高校生のみなさんがいたからこそ、一般紙の言葉の難しさの壁を乗り越えて理解していこうとする、子どもたちの前向きな姿勢が生まれてきたのだと感じました。

 授業の最後に「みなさんは、知ったことで終わらないで。次の人に伝える人になってください」という司会者の高校生の言葉にもハッとさせられました。新聞を読む者から、事実を次の人々に伝えていく者へと変えられていくことも、このNIEの活動の大きな役割の一つであることを、今日の授業を通して教えていただきました。

 新聞はバトン。アンカーではなく次の走者へつなぐものとして、これからも子どもたちが新聞を役立ててくれることを期待しています。

稲葉 弥生・県立川西緑台高等学校実習教員

 全体説明を行った高校生は1、2組の担当ともよく声が通り、説明が聞きやすかったです。限られた時間の中で、よく考えて授業を進行されていました。

 導入で「風化」という言葉をキーワードにされていました。キーワードを印象づけるために、授業を受ける小学生向けにわかりやすい言葉を使用し補足説明を行ったり、最後の締めくくりで再度「風化」について触れるなどの工夫があると、高校生・小学生それぞれにより深い理解ができたのではないかと思いました。

 震災を経験していないみなさんが、新聞記事などを利用し、ともに考える授業を行われることが、「風化させない」という実践そのものになっていると感じました。

 有意義な機会を設けていただき、ありがとうございました。

                      ◆

 たくさんの感想をいただき、ありがとうございます。ほかの方々の感想はこちらからご覧ください。

 参加者の感想

 ※1月23日の須磨友が丘高校×神戸市立横尾小学校の公開授業を担当した、須磨友が丘高校の岩本和也教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

◇ねらい

 阪神・淡路大震災が起きた当時の新聞記事・報道写真・ラジオ放送の放送記録を題材として、「震災が起きた時に想定される被害」「必要な支援」等の情報を読み取り、小学生が友だち同士や高校生と話し合うことにより、「自分たちに何ができるか」を考えることができる。

 また、小学生のグループに高校生がファシリテーター役として入ることで、相互に意見交流を行い、互いに学びを深めることができる。

◇授業の感想

 小学生は題材となる新聞記事等をじっくりと読み、高校生の問いかけに応じて懸命に考え、意見を出す姿が見られた。戸惑っている児童に対しては、高校生がかみ砕いて説明したり、問いかけ直したりすることで、小学生も学習を進めることができていた。

 震災を経験する世代が少なくなる中、阪神・淡路大震災を経験していない高校生が、自分たちよりも下の世代の子どもたちに震災の経験を語り継いでいくことにも意味があったと考える。

◇今後の展望

 本授業では、小学生の児童に震災について考えるきっかけを与えることはできた。高校生からは、帰宅後に保護者の方と震災について話してみてほしいとの呼びかけがあった。防災に関する意識や行動がどのように変化していくのか、再度授業を行うことも検討したい。

 また、高校生が小学生に教える授業は、相互に学びがあったと思う。防災に関する授業に関わらず、今後も継続して、このような小高が連携する機会をつくっていきたい。

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 学校現場で新聞を活用する運動に取り組む県NIE推進協議会は1月23日、神戸市須磨区の市立横尾小学校で公開授業を開いた。県立須磨友が丘高校の生徒16人が、阪神大震災をテーマに、5年生の2クラスに分かれて実施。震災の継承が難しくなる今、当時の記事を用いて防災の大切さや命の尊さを伝えた。

 5年2組では、阪神大震災をさまざまな角度から報じた当時の記事を使って児童22人がグループごとに学習した。1995年1月21日の「ライフライン複合被害」を報じた毎日新聞の記事を読んだ子どもたち。担当した橋本心温さん(17)から「水が無くなったらどうする?」「何ができなくなる?」と尋ねられ、付箋に自分の意見を書き込んで話し合い、事前の備えの大切さを学んでいた。

 授業のまとめ役を担った濱田優さん(17)は「伝えたいことは、誰かのつらい経験を無駄にしないこと。経験を生かし、誰かの命も自分の命も守ってほしい」と語りかけた。授業後は、見学者や生徒代表、教員らによる意見交換会も行われた。【石川隆宣】=24日付毎日新聞朝刊神戸・明石版

[写真説明]NIEの公開授業では、阪神大震災が発生した当時の新聞を使って高校生が子どもたちに教えた=神戸市須磨区の市立横尾小学校で

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 28年前、阪神・淡路大震災について新聞各紙がどう報じたかを、高校生が小学生に伝える授業が1月23日、神戸市須磨区横尾5の横尾小学校であった。児童は、倒壊した建物や救助活動、避難所生活、復旧が進まないライフラインなどの記事を読み、「災害時に自分ならどう行動するか」を考えた。

 須磨友が丘高校(神戸市須磨区友が丘1)1、2年の16人が横尾小の5年生46人に教えた。日本新聞協会のNIE実践指定校の両校が企画した「小高連携授業」。兵庫県NIE推進協議会による公開授業として行われ、市内外の教育関係者約20人が見学した。

 高校生たちは、神戸新聞など各紙から気になる記事を選び、「がれきの中の人にどう声をかけるか」「小学生は避難所でどんな助け合いができるか」などの問いを設定。児童たちは付箋に回答を書き、模造紙に貼っていった。

 須磨友が丘高2年の大久保遼矢さん(17)は「小学生が積極的に意見を出してくれた。震災の記憶を伝える側にならないといけないと感じた」。横尾小5年の堀口羽菜さん(11)は「災害時は避難所に缶詰を持っていこうと思った。これからも防災について考えたい」と話した。(三好正文)=25日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]災害時の救助活動について意見を発表する高校生と小学生=横尾小学校(撮影・冨居雅人)

 生徒の感想 須磨友が丘高校2年、濱田優さん(17)「震災の記憶を風化させないというのは、当時のつらい体験を無駄にしないことだと思う。児童のみなさんにはきょう学んだことをほかの人に伝えてほしい」

 兵庫県NIE推進協議会から 「阪神・淡路大震災の記憶の継承」は大きな課題だ。4人に1人が震災後生まれになった兵庫県で、体験世代が担ってきた継承活動を、若者たちが語り部となって、どうつないでいくか。そのとき、高校生が「発信する側」--震災の記憶を語り継ぐ側になってくれたら心強い。須磨友が丘高校の生徒たちは、間もなく発生から12年になる東日本大震災についても学習を続けてきた。その学びは授業の中で十分に生かされていた。生徒たちは教えることの難しさを感じながらも、児童たちと和やかで有意義な時間を過ごしたようだ。取り組みが継続、さらに発展していくことを願っています。

 ※公開授業を担当された須磨友が丘高校・岩本和也教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちらに掲載しています。参加者の感想をこちらに掲載しています。「わたしの感想NIE」に児童生徒のみなさんの感想を掲載しています。感想はこちら

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教育関係者ら視察 「正しい日本語習得に効果」

 夜間の神戸市立丸山中学校西野分校(同市須磨区大黒町5)で、NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会による公開授業があった。さまざまな背景を持つ生徒が新聞を用い、社会問題などへの関心を深めた。(安藤真子)

 同校は1950年1月、戦後の混乱や貧困などを理由に昼間の学校に通えない生徒を対象に開校した。現在は28人が在籍し、外国籍の生徒が約8割を占める。

 県内の公立夜間中学は神戸、尼崎市にある計3校。来春、姫路市に4校目が開校を予定している。

 11月30日にあった公開授業は学年をまたいだ少人数授業で本来の「国語」と「社会」「日本語」の時間を使って行われ、神戸市内を中心とした県内の教育関係者ら約40人が見学した。

 社会の授業には日本のほか、フィリピンや中国にルーツを持つ10~70代の生徒5人が出席。生徒はまず、新聞から地球温暖化などのそれぞれが気になるニュースを選択。続いて、画用紙に見出しや要約をまとめた。日本語が母語でない生徒はふりがなを付けた子ども向けの新聞や英字新聞を活用した。

 3年の古牧未穂さん(17)は、書店が減少傾向にあり、若者の活字離れが進んでいる―という記事を選んだ。「普段はあまり新聞を手に取ることはないが、開いてみると知らないニュースがたくさんあった」と驚いた様子。画用紙へのまとめ作業では「一目見て内容が伝わるよう、見出しを大きくした」と話した。

 公開授業の後には、研究協議会が開かれ、見学者らが意見を交換。授業を踏まえつつ「新聞を教材に用いることで、生徒が正しい日本語を学ぶことができる」という声が多く上がった。=12月4日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]新聞を教材にして関心のあるニュースを選ぶ生徒ら=神戸市須磨区大黒町5

※公開授業を担当された先生方の寄稿(ねらいや展望)をこちら  参加者の感想をこちら に掲載しています。

   日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

 ※11月30日の公開授業を担当された先生方にねらいや展望をご寄稿いただきました。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 神戸新聞 11月27日付 編集委員インタビュー「子どもの貧困、現状どうみますか」
 ・国語クラス  日本人3人、中国人1人
 ・さまざまな人生経験をもつ生徒の琴線に触れる話題について、記事を読解し、意見を述べ合うことを目標に行った。中国語が母語の生徒には中国語訳をつけ、難解な語句は全員に解説を配布し、章ごとに内容確認をした。年配の学生は、敗戦後の児童労働のイメージが強かったし、他の生徒も現代の「子どもの貧困」が「目に見えない」ことに驚き、共感しつつ理解していくことができた。言語面や内容面では高度だったが、多様な学習者が互いに補いながら読み込めていた。新聞を通じて、見方を自ら伸ばせる習慣を育てていきたい。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 新聞広告、「みんなの日本語第2版初級Ⅰ」
 ・日本語初級クラス ネパール男性2人、ネパール女性2人、ベトナム女性1人
 ・日本語の授業で比較表現まで既習となった今、新聞広告をもとに自ら発話し、復習ができることを目標にした。漢字の壁が克服できたとしても、文法的、語彙的な壁があるので、この方法を採用した。従来、チラシや新聞は日本語教育においてレアリア(実物教材)として使うことは一般的だ。生鮮食品のチラシには、本校生徒の生活者として必要度の高い語句も多いため、積極的に発話し、自ら他の質問をして会話する経験を多く持てた。今後、日本語運用能力が上がれば、新聞記事の読解に結び付けてゆきたい。

【桑原 岳人先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月30日付
 ・クラス 日本語初級Cクラス ネパール 女性1人 ベトナム 女性1人
 ・新聞記事を聞き取り文字に起こしていく。日本語を母語としていない生徒に日本語を正確に聞き取る練習とする。また、新聞の記事は時事問題を取り扱っており普段日本のニュースに触れることの少ない生徒に現在日本で起こっていることを学習する機会とする。教科書では触れることない語彙に触れるとともにその意味を解説することで習得語彙数を増やすことが期待できる。
 
【奥 芳恵先生】
 ・使用教材 神戸新聞 産経新聞 朝日小学生新聞 日本経済新聞
 ・クラス  日本語上級クラス社会科
 ・本時の目標は「新聞を通して、社会の出来事に興味関心を持ち、社会問題をみつけよう」、新聞記事の切り抜きを選び、ポスターにはって、それについて自らの意見を考える取り組みを行った。テーマは「社会問題」に限定した。
 人生経験豊富な大人の方々は、自らの経験と結びつけて「北朝鮮拉致問題」「円安打撃」「地球温暖化」「若者の活字離れ」などの記事を選んだ。授業が終わった後に「新聞を持って帰って家でもっと読みたい」というフィリピンの女性や、「私の書いた記事はどうですか。がんばりました」と笑顔でこちらの感想を聞きに来る中国の女性、また不登校生だった17歳の女性は、苦手ながらもポスターの字を一生懸命書き込んだ。教科書にはない学びがここにあり、新聞教育の持つ可能性を感じた。

【阿部 俊之先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月27日付
 ・日本語初級クラス ネパール 男性1人
 ・新聞記事の数字に着目し、そこから理解を広げていくことを目標に授業を行った。新聞は〇日、〇カ国、〇回などがどんどん出てくるので、読み方、意味、使い方を学ぶのには最適な教材である。記事がワールドカップの内容だったので、対戦相手の名前や試合結果なども、上手に記事の中から読み取ることができた。ふりがながあっても内容を理解することが難しい生徒もいるが、新聞にはきれいで美しく正しい日本語が書かれており、自分たちの身を守る正しい情報がそこにあるということに気付いてくれることを目指している。

 <番外編>当日は授業をしていませんが、廊下に英字の壁新聞を展示していましたので、製作時の授業の感想を書いてもらいました。

【宇都宮マツヨ先生】
 ・使用教材 Japan Times (英字新聞)
 ・英語B ネパール 男性3人 女性4人 
 ・英字新聞を読んで、①自分の好きな記事を読み、②クラスメートの前で発表、③自分が選んだ新聞の記事の要約と自分の考えを書く、④手作り新聞を作る、を目標に授業を行った。英字新聞を読む機会が、今までなかったので、読むことがとても新鮮で、生徒たちは、とても楽しんでいた。また、新聞の記事の内容に刺激を受け、他の友人がどんな内容に興味を持っているか理解することができた。課題としては、英語のライティングスキルをより向上させ、できるだけ文法の間違いをなくすように、日々、英字新聞を読むことに慣れ親しむことを目指している。

 赤松三菜子・神戸市立高倉中学校長
 さまざまな国籍や年齢層の人たちが共に助け合って学んでいる西野分校では、どの授業においても、主体的に学びに向かう姿が印象的でした。
 新聞を活用した授業では、ルビ振り等の丁寧な教材準備と、生徒の反応を生かす教員の適切な声掛けにより、生徒と先生が一体となって対話的な学びが展開されていました。サッカーW杯や子供の貧困など幅広い内容の新聞記事を教材とすることで、生徒が日本語能力だけでなく、それぞれの人生経験から、その意味を理解していく場面もあり、新聞の大きな力を感じました。意見交換会では、授業者より本時のねらいやNIE実践への具体的取組についてうかがい、参加者と活発な情報交換をすることができ、有意義な時間となりました。
 NIE実践校として、創意工夫を凝らし新聞を活用した教育活動を推進することは、夜間中学校で学ぶ生徒たちの思考力を高め、主体的で対話的な深い学びを実現することにつながることでしょう。学びへの力、新聞の力が大いに感じられる実践をありがとうございました。

 河辺 有希生・兵庫県立西宮高校キャリア教育推進部教諭
 11月30日の授業に、27日の新聞が使われ、教材化されていること、各授業のキーワードが日本語教育や生活にしっかりつながっていくのにまず驚きました。
 日本語教育の専門家でない先生方が、学校全体体として研修・学びをし、それぞれの学年(日本語能力)にあわせてつけさせたい力を考え、きめ細く授業を展開されていることを感じました。
 また、今、生徒の皆さんが必要としている興味・内容・知りたい事を新聞のなかにみつける授業に、「学び」の姿を感じました。
 ありがとうございました。

 河辺 桂子・兵庫県立西宮今津高校教諭
 生徒のみなさんの学ぶ意欲と、どこまでもそれに応えようとなさる先生方の姿勢に強く感動しました。
 最新の新聞記事を使った授業が展開されていること、特に日本社会で生きていくために知っておくべきことを取り上げ、オリジナル教材を作って活用されていることに驚きました。
 また、授業のために日本語教育の研修を積まれているとお伺いし、私も頑張ろうと思いました。
 学習の成果が発表される機会には、また授業を参観させていただければ有難く存じます。
 事務局のみなさま、先生方、ありがとうございました。

 米田 俊彦・愛徳学園中高校教諭
 夜間中学と聞き(どなたかも授業後の会で同様のことをおっしゃっておられましたが、私も)遠い昔、夜間の高校で初めて教職に就いたときのことを思い出しながら参加しました。その時は全力で生徒一人ひとりと向き合い、かかわっていたと思っておりましたが、公開授業でお見せくださった先生方の授業を拝見し、本当はここまでできたのではないか、こんなやり方もあったのではないかとあの頃の自分の未熟さ、痛さを改めて思い知らされました。授業の途中、不意に、当時の生徒への至らなさと申し訳なで涙が出ました。びっくりしました。
 現在の毎日の授業では1時間の中で、一人一人の生徒と向き合い、「たくさん」教材を読み、深く「考える」、より「はやく」生徒同士で意見や考えを交流し、さらには生徒と教師、生徒と社会とを「つなぐ」ことや様々なかたちに「のこす」ことで授業を構成していますが、今日の授業ではその中の、深く「考える」、学びを「のこす」、人と人を「つなぐ」場面やかかわりが強く印象に残っています。「ひとつひとつ」の言葉や出来事を「じっくり」と確かめつつ、生徒の言葉や思いを紡いでいかれた授業を拝見して心の深いところが温かく、そしてきゅんとなりました。私にとって大切な「授業」となりました。
 ついつい、新聞の即時性や一覧性という「はやく」、「たくさん」の視点で新聞を使いがちですが、新聞の信頼性と表現の規範性、さらにはルビも振ってあるという優しさや懐の深さに触れることができました。夜間中学という学びの場と新聞との親和性の高さと、今だから使える「ICT機器」の可能性をも感じた充実した時間でした。
 深い気づきと学びの多い公開授業を本当にありがとうございました。

 福田 浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭
 小学生新聞は文字も大きく漢字にルビが振ってあるため、母語が日本語でない生徒対して効果的な活用が期待できると考えていたが、その実践例から自身の想像以上の効果が得られていると感じた。理解が困難な語彙や難しい漢字も使われていないため、生徒の日本語学習にも適し、加えて日本における時事問題にも興味関心を高めることが期待できると感じた。これから日本が向かえる多文化共生の世界の実現に向け、小学生新聞のような教材活用は必須であると考える。ただ一つ難点を言えば、小学生新聞を活用する母語が日本語でない方々は年齢も様々であるため、『やさしい新聞』など今後名称が検討されればよいのかと感じた。
 夜間中学校の生徒は様々なルーツをもつ生徒がいるため、主義主張や考えが日本とは異なる場合も想定されるので、生徒から新聞の記述内容に対する質問を受けたときは、その返答に細心の注意を払ったつもりである。言葉の問題だけでなく、主義主張の違いも多文化共生社会における注意点であると身をもって体感することができた。

 近藤 隆郎・日本新聞協会NIEアドバイザー
 県下でも数少ない夜間中学校の授業は、多くの人が家路を急ぐ時刻に始まった。
 年齢も国籍も様々で、仕事帰りの生徒も少なくないようだ。
 熱いまなざしを向ける生徒に優しいまなざしで応える先生。
 それを、入学からの折々の場面を捉えた写真が、教室の壁から温かく見守っている。
 おかげで、この秋一番の冷え込みだったことをしばし忘れさせてもらえた。

 NIEの公開授業が行われた国語、日本語、社会では、いずれも工夫を凝らして新聞が利用されていた。
 なかでも、日本語以外を母国語とする生徒に対して小学生新聞を用いることの有用性には、大いに首肯させられた。
 国内外で起きていることをこどもたちに正確にわかりやすく、また正しい表現で伝えることを使命とするこども新聞の力が存分に発揮されていたからである。
 ワールドカップの記事から数字や数詞を抜き出したり、政府が発表した経済政策に関する記事から聞き取ったことを文字に起こしたり、各自が選んだ記事について自身の意見を添えて発表したり、といったものにどれもみな生き生きと取り組んでいた。
 また、ルビが振られていることや、写真やイラストがふんだんに使われていることが、語彙や知識を増やしたり関心を高めるのに大いに役立っていることも見てとれた。
 こうした実践を通して日本語が上達し日本のことをよりよく知るようになった生徒は、日本の社会や人に対してこれまで以上に親近感を持つようになってくれるだろうし、同時に、日本の側からもより身近で大切な存在として受け入れられるようになるのではないだろうか。
 これからも是非地道な取り組みを続けていただきたい。
 教育や紙面の果たす力について思いを新たにする機会をいただけたことに感謝している。

                      ◆

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ほかの方々の感想

 教育現場での新聞活用を探る「第10回近畿NIEフォーラム」(日本新聞協会、近畿2府4県のNIE推進協議会主催)が8月18日にオンラインで開かれ、各地から教員ら65人が参加した。

 ワークショップは、有馬進一さん(元公立中学校総括教諭、日本NIE学会理事)を講師に「新聞でSDGsの授業をデザインする」を行った。220818arimasdgs.PNG

 有馬さんは、未来のあるべき姿から今の自分の行動を問うSDGsの思考と、多様なジャンルの最新情報から課題を知る新聞の力を掛け合わせることで、「持続可能な社会の創り手」(学習指導要領)を育むことにつながると強調。参加者は朝日新聞社の「ペタッとSDGs新聞学習ふせん」やワークシートを使い、同じ新聞紙面を基に、記事内容と17の目標との関連を考えた。オンラインのチャット機能を使い、気付きや感想を伝え合って交流した。

 兵庫県からの実践発表では、養父市立宿南小学校の栄羽麻里教諭らが、神戸、但馬、淡路の小規模小学校4校による新聞の合同製作について発表。栄羽教諭は「小規模校でもオンラインを使えば、児童たちは他校とつながり、見聞を広められる」と話した。220818syukunakisyou.jpg

 和歌山県立熊野高校の「Kumanoサポーターズリーダー部」の生徒たちは、地方紙と連携し、自動体外式除細動器(AED)の普及を図る取り組みを紹介した。220818kumanokoukou.PNG

[写真㊨㊤]ワークショップ「新聞でSDGsの授業をデザインする」=Zoom画面から[写真㊧㊤]小規模校による新聞の合同製作について、オンラインで発表する兵庫県養父市立宿南小の栄羽麻里教諭[写真㊨]地方紙と連携した和歌山県立熊野高校の取り組み=Zoom画面から

石﨑 立矢(京都府NIE推進協議会事務局長)、三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2022年9月18日)

※日本新聞協会NIEサイトには、同協会NIEアドバイザーの近藤隆郎・神戸山手女子中学高校元教諭のリポートが掲載されています。リポートはこちら

 

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第27回NIE全国大会のパネル討議=8月4日、宮崎市

 教育現場で新聞を活用するNIEの第27回全国大会(日本新聞協会主催)が8月4、5日、宮崎市で開かれた。「いまを開き 未来を拓(ひら)く NIE」を大会スローガンに3年ぶりの対面開催となり、全国から教員や新聞・通信社の関係者ら約1100人が参加。パネル討議や公開授業、実践発表を通じ、新聞と教育の可能性を探った。
 兵庫県NIE推進協議会からは3人が参加した。聴講した公開授業と実践発表について報告する。

 ▼宮崎市立生目台西小学校 野菜を通じて地域を知る
 宮崎市立生目台(いきめだい)西小学校の4年生20人は、郡司美和子指導教諭による社会科の公開授業で、宮崎県延岡市で生産されるブランドタマネギ「空飛ぶ新玉ネギ」の新聞記事を読み、ブランド名の由来や生産者の思いとともに、地域史や地元特産物について学びを深めた。
 「空飛ぶ―」は、JA延岡玉ネギ部会の生産者が手がける極早生(わせ)のタマネギ。名前から受けるイメージに反して、大半を陸送で出荷しているという。
 児童らは命名の由来について、延岡市出身で日本初の民間パイロットとなった後藤勇吉が県産野菜を大阪に飛行機で運んだ逸話が基になったことや、「消費者に早く新鮮野菜を届けたい」という生産者の願いがこもっていることを知った。
 郡司教諭は、マンゴーやピーマン、キュウリ、卵など、県内のさまざまな特産品について、今後も学習していこうと呼びかけた。
 学びの振り返りでは、郡司教諭が「宮崎県のことを知らない子どもは意外と多い。新聞記事を基にさまざまな問いかけをすることで、子どもの興味関心を引き出そうとした。今後も、特産品の学習を通して、地域への理解を深めていきたい」と話した。

[写真説明] 地域の特産物について意見を発表し合う児童ら=5日、宮崎公立大学

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 ▼県立宮崎西高校・付属中学校 新聞購読者を増やすには
 実践発表の中で、中高生による「令和の新聞購読率低下を救え!」をテーマにしたパブリック・ディベートが注目を集めた。新聞業界の喫緊の課題でもあり、NIE全国大会にふさわしい取り組みとなった。
 登壇したのは、宮崎県立宮崎西高校付属中学校3年の2チームと宮崎西高校2年の1チーム(計13人)。各チームが「未成年の私たちからの提案」としてアイデアを披露した。
 中学生は、清涼飲食水の自販機のそばや駅、空港などへの「新聞自販機」設置をはじめ、若者向けの連載小説や広告の掲載、新聞スクラップ大会開催などの案を発表した。高校生は、割安な定額制で複数社の電子新聞や新聞を読み比べできる「新聞バイキング」を提案。生徒たちは他チームや会場からの質問を受けて再提案も行った。
 参加者による投票で、高校生チームが優勝した。発表者の一人、亀岡千愛(ちさと)さんは「サブスクになじみのあるネット世代の若者に新聞を読んでもらう仕組みを考えた。新聞について、若者と新聞社の人たちが意見交換する場もあればいいと思う」と話した。

[写真説明]「新聞バイキング」を提案した高校生チーム=5日、宮崎公立大学

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 2022年度のNIE兵庫セミナーが神戸市内で開かれた。県内の小中高校、大学の教員ら約50人が参加。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など「有事」をテーマにしたNIE展開について考えた。意見交換会では、教員らが学校での新聞活用の事例を紹介し合った。

 県NIE推進協議会が主催。記者授業では、神戸新聞の徳永恭子編集局次長が「コロナ報道では『二つの目線』が求められた」と説明した。

 世界全体の状況を伝える「鳥の目」と、各市町の現状を詳報する「虫の目」、死亡率などデータを分析する「クールな目線」と、居酒屋店主など個々の窮状を伝える「ホットな目線」、「公」の目線と「私」の目線―が必要で、「さらにウィズコロナ時代の新たな目線として、価値観が劇的に変わるパラダイムシフトを意識することが大切」と述べた。

 西宮市立浜脇中学校の西村哲教諭はウクライナ侵攻を学ぶ授業を紹介した。現在進行形の有事をどう伝えるか模索する中で、「生徒たちは報道に基づいて今後のシナリオを考えたり、当事者にメッセージを書いたりした」と話した。この日は、同校3年生10人が特別参加した。

 同協議会事務局によるワークショップもあり、参加者が、朝刊からウクライナ侵攻の関連記事を探したり、「戦争終結に向け、私たちにできること」を考えたりした。さらに事務局では昭和初期、神戸がウクライナ人を受け入れた事例として、ロシア革命で亡命した指揮者メッテルが住んだ「深江文化村」=神戸市東灘区深江南町=についても解説した。

 教員らによる意見交換会では、小学校から4コマ漫画で起承転結を学ぶ、中学校から夜間中学でのNIE展開、高校から学年に応じた探究学習とNIEの取り組み―などが紹介された。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2022年7月12日)

[写真㊤]「コロナ報道では『二つの目線』が求められた」と話す、神戸新聞の徳永恭子編集局次長=いずれも神戸市中央区東川崎町1、神戸新聞社 [写真㊨㊦]学校でのNIEの取り組みについて意見交換する教員ら

ウクライナ侵攻をテーマにしたNIE授業で気に留めておきたいこと(作成・兵庫県NIE推進協議会事務局)=配布資料からの抜粋                                

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※参加者の感想はこちら  西宮市立浜脇中学校の生徒のみなさんの感想は「わたしの感想NIE」に掲載しています。感想はこちら

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 7月9日・神戸新聞本社で開催、参加者52人  

    【参加者の感想】

    米田 俊彦・愛徳学園中高校教諭

 コロナ、ウクライナの中、「『探究』...NIEで有事の背景を考える」をテーマに3年ぶりに対面で行われるNIE兵庫セミナーでしたが、奈良での元総理の銃撃の翌日でもあり、戸惑いと緊張感のある始まりだったように思います。

 秋田会長がご挨拶でおっしゃった「デジャブのような、近代史のどこかのページに迷い込んだような現実だが、今が永遠ではなく、よりよい次の『今』をつくるために、知る、考える、表現する力を、対話する粘り強さを育てるためにNIEも役に立ちたい」という言葉が強く印象に残り、勇気が出ました。

 続く神戸新聞・徳永編集局次長の「コロナ下での新聞報道で問われたもの」では、さまざまな視点と目線、さらに「パラダイムシフト」についてこれまでの新聞記事を使いながら述べられ、日頃の紙面に込められた想いや情熱がよくわかり、新聞の温もりや鼓動をに如実に感じる思いがしました。

 また、ワークショップ「授業:ウクライナ問題の淵源とこれから」では、三好事務局長による、ウクライナに関する世界の情勢や歴史を縦糸に、新聞の特長を横糸に織り込まれた「授業」から新聞の可能性を実感でき、これからの授業でぜひやってみたいと思いました。

 さらに浜脇中学校の西村哲先生のご実践と生徒の皆さんの応答に「これからのよりよい今を作っていくための」具体的な在り方とその成果に大きな希望を見た思いがしました。

 「ペンは剣よりも強し」という言葉は知ってはいますが、発表された皆様と参加者の方々からもお話を伺うことでペンの本当の力を感じることができ、忘れられないセミナーになりました。この学びをこれからの授業に生かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。

 松本 神奈・兵庫県立須磨友が丘高校教諭

 私事だが4月より須磨友が丘高校に転勤となった。普通科から初めて総合学科に転勤になり、2年生の課題研究を1チーム受け持つことになった。ジャンルは情報と科学だが、生徒諸君はそのジャンルにとどまらない多様なテーマに興味を抱いている。ゼミを担当する中で難しいと感じるところがたくさんあるので、このセミナーで何かヒントを持って帰ろうと思って初めて参加した。

 結論としては、私が思っていた以上に、新聞を用いた課題研究、他校の課題研究の事例を通してたくさんのヒントやお土産を持ち帰ることができたと感じている。セミナーを運営してくださった方々や講師の方々に多大な感謝を伝えたい。

 本年度、わが校はNIE実践指定校に選ばれたが、記者による出前授業があったり、新聞5紙が送られてきて、総合的な探究の時間に活用することしか知らなかった。今回、セミナーに参加し、新聞5紙の活用の仕方、課題研究への取り組み、新聞と生徒の橋渡し、授業へのアプローチの仕方が、広く分かった。

 さらに講演やワークショップの中では、新聞社がこの有事の中、どんな視点を持ってどんな使命を持って報道しているのか、その有事について新聞を用いてどう授業で生徒たちにアプローチするのか、見せてもらう機会を得た。西宮市立浜脇中学校3年生の生徒諸君には、西村先生の授業を通じて、ウクライナの有事について主体的に情報を見ている姿を実際に見せてくれたことに、感謝したい。

 具体的に得られたヒントは、まず、新聞は端から端まで読めなければならないのではなく、見出しをざっと読んでいく、ということだ。見出しを読めば、何について伝えようとしているのか分かるように作ってあるということである。これならば、「新聞ってテレビ欄が付いているのですね。初めて知りました」って言ってしまうくらい新聞と縁のない生徒にも、新聞を手に取ることができる。課題研究にも、人権教育にも応用ができる。

 新便記事で気になる記事をNIE担当教員や図書委員などが選び、図書室の前に貼り出す。さらに、記事について図書委員の感想も付ける。「新聞にこんなことも書かれているんだ」と、生徒と新聞の橋渡しができる。

 さらに、「新聞を分かりやすい日本語で書き起こしてみよう」という取り組みも面白い。新聞から自分で選んだ記事を使って再編成し、人に伝える学びは、課題研究にも活用できると考える。

 今回のテーマは「NIEで有事の背景を考える」である。くしくも前日に日本でも大きな有事が起こった。不安の中、有事や新聞をどう子どもたちに伝えていくか、改めて考えながら学んでいくセミナーになった。3年目になるコロナをはじめ、この地球上で起こる戦争、テロ行為--有事続きである。未来を担う子どもたちにわれわれができることを、改めて今問われていると感じた。

                                                              ◆

 たくさんの感想をいただき、ありがとうございます。ほかの方々の感想はこちらからご覧ください。

  参加者の感想

 兵庫県NIE推進協議会は2月5日、神戸市内で開催予定だった「2021年度兵庫県NIE実践発表会」を、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴って中止しました。発表会で予定されたNIE実践指定校2校の実践報告について、概要版をで動画で配信しています。

新聞から広がる世界 ~これ、みつけたよ!おもしろいね~

伊丹市立天神川小学校 渡邊奈美教諭

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https://youtu.be/0tpDatpB2Og

上記URLを範囲指定して右クリックから開いてください。

新聞をより身近なものに~情報科と探究学習の取り組みを通して~

蒼開中学校・高等学校 奥村智紀教諭

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https://youtu.be/G1d8xz4zg9U

上記URLを範囲指定して右クリックから開いてください。

 ※12月17日の公開授業(発表)で事例発表した西宮市立浜脇中学校の渋谷仁崇教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

                           渋谷仁崇・西宮市立浜脇中学校教諭 

NIEノートについて

 NIEノートは、生徒各自が興味を持って選んだ新聞記事を貼り付け、「感想」を書き込むノートです。政治、経済、スポーツ、科学、宇宙、環境など,取り上げる分野は自由です。

 生徒たちは記事を毎週一つ選んでノートにまとめ、社会科の授業の冒頭に電子黒板上でプレゼンテーションします。また、お互いに発表 内容をメモにとります。令和2(2020)年度末に1人1台ずつ配布されたタブレットパソコンを活用する生徒も増えてきました。課題は週に記事一つを原則としていますが、自ら進んでたくさんの記事を調べたり、記事から発展させてより深く内容を掘り下げたりする生徒も増えています。毎回、個性的な記事や世界の動きについての記事などを発表しています。

ねらい

 社会の動きに対する興味関心をさらに高め、世界に目を向け,社会的な思考力を持って、自分の意見やアイデアを表現できる人物の育成を目指しています。

まとめ・今後の展望

 成果として、全国学力調査では「新聞を読む」と回答した生徒が全国平均を超えました。また、日本新聞協会主催の「いっしょに読もう!新聞コンクール」で学校奨励賞を受賞し、個人賞も受賞する生徒もいました。全校生で参加するなど、保護者、地域とも協力をしています。保護者からも「家庭内でニュースに関する会話が増えました」「今まで新聞をとっていなかったけれど、とるようになりました」などの声も聞いています。道徳や国語、家庭科など,教科をまたいで活動にも力を入れています。また生徒たちの書いた「社会に対する意見や感想」が神戸新聞に掲載されました。トライやる事業での兵庫県NIE推進協議会の講座により、生徒自身が取材し、記事を考え、新聞作りを体験しました。また、2025年の大阪・関西万博に向けて「SDGs」をテーマにジュニアEXPOに参加し、企業の考えを聞き、生徒との意見交換も行いました。

 今後も、多面的・多角的に物事を判断できる生徒を育成する環境をつくっていきたいと思います。生徒一人一人が社会全体や世界の動きに対し、興味や関心を高め、主体的に考える力を身につける取り組みとして、NIEノートを続けていきたいと考えています。

 西上三鶴・兵庫県教育長

 生徒が生き生きとしている授業の雰囲気が素晴らしい。お聞きすると、生徒が関心をもっていることをつかんで授業を進めるためのキーワードは、「NIEノート」にあるとのこと。

 生徒にとっては、自分が関心する記事を集め、意見を考え、そしてまとめる力を育成することにつながる。

 一方、先生にとっては、授業のはじめに生徒のノートを確認することで、生徒の関心がどこにあるかを探っているとのこと。でも、即座に、授業をどう進めるかを判断する能力があってのことではあるが。

 こうした取り組みは、生徒だけでなく先生にとってもNIE活動ならではの成果なのかもしれない。

 新聞づくりも、これから必要な能力。今や高校生にも、ポスターセッションやプレゼンの機会が増えた。きっと役立つ。

 また、ICTは、新聞をとっていない家庭での学びを補ってくれる。新聞づくりにも。

 これからは、NIE活動もICTを効果的に組み合わせることが重要である。

 あらためてNIE活動の広がりを感じた授業でした。

   愛徳学園中・高校 米田俊彦教諭

 発表では「NIEノート」の楽しさを知り、ノートが十数冊に及ぶ生徒もいるとお聞きしました。生徒の達成感やさらに知りたいという意欲を高める日ごろの取り組みが大きな効果を上げていることに感服し、一人ひとりの生徒との関わりの大切さを痛感しました。

 生徒のアンケートからは「新聞を毎日読む」「週に2、3回読む」と答えた割合に、「月に2、3回読む」まで加えると「新聞を読む生徒」の割合は全国平均の2.3倍に上り、感動を覚えました。

 さらに自宅で読んだ新聞を学校に持ち寄り、読みたい生徒が自由に持ち帰れる仕組みは新鮮で、購読率が低下する中、より多くの生徒が新聞に親しむことにつながっていて、大きな可能性を感じました。

 大変有意義な時間でした。こうした取り組みを継続し、高校での学びにどう生かすか、高校から新聞を読み始める生徒をどう増やすか、授業での関わりや学校の仕組みづくりが必要だと感じました。

 また、コロナ下の対応として、例年の公開授業と違って、全体の説明をした後、授業や活動の様子を長めの動画で見せるのも、取り組みや授業の意図がよくわかる手法だったのではないかと思います。

 明石市立高丘中学校 池田 靖教頭

 公開授業に参加させていただき、新聞活用に対する、同じような思いの方々や実践されている先生方に出会うことができました。新聞の設置方法や校内の組織について、同じ教科の先生方との連携など細かなところまで教えていただきました。本当にお世話になり、ありがとうございました。

 芦屋市立潮見中学校 松下優子教諭

 インターネットによる情報が生徒の中に大きく入り込んでいる現在、新聞に親しませるには授業で扱うことが最も近道だと思います。そのための特別な時間を作るよりも、生徒にとっての「日常」に組み入れてしまうことが一番だと、あらためて実感しました。

 「NIEノート」は私の担当する国語科としても取り入れてみたい取り組みです。確実な情報を手に入れる手段として、また、確かな文章を読むことで考えを広めたり深めたりする手段として、少しでも新聞に触れる時間を持たせたいと思っています。

   宮崎県キャリア教育支援センター 水永正憲トータルコーディネーター

   浜脇中学校のNIE活動は、生徒たちの「主体性」を引き出す素晴らしい取り組みだと感じました。「NIEノート」という手法が学校内で定着している様子もよく分かりました。先生や親に与えられた情報ではなく、自分で新聞などのメディアから情報を選んでいくことを積み重ねることで「主体性」が生まれるに違いないと思います。浜脇中学校の生徒たちは、このような実践を体験しつづけることで、将来社会に出て主権者になった時に、民主主義の要である「投票する」ことにも積極的になれるのではないかと感じました。

 トライやる事業と重ねて、新聞づくりをされていますが、コロナ禍で職場体験が中止になる中で、新しい取り組みだと思いました。ぜひとも宮崎でも実践してみたいと思います。また、兵庫県NIE推進協議会との連携も緊密で、実践的な学びが実現できていることにも感銘を受けました。

      

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環で、日常の学校生活に取り入れている「NIEノート」の事例発表会が12月17日、神戸市内であった。西宮市立浜脇中学校の渋谷仁崇教諭(42)が、社会への関心を高めるため新聞記事のスクラップを続け、意見発表することの有効性を語った。

 県NIE推進協議会が企画。発表会は、コロナ対策として、例年の公開授業の代わりに、事前収録した授業風景の動画も流す発表スタイルにした。

 NIEノートは、生徒各自が選んだ新聞記事を貼り付け、感想を書き込むノート。生徒たちは毎週、記事を一つ選んでノートにまとめ、社会科の授業の冒頭に電子黒板上でプレゼンテーションしている。

 生徒が選ぶ記事の傾向として、渋谷教諭は「3年生になると、自らの実生活や関心事について多様な発表がみられ、記事の読み比べやニュースの追跡も増える」と説明。「NIEノートの取り組みから新聞を読む習慣が育まれている」とした。

 11月、音楽家やユーチューバーら各分野の講師が行った授業を、生徒たちが取材し新聞製作した取り組みなども紹介された。

 発表会はビデオ会議アプリも併用し、県内外から教育関係者約40人が参加した。姫路市立白鷺小中学校の山口偉一校長(61)は「関心のある記事を自ら選び、意見交換することで主体的・対話的な学びが生まれる。よい実践だと思った」と話していた。(三好正文)=18日付神戸新聞朝刊阪神版

[写真説明]NIEノート活用の実例を発表する浜脇中学校の渋谷仁崇教諭=神戸市中央区東川崎町1、神戸新聞社報道展示室(撮影・金居光由)

 ※11月26日の公開授業(発表)で事例発表した神戸高塚高校の伊東琢麿教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

                           伊東琢麿・兵庫県立神戸高塚高等学校教諭

◇ねらい

 本校では3年間の探究プログラムを設定し、内容知(世界・日本・地域社会の現状、SDGsの視点)と方法知(探究プロセス、コミュニケーション力、言語運用能力、情報リテラシー)の習得、及び、これからの社会生活でも求められる「情報収集力・分析力」「課題発見力」「情報整理力・まとめる力」「発表する力」の育成を目指しています。

◇感想

 NIEの活動は、世界にあふれる、さまざまな出来事へのアプローチとして最適だと考えています。複数の新聞から得られる、さまざまな分野の情報は、生徒の興味・関心を引き、「答えのない問い」へ挑戦する第一歩になっています。今後ますますDXが社会的に進んでいきますが、机上でさまざまな情報に一度にアクセスできるメリットは大きいと感じています。引き続き複数の新聞を探究活動に利用できればいいと考えています。

◇今後の展望

 本年度で3年のプログラムをすべて実践できました。3年生の生徒のアンケートには、「社会への関心を持つようになった」「今後の社会生活で役に立つ知識や技術が身についた」「大学で学びたい内容が見つけられた」等の意見が見られました。今後も引き続き、生徒の興味・関心・進路に応じた分野について、生徒自身が役に立つと思える活動を展開できるようにプログラムを改善していきます。

   また、本校の探究活動の趣旨に賛同し、ともに歩んでくださる人と協働して本校の探究プログラムを推進していきます。

鳴門教育大学大学院学校教育研究科(教職大学院)井上 奈穂さん

 他県のNIEの取り組みに興味を持ち、参加させていただいた。初参加だったが、大きな刺激を受けた。伊東先生のご提案された高校の「総合的な探究の時間」の実践は大変興味深かった。

 本実践では、3年間の学習の見通しを持った段階的な「課題発見・課題解決能力の育成」を目指していた。第1学年では、探究の基礎を身につけるためのグループ学習、第2学年以降は、個人での探究を深める時間が設定され、ルーブリックを通して生徒と教員が「学習のイメージ」を共有し、生徒相互の意見交換等を通し具体化していくことが計画の中に緩やかに組み込まれ、カリキュラムマネジメントの面からみても非常に優れていると感じた。

 探究のプロセスだけでなく、新聞6紙を「探究」のための共通教材として位置づけ、探究の内容の質も保障していた。新聞というメディアの特徴の一つに「情報の一覧性」がある。毎日、情報が更新される新聞が教室の中にあり、それを全員が読み、アクセスできる環境をつくることで、自身の知らなかった新たな情報を得ることができ、自身の新たな興味関心に気づくこともできる。

 今の社会はこれまで以上に情報に囲まれている。何か知りたければ、ネットで検索すればすぐに分かる。一方、自身が興味関心がない情報はアクセスすらできず「タコつぼ化」している。そのような現状を踏まえれば、玉石混淆(こんこう)の情報があふれる社会に踏み込む前に、「新聞」というメディアを使用し、自身の興味関心を広げ、情報活用の能力を鍛える機会を持つことは非常に有意義なのではないだろうか。2023年度から高校では新しい学習指導要領が始まり、「探究」はひとつの目玉となっている。この「探究」に新聞は大いに役立つのではないか。ぜひ、徳島でも本実践を紹介し、よりよい実践につなげていきたい。

岩橋 達彦・兵庫県立尼崎北高校教諭 

 圧倒的な情報量に「圧倒」されました。同じ1年生のはずなのに、発表の質が違えば量も違うことに、驚きを隠せませんでした。

 生徒たちが、継続的に新聞を読み続けていることによって、情報のデータべースができあがっていたから、あのような発表ができたのだと思います。

 しかも、指導教員があの発表に不十分な点を指摘したことにも驚きました。私からすれば、十分な発表だったと思います。しかし伊東先生の改善を促す姿勢に、より深い学びへ誘う熱意を感じました。

 あの学びを継続的に取り組めば、多様な視点を手に入れることができると思います。3年次では小論文や面接などできっと役に立つことでしょう。普段は校務に忙殺されていますが、何らかの形で取り入れたいです。

 毎度、NIEの発表には驚きと発見があります。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

瀧口 梓・兵庫県立尼崎高校教諭、日本新聞協会NIEアドバイザー

 発表を聞いて、まず初めの感想は私にはできそうにないなと思うくらい壮大な実践だと思いました。

 しかし、実践の方法や困難だった点などを丁寧にお話してくださったおかげで、今から高校で本格的に始まっていく探究活動をどのように進めていくかビジョンが見えてきました。そして、探求活動を行うための情報のインプットのために新聞が最適だということも再認識することができました。

 探究活動とはさまざまな科目で身につける知識や能力を使い、中等教育と高等教育の橋渡しになる重要な活動だと認識できる発表でした。

 ただ、高校で全員が探究活動するには教師の人数が本当に少なすぎると感じました。伊東先生はご自身が大学でやっているようなことを探求活動でしているとおっしゃっていましたが、大学ではゼミに入って多くても10人に1人ほどの割合で指導教諭が付くと思います。それを高校の探求では40人に1人。その人手のなさの中で、どれほど達成感のある活動にしていくのか、それが課題だと感じました。

本岡 諒也・神港学園高校教諭

 初めてNIEに触れました。教員2年目で、恥ずかしながらNIEについてまったく知識がなく、言葉すら知らないような状況でした。新聞の購読が減ってきている中、現在の高校生も新聞に触れ合う機会がほとんどないと思います。

 そのような社会状況下、社会科としても、現在起きている政治問題や経済問題、社会情勢について考えるための基礎的な知識、さらに考える力を身に付けさせる素材のひとつとして、新聞活用は非常に大切だと感じました。政治離れが深刻な中、現代を生き抜く力を育成するためにも新聞は好材料です。

 ただし、われわれ素材を扱う側の入念な準備が必要だということも考えました。計画から実行、素材の吟味や評価など、まだまだ無知なところも多いので、今後も新聞に触れつつ、こうした発表会に足を運べたらと思います。

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環で、新聞記事を探究活動に生かした事例を報告する催しが11 月26日、神戸新聞社報道展示室(神戸市中央区東川崎町1)であった。神戸高塚高校の伊東琢麿教諭(49)が事前に収録した授業風景の動画を流しながら活用方法を共有した。

 県NIE推進協議会の主催。ビデオ会議アプリも併用し、県内外の教育関係者ら約40人が出席した。伊東教諭は発表で、探究活動のテーマを選ぶ際に、日刊6紙の読み比べから始めたことを紹介した。

 記事をテーマ別に分類させたり、情報を集めさせたりする中で「複数の情報ソースに当たって事実確認し、事実と意見を区別することに重点を置いた」と説明。「興味のないことでも見出しで目を引かれ、読み始める。情報の入り口として、新聞の意味は大きい」と結んだ。

 発表を聞いた加古川東高校の志摩直樹校長(58)は「今の子どもたちはスマートフォンを自由自在に扱うが、興味のあることしか検索していないと感じていた。興味と関心の幅を広げるのに、新聞は良い媒体だと思った」と話していた。(大橋凜太郎)=27日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]授業風景の動画を流しながら新聞の活用方法を発表する神戸高塚高校の伊東琢麿教諭=神戸市中央区東川崎町1

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  第26回NIE全国大会のパネルディスカッション=8月16日、札幌市(北海道新聞社提供)

    教育現場で新聞を活用するNIEの第26回全国大会(日本新聞協会主催)が8月16日、札幌市で開かれた。スローガンは「新しい学びを創るNIE~家庭・教室・地域をむすぶ」。新型コロナウイルス対策で、昨年の東京に続くオンライン開催となり、基調講演やパネル討議、道内の教員らによる公開授業など分科会がライブやオンデマンドで配信された。

   当日は全国各地から教員やNIE関係者約千人(うち兵庫からは24人)が参加登録した。分科会は、アイヌ民族や道央の日本遺産「炭鉄港」といった北海道独自のテーマや、パラリンピック選手の生き方に学ぶ--など、時宜にかなった授業内容が目立った。 

 兵庫県NIE推進協議会事務局からは4人が視聴した。分科会の中から、心に残った公開授業と実践発表を報告する。

   ▼札幌市立栄南小学校 パラ選手の思いに触れて 

    札幌市立栄南小学校4年生は、上野裕子教諭による道徳科の公開授業で、東京パラリンピックのトライアスロン選手、谷真海(まみ)さんの生き方を通し、夢や目標をもつことや、周りの支えや励ましの大切さを学んだ=写真㊦は動画の一場面。
 上野教諭は、谷さんが大学時代に右脚に骨肉腫が見つかって切断、義足になって夢を失いかけたときに出合ったパラリンピックで活躍する話を紹介。「谷さんが手にした大切なものは何」と問い掛けると、児童たちは、あきらめない気持ちやスポーツが好きなこと、チャレンジする心などと答えた。
 続いて谷さんのインタビュー記事を読み、見出しの「信じてくれた」のは誰かを考えた。谷さんが頑張れたのは、谷さんを信じ「神様は乗り越えられない試練は与えないよ」と声を掛けた母親の存在だった。児童たちは、ほかにも谷さんを支えた人を考え、義肢装具士や医師、仲間やライバル、ファンを挙げた。
 学びのふりかえりでは、自分を応援したり支えたりしてくれる人も考え、両親や一緒に頑張る仲間が挙がったという。上野教諭は「本校はパラリンピックを広め応援する発表活動などに取り組んでいる。調べ学習の一つとして、新聞記事を扱い、選手の願いや思いに触れることで、児童の興味関心を引き出したい」と語った。

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    ▼日高町立門別中学校 アイヌ民族との共生とは

 先住民族アイヌとの共生や、アイヌが置かれてきた格差の問題を考えた実践発表が2件あった。その一つが、新ひだか町立三石中学校の川上知子教諭が「アイヌ文化学習とNIE」と題し、前任の日高町立門別中学校で行った取り組みだ。
 北海道の魅力を道外の人に伝えようと、同校2年生が、白老町にあるアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」での体験学習の成果を、それぞれ新聞にまとめた。
 北海道NIE推進協議会の上村尚生NIEコーディネーターが、記事の書き方や見出しの大切さなどを指導。完成したB4判の新聞は、ウポポイの役割や厳しい冬を生き抜くチセ(住居)の工夫、マダラや鹿肉の伝統料理などを紹介。紙面は、交流のある青森市内の中学生にもオンラインで見てもらった。
 3年生の授業では、14歳の少年の成長を通し、アイヌの人々の今を描いた映画「アイヌモシ●(小文字のリ)」(昨年公開)を取り上げた。生徒は、福永壮志監督のインタビュー記事を読み、印象に残った言葉に線を引くなどして監督の思いに触れた。
 川上教諭は「記事を効果的に活用することが、生徒たちの、アイヌ民族と共生するため自分ができることを考える姿勢につながった」と語った。

    上村尚生・北海道NIE推進協議会NIEコーディネーターの話 (「アイヌ文化学習とNIE」をテーマにした)門別中学校・北海道北見北斗高校の実践発表は、新聞を活用することで、アイヌ民族の歴史・文化に関する学びの視野を多角的に広げることができた実践といえます。小学校でのアイヌ民族の学習経験を生かした、体系的な学びへとつなげていけるのではないでしょうか。

  <兵庫からの参加者の感想>

  近藤隆郎・神戸山手女子中学高校教諭 元プロ野球選手、アスパラ農家、漁師といった多彩な面々が学校関係者とのあいだで繰り広げられたパネルディスカッションがおもしろかった。家庭や地域の生活のなかで子どもたちが新聞と〝自然に〟つながっていくことの大切さを再認識! 話の中で紹介されていた「伝える技術はこうみがけ!―読売KODOMO新聞・読売中高生新聞の現場から」(中央公論新社)には、NIEのみならず授業のヒントが満載で、皆さんにもオススメ。まだの方は、配信期間中にぜひ視聴を。

  井上佳尚・姫路市立豊富小中学校教諭 昨年度の東京大会に引き続き、オンラインでの全国大会参加となった。今回、特に興味を持った発表は、北海道という広域な土地が持つ地域の課題や良さを新聞から読み解くという真駒内中学校の取り組みと、アイヌといった固有の文化を新聞から学び、発表する門別中学校の取り組みだった。くしくも私たちが住まう兵庫県は五国と呼ばれるほど、その県域は多様であり、地域の課題や良さも多岐にわたっている。これら2校の取り組みから学んだことがたくさんあった。

 これらの発表や実践をもとに、わが兵庫県でも「多様性+一体感=新聞」を意識した実践を深めたいとあらためて感じるとともに、来年度は若山牧水の故郷、宮崎の地でさらなる研さんを深められることを願っている。

 米田俊彦・愛徳学園中・高校教諭 昨年に引き続いて参加しました。かつて住んだことのある北海道での全国大会で、ぜひ現地参加したいと願っていましたが、コロナ下でも関係者のご尽力によりオンラインで無事開催されたことに安堵しました。本当にありがとうございました。

  分科会がオンデマンド配信となり、日ごろなかなか参加できない他校種や他教科のものも聴くことができました。校種を縦断し、教科を横断することで視野を広げられ、大変刺激的で興味深く参加できました。特に、北見北斗高校の現代社会「アイヌ民族の格差問題」は格差についてあらためて考えさせれました。「金融学習とNIE」の故・中村哲先生の写真展をめぐる課題探究やクラウドファンディングには可能性を感じました。「学校図書館とNIE」は、各学校にある学校図書館が主体となって行うNIEの実践発表で、メディアセンターとしての図書館の可能性を感じることができ大変参考になりました。

  新聞の紙面は社会全体を写す鏡でもあり、その範囲は極めて多岐にわたっています。それぞれの詳細やデータを入手するにはネットやSNSも用いられますが、部分から全体を考え、時に俯瞰(ふかん)し、メタ認知レベルで物事を捉え、物事の意味を考えるには「紙の新聞」というメディアが果たす役割はますます重要になっていると感じました。北海道での学びを今後に活かしていければと強く思いました。

  中嶋 勝・尼崎市立南武庫之荘中学校教諭 1人1台タブレットが配布され、コロナ禍でリモート授業の必要性が高まり、授業でのICT活用の重要性はさらに増しています。特別分科会「GIGAスクール時代におけるNIEとICT」を拝聴させていただき、大変勉強になりました。放送大学・中川一史教授の、先進国の中で日本はICT利用が最下位で、ICTの能力を高めることは喫緊の課題とのお話と、横浜市立荏子田(えこだ)小学校・浦部文也教諭のタブレットを利用したNIEの取り組みを知り、あらためてICTに取り組まなければならないと感じました。さらに、ICTとアナログ双方の良さを有効に使う授業計画と十分な準備によって、生徒たちの学びが深まることを学ぶことができました。ありがとうございました。

    天野利佳・兵庫県立播磨特別支援学校教諭 北海道岩見沢高等養護学校の実践発表「特別支援学校におけるNIE」をお聴きし、共感することばかりでした。特に生徒たちが新聞に対し持っているイメージは、本校の生徒の話を聞いているようでした。取り組みもとても参考になりました。ありがとうございました。     

    福田浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭 初めて参加した全国大会は、コロナの影響でオンラインでの視聴となった。開催地の空気感を肌で感じられなかった反面、興味を持ったものをじっくりオンデマンドで堪能できた。新聞記事を授業に活用することもさることながら、私は「新聞の持つ表現力」を生徒が学びとることに主眼を置いており、その意味で「子ども新聞展示会」「高校生号外」にたいへん興味を持った。各地の子ども向け・中高生向け新聞の紹介を通し、「自ら必要な情報を新聞から拾う」ことの重要性を再認識した。関係機関には、全国で「小学生から本物の新聞に触れて学ぶ教育実践」が活発になるような環境整備を望むところである。

    三好正文・兵庫県NIE推進協議会事務局長 全国大会への参加は今年で5年目になる。毎回、先生たちのアイデアを凝らした授業に感心させられ、見よう見まねで兵庫のNIE活動に取り入れてきた。札幌大会では「アイヌ文化学習とNIE」をテーマにした2つの実践発表が興味深かった。ねらいが「アイヌとの共生やアイヌの経済格差問題を考える」と明確で、オンラインながら居住まいを正して視聴した。公開授業「パラリンピック選手の生き方に学ぶ」は早速、小学校教員向けのNIE研修で紹介させてもらっている。
 北の大地でNIEについて語り合うのを楽しみにしてきたが、コロナ下ではそうもいかない。今後、事態が収束に向かっても、それぞれ長所のある現地開催とオンライン開催を併用する流れは強まるだろう。「来年は宮崎に行きたいな」と思いながら、オンラインの新たな展開にも思いをめぐらせている。

 

6月23日・愛徳学園中高校と神戸山手女子中高校をオンラインでつないで開催、Zoom(ズーム)でも公開 参加者約90人(時事通信神戸総局・丸山実子総局長の記者授業は愛徳学園の高1~3年94人も聴講)

【発表者のコメント】
<記者授業>
 丸山 実子・時事通信神戸総局長
 「進路を考えるときの材料になれば」と、この職業に就いたきっかけが「漢字」であることや、海外特派員の経験をお話しさせていただいた。伝えたかったのは、▽さまざまな取材相手や異文化との出会いを通じ、自ずと視野が広がること▽多様性を知り、受け入れることの大切さ・難しさ―だったが、時間オーバー。話の前置きとして、通信社や記者の仕事について紹介したため、こうした思いを伝えきれず、お恥ずかしい限りだった。
 しかし、愛徳学園の生徒さんからいただいた感想には、「何がきっかけで自分に合う職業に出会えるか分からない。今の一つ一つの経験を大事にしよう」「現地に行かないと食い違いなど分からないことがあり、恐怖を感じたりするんだ。これをきっかけにニュースを見る機会を増やしたい」といった声。うれしく、ありがたく思った。

<タブレット体験ワーク>
    近藤 隆郎・神戸山手女子中学高校教諭
 香港紙・アップル・デイリーが、発行停止に追い込まれた。言論の自由を封じる暴挙に怒りが込み上げる。
 一方で、それが保障されているわが国で新聞離れが進んでいることに重大な危機感を覚えている。
 新聞、とりわけ紙の新聞は、知りたい情報をピンポイントで探すだけでなく、その一覧性により知らなかったこと、興味や関心すらなかったことと出合えることが最大の特長といえるだろう。学齢期の子どもたちにとって、それがいかに大きな意味を持つのかはあらためて論じるまでもないことだ。インターネット全盛の時代だからこそ、検索のための道具としてではなく、脳にシワ、心にヒダを刻むための手立てとして授業で紙面を活用する必要性はかえって高まっている。
 今回のセミナーでは、小学校から高校まで使えるワークシートと、それをICT機器で活用する方法についてご紹介した。
 NIEをICTで進めることに関心をお持ちの方に多少なりとも参考にしていただけたなら、幸甚至極である。

   廣畑 彰久・愛徳学園中・高校教諭
 対面とオンラインの両方を同時に対応するということで、行き届かない点があったかもしれません。
 特に、画面の向こう側の方のサポートが十分できなかったことが悔やまれます。
 しかし、今回のセミナーを通じて、少しでもシンキングツールの有用性、可能性、楽しさを感じてくださったら幸いです。
 今回はICT機器を用いましたが、模造紙などでも活用できますので、今後シンキングツールが広がり、さまざまな活用事例の探究や情報交換ができればうれしいです。     

   米田 俊彦・愛徳学園中・高校教諭
    これまで続けてきた新聞を使った授業を振り返り、「NIEにICTとシンキングツールを使った授業作り」として自分の体験から得たことについてまとめてみました。紙の新聞で授業を行う良さを踏まえつつも、デジタル化して新聞を扱うことで、一度に読み、考えることのできる記事が増えることや、自分の考えを共有しやすくなり、協働学習やプレゼンテーションがやりやすいことをお伝えしました。
     さらにシンキングツールを用いて一つの記事を他の記事と比較・分類し、意味を考え、自分の意見をつくっていくと、考えようとしている対象とその操作が、「見える化」で試行錯誤や共有がしやすく、視野を広げ、考えを深めるのに有効なのではないかと体験をもとにお話ししました。
     紙の新聞の持つ重さや手触り、においなどに加えて、多くの人が作り、届けているという実際に形のあるものとしての新聞の存在感を大切にしながら、双方の良いところを生かしつつ取り組んでいこうとあらためて思いました。

  【参加者の感想】

    中野 憲二・神港学園高校校長(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー)
 初めて参加させていただきました。
 今回のセミナーの案内をいただいたときには日程が重なり参加できないと思っていました。オンラインで両校をつないだ開催のおかげで、職場で拝聴するという形で参加することができました。事務局の皆様、両校の先生方に心から感謝いたします。
 時事通信社の丸山実子神戸総局長のご講演では、ご自身のキャリア形成にかかる選択の場面、記事の背景にある取材現場での戸惑いや機転の場面など、具体的な経験に基づいたキャリア教育の要素あふれるお話をお聞きすることができました。
 神戸山手女子中・高等学校の近藤先生、愛徳学園中・高等学校の廣畑先生、米田先生のワークショップは、GIGAスクール構想の流れの中で悩む先生方にとって時宜を得た、実に実践的な研修でした。参加された先生方はおそらく、学校に戻って実践してみようと思われた発表だったに違いありません。発表の中で「情報交換できれば」という言葉がありましたが、情報交換による共有化が広がることは、NIEが広がり、授業改善も進むことにつながると思います。
 「ICT初心者対象」というのは実に魅力的でした。私が所属する学校からも4人が自主的に申し込んで参加させていただきました。ありがとうございました。

   阿部 和久・山形県NIE推進協議会会長
 ICTを用いたNIEは編集力を鍛える。そうとしか思えなかった。神戸山手女子中高・近藤先生の発表を拝見しながら少しずつ気づいてはいた。それが確信に変わったのは、愛徳学園中高・米田先生による理論編、廣畑先生による体験編の時間を共有したからである。NIEは編集力を育てる、とは考えていた。しかし、ICTの力で何度でも試行し、容易に元の姿に戻し、詰まったら局面を変え、自らの思考を見える化していく授業ができる。やはり見える化された相手の思考と対話しつつ階段を一つ上ることができる。ドアを開き、知らないことを知った(体験した)セミナーだった。   

   伴 哲司・熊本県NIE推進協議会事務局次長(熊本日日新聞 読者・新聞学習センター次長)
 新聞を読み、自身の思いや感想を言語化し、他者の考えと比較して視野を広げる授業が、ICTの活用でより充実したものになる。本セミナーに参加して確認することができた。
   新学習指導要領は「主体的、対話的で深い学び」を掲げているが、その実践は始まったばかりだ。私もワークショップでロイロノートとシンキングツールを使い、生徒1人1人の考えを先生がタイムロスなく把握できるメリットを実感した。熊本でもぜひ今回の事例を紹介し、NIEでの活用を推し進めていきたい。

   たくさんの感想をいただき、ありがとうございます。ほかの参加者の感想は こちら

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 2021年度のNIE兵庫セミナーが6月23日、神戸山手女子中学・高校(神戸市中央区諏訪山町)と愛徳学園中学・高校(同市垂水区歌敷山3)で開かれた。両校をオンラインでつなぎ、生徒約95人と教諭ら約90人が参加。新聞を活用した授業方法などを学んだ。

 NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会が主催。愛徳学園では教員や生徒を対象に講演会があり、時事通信社神戸総局長の丸山実子さん(51)が記者の仕事を紹介。中国での海外特派員の経験を踏まえ、物事の本質をつかむために「多様性を理解すること、文化の違いを知ることが必要」と語った。

 教育関係者が参加したワークショップでは、新聞を活用した授業について、同市の小中学校に導入予定のタブレットなどを使って、教室や自宅への配信を想定した事例が解説された。

 姫路西高校の木岡智子教諭(42)は初めてセミナーに参加。「今までは紙に書いたり、話したりすることに重きを置いていた。実際にタブレットを使ってみて、思考を可視化しやすく、考えが深まりやすいと思った」と話していた。(丸山桃奈)=24日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]時事通信社神戸総局長の丸山実子さんが海外特派員としての経験を話した講演会=神戸市垂水区歌敷山3、愛徳学園中学・高校

     記者講演を聴講した、愛徳学園高校の苧阪(おさか)妃南乃さん(3年)は「他国の情報をリアルに伝える特派員の重要性を知った」、臼杵梨々菜さん(同)は「特派員として取材する怖さやチャレンジ精神を感じた。報道で救われる人がいることが心に響いた」と話した。

    ※「わたしの感想NIE」に記者講演を聴講した生徒のみなさんの感想を掲載しています。      

  教員らを対象にした「兵庫NIE(教育に新聞を)セミナー」が6月23日、神戸市中央区の神戸山手女子中・高等学校と同市垂水区の愛徳学園中・高等学校をオンラインでつないで開かれた。

 講演では、時事通信社の丸山実子・神戸総局長が、中国・新疆ウイグル自治区を取材した体験を振り返り、「文化の多様性とは何かを考えさせられた」と話した。

 実践例の紹介では、神戸山手女子中・高校の近藤隆郎教諭(53)が、生徒に投書欄を読んで考えをまとめさせるワークシートを披露。他人の意見を要約する作業などを通し、「主体的、対話的な学びが実現し、自分の世界の狭さにも気付くことができる」と利点を強調した=写真=。

 セミナーに参加した神戸市立大沢中の藤田亜希子教諭(40)は「SDGs(持続可能な開発目標)の学習で新聞も活用し、発展させたい。実践例を参考にしたい」と話していた。=24日付読売新聞朝刊神戸・明石版

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 日本新聞協会NIEサイトにもNIE兵庫セミナーのリポートが掲載されています。リポートはこちら

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                        2021年6月23日

      2021年度NIEセミナー 挨拶
             兵庫県NIE推進協議会会長 秋田久子

 
 皆様こんにちは。会長の秋田久子です。今日は2年ぶりのセミナーです。たくさんのご参加を大変うれしく存じております。ありがとうございます。

 本日のセミナーは、神戸山手女子中学校高等学校と愛徳学園中・高等学校の全面的なご支援を受けました。おかげさまで、参加者の皆様にタブレットを用いたNIE授業を体験していただけます。

 また、好評をいただいております通信・新聞各社のご講演もございます。本日は時事通信社神戸総局長・丸山実子さまです。

 盛りだくさんです。どうぞいっぱい、新しい空気を吸って持って帰ってください。

 さて、昨年度は制限も受けましたが、実践校の皆さんのお力添えで、オンライン授業の特質と可能性を探ることができました。

 オンライン授業では生徒個々人の「考えるための孤独」を確保でき、「考えの言語化」を促すことができるとわかりました。場の雰囲気に取り紛れないのです。

 場の雰囲気を慮る心も大切です。一方で、目的に向かって事実を確かめつつ、考えを言葉で表現し共有して新しい視点を見出していく力をNIEで育てていきたいと考えています。

 今日のセミナーを、その端緒を開くきっかけにしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 2021年度NIE兵庫セミナー 参加のお礼 6月23日、神戸山手女子中高校(神戸市中央区)と愛徳学園中高(同市垂水区)で開催し、両校をオンラインでつないで参加者に同時視聴いただいたり、Zoomでも公開したりしました。約90人に参加いただき、内訳は兵庫県内から教員やNIE関係者ら約70人、県外から山形から熊本まで約20人でした。時事通信神戸総局・丸山実子総局長の講演は愛徳学園の高1~3年生94人も聴講してくれました。ありがとうございました。

2月6日・Zoom(ズーム)によるオンライン開催 参加者85人


 西上三鶴・兵庫県教育長

 発表された先生方、本当にご苦労様でした。日頃の学習活動の中で、新聞という素材を様々な工夫をして活用されているなあ、と素直に感じました。加えて、新型コロナの中で、大変だったと思います。これからも頑張っていただきたい。

 発表内容に個々の感想ではなく、全体として受けたことを申し上げます。

 まず、改めて新聞の素晴らしさでした。
 教科書の内容は児童生徒の発達段階で異なるのに、新聞の内容は一つです。そして、児童生徒を主な対象として制作されている訳でもありません。なのに、小中高それぞれに応じて活用できる、直接記事を使うだけでなく、ICTの活用で新聞を作ってみるということもできる、本当に素晴らしい素材であることです。
 発表で残念だったことは、新聞という素材だからできること、できたことという点の強調が少し弱かったかなと思いました。

 2点目は、これからの懸念です。
 教科書もノートも今は紙です。新聞も紙です。親和性がある。
 しかしながら、これからは違ってきます。来年度からデジタル教科書が小学校に試行的に導入されます。一人一台パソコンで、ノートも紙でいずれはなくなるでしょう。
 一方、情報の手段もデジタルが主流になっています。学校でのNIEの活動でも、紙の新聞記事をパソコンに取り込んで活用する場面がありました。
 こうした流れの中で、紙の新聞はどうなるのだろうか。

 いずれにしても、これからもNIEの活動を期待しています。 

【参加者の感想】

<実践報告について>

・ 各校の発表も、生徒の発達段階に合わせての新聞の有効活用は、本当に勉強になりました。

・ 新聞を活用した実践は、大変参考になりました。文科省から学校図書館に複数紙の配備を推し進めるように示されていますが、実際の新聞の活用方法について理解が広がっていないように思いますので、こうした実践校の発表は大いに参考になると思います。

・3校による実践発表はNIEのヒントの詰まったものばかりで、見ごたえがありました。

・ 各学校が、発表の方法を工夫されていてとても楽しく拝見いたしました。授業や取り組みの内容はもちろんですが、これからの時代、いかに効果的に、インパクトをつけて発信していけるか、ということも大切だと思います。そういう意味でも、大変、提案性のある実践発表でした。先生方の発想の豊かさがさらに児童・生徒の新しい発想や取り組みにつながると感じました。ちなみに、日本は、プレゼン力(伝える力)をつけるような授業や研修会が大変少ないそうです。今後、学んだことを発信するための力も子どもたちにつけていかねばなりません。(発信することでさらに自分の力となります)今回たまたまこのような形の発表会になったことも結果的にとても良かったと思います。

・ 3校それぞれ工夫を凝らした発表が、今後の研究会の形の提案にもなりよかったと思いました。

・ どちらの学校も児童生徒さんの実態があり、地域性等があり、その中で素晴らしい取組をなさっておられました。ありがとうございました。やはり現場は「実践」ですね。

・ それぞれの校種の取り組みを詳しくお聞きすることができました。とくに、兵庫教育大学附属中学校のお話は、キャリア教育などの一環としても取り入れられており、大変興味深かったです。

・ 各校の三者三様の発表がとても参考になりました。リテラシーの育成の必要性は特に感じるところでした。全体を通して感じたことは、四技能の基本が揃っている児童生徒に向けてであればできるが...、という点です。本校は特別支援学校です。そのため、四技能のうちのいずれかに引っかかりがあるため、定型発達の児童生徒に対するアプローチと同じやり方では学習の効果が低いことが考えられます。逆に、この点に注目し、何らかの手立てを考えることで、NIEの実践をより良い方向で進めることができるのではと考えました。

・画面上で発表資料(パワーポイント)を見ることができ、大変わかりやすい発表だったと思います。また、それぞれの意見を画面上で送信し、参加型の発表もよかったです。(実際の場では、手を挙げて・・・という形になるのでしょうか。パソコン上では、瞬時に数が把握できるのでいいですね。)。ICTをつかった研究授業発表でもそうですが、パソコンがうまく動いてくれるかという不安は常にあります。必要以上に時間がかかったり、データを読み取れなかったりする場合があるので、前もっての打ち合わせが不可欠ですね。

・ 実際に、他の学校でどのようなことをされているのかわかり、とても参考になりました。特に、新聞の読み比べは本校でもメインとして実践していることの一つなので、今度、本校でも取り入れたいと思うことが多くありました。また、本校の実践とは違う新たな視点も知ることができ、勉強になりました。発表の方法も、参加型にしたり、映像を用意したりと工夫されていて、とても楽しいものでした。ありがとうございました。

・他の校種の実践が聞けたのが良かったです。姫路市立豊富小中学校は小中の協力体制が素晴らしいと思いました。安永先生がお一人で活動を開始されたということに驚きました。高野先生の報告にスタンプで参加させたのが楽しかったです(もっと参加してほしかったです)。

<全体について>

・ オンラインなので音声など多少のハプニングは普通にありますが、運営されている側は大変なのだろうな~と考えながら拝聴していました。本当にお疲れさまでした。

・ 参加型の実践発表が個人的には、とても良かったです。会場に集った場合は、挙手をするのかなあ? 等と考えながら参加しました。ZOOMでは、発表者が、ギャラリーの反応を見ることができないと決めつけていましたが、方法はいくらでもあるのですね。勉強になりました。スタッフの皆様も、お疲れ様でした。


・ 翌日の新聞記事にもたくさん掲載していただきありがとうございました。また、毎日たくさんの新聞を提供してくださっている各販売店にも感謝です。学校のある日、休業日等で冊数の変更も快く引き受けてくださり、本当にありがたいことです。新聞を無償でいただき、今年度はとても学習の範囲、機会が広がりました。

・ 今回はオンラインでの開催となりました。実際の会場でしか味わえない「ライブ感」というものもありますが、神戸で開催された場合、但馬・養父市からの移動を考えますとオンラインでの開催は有難かったです。

・ リモートということもあり、参加もしやすく、深くを聞きすることをできました。とてもよい機会でした。今後ともよろしくお願いいたします。

・ オンライン会議の設定、いろいろとありがとうございました。

・ ZOOMでの開催により、遠くに住んでいる人でもパソコンさえあれば簡単に参加が可能となることはいいことだと思います。実践発表の内容がいつでもホームページで見られたら、NIEを勉強したい人のいい資料になると思います。NIE実践発表会お疲れさまでした。

・ 少し音声が聞き取りにくいところはありましたが、とても素晴らしい実践発表会でした。画面も発表者に固定していただいたり、適宜映像やスライドに変えていただいたり、とても見やすく聞きやすかったです。若干遅れての参加となってしまいましたが、とても良い時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

・参加の手順も分かりやすく、音も聞きやすかったです。ありがとうございました。

 学校教育に新聞を活用するNIE(教育に新聞を)活動の実践発表会(県NIE推進協議会主催)が2月6日、オンライン形式で開催され、85人が参加した。

 姫路市立豊富小中学校の教諭は、関心のある新聞記事を切り抜き、紹介し合う「まわしよみ新聞」や複数の新聞の読み比べをオンラインで実施し、防災学習や平和学習で新聞を活用した取り組みを報告した。

 神戸市立神港橘高校の高野剛彦教諭は、賛否の分かれるテーマの新聞記事を使って集団討議するモラルジレンマ学習について報告。「対話を重ねることで人間関係の向上につながり、情報の信頼性や多様性など新聞の価値に改めて気づかされた」と話した。【脇田顕辞】=7日付毎日新聞朝刊神戸・明石版

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[写真説明]オンライン形式で開かれた県NIE実践発表会で取り組みを報告する姫路市立豊富小中学校の教諭

                                    ◆                                                                                                                                            

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[写真説明]新聞各紙の社説を読み比べた生徒の感想を紹介した兵庫教育大付属中教諭の発表=神戸市中央区東川崎町1

 

   

 「NIE(教育に新聞を)」活動を進める県内の学校の実践発表会が2月6日、神戸市中央区の神戸新聞社報道展示室であった。県内の教員ら85人がオンラインなどで参加。日本新聞協会の実践指定を受けた3校の担当教諭が、新聞を用いた授業と意義を報告した。

 発表会は、新聞社や教育関係者でつくる兵庫県NIE推進協議会が毎年開催している。

 豊富小中学校(姫路市)の川村かおり教諭と井上佳尚教諭は、平和や防災学習などの調べ学習への新聞活用法を紹介。新聞作りアプリ「ことまど」を使った新聞発行など、「日常的に新聞を使い作ることで、気付きを得ている」と述べた。

 兵庫教育大付属中(加東市)の安永修教諭は、正しい情報をくみ取る力「メディアリテラシー」を複数の新聞を読み比べして身に付ける学習法を報告。新聞記者による講演会などから、「疑いを持ってニュースを読むことの大切さを学んだ」とした。

 神港橘高(神戸市兵庫区)の高野剛彦教諭は、「Go To トラベル事業を継続すべきか中断すべきか」―など、道徳的に答えのない課題について意見交換する「モラルジレンマ学習」について話した。「多面的な情報に基づき対話を重ねることで、生徒たちの人間関係を向上できる」と力を込めた。(貝原加奈)=7日付神戸新聞朝刊広域面

                                               ◆

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 新聞聞を活用した授業の取り組みを報告する県NIE実践発表会が2月6日、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使って開かれ、教員ら約80人が視聴した。

 市立豊富小中学校(姫路市)は、新聞づくりを体験できるアプリを使って生徒がそれぞれ個人の新聞を作ったり、新聞の連載記事を元に姫路の戦争遺跡についてまとめたりした。川村かおり教諭は「新聞を『つくる』と『つかう』を意識しました」と報告した。

 兵庫教育大付属中学校(加東市)は、2紙の社説を3日分読み比べた上で、朝日新聞の高橋純子編集委員を招き、マスメディアの役割についてたずねた。「こんなに(社説の)意見が正反対なのに驚いた」という生徒の感想も紹介した。

 市立神港橘高校(神戸市兵庫区)は新聞から意見が分かれるテーマを見つけ、記事の要約と自分の考えをまとめてグループ討論した。「Go To トラベル」事業では、経済か感染症対策かというジレンマを生徒に考えてもらった。(滝坪潤一)=7日付朝日新聞朝刊神戸版

[写真説明]報告する姫路市立豊富小中学校の先生=Zoom画面から

   日本新聞協会NIEサイトにも実践発表会のリポートが掲載されています。リポートはこちら


                                        令和3年2月6日
兵庫県NIE推進協議会 実践発表会挨拶
                                        会長 秋田久子

 皆様、こんにちは。会長の秋田久子です。今日はご参加くださいましてありがとうございます。オンラインの実践発表会は初めてです。今年度は皆さまにいろいろに助けていただいて、たくさんの「初めて」に取り組みました。

 さて、実効性あるオンライン学習は喫緊の課題です。そこで、ご挨拶に代えて、生徒がタブレットを通じて意見交換するオンライン授業の長所をお伝えしたいと思います。これは、私自身が前期にオンライン授業で得た手ごたえを、実践校の公開授業で確認したという体験報告でもあります。
    オンラインで意見交換する授業の長所、それは「言語化の必然」です。生徒は自分の考えを言葉にする必要があります。
 これまでは授業に「体だけ参加」する生徒が一定の割合でいました。発表する人は発表できる人です。大人からは一見活発に見える話合いや実習であっても、積極的に流れに乗っていける生徒と、時間をやり過ごす生徒がいます。私たち大人側からは見えませんが、学力だけでなくキャラクターや関係性も参加のレベルに大きく影響しているようです。
 ところが、オンラインでの意見交換では、自分の意見を文章で書き込まねばなりません。対面の時のように「雰囲気」で補えません。自分と向き合い文章にするのは孤独な作業です。書き込んだ文章だけが授業参加の証明です。オンラインでの意見交換は、考えるための孤独を守り言語化能力を鍛えます。
 数年のうちに、オンラインでの個別のやり取りが通常授業に組み込まれていくでしょう。そうなれば言語化能力が日常的に鍛えられ、個々人が自分の輪郭をはっきりさせていけます。その次には、対面でよりよく伝えるための、非言語コミュニケーションの技術にも意識が及ぶにちがいありません。自分で自分を演出する意識は生き方を変える力を持ちます。主体的な生き方の原資として、正確な情報収集力は更に一層必要になると思います。
 ところで、意見の書き込みを通じて言語化能力を伸ばし、対面での発表で非言語コミュニケーション技術を訓練するには、どんなテーマがいいでしょうか。結論が決まっていないダイナミックなテーマが意見交換を活発にすると思いませんか。NIEがここで使えます。事後学習に新聞を活用して、教科書「で」教える授業ができます。NIE活用でご一緒に、平和で民主的な社会の形成者を育ててまいりましょう。推進協をどうぞご活用ください。
 本日は先生方の実践報告では、姫路市立豊富小中学校、川村かおり先生・井上佳尚先生、兵庫教育大学附属中学校・安永修先生、神戸市立神港橘高等学校・高野剛彦先生にご出演いただきます。とても楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

    2020年度兵庫県NIE実践発表会 参加のお礼 2月6日、Zoomによるオンラインで開催し、兵庫県内外から85人に参加いただきました。ありがとうございました。

安永 修・兵庫教育大学附属中学校教諭
 生徒たちが集中して新聞を読み、それをパソコンでまとめるなど、真剣に授業に取り組んでいる様子が分かりました。生徒がどのように考え、まとめているのかを、ぜひ見たかったです。
 また、授業者だけでなく、各先生方が撮影やチャットなどにすぐに対応するなど、学校全体で授業づくりをしていることが分かりました。豊富小中学校のNIEやICTへの対応に学校全体と取り組んでおられ、これからの活動に期待したいと思います。

原田 祐司・姫路市教育委員会学校教育部長
 令和2年4月に、施設一体型の義務教育学校として新たに開校した「~蔭山の里学院~豊富小中学校」では、「調べる力」を育むためにNIEとICTなどを生かし、子どもたちの学びをつないできました。本時は、まさにその典型であり、3紙の新聞を読み比べ、それぞれの表現の違いや視点の違いに気づくことで、そのニュースの本質を捉えようとするものでした。
 生徒は、自分たちで選んだ記事について、「Jamboard(ジャムボード)」というソフトを用い、班員と同時に編集を進めながら読みを深めていました。本時は、緊急事態宣言を受けて画面越しの対話に切り替えたとのことでしたが、生徒たちの学びに向かう集中した姿からは、1人1台端末環境になる前から「調べる力」を育むために積み重ねてきた実践の成果が見て取れました。
 また、画面越しの対話により考えを文章化する必然性が生まれることや読解力の異なる複数の生徒を支援するために1人1台端末は親和性が高いことなどが分かりました。
 複雑で不確かな状況だからこそ、ある程度の見通しを持った上で「まずはやってみよう」と一歩前に踏み出すことが求められます。豊富小中学校の授業公開は、そのことを私たちに教えてくれました。

丸山 実子・時事通信社神戸総局長
 新聞記事の取り込みや意見の書き込みなど、生徒一人ひとりがJamboard(ジャムボード)を使いこなしていることにまず驚きました。GIGAスクール時代におけるNIEの幅広い可能性を実感させていただく機会にもなりました。
 拝見した授業が、多紙読み比べの作業が中心だったため、作業の結果発表を受け、どのように指導されるのか非常に関心を持ちました。ただ、生徒の集中ぶりはZoomを介しても十分伝わってまいりました。新聞による表現や視点の違いを色分けした付せんに書き込み、ボードを作り上げる作業は、デジタル慣れした世代にとって、はまりやすい要素があるのでしょう。
 離れていても内容を共有できるボードの特性は、グループ学習の意義をつかみやすいという効果もありそうです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、非接触型の行動が求められる中、教育現場もさまざまな制約を受けていますが、ICTの活用で補完できることは数多くあると感じました。その教材としても新聞は応用自在だと思います。

新田 憲章・広島県NIE推進協議会・中国新聞社NIEコーディネーター
 コロナ禍第3波の中で授業公開をしていただいた豊富小中学校の先生方に感謝します。授業者の井上先生のお話では、本来ならグループワークで行う活動を、緊急事態宣言のためJamboard(ジャムボード)を活用されたとのこと。生徒が対話することなく、オンラインのJam上で「協働」した学習が展開されるという学習方法の提案でした。コロナ禍が終わり、13歳の中学生がしっかりとした声でNIE活動のグループワークが再開できることを祈っています。
 広島県でもNIE学習会は、中止が続き、やっとオンライン形式での実施ができるようになりました。今回のZoomでの公開授業では、オンライン研修会の運営について重要な示唆をいただきました。会場参加者とオンライン参加者の理解度には大きな差が生じます。その差を埋める情報共有が重要だと感じました。貴重な学びの機会を提供いただきました兵庫県NIE関係者の皆様に感謝いたします。

藤塚 正人・神奈川県NIE推進協議会・神奈川新聞社NIE推進委事務局長

 新型コロナウイルスの影響で、NIEの実践もまた、当たり前を見直すことが迫れています。人との接触が制限される中、姫路市立豊富小中学校のオンライン公開授業は、NIEにおける新たな学びの在り方が情報通信技術(ICT)学習の成果とともに、「見える化」されました。

 一人ずつ端末を用いて自分の考えを書き込むことで、共同作業をしている形となり、教える側もそれぞれの理解度を把握することにもつながる、と報告されました。

 クラスメートとのやり取りを通して考えを深め、表情や仕草も含めて気づきにつながる対面ならではの学習機会を、どこまでフォローできるか。さらに、情報機器に不案内な世代を含めて教える側がICT学習の練度をどのように高めるか。課題とともに認識を深め展望する機会になりました。

 例年であれば、生徒たちが頭を突き合わせ、切り抜いた新聞記事を「ああでもない、こうでもない」と読み合い、内容を吟味し合う姿が見られるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染症による感染予防の観点から、対面によるグループワークは避けなければいけない。しかも2度目の緊急事態宣言の発出である。もう、今回は一切生徒間の会話をしない授業を行おう、ということで腹をくくった。そして、2学期開始とほぼ同時に1人1台端末となったタブレット型端末(Chromebook)を活用し、生徒が画面上で語り合い、複数の記事を画面上で共有するというスタイルをとることとなった。

 私が国語の授業で生徒たちに心がけて欲しいと考えていることは一つ。さまざまな文章を、いろいろな方向から読み、思考することだ。「雪がとけると何になる?」の解答が「水になり、春になる」と言えるような生徒の育成である。

 今回の授業でも同様に「事実は一つだが、考え方はたくさん」という見地に立っている。各々の班で興味関心のあるニュースを3紙から選び出し、「この新聞はどんなふうに報じているのだろう」「この新聞は肯定的な意味合いで捉えているけど、こっちの新聞は否定的な感じがするなぁ」「あれ? この記事同じことが書いてある、なぜだろう?」といったように各々の疑問や発見を1カ所に蓄積してゆく。ICTを活用することで、協働学習の形態をとっているが、個人で表現する活動が大幅に増え、それぞれが課題や活動に没頭するため、より深く、主体的な学びへとつながってゆく。その上、データや成果物を共有しているので、進行の度合いなども相互に確認でき、他の班員が手伝い、班全体で読み比べを進めることができた。授業では新聞に出てきた漢字の読み方や難解な用語を、画面上で相互に共有し、教えあう姿も散見された。

 公開授業後に班での発表活動を行ったが、どの生徒も感じたことや読んで気づいたことを端的にまとめ、画面を共有しながら他の班に分かりやすく伝える姿を見ることができた。また、人前に立つことを得意としない生徒や、話すことが苦手な生徒も、画面を通じての活動なので、あまり他の生徒の視線や自分の状況を意識せずに発言ができていたように思う。

 今回、新聞を中心に据え、ICTのネットワーク機能やデジタルホワイトボード(Jamboard)の共同編集機能を活用した授業を行った。そこで、「まわしよみ新聞」をはじめとする新聞記事の共有や新聞を活用した探究活動に関して、ICTとの親和性は非常に高いと感じた。また、同じ情報を扱うツールとして、もっと活用や研究の余地があるとも感じた。今後も生徒の主体的な学びに直結するような授業デザインを研究し深めていきたい。

井上佳尚(姫路市立豊富小中学校後期課程教諭)(1月31日)

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    新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)の公開授業が1月26日、姫路市豊富町の小中一貫校、市立豊富小中学校で開かれた。

 同校は一貫校になる前の2019年度から、NIE実践指定校になっている。この日は、井上佳尚教諭による7年生(中学1年)の国語の授業が、ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」で全国に中継され、教育関係者ら約50人が視聴した。

 生徒たちは全国紙2紙と地方紙1紙から気になったニュースを読み比べ、表現の違いや書き方について考えたことを、パソコンを使って項目ごとに色分けし、電子黒板に書き込んだ。

 奥田裕亮君(13)は「写真やグラフがどんな意味で記事につけられているかに注目した。それぞれの新聞に違った視点があることがわかった」と話した。=27日付読売新聞朝刊姫路版

[写真説明]新聞を読み比べて気づいたことをパソコンに打ち込む生徒たち(姫路市で)

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、複数の新聞を比較して違いをまとめる公開授業が1月26日、姫路市豊富町御蔭の豊富小中学校であった。中学1年にあたる7年生29人が3~4人の班に分かれ、関心のある記事3本について意見を交わした。

 新型コロナウイルス対策のため見学はオンラインで行われ、県内外の教育関係者ら約50人が参加した。生徒たちも口頭での議論を控え、各自がパソコンの学習支援アプリに意見を書き込んで共有した。

 授業に先立ち、班ごとに同じ日付の全国2紙と地元紙が配られており、この日は事前に選んできた記事の表現を比較。金田元佑(けんすけ)さん(13)は昨年11月にオーストリアの首都ウィーンで起きた銃撃事件に関心を持ったといい、「これまではどの新聞も同じことを書いていると思っていた。どう伝えるかで読者の持つ印象や考えが変わることもあると思う」と話していた。

 担当した井上佳尚(よしひさ)教諭(37)は「複数の新聞を読み比べることで、いろいろな角度から物事を見る力を身に付けてほしい」と話していた。(安藤真子)=28日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真説明]新聞記事を読み比べ、気付いた違いをパソコンに打ち込む生徒ら=豊富小中学校

 生徒の感想 井川美紅さん(13) ANAの過去最大赤字予想の記事を比較して「数値の変化に焦点を当てた記事や、コロナの影響を書いた記事があった。同じことを違った角度から分析していると知った」

 ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を、「セミナー・発表会・公開授業」に参加者のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

  読売新聞教育ネットワーク(読売新聞の教育ポータルサイト)にも記事が掲載されています。記事はこちら

 26年前、「国語表現」を担当して以来、新聞を活用し、自らスクラップした記事を「週刊国語表現」と名付けて週に一度、生徒に配布し、記事中から漢字テストを行ったり、記事にコメントを書かせたりした。7年前より、本校は生徒が将来、自ら考え、人に奉仕し、充実した人生を歩むための独自のライフキャリア教育「Rainbow Program」を展開し、そのためのツールとしてiPadの導入や、校内のWi‐Fi環境を整えたりした。それ以降、iPadや学習支援アプリ「ロイロノートスクール」などの生徒のICTスキルは飛躍的に向上し、私も授業でICT機器を使うようになった。今秋からは中学・高校とも生徒1人1台ずつiPadを持つ環境が整った。

 想像もしなかったコロナ禍の中、本校は本年度、「ロイロノートスクール」を使って「愛ちゃんねる」と名付けたオンライン授業を展開した。オンラインと対面の両方で展開してきた授業のまとめとして、公開授業では「新聞を読み、ICT(iPadと「ロイロノートスクール」)を活用し、自分の考えをまとめ発表する」をテーマに単元を組み立てた。

 iPadの使用が目的にならず、普段行っている授業の流れで展開し、生徒の考えを引き出せるよう心がけた。「自分の選んだテーマに沿って、3大ニュースを考えて発表する」取り組みで、まず、新聞を読み、ロイロノート内の「シンキングツール(思考ツール)」を使って、選んだ記事の分析と意味付け、順位付けを行った。

 そして「なぜ、その順位にしたのか」の理由をiPad上でまとめ、4人のグループごとに、互いにタブレットの画面を見せてプレゼンテーションし、質疑応答を重ねた。終了後、それぞれの作業に戻り、他者の意見も参考に自分の考えをまとめ、ロイロノートの提出箱に提出した。

 生徒は、新聞から取り出した「情報」を他の「情報」とつなげ、意味を見いだし、他者とのやり取りを通して、自分の「考え」を作り出していた。公開授業の場でも、臆することなく授業に取り組む生徒の姿が頼もしく、私も授業をしつつ楽しく感じられた。

 これからも生徒から学びつつ、もっと楽しく表現でき、もっと深く考えることができる授業を目指したい。
米田俊彦(愛徳学園中・高校教諭)(12月1日)

 中川 透・兵庫県立川西明峰高校校長(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー)
 NIEを実践する上で、悩ましい課題がいくつかある。
 ①新聞を読む習慣の欠如
 ②新聞の厖大な情報量
 ③全員に配付する新聞の確保
 これらの解決のヒントとなるのが、「週刊国語表現」の発行である。1週間の記事からいろんなジャンルのものを切り抜き、プリントにして毎週配っておられるのだ。授業者のフィルターを通した資料とはなるが、限られた時間で授業を展開する上では大変有効なツールである。米田先生手作りの資料は、生徒の視野や興味・関心を確実に広げていることがうかがえた。
 愛徳学園では6年前から学習支援アプリの「ロイロノート」を全校で導入し、すべての教科・科目で活用しているという。先述の「週刊国語表現」は「ロイロノート」でデータ配信するので、生徒はそれらの記事を自由に切り取って添付することができる。以前のものもアーカイブとなっているのでいつでも取り出せるのだ。これからはこうした授業がスタンダードとなる日が来るのではとの思いも抱いた。
 この授業の年間計画は「発表する」ことに力点が置かれている。本時でも、自分が選んだ3大ニュースを4人のグループ内で発表し合う時間があった。授業後の意見交換会での、「OUTPUTすることで情報が知識となる」という米田先生のことばが印象的であった。

 福田 浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭
新聞の活用というアナログに思える授業を想像していたが、その授業内容はiPadによるロイロノートを活用したデジタルな授業であった。授業で鉛筆やノートを一切使わず、その分、生徒は思考に費やす時間が増え、50分の授業にかかわらず非常にテンポよく授業が進んでいた。NIEの活用+ICTの効果的活用という、二面を一つの授業で見ることができた。
授業の最後には、生徒同士で班内においてプレゼンテーションを行っていた。人に話すためにはあらかじめ自分の頭の中でよく考える必要があり、それを聞いて質問するためには人の発表をしっかり聞く必要がある。このサイクルが非常によい感じで回っていた。
 意見交換会では、新聞以外にWebからの情報収集の可能性について質問があった。そこで出た「Webを使うと生徒は答えを取りに行ってしまう」という意見に共感するところがあった。
 本校も次年度から本格的にNIEの活動を行っていく予定であるため、今回は実践校の活動を見させていただき、とても多くを学ばせていただいた。

    岩橋  達彦・兵庫県立尼崎北高校教諭
    ①授業に集中している
 ②情報機器に長けている
 ③様々な知識を習得している
 情報収集時には一言もしゃべらなかった生徒たちが、発表時にはにぎやかに話し出す。普段から発表に慣れている様子がうかがえ、自分の言葉で語り合う。聞き手は傾聴を示し、話し手に安心感を与えながらも、知識を吸収する。
 皆がiPadの使用に長け、展開の速さに慣れていた。そんな中、彼女たちは情報を共有し合いながら、発表者の気持ちも共有し合う。対面ならではの温かみがそこにあり、この間の切り替えがとても早い。
 きっと、毎回の発表から、さまざまな知識を吸収しているのだろう。終わってから、生徒に質問してみると、瞬時に答えが返ってきた。その言葉から、新聞をかなり読み込んでいる様子もうかがえた。
 この完成度の高い授業に驚きを隠せない。

 岸本 佳子・産経新聞社神戸総局長
 今回初めて、NIE公開授業を見学しました。新聞と、ロイロノートスクールという授業支援アプリがどのように融合するのか、非常に興味がありました。
 正直なところ、難しいのではないかと思っていたのですが、生徒たちが、すいすいと記事を整理し考え、発表する様子に感心しました。同時に、自らの感覚の古さを反省しました。考えてみれば、例えば座標軸を用いて記事分類しようとすれば、記事を読んで理解し大意をつかむ必要があるわけです。新聞を活用した学びはデジタルツールによって一層深めることもできるのだろうと期待します。
 今回、Zoomでの視聴でしたが、こちらの機器の問題なのか、音声が聞き取りにくく、生徒たちの反応などがよくわからなかったのが残念です。

 山本直樹・岡山県NIE推進協議会事務局長(山陽新聞社読者局NIE推進部長)
 愛徳学園中・高校の公開授業は、タブレットを活用して紙面を取り込み、分類して重要度を考え、グループでプレゼンまで行い合う、濃密な内容だった。それぞれの過程で、読解力や分析力、価値判断力、発信力を育てる、素晴らしいNIEになっていた。生徒たちは、普段から新聞に接しているためかニュースを読み取る能力が高い上に、タブレットの使い方も非常に速く、習熟度に驚かされた。
 オンラインでの公開だが、定点カメラに加えて自由に動くカメラで生徒の様子を見ることができた。臨場感があり、タブレットの操作まで詳しく見て取れた。今後、岡山でオンライン公開授業を行う際の参考にしたい。
    残念だったのは音声。グループ内のプレゼンで、他の話し声などが混ざり合って発言者の声が聞き取れなかった。オンライン用のマイクを用意するなどの改善が必要ではないだろうか。
 全体的には、10月、淡路市の小学校であったオンライン公開授業に比べて、視聴状況が格段に良くなっていたと思う。関係の皆さまのご努力に敬意を表したい。

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環で、関心のある新聞記事をまとめる公開授業が11月24日、神戸市垂水区の愛徳学園中学・高校であった。高校2年生約20人が「3大ニュース」を選び、自分の考えと共に発表した。

 兵庫県NIE推進協議会が企画。同校は本年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定された。新型コロナウイルス対策としてビデオ会議アプリも導入し、県内外の教育関係者ら約30人が見学した。

 生徒らは興味のある記事を学習支援アプリで整理。重要度や関心度を分析し、順位を付けてグループ内で発表した。臼杵(うすき)梨々菜さん(17)は、書籍の電子化などを取り上げ「情報やデジタル関係に興味がある。授業をきっかけに新聞を読み始め、社会問題を考えるようになった」と話した。

 授業を担当した米田俊彦教諭(55)は「まとめや発表を通じて情報を生徒自身の知識とし、進路を考えるのに生かしてほしい」と話していた。(太中麻美)=25日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]興味のある記事について発表する生徒ら=神戸市垂水区歌敷山3

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 神戸市垂水区の愛徳学園高で11月24日、新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)の公開授業が開かれた。

 愛徳学園中・高等学校は今年度から、NIEの実践校に指定されている。この日は「国語表現」の授業が公開された。

 参加した2年の生徒20人はまず、米田俊彦教諭(55)が選んだ記事などから、それぞれの「今年の3大ニュース」を選定。その後、グループに分かれ、なぜその記事を選んだのかなどについて、意見を交わした。

 生徒の臼杵梨々菜さん(17)は「ビッグデータの活用やデジタル社会に興味があり、新聞を読んで、便利な社会の弊害も考えるようになった。新聞を読むと、世界が抱える問題への発見がある」と話した。=25日付読売新聞朝刊神戸明石版

[写真説明]新聞を手に取り、気になる記事を見つける生徒たち(神戸市垂水区で)

 生徒の感想 西村友希さん「記事の分類・整理を通して自分の考えを整理でき、自分の新しい点も発見できた。他者の発表に対して意見を述べ、さらに考えていくのは楽しく、社会に出てからも役立つと感じた」

 ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を、「セミナー・発表会・公開授業」に参加者のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

 6年生は、総合的な学習で淡路人形浄瑠璃に取り組んでいる。3年目になる今年は、目標を「淡路人形浄瑠璃の魅力を地域や全校生に発信する」と決め、その歴史や演目、それぞれの役割など、自分たちが魅力と感じるテーマについてグループに分かれて調べたり、実際に「戎舞(えびすまい)」という演目を演じようとがんばって練習したりしてきた。

 今回の授業は、淡路人形浄瑠璃の魅力について新聞を通じて伝えようという活動の一環として取り組んだ。

 事前に記者派遣事業を通し、取材の方法や見出しの付け方を学んだ子どもたちは、今回の学習で、自分たちのテーマに合う見出しをグループごとに考えた。そして、考えた見出しについてお互いに意見を出し合い、よりよい見出しになるように工夫した。

 子どもたちは見出しの役割や付け方についてきちんと分かっていないところもあり、まだまだ工夫の余地は残されていると思うが、授業を通して、自分たちの持つ情報や思いを伝える一つの手段として「新聞の良さ」に気付けたのではないかと思う。伝えたいことをしっかりと伝えられるように、これからも取り組みを進めていきたい。
南志乃婦(淡路市立志筑小学校主幹教諭)(11月12日)

 津田 康子・伊丹市立天神川小学校校長(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー)

 公開授業がZoomでも視聴できると聞き、参加した。南志乃婦主幹教諭の指導の下、記者派遣で学んだことを生かし、児童が「『淡路人形浄瑠璃』の魅力を伝える見出し」を考える授業が展開されていた。日常の取り組みの成果がとてもよく見える授業だった。「ルーブリック評価」を取り入れ、児童が授業の到達目標を意識しながら学習に臨む姿が画面を通して伝わってきた。

    新学習指指導要領が実施され、授業と評価をどう一体化させるか、学びに向かう力をどう位置づけ評価していくのかーなど、今後の課題を見据えた貴重な提案であった。

 花折 了介・姫路市立豊富小中学校教諭
   意見交換会で、見出し作りは「究極の要約」との意見があったように、とても思考を要する学習活動だと思う。「ちょっと格好つけて見出しを付けよう」という意見もいいなと思った。
授業では、主見出しと脇見出しを考えることで文の組み合わせが生まれ、表現の工夫が促されるところが印象に残った。
   今回、記者派遣での学習を経て公開授業が行われていた。授業を行う教員の立場からは、児童生徒の考えたものをより良いものにする指導が重要になる。そこで記者派遣でプロの記者からアドバイスを受けることは、子どもたちの大きな刺激になると思う。
   意見交換会は新聞社や教科書の出版社など、多様な立場からの意見を聞くことができ、刺激を受けた。今後の授業やNIE活動に生かしていきたい。

   飯塚 智美・南あわじ市立三原中学校教諭、郷土部顧問
 「伝統芸能」と聞くと、堅苦しく、若者には敬遠されることが多いように思う。しかし、志筑小の児童たちは「郷土の文化を守ることは大切だ」という内容になりがちなところを、「淡路人形のここがすごいです」「ここが面白いです」と、伝えたい思いを形にするため、熱心に取り組んでいた。
  歴史ある淡路人形浄瑠璃の魅力を、たった10文字で表現できる素晴らしい感性や、自らの思いをしっかりと伝える力をもった児童の姿に感動した。
  また、郷土芸能に関わる者として、完成した見出しを通して、伝統を受け継ぐ重みよりも、まず楽しむことの大切さを知る機会となった。地域教材を使用することで、ふるさとを愛する気持ちが育ち、多様な価値観を育める授業だった。

    日下 芳宏・淡路市教育委員会教育部長
 志筑小学校の子どもたちは知的好奇心が実に豊かである。生活科・総合的な学習の研究校として実践を積み上げてきた同校の子どもたちは「読み手を意識して伝えよう」という高いモチベーションを持って学習に臨んでいた。
 今回の学習活動は、一つの正解に向かうものではなく、自分たちの力で練り上げよりよい表現を生み出そうとする、まさに知的かつ創造的な活動であった。この活動を通して子どもたちは「淡路人形浄瑠璃」というふるさとの文化に対して、これまで以上に丁寧なまなざしを向けることになったであろう。「学びの質を高めるためには、子どもが自ら題材にはたらきかけていく過程こそ大切にしなければならない」ということをあらためて認識させられる時間であった。
 ご指導・ご支援をいただいた県NIE推進協議会の皆様に心より感謝を申し上げたい。

   石﨑 立矢・京都府NIE推進協議会事務局長(京都新聞社読者交流センター長・京都新聞ジュニアタイムズ編集長)

 淡路人形浄瑠璃についての十分な学習や体験を踏まえた「見出し」作りは、内容の濃い授業となった。主見出しと脇見出し、2つの組み合わせを考える作業は、児童にも先生にも手間はかかるかもしれないが、最も伝えたいこと、感動をどう表すか、工夫を促す仕掛けであり、効果の高い手法であると印象に残った。

 Zoomを介しての公開授業は、兵庫県NIE推進協議会事務局と開催校、参加者の信頼関係、準備のたまもの。遠隔地の学校、報道機関による参観や意見交換が可能であり、特に今回、意見交換会でそれぞれの立場から感想やアイデア、経験など活発な発言があり、今後の活用の可能性を感じさせるものであった。

 ※公開授業の様子を伝える読売新聞、産経新聞、神戸新聞の記事を「セミナー・発表会・公開授業」に、児童のみなさんの感想を「わたしの感想NIE」に掲載しています。

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    新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)の公開授業が10月20日、淡路市立志筑小学校であり、淡路島の人形浄瑠璃について学んでいる6年生が、学習成果をまとめる壁新聞の見出しを考えた。

 児童たちは、人形浄瑠璃の歴史や人形の仕組み、操り方などをグループごとに学んでおり、集大成として新聞を作る。この日は「魅力的な見出しを考える」をテーマに設定。南志乃婦(しのぶ)教諭が、新聞にはメインの「主見出し」、サブの「袖見出し」があり、伝えたいことを短く、興味を引くように工夫していることを説明した。

 児童たちは「四国を中心に全国へ」「複雑すぎる人形の仕組み」など、ポイントをつかんだ見出しを発表。「具体的な場所や数字を出すと分かりやすい」などの意見を出し合った。簑田真緒さん(11)は「一人一人が自分の意見を持ち、興味を引く見出しを考えられた」と話した。

 授業の様子は、新型コロナウイルス対策としてウェブ会議システム「Zoom」でも公開され、約25人の教諭らが視聴。終了後には意見交換会も開かれた。=21日付読売新聞朝刊淡路版

[写真説明]人形所瑠璃の魅力を伝える見出しを考える児童たち(淡路市で)

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 教育現場で新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の公開授業(県NIE推進協議会主催)が10月20日、淡路市の市立志筑小学校で行われ、6年1組の約30人が淡路島の伝統芸能の一つ「淡路人形浄瑠璃」の魅力を伝える見出しを考えた。

 同校は昨年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定。淡路人形浄瑠璃を題材にした新聞づくりを進めている。新型コロナウイルスの影響で今年度の県内での公開授業は初めてで、教育関係者らがオンラインで視聴した。

 公開授業では南志乃婦(しのぶ)教諭が「見出しは短く、興味を引く、伝えたいことを盛り込んで」と指導。児童らは10グループに分かれ、歴史や海外公演などテーマごとに主見出しと脇見出しをつけて発表した。

 児童らは「問いかけになった見出しで分かりやすい」などと評価したり改善点を指摘したりし合ったが、「短い言葉で見出しをつけるのは難しい」と話していた。=21日付産経新聞朝刊神戸版

[写真説明]志筑小学校で行われたNIEの公開授業(淡路市)

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、効果的な「見出し」について考える公開授業が10月20日、淡路市立志筑小学校であった。6年1組の児童約30人が、郷土の魅力を伝えようと知恵を絞った。

 県NIE推進協議会が企画。同校は2019年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定されている。今年は新型コロナ感染対策として、ビデオ会議アプリも導入。県内外の教育関係者ら約30人が参加した。

 見出しの題材に選んだのは、児童が総合学習で取り組む地域の伝統文化「淡路人形浄瑠璃」。グループごとに「演目」や「人形」などのテーマを決め、「なんとびっくり30個以上」「3人で息を合わせる人形遣い」などと自由な発想の見出しを発表した。

 細川瑞生君(11)は「限られた字数の中に、言いたいことをまとめるのが難しかった」。担任の南志乃婦(しのぶ)教諭は「子どもたちは、言葉で相手に思いを伝えることの大切さを学ぶことができたと思う」と話した。(内田世紀)=21日付神戸新聞朝刊淡路版

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sizukisyoumiyoshi.JPG[写真説明]淡路人形浄瑠璃の魅力をどう見出しにしたか―。意見交換する児童たち=志筑小学校(撮影・兵庫県NIE推進協議会)

 児童の感想 繁田悠希君「各班の見出しについて意見を交わしたのを生かし、読んだ人がうれしくなるような新聞を作りたい」、田中佑奈さん「ほかの班が付けた良い見出しが役に立った。みんなに分かりやすい新聞を作りたい」

 ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を、「セミナー・発表会・公開授業」に参加者のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

 新聞を教育現場で活用するNIE(教育に新聞を)の実践発表会(県NIE推進協議会主催)が2月1日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールで開かれた。県内の小中高校の児童生徒や教諭ら約80人が参加し、日ごろの成果を発表した。

 神戸市立向洋小と同市立山田中、県立武庫荘総合高(尼崎市)が取り組み事例を発表。山田中の荒木浩輔教諭は「記事の感想を書き、クラスメートに読ませることで、情報の取捨選択や自己表現、多様性の理解が進んだ」と報告した。

 また養父市立建屋小6年の児童9人らが、英字新聞を活用して英語に慣れ親しむ「イングリッシュ・マラソン」を実演。県立神戸鈴蘭台高(神戸市)の生徒は県内企業の経営者らにインタビューして、新聞を作ったことを発表した。登壇した同校2年の岸崎泰成さん(17)は「新聞作りを通して自分の知恵や考えが広がった。地元がより好きになり、神戸について考えるようになった」と締めくくった。【峰本浩二】=2日付毎日新聞朝刊神戸・明石版

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[写真説明]建屋小児童らによる「イングリッシュマラソン」の実演発表(撮影・兵庫県NIE推進協議会)

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    新聞を教育に活用する活動に取り組む県NIE推進協議会(秋田久子会長)は2月1日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールで実践発表会を開いた。学校教諭ら約80人が参加し、新聞を有効活用する実践例の報告に熱心に耳を傾けた。

 県内の小中学校、高校5校が日頃の成果や課題などを発表。神戸市立向洋小の田中健二教諭は読売KODOMO新聞を使った学習を紹介した。高学年は新聞を読んで要約し、自分の感想などを発表しており、「新聞は子どもと社会を結ぶ扉になっている。新聞を使い、知的好奇心をさらに高めたい」と話した。

 県立武庫荘総合高(尼崎市)の山村康彦教諭は、読ませたい記事を生徒に配り、生徒が平和や貧困などテーマごとに壁新聞を作成していることを報告。生徒が社会への関心を高めるきっかけになっているといい、山村教諭は「社会の一員としての自覚を高めることができた。今後も取り組みを継続していく」と強調した。=2日付読売新聞朝刊神戸明石版

[写真説明]企業経営者にインタビューして新聞を作ったことを発表する、神戸鈴蘭台高2年の岸崎泰成さん(左)と勝占(かつら)美穂さん(撮影・兵庫県NIE推進協議会)

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 NIE(教育に新聞を)活動を進める小中学校、高校の実践発表会が2月1日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールで開かれ、教育関係者ら約80人が参加した。日本新聞協会の実践指定校計5校から担当教諭や児童、生徒が新聞の活用法を紹介した。

 兵庫県NIE推進協議会の主催。同市東灘区の向洋小の田中健二教諭は、子ども新聞の記事要約、歴史上の出来事の号外作りなどを紹介。「新聞は子どもと社会を結ぶ扉になる」と述べた。同市北区の山田中の荒木浩輔教諭は、新聞記事に感想を添えて回し読みする活動を報告し、「ネットで情報を得る生徒が約8割。新聞へのハードルを下げることが必要だ」とした。

 尼崎市の武庫荘総合高は、生徒に読ませたい記事の切り抜きを作ったり、社会問題への意見を投書させたりする事例を発表。会社社長らに取材し、インタビュー記事を書いた神戸鈴蘭台高(神戸市北区)からは、2年の岸崎泰成さんが「何に力点を置いて書くかに迷った。取材を通し、経営者の地元愛に触れられた」と話した。(井上 駿)=2日付神戸新聞朝刊広域版

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 新聞を使った授業をしている学校が取り組みを語る「県NIE実践発表会」が2月1日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールであった。教員ら約80人が5校の話に耳を傾けた。
 神戸市立向洋小(東灘区)は朝の学習時間で4年生以上が新聞を読む、要約する、自分の考えを言う活動について報告。田中健二先生は「新聞は子どもと社会を結ぶ扉」と話した。
 神戸市立山田中(北区)は、生徒に気になった記事を選んで感想を書かせ、班で回し読みして考えの多様さを気づかせた。県立武庫荘総合高(尼崎市)は、SDGs(持続可能な開発目標)に関する記事を集めた壁新聞づくりなどに取り組んだという。
 養父市立建屋(たきのや)小は、英字新聞を使ったゲームを通じて英語を身近なものにする「イングリッシュ・マラソン」を児童と教員らが実演。県立神戸鈴蘭台高(北区)は、2年生の岸崎泰成さんと勝占美穂さんが、企業経営者らに取材して記事を書き、新聞をつくったことを報告した。=2日付朝日新聞朝刊神戸版

 6年生27人が、新聞の記事の読み比べにより、消費増税について自分の考えをまとめていく授業をご覧いただいた。

  10月、税率が8%から10%に引き上げられた消費税は、児童にとって自分の生活との関わりが大きいため関心も高い。授業で取り上げることで、それに関わる国会・内閣・税金などのそれぞれの働きを具体的に理解させることができると考えた。

   増税に関する3つの新聞記事を読み比べ、これまでの学習をもとに、賛成か反対かに分かれて討論を行った。読み比べにより、少子高齢化や社会保障、軽減税率など多様な見方から考えることができた。また、授業前は、「物価が高くなるから反対」という意見も多かったが、授業後は、「これからの社会のためには必要だから賛成」「一部の人しか得しないから反対」など、多様な見方をもって自分の考えをまとめることができた。

 次は授業で深めた学びをもとに、消費増税についての自分の考えを新聞投書欄に投稿する。新聞を通して社会事象への関心を高め、投稿によって社会に参画できる児童の育成を目指していきたい。
藤池陽太郎(加古川市立川西小学校教諭)(12月6日)

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    教育現場で新聞を活用するNIEの公開授業が12月5日、加古川市の市立川西小学校で行われた。6年の社会科の授業で「消費税増税」をテーマに取り上げ、児童たちが賛成派と反対派に分かれて討論した。

 児童らはこれまでの授業で、新聞記事や政府広報などを基に税金の種類や消費税の使い道などを学習。この日は、消費税増税に賛成13人と反対の14人に分かれ、意見を戦わせた。

 賛成派は「家計の負担を軽くするため、軽減税率などが導入されている」などと主張。これに対し、反対派は記事などを手に「制度が分かりづらいと思っている人が多い」「お年寄りはポイント還元を使えない」などと反論していた。

 消費税増税について自分の意見を新聞に投書することが授業の目標で、指導に当たる藤池陽太郎教諭(31)は「みんな6年後に選挙権を得る。自分の考えを持って投票に行ってほしい」と話していた。=6日付産経新聞朝刊神戸版   

    学校で新聞を活用する活動、NIE(教育に新聞を)の公開授業(県NIE推進協議会主催)が12月5日、加古川市立川西小学校で行われた。
 同小は、2018年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定され、授業で新聞を使っている。6年生は、2週間前から「なぜ消費税を増税したのか」を、海外の事例や軽減税率を紹介した新聞記事を読み込むなどして自分たちの考えをまとめてきた。
 この日の授業は6年1組で行われ、出席した児童27人が、藤池陽太郎教諭の指導で、新聞などで学んだことを基に、増税のメリットやデメリットを挙げた上で、賛成、反対に分かれ討論した。
 賛成派は「幼児教育の無償化など少子高齢化が進むなかで必要だ」、反対派は「お金持ちもそうでない人も同じ負担」など、積極的に意見を出し合っていた。
 藤池教諭によると、児童たちは普段から関心のある新聞記事を切り抜いて自分の考えをまとめており、新聞への投稿なども行っているという。=6日付読売新聞朝刊播磨姫路版

 NIE(教育に新聞を)活動の一環で、消費税増税をテーマにした社会科の公開授業が12月5日、加古川市米田町平津の川西小学校であった。児童は新聞を読んで知識を深め、賛成・反対のそれぞれの立場に分かれて意見を交わした。

 県NIE推進協議会が企画。同校は2018年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定されている。

 6年1組の授業に27人が出席。担任の藤池陽太郎教諭(31)の指導のもと、2週間かけて過去の新聞記事を読み込み消費税について考えてきた。

 児童は、新聞記事のコピーを手に賛否両論を展開。増税に賛成する児童は「社会保障費が膨らんでいる」「将来の負担を減らすために必要」「国会で慎重に話し合った結果」と主張。一方、反対派は「収入の少ない人の負担が増える」「物を買わなくなり、経済が悪化する」と指摘していた。

 高松日向さん(12)は「増税反対の立場は変わらないが、賛成する人の意見にも理解できるところがあった」と話していた。(本田純一)=6日付神戸新聞朝刊東播版

 [写真説明]消費増税は賛成か反対かー。討論する児童たち=川西小学校 ※写真は兵庫県NIE推進協議会が撮影

 児童の感想 石川久響(くおん)君「ぼくの意見と逆の意見や少し同じ意見など、いろいろ聞けて楽しかった」、熊谷誓君「討論してみて、世の中には難しい問題が山積みなんだなと思った。これからも考え続けたい」、中澤泰輝君「賛成・反対の意見とも大切だなと思った。もっといろんな人の意見も聞いてみたい」

 2年生文系生徒100人が「総合的な学習の時間」で取り組んできた「REBORN・PROJECT」の成果発表会をご覧いただいた。

 生徒が地域課題を探し、解決策を考え、地域に発信していく取り組みだ。地域課題を探す中で、生徒が2人一組のペアを組んで、4カ月分の新聞から地域課題に関する記事をリストアップするという取り組みを行った。新聞を1面から終面までめくったことのない生徒もいる中で、新聞から情報収集し、新聞を通して地域と全国の現状に触れることができたと感じている。

 そして、生徒たちは、自分たちの解決策をポスターにまとめ、地域の方々に発表を聞いていただいた。緊張しながらも一生懸命発表する姿からは、誰かに伝えたいという姿勢が強く表れていた。

 その後の研究協議では、考えたアイデアを「誰が」「どのように」実現していくのかが次の課題になるとのご指摘をいただいた。今後も、自分たちの地域や社会の問題に「自分ごと」として関わっていけるような生徒の育成が必要だと感じる。そのためにも、新聞を通じて社会・地域を見つめ、自分の世界を広げていく指導を続けていきたい。
大石昇平(津名高等学校教諭)(11月29日)

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 津名高校(淡路市)の生徒たちが地域課題を探り、解決策を考える授業「リボーン・プロジェクト」の成果発表会が11月27日、同校であった。「総合的な学習」として2017年度から続けている取り組みで、在校生のほか、行政や教育関係者、市民団体のメンバーらが高校生の自由な発想を生かした提案に耳を傾けた。19年度のNIE実践指定校による公開授業を兼ね、兵庫県NIE推進協議会が共催した。

 同プロジェクトでは本年度は、文系クラスの2年生約100人が新聞を使った地域の課題探しや関係機関への調査に取り組んできた。
 生徒は28班に分かれ、福祉や防災、観光などをテーマに、ポスターセッション形式で発表。廃校で脱出ゲームやお化け屋敷を▽祭りを動画サイトで発信▽災害に備えヘリポートの整備を▽イスラム教徒をハラル料理でもてなす―など、多彩なアイデアを披露した。今回は理系の生徒約10人も発表に加わった。
 障害者のスポーツイベント「淡路パラリンピック」の開催を提案した班のリーダー宮田紗羽さん(17)は「健常者と障害者が理解し合い、誰もが助けを求め合える社会になればうれしい」と話していた。

[写真説明]ポスターセッション形式でアイデアを発表する生徒ら=津名高校

  生徒の感想 小山莉穂さん「野良犬や野良猫の殺処分の記事を読んで解決策を考えた。考えを伝えることの大切さを学んだ」、小松優太さん「新聞から地域防災の課題や取り組みを調べた。専門用語をわかりやすく伝えることに苦労した」、向田沙奈依さん「新聞から課題を探すことで自分の視野が広がり、社会の出来事に対する見方が豊かになったと思う」

 活発な話し合いができる良い工夫はないものかと模索していたところ、NIE 全国大会宇都宮大会で、ことばの貯金箱「夢」プロジェクト代表、渡辺裕子先生の「つぶやきNEWSッス」に出合った。このワークショップに参加し、早速私の学校でやってみたい!と思ったことから、NIE公開授業をさせていただくことになった。
 さて、この授業するにあたって最も注意したことは時間配分である。記事の紹介。つぶやき。 対話 。活動の振り返り。以上の活動を適切な時間で、なおかつ授業時間内にすべて終えられるかどうか。それによって学びの質が大きく左右されると考えたからだ。
 まず初めに、授業の「めあて」「ゴール」を明確にし、授業の流れを提示する。この活動は何のためにするのか、どのように進めるのかがあらかじめ分かっていれば、生徒たちの取り組む姿勢も変わる。
 新聞を使った今回の授業は、話し合いも活発になり、考えを深めあうことができたと実感しているが、決められた教科の時間数の中で新聞を使用することの課題を克服しなければ広がらないと痛感した。これからも新聞を活用しながら、生徒たちが学ぶ喜びと楽しさを実感できる授業作りを模索していきたい。
中嶋 勝(尼崎市立大庄北中学校主幹教諭)(9月27日)

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、興味のある新聞記事を持ち寄り、感想や意見を出し合って対話を深める国語の公開授業が9月13日、尼崎市大庄北1の大庄北中学校であり、3年生34人が参加した。

 尼崎市教委の「マイスター教員による公開授業研修講座」と兵庫県NIE推進協議会の共催。同校は2018年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定されている。

 授業は、中嶋勝主幹教諭(56)が担当し、新聞を通じてメディアリテラシーを学ぶ計7回の授業「情報を読み解く」のうち3回目として行われた。生徒は4人一組の班に分かれ、いじめ自殺やあおり運転、熱中症対策など、自分が気になった記事を口頭で紹介。記事を模造紙に貼り付け、余白に各自が共感や驚き、疑問などの「つぶやき」を書き込んだ。最後に、自分が選んだ記事に書かれた「つぶやき」を読み返し、あらためて考えを班内で発表した。

 橘花音(かのん)さん(14)は「一人一人違う意見を持っていて、それをみんなで共有することは面白いし、とても大切だと思った」と話した。

[写真説明]模造紙に共感や疑問などの「つぶやき」を書き込む生徒たち=尼崎市大庄北1

 生徒の感想 佐野風菜(ふうな)さん「みんなの意見を聞いて自分が選んだ記事を深く考えることができた」、廣瀬幸喜さん「自分が選んだ記事の5W1Hなど内容を明確に伝えるのが勉強になった」

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 教育現場での新聞の活用を探る「第9回近畿NIEフォーラム」(日本新聞協会など主催)が8月20日、大阪市北区の朝日新聞大阪本社で開かれた。近畿各府県の教員や学生ら約90人が現場での実践に触れ、新聞を使ったワークショップ「まわしよみ新聞」に参加した。このうち兵庫からは約35人が参加した。

 兵庫県NIE推進協議会の秋田久子会長が挨拶。実践発表では、養父市立建屋(たきのや)小学校の安本由香教諭が、ゲームを通じて英語を学ぶ授業「イングリッシュマラソン」を紹介。英字新聞を切り抜いて英単語を完成させたり、指定されたアルファベットを見つけたりする取り組みを通じて「英語への苦手意識が、楽しむ気持ちに変わってきた」と話した。
 「まわしよみ新聞」のワークショップを前に、日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さんが「新聞読み比べの勧め」と題して講話。「まわしよみ新聞」は、気になる記事を切り抜いて壁新聞を作る過程で、話題を共有する。発案者で「NPOまちらぼ」代表の陸奥賢さんが指導。参加者は班に分かれ、全国紙やブロック紙、地方紙から興味のある記事を紹介し合い、壁新聞にまとめた。
 姫路市立朝日中学校の佐伯奈津子教諭は「さまざまな世代の人と話し合うことで気づくことが多い。子どもたちにとっても、新聞をめくるだけで新たな発見があると思う」と話した。

[写真説明]「まわしよみ新聞」のワークショップに取り組む参加者=大阪市北区中之島2

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 2019年度NIE兵庫セミナー(兵庫県NIE推進協議会主催)が7月5日、神戸市中央区のよみうり神戸ホールで開かれた。県内の小中高校、大学の教員ら約50人が参加した。  記者授業では、共同通信の儀間朝浩神戸支局長が、イラク戦争やペルーで発生した日本大使公邸人質事件の取材経験について語った。続いて、同協議会コーディネーターの田中茂典さんが人権学習、秋田久子会長がNIE(教育に新聞を)の展開について、それぞれ授業例を紹介した。

 人権学習では、性別を巡る不適切な取材をしたテレビ番組が批判を受けた問題について、各自の考えをグループで討論=写真。続いて「自分がされたら嫌なこと」を模造紙にまとめ、人権についての意識を深めた。  NIE展開では、新聞の投書欄で好きな投稿を見つけ返信を書いてみる、気になるテーマを定点観測し、自分の将来について考えてみる、などが紹介された。
 淡路市立志筑小学校の南志乃婦教諭(53)は「NIEを通じて、多様な考え方があることを子どもたちに知ってほしい」と話した。
(太中麻美)=6日付神戸新聞朝刊

tyoukaku.jpg sinnpo.JPG download20190415.jpg  NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会の設立20周年を記念し、学校での新聞活用事例を紹介する実践発表会(神戸新聞社など後援)が2月1日、神戸市中央区の市産業振興センターであった。小、中、高、特別支援学校計7校の生徒らが教諭と取り組みを発表した。
 養父市立建屋(たきのや)小学校では、英字新聞を使った課題をこなしたり、記事からアルファベットを探したりする「イングリッシュマラソン」を開催。授業では外国語指導助手(ALT)と連携し、新聞の音読や単語を探した。「知っている単語を見つけるとうれしかった」と6年の藤原璃人(りひと)君(12)。坂本和宏教諭は「目からも『英語のシャワー』を浴びることは、読み書きの力にもつながる」と指摘した。
 また、県内の特別支援学校で初めて実践校に指定された神戸聴覚特別支援学校(神戸市垂水区)は、小学部から高等部まで毎日のように新聞を作り、模擬取材にも挑戦した。高等部2年の伊野翔さん(16)は「分かりやすく伝えるのが難しい。言葉を磨きたい」。村上優江(まさえ)教諭は「聴覚障害のある子どもにとって、新聞などの文字情報を取捨選択し、文章で主体的に発信する力を養うことは、自立につながる」と語った。=2日付神戸新聞朝刊 

写真:手話を交え、発表する神戸聴覚特別支援専門学校の生徒(上左)、高校生によるシンポジウム。新聞を通用した授業について活発に意見を交わした(上右)、ゲームを通じて英語を学んだ「イングリッシュマラソン」を再現する養父市立建屋小学校の児童ら(下)