俳句の町・松山からの参加ということで、分科会第2部、姫路市立飾磨中部中学校の実践発表「NIE俳句~記事の写真から豊かにイメージしよう~」の講評を担当させていただいた。
発表者の佐伯奈津子先生は、2023年のNIE全国大会松山大会で「クロヌリハイクワークショップ」に参加したことをきっかけに、NIE実践に俳句を取り入れたという。愛媛から神戸へと、NIEの糸がつながっていることに喜びを感じた。
今回の分科会でも「クロヌリハイク体験」の時間が設けられ、参加者は配布された新聞記事から季語などの言葉を選び、周囲を黒く塗りつぶして俳句づくりに挑戦した。制作時間は10分弱と限られていたが、多くの参加者が一句を詠むことができ、記事から言葉を探すことで作りやすくなるというクロヌリハイクの長所を改めて実感した。
続いての発表では、新聞に掲載された写真を題材にした俳句づくりの取り組みが紹介された。生徒それぞれが俳句づくりに取り組む前に、写真から連想される言葉を皆で出し合う時間が設けられ、語彙(ごい)が少ない生徒でも発想を広げやすくなるよう工夫されていた。見出しや記事本文から言葉を選ぶことも可能で、クロヌリハイク同様、誰もが取り組みやすい点が魅力である。
新聞記者が写真を撮る際には、なるべく人物を入れて撮影する。人物が入ることで写真に温かみが出て、現場の雰囲気がより伝わりやすくなる。そうした写真は情景を想像しやすく、俳句の題材としても適している。実際に授業で使用された、菜の花畑に立つ親子の写真からは、「暖かい陽射し」「春風」「ほのぼの」といった豊かなイメージが広がっていた。
佐伯先生は「俳句づくりを通して、日本の四季や言葉選びに敏感な生徒に育ってほしい」と語っており、その思いに深く共感した。言葉を丁寧に選び、情景を想像する力は、子どもたちの内面を豊かにし、これからの社会で求められる力につながると感じた。
意見交換会では、秋田、山梨、愛知、鹿児島など全国各地から参加した先生方から活発な質問や意見が寄せられ、「自校でも実践してみたい」との声も聞かれた。佐伯先生の「特別な取り組みではなく、いつでも誰でも取り組めるNIEを紹介したい」との言葉に、参加者は笑顔でうなずいていた。
神戸から全国へ、NIEの糸がさらに広がってゆくことを期待している。
村上 ともこ(愛媛県NIE推進協議会事務局長、愛媛新聞社地域読者局読者部副部長)(8月18日)
[写真説明]NIE俳句の実践発表。神戸大会2日目の分科会では4つの公開授業、22の実践発表、特別分科会、ワークショップが行われた=神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス