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【神戸大会リレー寄稿】⑪ ICT×NIE最前線

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新聞は社会の「のりしろ」

 NIE全国大会神戸大会の分科会では、愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)と神戸新聞社が「ICTで拓くNIEの新たな地平~新聞の信頼性を確保するために~」と題し、実践発表を行った。

 社会が目まぐるしく変化し、新しい技術が次々と登場する中で、NIEはICT(情報通信技術)とどのように向き合っていくべきか--という視点からの発表となった。

 学校教育の立場からの報告では、愛徳学園での国語科・社会科の授業実践から、ICTを利用することで見られた変化やメリットについて言及させていただいた。その上で、NIEの場面においては、取り扱える情報量が圧倒的に増えること、情報の交換が容易にでき、編集をじっくり行えることで、活動の幅が大いに広がる可能性について指摘した。

 新聞社の立場からは、神戸新聞社の新聞づくりアプリ「ことまど」の利用例についての報告があり、テンプレートの利用によって本格的な紙面の作成や編集が容易にできること、文字数が制限されていることで工夫の余地が生まれることなどのメリットが紹介された。

 私たちはさらに、ICTやSNS(交流サイト)の普及によって、対立や分断が加速する現代におけるNIEの役割を、「新しい地平」として提案した。

 不正確な情報が広がる中で、確かな情報を発信する新聞の役割は重要であり、新聞の確かな情報を社会の「のりしろ」とすることで、情報をベースにした意見の交換や交流など、議論が成り立っていくのではないか、というのがその趣旨である。

 助言者の井上幸史・姫路市立英賀保小学校長(日本新聞協会NIEアドバイザー)からは、ICTを使う人が仕組みを理解し、正しい知識を得ることが必要ではないか▽自分が取材をして確かな情報にもとづいて新聞を作る経験をすることも「のりしろ」の形成に役立つのではないかーというご指摘をいただいた。

 講評では、法政大学の坂本旬教授から、取材は信頼関係がなければ成立しないことを理解すること▽AI(人工知能)の仕組みを理解することが必要である--と指摘していただくとともに、新聞などの表現は多様な人が多様に表現し、多様に読むものであるということを前提に、批判的かつ対話的に考え、議論を深めていく必要があると締めくくっていただいた。

 「新聞は社会の『のりしろ』」をキーワードに、人と人とをつなぐ実践をこれからも心掛けたい。

廣畑彰久(愛徳学園中・高校教諭)(9月10日)

[写真説明]「ICT×NIE」はどんな化学反応を起こすかー。実践発表する愛徳学園中・高校教諭(左から2人目が筆者)と神戸新聞記者(右端)=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス