セミナー・発表会・公開授業

【神戸大会リレー寄稿】③浜脇中学校のNIE実践

 西宮市立浜脇中学校は兵庫のNIEの代表的活動校の一つだ。NIE全国大会神戸大会2日目(8月1日)の分科会では、公開授業と実践発表、ポスター発表すべてを行っていただいた。当日の模様を、同校の野上耕佑教諭の寄稿で振り返る。

 公開授業に登場する「NIEノート」とは、全校生約800人が週1回、自宅で新聞記事を選んで感想を書き込むノートのことだ。各学級では社会科授業の冒頭、生徒たちが意見交換し、数人が記事を選んだ理由や調べたことを発表している。

<公開授業>「NIEノート」を通して、主権者としてのまちづくり~住み続けられるまちづくりを目指して、企業と地域との連携」=分科会第1部

250824hamawakityuunojixtusen○.jpg  渋谷仁崇主幹教諭による公開授業のテーマは「新聞から考える、いのち輝くまちづくり」。3年生が各自の「NIEノート」に貼った切り抜き記事や書きためた感想をもとに、災害、熱中症、ジェンダー平等などの社会課題について意見を発表した。自分ごととして捉えているかがポイントだ。

 車いすを利用する生徒が「災害時に必要なのは、普段からの声かけ」と語った場面では教室全体が静まり返り、少し緊張していた生徒たちに聞く姿勢が自然と生まれた。津波注意報の誤認経験をもとに「情報の受け取り方が命に関わる」と語る生徒もいた。新聞が「命を守るメディア」であることを実感する授業となった。

 公開授業には全国各地の約200人が参観し、「生徒の視点が鋭い」「社会課題との関係性が明確」との声をいただいた。大会初日(7月31日)にジャーナリストの池上彰さんが司会を務めたパネル討議「情報で、命を守る」、作家の小川洋子さんによる記念講演「言葉は人をつなぐ」があった。公開授業がそれぞれのテーマを教育現場で具体化する場となったなら幸いだ。長年の新聞活用の取り組みを通じ、生徒が命を守り、自身と社会とつなぐ力を育んできたと感じた。

[写真説明]事前に書いてきた自身の「NIEノート」を発表する生徒たち=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス

<実践発表>「アイデアミーティングで住み続けられるまちづくりをデザインしよう~SDGs学習、ジュニアEXPOを通して地域産学との連携」=分科会第2部

 公開授業後には渋谷仁崇主幹教諭による実践発表が行われ、浜脇中学校のNIE活動の全体像が紹介された。本校は新聞を入口として「いのち輝くまちづくりを考える」をテーマに、全校生が「NIEEノート」に取り組んでいる。

 ジュニ アEXPO2025との連携では、新聞記事から課題を抽出し、地域企業や大学と協働して「まちづくり」を考察。防災、福祉、環境、テクノロジーなど多様な視点から、命を守り、輝かせる社会のあり方を探究している。

 また企業人や新聞記者との対話や、地域の小学校、高校、中央図書館との協働を通じて、メディアリテラシーや主権者としての社会性の育成も図っている。今後も、生徒一人一人が「社会の一員として命を考え、まちをつくる力」を育めるよう、新聞教育の可能性を探り続けていきたい。

<ポスター発表>「衆議院選挙模擬投票」=写真㊦

 2024年10月27日に行われた衆議院選挙に合わせ、本校3年生288人(当時)を対象に、兵庫7区(西宮市南部、芦屋市)の模擬投票を行った。事前に、神戸新聞社記者による出前授業や、各新聞社のボートマッチを通してどこに投票すべきなのか考えさせた。また、開票後には実際の結果と比較し、考察を行い、生徒たちが「1票の重み」を実感する経験となった。

 ポスター制作では、生徒の「NIEノート」や模擬投票の様子の写真を用いて、見た人が分かりやすいように仕上げた。また、実際の投票結果の比較を載 せ、関心を持っていただけるよう意識した。実施後に行ったアンケートでは、「ポスターのレイアウトが素晴らしい。発表のポイントがよくわかった」「政治への関心が高まるとてもいい取り組みだと思う」といった意見をいただいた。

 生徒が選挙を「自分ごと」として捉える機会になる。さまざまな学校で取り組んでいただけるとうれしい。                                ポスター.pdf

野上耕佑(西宮市立浜脇中学校教諭)(8月24日) 250824hamawakityuuposuta-.JPEG

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