※2月12日の姫路市立網干西小学校の公開授業を担当した北山順公教諭、小谷由紀教諭、網干高校の佐々木浩二教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。
私たちの防災(小高連携授業)
授業者:北上 順公、小谷 由紀、佐々木 浩二
◎本時のねらい
同じ地域で過ごす小学生と高校生が、防災について自分たちで調べたことを伝え合う活動を通して、地域の防災力を高める必要性に気づき、地域の「共助」に関して自分にできることを具体的に考える。
小学生...総合的な学習の時間、社会科
高校生...総合的な探究学の時間、地理総合、地理探究
◎実践内容
小学生
新聞記事より、地震など自然災害について知り、総合的な学習の時間の防災学習のスタートとした。自分の気になる災害について新聞だけでなくインターネットや図書館などで調べ、まとめた。次に同じテーマの者同士でグループを作り、防災に関する壁新聞としてまとめ、発信することとした。発信の場は2月12日の公開授業と26日の参観日。公開授業では「網干地区 防災会議」と題して、発表を高校生に見てもらい、網干地区の未来を担う若者として共に防災について考える。参観日には、1年間の成長を保護者に見てもらい、地域の防災(ふるさと網干の防災)について子どもたちの学びや思いを知ってもらうことを目的とした。
発表に向けて、班ごとに発表の方法や内容、分担を考え何度も練習をした。興味を持って見てもらえるように、また、わかりやすく納得してもらえるように指示棒などの小道具を使い、見せ方の工夫をした。発表は、壁新聞を使ってどの班もとても一生懸命生き生きと発表できた。小学生は主に「自助」についての発表となった。高校生の発表からは、網干地区の「公助」の様子がわかり、自分たちは公助によって守られていることが実感できた。最後に高校生からは「共助」が必要であることの提案があった。高校生と共に、「共助」を実践するために自分たちができることを考えた。高校生がヒントを与えてくれたり、進めてくれたりして、班で出た意見をまとめ発表した。「網干地区 防災会議」は思いやりや優しい心で地域と共に命を守ることができる「共助」の心を大切にしていく決意をして締めくくられた。
高校生
2年生(151人)を中心に地理総合の授業を週2時間、総合的な探究の時間を週1時間行っている中で、「防災と都市」という分野で35人が選択し、4月から探究活動を始めた。当初は「世界の災害・日本の災害」を学びながら進め、24年度は、「阪神・淡路大震災30年」の年でもあり、生徒も熱心に取り組んでいた。夏季休業中は、テーマごと(建築・土木・都市・医療・看護・救急・歴史・地名・ことわざ・災害伝承・避難所・企業など)に分かれて、「兵庫県の防災」についてのレポートをまとめ、9月に中間発表を行った。
生徒の見学先...阪神淡路大震災記念館(人と防災未来センター)、Eディフェンス(兵庫耐震工学研究センター)、明石海峡大橋と橋の科学館、北淡震災記念公園(野島断層保存館)、姫路市防災センター(耐震・免振・制震の仕組み見学)、姫路市・たつの市にある防災遺構(畳提・千本松跡・火の見櫓など)や防災設備(ポンプ場・砂防ダム・河内遂道など)を自転車で巡る班もあった。
9月以降は、沖縄への修学旅行に向けての事前学習で、沖縄の災害にも関心を持ち調査した。日本各地で起こっている災害に対して関心を持ちながら、2月に行われる網干西小学校での連携授業に向けて準備を始めた。
小学校の教員と高校の教員が授業を共同して創る過程では、授業のめあて・目標を立て、授業の展開を考え、最後のまとめまで、教員相互がアイデアや意見を出しあって、指導案にまとめることができた。
話し合いの中で、小学5年生が取り組んでいる「防災壁新聞」、高校2年生が取り組んでいる探究活動の内容を紹介しながら本番を迎えることができた。
高校生は多様なテーマに分かれて防災を探究することができ、その成果の一部を網干西小学校の児童にも伝えることができ、共に学び合えたことは、将来起こる災害に対する「共助」につながる活動になったと確信している。
◎展望
異校種間連携として小高では理解度の差があるのではと心配した。しかし、「網干地区」という共通の課題であったこと、網干高校では「地域防災」「防災ツーリズム」として地域の防災に特化して調査・研究を進めているため、小学生にとっては高校生の調査結果は自分たちが調べ得なかった内容で新たな発見となったこと、高校生が小学生にもわかりやすくスライドの作成や発表をしてくれたことによって両者でしっかりと話し合い活動ができた。今後も、テーマを変えてこのような異校種間連携ができればと思う。この連携がまさに「共助」につながるものであると考える。「網干地区 防災会議」は防災訓練と共にさまざまな形で行われてもよいのではないかとも思う。今回、NIEでつながった小高連携を今後も継続できればと考える。