セミナー・発表会・公開授業

【神戸大会リレー寄稿】②豊富小中学校のNIE実践

 姫路市立豊富小中学校は兵庫のNIE活動をけん引する学校の一つだ。NIE全国大会神戸大会2日目(8月1日)の分科会では、公開授業と実践発表、さらにポスター発表も行っていただいた。当日の模様を、担当した先生方の寄稿で振り返る。

 <公開授業>「新聞で開くメディアリテラシー~全国の子ども新聞から迫る、情報の向こう側~」=分科会第2部

 250820toyotomisyoutyuu.jpg公開授業では、東日本大震災を扱った異なる新聞記事を読み比べ、その内容の違いから、発信者の思いや意図を探った。同一の震災を取り上げた記事でも、地域や時期によって焦点が異なる。比較することで違いが浮き彫りとなり、子どもたちは情報の背景にある発信者の思いなどを推し量ることができた。

 さらに、実際に記事を書いた神戸新聞記者から作成の経緯や取材時の思いを聞いた。授業を通して子どもたちは、新聞記事は決して無機的なものではなく、その向こう側には人がいることを実感してくれたのではないか。

 歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリは、情報を、さまざまな点をつなげてネットワークにして新しい現実を創り出すものだと説明している(『ネクサス:情報の人類史(上)』河出書房新社、2025)。

 新しい現実は、情報の発信者と受信者の相互作用によって形づくられるもの。新聞記事は単なる情報媒体ではなく、人と人をつなぐコミュニケーションの場といえる。だからこそ、情報から豊かに意味を紡ぐ知性と責任を持った主体的な受信者であってほしい。そんな子どもたちの姿を目指し、歩みを進めた1時間となった。

前野翔大(前期課程教諭)

[写真説明]東日本大震災の発生時と2025年の神戸新聞記事の異なる点を考える児童たち=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス

 <実践発表>「『?』を『!』に 新聞から始まる継続型探究学習~姫路の魅力発見! 未来への夢プラン~」=分科会第1部

 私たちが取り組んだのは、義務教育学校の特徴を生かした前期課程(6年生)から後期課程(7年生)にまたがる探究活動である。

 新聞を入口としてスタート。子どもたちは新聞記事から地域の課題を発見し、そこから自分たちの興味・関心を深めていった。その後は実際に姫路の魅力について現地調査を行い、深い学びへとつなげた。そして、神戸大会で集大成となる姫路の魅力を伝える実践発表を行った。

 参加した生徒の一人は振り返って、「当たり前ではない貴重な経験ができた。6年生の時から仲間と一生懸命に調べ、工夫して発表した」「発表後には多くの方から『よかったよ!』と声をかけてもらい、とてもうれしかった」と語った。大きな達成感を味わったようだ。

 この経験は、子どもたちにとって、自ら課題を見つけ、解決する力を育む大きな一歩となった。今後も、地域に根差した探究活動を継続していきたい。

川村かおり(前期課程教諭)、古寺和子(後期課程教諭)

 <ポスター発表>「豊富小中学校のNIEを紹介せよ!」=写真㊦ 

 このたびは、NIE神戸大会でポスターを発表する貴重な機会をいただいた。

 本校のNIE活動を「紹介せよ!」というミッションのもと、ポスターにまとめた。ポスター制作にあたっては、普段の活動で子どもたちが実践している工夫を取り入れた。たとえば、新聞や広告の文字をちぎってコラージュする手法を使い、視覚的に訴えるポスターに仕上げた。また、お気に入りの記事を紹介し合う際に使用している「吹き出しカード」にコメントを書き込むことで、活動の様子を生き生きと伝えられるよう努めた。

 テーマは「つくるとつかう」「情報活用能力とメディアリテラシーの育成」。言葉の力をつけるための「朝の学習タイム」の取り組みについても、低学年から高学年、そして後期課程まで段階的に紹介した。

 ポスターに込めた私たちの思いが、全国から集まった皆さまに伝わったならうれしい。未来へ向けて、子どもたちが自ら考え、判断する力を育むNIE活動を続けていきたいと改めて決意した。この貴重な経験を今後の活動に生かしていきたい。              ポスター.pdf

代表=川村かおり(前期課程教諭)(8月20日) 250824toyotomisyoutyuposuta-.JPEG

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