大学、職場でも新聞活用を 実践の教員ら討議 NIE神戸大会2日目
NIE全国大会神戸大会の最終日は、神戸市東灘区の甲南大学であり、教育現場で新聞を活用する「NIE」を小中学生、高校生だけでなく、大学や職場でも実践する動きが広がっていることをテーマに議論する特別分科会が企画され、大学教授ら3人が登壇して、情報を読み解く力の重要性について考えた。
登壇したのは、兵庫教育大学大学院の福田喜彦教授(48)▽流通科学大学の竹内信行准教授(45)▽神戸市職員研修所の中川尚子副所長(53)。神戸新聞社の勝沼直子論説委員長がコーディネーターを務めた。
情報を読み解く力は、選挙権年齢の引き下げや交流サイト(SNS)の普及に伴い、世代を超えて求められている。「新聞の読み方」を大学の授業で教える竹内さんは「身構える学生は多いが、授業を重ねると『見出しを眺めるだけでも日々のニュースが分かる』と納得してくれる」と手応えを語る。
神戸市では2019年度から、新人職員に希望する新聞を公費で提供し、要約する力や情報発信の手法を学ばせている。リポートの講評は新聞社に依頼しており、中川さんは「行政の仕事でも、市民に対して『どう伝えるか』が重要になる。研修の効果は高い」と力を込めた。
福田さんは新聞の役割を「過去を学ぶ財産」と位置づけ、「人が書き、チェックし、発信するプロセスを経て、記録として残っていることが大切」とする。竹内さんも「新聞はいわば1日分の『まとめサイト』。(購読数は減っているが)1周回って評価される」と期待を込めた。
一方で、NIEの活動は一部の教科や教員に限定されているとして「組織全体の方針を掲げ、複数の教科や学年で取り組むべきだ」という意見も。情報通信技術(ICT)の積極活用や、企業や地域との連携の幅を広げるよう求める声もあった。(久保田麻依子)
[写真説明]
大学生と社会人を対象にしたNIE活動が紹介された特別分科会=1日午前、神戸市東灘区岡本8(撮影・笠原次郎)