2025年9月アーカイブ

250802nieheimaku.jpg各新聞社の関連記事を紹介しています

 「第30回NIE全国大会神戸大会」(主催=日本新聞協会、主管=兵庫県NIE推進協議会・神戸新聞社)が7月31日~8月1日、神戸市内で開かれ、全国各地から教育やメディア関係者約1800人に参加いただきました。

  多様なメディアと情報にどう向き合うか、教育現場でどう新聞を活用するかについて考える2日間になりました。酷暑の中、全国から参加いただき、ありがとうございました。  

 記事(神戸新聞)はこちらからお読みいただけます。

神戸でNIE全国大会開幕 新聞生かし命守る教育を

基調提案 行動する力 新聞が育む

佐渡さん スーパーキッズと熱演 NIE神戸大会で開幕演奏

ファッション都市 神戸からドレス作品を発信 「新聞女」西沢さん NIE神戸大会

新聞で学んで 教育現場の活用例をブースで紹介 NIE神戸大会

NIE全国大会閉幕 防災、平和 新聞で深めた学び

活動をポスターで紹介 全国71校・団体・新聞社 NIE神戸大会2日目

大学、職場でも新聞活用を 実践の教員ら討議 NIE神戸大会2日目

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 記事(読売新聞)はこちらからお読みいただけます。

情報とは 思い語る 小川洋子さん「小説のヒントの宝庫」 全国大会開幕

「ツッコミ」や漫画 活用術 全国大会閉幕 実践発表など

8月2日付朝刊淡路版「ミニコミ紙 地域交流 分科会 洲本高取り組み」.pdf

8月31日付朝刊 特集「命守る力 新聞から気づき」.pdf

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記事(朝日新聞)はこちらからお読みいただけます。

教育に新聞を、神戸で全国大会

「教育に新聞を」神戸でNIE全国大会 作家の小川洋子さんが講演

NIE全国大会、閉幕

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 記事(毎日新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月1日付朝刊社会面・兵庫県版「情報が世界広げる 小川洋子さん講演」、2日付朝刊兵庫県版「紙面上に『生徒の興味』 県内教員らが事例報告」.pdf

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 記事(新潟日報)はこちらからお読みいただけます。

小学生防災士の活動を紹介! 新発田市の小学5年生・大竹葵さんらのポスター展示 神戸でNIE全国大会

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記事(愛媛新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月19日付~20日付朝刊生活面 パネル討議.pdf

8月21日付朝刊生活面 実践発表より 新聞データベースの活用.pdf

 ※愛媛県からの大会参加者の感想はこちら(愛媛新聞オンライン)からお読みいただけます。

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 記事(下野新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月8日付朝刊1面「雷鳴抄」.pdf

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記事(琉球新報)はこちらからお読みいただけます。

防災・減災教育における新聞の役割議論 NIE全国大会、神戸で開幕

8月14日付朝刊特集面「いのち守る学びへ」.pdf

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記事(産経新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月1日付東京本社版・大阪本社版朝刊3社面「『情報氾濫時代、新聞の活用を』 神戸でNIE全国大会」

8月16日付東京本社版朝刊 学ぼう産経新聞増刊号「新聞記事に『ツッコミ』を NIE全国大会 北神戸総合高が公開授業」/8月27日付大阪本社版夕刊2社面

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記事(山陽新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月29日付朝刊12面「新聞から時代読み命守る」.pdf

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記事(岩手日報)はこちらからお読みいただけます。

8月21日付朝刊10面「時代読み解き命を守る」.pdf ※岩手日報社の許諾を得て転載しています

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記事(山陰中央新報)はこちらからお読みいただけます。

9月3日付朝刊特集面「時代を読み 活用する力育てる」.pdf

 ※島根県のNIEアドバイザーの全国大会レポートはこちら(島根県NIE推進協議会サイト)からお読みいただけます。

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記事(新聞情報)はこちらからお読みいただけます。(抜粋)

8月20日付新聞情報.pdf

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記事(大分合同新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月25日付朝刊特集面「大分から参加 先生の声」.pdf

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記事(中国新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月1日付朝刊社会面.pdf   8月2日付朝刊社会面.pdf

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記事(信濃毎日新聞)はこちらからお読みいただけます。

9月1日付、8日付朝刊特集【NIE神戸大会から

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記事(静岡新聞)はこちらからお読みいただけます。

8月1日付朝刊24ページ.pdf   8月2日付朝刊22ページ.pdf

9月7日付朝刊特集「月刊 一緒にNIE@しずおか」.pdf

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記事(北海道新聞)はこちらからお読みいただけます。

9月29日付朝刊教育面.pdf 

   ~「やさしさ」を問い直す~                                                             グラレコ.pdf250928yasasiinihonngogurareko.jpg

 「やさしい日本語」とは、外国人や小さい子どもも理解しやすい日本語のことだ。2024年8月、兵庫で発足した「新聞をつかった『やさしい日本語』研究会」の7回目となる交流会が9月24日、オンラインで開催された。今年夏の「NIE全国大会神戸大会」でのご縁がつながり、兵庫のほか、京都、滋賀、大阪、さらには長野、沖縄から、新聞関係者や「入門・やさしい日本語」認定講師、日本語教育関係者、元アナウンサー、教員など、多様なメンバーが参加した。この異分野のメンバー構成こそが、本研究会の活発な議論を支える土壌となる。

 新聞関係者は今回初めて、NIE神戸大会の実践発表(発表者=福田浩三・兵庫県立伊川谷高校主幹教諭)で研究会のことを知った、琉球新報社(沖縄県)と信濃毎日新聞社(長野県)から参加があった。

 今回のテーマは「1年間を振り返って~いままでとこれから」。発足から約1年間の活動を総括しつつ、やさしい日本語を活かしたNIEの可能性について議論を深めた。         

 参加者の自己紹介の後、これまでの6回の研究会を振り返り、関心の高かったトピックについて共有した。やさしい日本語の実践者には「はがき新聞」(はがき大の用紙に体験したことや学んだことを新聞形式で表したもの)も実践している人がいる。「なぜ、両者に親和性を感じたのか」という問いを中心に、議論が深まったのは大きく2点である。

 1点目は、はがき新聞の魅力と可能性について。やさしい日本語は、わかりやすくするために文を区切ったり、具体的に説明したりするため、文章が長くなる傾向がある。一方、紙面上の制約があるはがき新聞は、要点をまとめ、シンプルに伝えなければならない。両者が融合することで、簡易で簡潔な伝達が可能になる点に改めて着目した。見出しの付け方や写真・イラストの選び方といった、新聞作りの重要な要素を学ぶ上でも、はがき新聞は、やさしい日本語と新聞を結びつける、NIE活動を展開する上で効果的なツールであることを再確認した。

 はがき新聞に関する講習経験が豊富な記者からは「はがき新聞だからこそ、相手に届けるものであってほしい」というコメントが寄せられた。単に書いてまとめるだけでなく、「届ける」という相手意識・目的意識も大切な視点である。

 2点目は、「中学生でも理解できる」と言われる新聞は、「果たして本当にわかりやすく伝えられているのか」という、本質的な問いである。ルビを振ることや「です・ます」調にすることは、確かに読みやすさにつながる。しかし、それは表面的な「読みやすさ」に留まり、内容を深く理解するための「理解へのやさしさ」につながっているのだろうか。

 研究会では、「文法としてのやさしい日本語」と「表現としてのやさしい日本語」、「わかりやすく伝えること」と「やさしさ」の意味について意見を交わした。この日の内容は、添付しているグラフィックレコーディング(グラレコ)も参照いただきたい。

 さて、第8回研究会は「新聞にツッコミを!」というテーマで、実践的な内容で開催を予定している。西日本新聞社(本社・福岡市)がオンラインで公開している「やさしい日本語に翻訳したニュース」を取り上げ、元の新聞記事がどのようにやさしい日本語に変換されているのかを分析する。せんえつながら元の記事にツッコミを入れ、やさしい日本語と新聞活用の可能性について模索していく計画だ。

 本研究会は、こじんまりとしたゆるやかな場を通して、「すべての人に、わかりやすく情報を届ける」という大切な目的に向かい、それぞれの立場から活発に意見交換している。新聞活用や「やさしい日本語」にご関心のある方はお気軽にご参加ください。多様な視点に触れ、新たな気づきを得るきっかけになれば幸いである。

井上 幸史(姫路市立英賀保小学校長、日本新聞協会NIEアドバイザー)(9月29日)

[写真説明]7回目の研究会の様子を描いたグラフィックレコーディング(グラレコ)=作成・井上幸史。グラレコは、会議などの内容を文字や図・イラストで記録したもの。「NIE全国大会神戸大会」でも導入した

 昨年8月、兵庫で発足した「新聞をつかった『やさしい日本語』研究会」の第7回交流会が9月24日、オンラインで開かれた。交流会には、今年夏の「NIE全国大会神戸大会」の実践発表で研究会のことを知った、琉球新報社(沖縄県)と信濃毎日新聞社(長野県)からも参加があった=詳報はこちら

 神戸大会を機に、兵庫県内外の教員や新聞関係者の間で「NIE交流」が始まっている。それは、主管団体の兵庫県NIE推進協議会が思いえがいていた以上に活発だ。

 神戸大会で「新聞を通して学ぶ」と題して実践発表した、神戸市立鶴甲小学校。同校の6年生たちが9月25日、鹿児島県南さつま市立川畑小学校の5年生たちとオンラインで交流、学校や地域の様子を紹介し合った。大会に参加した川畑小の教員から「新聞作りをテーマに交流したい」と連絡があったという。今後も川畑小児童が作った新聞の発表会などが計画されている。

 戦後80年の今年、「ヒロシマ」をテーマに実践発表した愛徳学園小中学校(神戸市垂水区)。実践発表の助言をお願いした、広島県呉市立荘山田小学校の高下千晴教諭との間で、来年2月、両校の児童同士が平和学習をおこなうことが決まった=高下教諭の寄稿をリレー寄稿の最終回に掲載予定。

 神戸大会が終わって、もう2カ月になる。大会2日目(8月1日)の分科会は2部制とし、計26の公開授業と実践発表を行った(ほかに特別分科会とワークショップを実施)。参加者からは「とても回り切れない」との感想もいただき、「3部制にした方がよかったか」との思いもよぎる。

 ただ、数多くの全国紙、地方紙に掲載された、大会の記事や参加された先生方の感想は、計26の公開授業と実践発表に満遍なく触れられており、すべての取り組みが紹介された。多様なニーズに応えることができたようにも思う。

 あと、今大会で心がけたことがある。大会1日目に記念講演した芥川賞作家・小川洋子さんに依頼し、今年1月、実践校の一つ・西宮市立浜脇中学校のNIE授業を参観してもらったことだ。1日目の記念講演やパネル討議と、2日目の分科会をどうつなぐか、ずっと考えてきた。

 新聞を使った授業を見るのは初めてという小川さんは生徒のグループに加わって、熱心にメモを取り、生徒の意見に耳を傾けた。単なる授業参観ではなかった。生徒たちにとっても忘れられないNIE授業になったのではないか。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(9月29日)

[写真説明]「言葉は人をつなぐ」をテーマに講演する小川洋子さん=7月31日、神戸市中央区港島中町6、神戸ポートピアホテル

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 教育現場で新聞を活用する「NIE」活動の一環として、姫路市立あかつき中学校(同市市之郷町)で9月25日、産経新聞神戸総局の香西広豊記者が「新聞記者の仕事」をテーマに出前授業を行い、生徒ら約20人が聞き入った。

 同校は2年前に開校した夜間中学で、多様な国籍と幅広い年代の生徒が在籍し、現在、日本だけでなくベトナムやフィリピンなど出身の10~90 代の生徒らが通っている。「生活につながる学び」を積極的に取り入れ、普段の授業でも新聞を活用している。

 香西記者は授業で自身が記者になった理由や仕事内容、取材時に使う機器や道具などを紹介。授業の後半には実際の記事を使って、記事を読み取る方法を解説し、「写真と見出しだけでも内容を理解することができる」と伝授した。

 授業後、生徒から「新聞記者の仕事で大切なことは何か」などの質問があがり、JR福知山線脱線事故の取材での経験を紹介。遺族の元へ足しげく通って心の距離を縮めていったエピソードを交え、コミュニケーションの大切さとコツを説いた。

 出前授業を受けたベトナム国籍のグエン・ティ・ビッチ・ゴックさんは「新聞を普段からよく読む」といい、今回の授業について「分かりやすくて面白かった」と語った。=26日付産経新聞朝刊阪神・神戸、播州、淡路、但丹版

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

 NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会は2025年10月3日(金)14時10分~16時、兵庫県立洲本高校(洲本市上物部2)で公開授業を行います。

 同校の大石昇平教諭が「新聞 de コミュニケーション with ハワイ・ヒロ高校」と題して、洲本高2年生とヒロ高の生徒が日本とハワイの新聞を用いて、互いの国について学び合うNIE授業を行います。

 終了後には意見交換会を予定しています。

 参加無料。公開授業の詳細は下の案内をクリックしてご覧ください。希望者は2025年9月26日までに、一番下にある申込用紙で申し込んでください。問い合わせは同協議会☎078・362・7054

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           NIE公開授業洲本高校案内.pdf  NIE公開授業洲本高校申込書.pdf

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日経新聞支局長が講師に

 「新聞記事から『多文化共生』を考える」と題した出前授業が9月22日、神戸市西区伊川谷町長坂の伊川谷高校であり、3年生27人が参加した。同校は日本新聞協会のNIE実践校。日本経済新聞神戸支社の海野太郎支局長が講師を務めた。

 海野支局長は「在留外国人の増加を背景に、教育現場でもさまざまな問題が起きている」と説明。兵庫県立高校の卒業式で、アフリカルーツの髪型で出席した男子生徒が校則違反に問われ、隔離されたーなどの記事を紹介した。

 生徒たちに「多文化共生とは何か」と問いかけ、「まず、異なる文化や宗教を認める。迷いや試行錯誤の先に共生がある」と強調した。

 7月の参院選でクローズアップされた「日本人ファースト」や、クルド人差別問題に触れ、「『外国人の滞在増加で治安悪化』は、データをみると実態に沿った認識ではない」と指摘。「いま、外国人抜きに日本社会は語れない」として、「ムードに流されず、事実やデータをもとに考えよう」と呼びかけた。

[写真説明]「多文化共生」を考えた出前授業=伊川谷高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 数人のグループで、各自が気になる記事を選び、ワイワイと話し合いながら壁新聞を作る「まわしよみ新聞」。兵庫ではここ数年、まわしよみ新聞作りのワークをきっかけに、学校全体でNIE活動を取り組むようになったり、日本新聞協会のNIE実践校に名乗りを上げたりする小中学校が相次いでいる。NIE活動の入り口としてうってつけだし、新聞作りと演劇を掛け合わせたユニークな取り組み(後述)も人気を集める。コモンズ・デザイナーの陸奥賢(さとし)さんが2012年に発案して以来、兵庫のNIEへの貢献度は計り知れない。感謝を込めて、やっぱり、「まわしよみ新聞」!

 この9月16日、神戸市東灘区の甲南小学校で3年生52人が12班に分かれ、まわしよみ新聞を作った。使ったのは、神戸新聞写真ニュースや朝日小学生新聞、毎日小学生新聞、読売KODOMO新聞。夏の暑さ対策の記事を選んだ児童は「まだまだ暑い日が続くから大切なニュース」、米国のイラン核施設空爆を選んだのは「いいことか悪いことか分からないから」―。記事選びのセンスが光った。

 戦後80年、ヒロシマと東京大空襲の記事を選んだ班は講師の私に尋ね、神戸空襲と沖縄戦の犠牲者数(それぞれ約8千人、20万人以上)も書き込み、「今はどうか」とロシアによるウクライナ侵攻に触れた。「新聞を手にするのは初めて」という子どもも多かったが、ワイワイと授業時間の90分間いっぱいまで取り組んだ。

 同校は3年生のときのまわしよみ新聞作りを起点に、高学年で新聞活用を本格化させる。こうした展開が新聞好きの子どもたちを育て、今年夏の「NIE全国大会神戸大会」での公開授業(児童が推し記事を発表し合うシンブリオバトル)につながった。

 兵庫の代表的なNIE活動校の一つ、姫路市立豊富小中学校(2020年年4月開校)も19年夏、大阪市で開かれた「近畿NIEフォーラム」で、学校統合前の豊富小学校の教諭らが、陸奥さんの指導を受けて新聞を製作。ノウハウを持ち帰って児童たちに教えたあたりから、NIE熱がグングン高まった。

 神戸市以内には、兵庫県NIE推進協議会による「まわしよみ新聞」作りの研修に参加した学校司書が主導し、NIE実践校になった学校もある。実践指定校にならないまでも、同協議会に「まわしよみ新聞をやってほしい」とリクエストする小学校は今も多い。

 約10年前から、まわしよみ新聞作りと演劇を掛け合わせたワーク「壁新聞を演じてみよう」を行っているのは、尼崎市の県立劇場ピッコロシアター。今年8月のワークには20~70代の23人が参加し、自分たちで作った壁新聞にヒントを得て脚色した劇を創作、ユーモアたっぷりに演じた。興味深かったので、まわしよみ新聞作りの講師を務めた私も劇に参加した。

 「まわしよみ新聞」の効果はいろいろあるが、ネット時代の「情報の偏食」を防ぐアナログな実践であり、陸奥さんが言う「『新聞+他者との会話』というメディアミックス」は、大人も子どもも楽しい時間を共有できる。全国紙、地方紙、スポーツ紙、産業新聞、子ども新聞など、複数の新聞を使えば「情報を読み解く力(メディアリテラシー)も育つ」と感じている。

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2025年9月22日)

[写真㊤]まわしよみ新聞を作る3年生児童たち=神戸市東灘区、甲南小学校[写真㊧㊦]明石市立中崎小学校でもまわしよみ新聞を作った。「どこにどんな記事を置くか、めっちゃ考えた」と児童=今年6月20日[写真㊨㊦]ピッコロシアターが作成した「壁新聞を演じてみよう」のポスター。今年夏の「NIE全国大会神戸大会」に出展された                                    ポスター. pdf 

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■甲南小学校(9月16日、対象・3年生52人) 数人のグループごとに、各自が気になる記事を選び、話し合って壁新聞に仕上げる「まわしよみ新聞」のワークショップ。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。同校3年のNIE活動は毎年、ここから始まる。

児童の感想 01   児童の感想 02

湊川高校 生徒の感想

■湊川高校(9月5日、対象・3年生約20人) 沖縄戦から80年--。沖縄へ修学旅行に行く生徒らに、神戸新聞報道部の津谷治英記者が沖縄戦や神戸出身の島田叡知事(当時)のことを、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが琉球王国からの歴史や兵庫との関わりを語った。

生徒の感想

 

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神戸新聞記者が解説

 太平洋戦争末期の沖縄戦について新聞記事を使って学ぶ授業が、神戸市長田区の湊川高校(定時制)であった。10月の修学旅行で沖縄へ行く生徒を含む3年生約20人が、平和について考えた。

 湊川高は、教育に新聞を取り入れる日本新聞協会のNIE実践指定校。授業の前半は、神戸新聞報道部の津谷治英記者が話した。

 沖縄戦では20万人以上が命を落としたことに言及し、半数が民間人だったと指摘。同市須磨区出身で、映画化もされた当時の島田叡(あきら)沖縄県知事が疎開や食糧確保に尽力したことも紹介した。

 後半は、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが、沖縄の歴史や文化について解説。参加した女子生徒(17)は「沖縄でたくさんの人が亡くなったことをあらためて実感した。修学旅行ではもっと勉強したい」と話した。=9月18日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]沖縄戦について講義する津谷治英記者=湊川高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

 兵庫は広い。北は日本海に面し、南は瀬戸内海から淡路島を介して太平洋に続く。日本新聞協会のNIE実践指定校は全県に広がり、特色ある取り組みを行っている。

 今回は、県北部・但馬の養父市立宿南小学校の実践発表と、同市立建屋(たきのや)小学校のポスター発表を取り上げる。

養父市立宿南小学校
新聞作りアプリを活用して(実践発表)

250918syukunamisyo.jpg 小中学生対象の手作り新聞コンクールを山陰中央新報社(本社・松江市)で担当している。手書きの新聞は肉筆ならではの良さがあるが、日常的に取り組むには手間がかかりすぎるのが難点だ。「新聞作りアプリを使えば、もっと気軽に学習に取り入れてもらえるのではないか」と思い、養父市立宿南小学校の実践発表「新聞づくりアプリ『ことまど』を使った養父市の産業紹介」を聴講した。アプリは「伝えたいこと」を形にし、発信するのに有効なツールであると感じた。

 2024年度、6年生は地元の在来種の大豆「八鹿浅黄(ようかあさぎ)」の新聞を神戸新聞社のアプリ「ことまど」を使って作った。もとは地域の文化財を取り上げた新聞を作る予定で学習も進めていたが、学校で育てていた八鹿浅黄の収穫を機に、食べ方や背景に関心を抱いた児童が、自ら新聞にしたいと申し出たという。

 担任の菅原幹生教諭にとっては想定外の展開だったが、児童の姿に本気を感じ、授業をやりくりして生産者への取材や試食の段取りをして児童をサポートした。できあがった「八鹿浅黄新聞」には、品種がいったん姿を消して復活した背景や、農家の思いが盛り込まれ、児童の視点が学校の畑から出発し、自給率や地域活性化まで広がっていることが伝わる。

 読めばこの大豆のことがよく分かり、食べてみたくなる新聞は24年度、神戸新聞社主催の「ことまど新聞コンクール」小学生の部で金賞を受賞した。

 学校を回って児童生徒に新聞作りを教える際、一番大事なのは「伝えたいことを見つけること」と話している。大切なことを前文に書く「逆三角形」スタイルの記事や、レイアウトのうまさも読者に伝えるためには大切な要素だが、そもそも伝えたいことがないと始まらない。

 島根県でも調べ学習の成果を新聞にまとめる学校は多く、当社のコンクールにも多数寄せられる。与えられたテーマでも、その中に自分の「伝えたい」を見つけた作品は、多少、新聞の法則から外れていても読者の心をつかむ。

 レイアウトは新聞社に専門部署があるほどの難しい作業だ。伝えたいことがあるとき、アプリがこの作業を助けてくれれば、内容に磨きをかけるのに時間を割ける。書き直しが簡単なこと、文字をパソコン入力できることで、新聞作りのハードルが下がる児童生徒もいるだろう。

 実践発表では講評を務めさせてもらい、主に3つのことをお伝えした。250917youkaasagi.jpg

 1つ目は、宿南小の新聞作りには土台があること。伝えたいことを見つける探究心や思考力、新聞という媒体への慣れは、記事スクラップやスピーチなどNIE実践指定校としての継続的な取り組みが大きい。

 2つ目は、発信の大切さだ。新聞は読まれてこそ。ホームページ掲載でも展示でも、発信すれば読者から反響がある。反響は次の発信への原動力となる。

 3つ目は、アプリを使っても新聞作りが負担な児童生徒には、はがき新聞などサイズを変えて、できる範囲で取り組む工夫も有効だということだ。

 児童生徒の皆さんには、まず発信する楽しさを知ってほしい。その副産物として、新聞作りは多様な力を育ててくれると思う。                                                                                                                                                                           

清水 由紀子(山陰中央新報社NIE担当、島根県NIE推進協議会事務局長)(9月17日)

[写真㊤]「ことまど」を使った新聞作りについて実践発表する宿南小の教諭たち=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大岡本キャンパス[写真㊨㊤]「ことまど新聞コンクール」小学生の部金賞の「八鹿浅黄新聞」 PDFはこちら

                          ◆
養父市立建屋小学校
英語を学ぶ「イングリッシュマラソン」(ポスター発表)=出展されたポスター ポスター.pdf 

【神戸大会資料集のメッセージ】
 英語教育などを推進する小規模特任校である。ゲームを通じて英語を学ぶ「イングリッシュマラソン」は、兵庫県NIE推進協議会の提案で英字新聞も用いて2018年度から始まり、今では地域を巻き込んだ催しへと発展した。児童たちは学年を超えて数グループに分かれ、各教室をめぐり、外国語指導助手(ALT)らが出題する問題を解いていく。

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 新聞から気になる記事を選び合い、レイアウトを考えて壁新聞を作る「まわしよみ新聞」の出前授業が9月16日、神戸市東灘区住吉本町1の甲南小学校であった。同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。3年生52人が3~4人の班に分かれ、オリジナルの紙面を作り上げた。

 神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。児童たちは最近の神戸新聞写真ニュースや朝日小学生新聞、毎日小学生新聞、読売KODOMO新聞から各自が興味をもった記事を選び、選んだ理由を発表し合った。続いて、トップ記事を何にするかを話し合い、模造紙に記事に貼り付け、感想などを書き添えていった。

 大阪・関西万博の記事を選んだのは「もうすぐ閉幕するのがさびしいから」、夏の暑さ対策を選んだ児童は「まだまだ暑さが続くから大切なニュースだと思った」、米国のイラン核施設空爆を選んだのは「いいことか悪いことか分からないから」。子どもたちの記事選びのセンスが光った。

 「まだまだ暑いよ」と書き込み、涼感漂う折り紙数点を貼り付けた新聞もあった。

[写真㊤]まわしよみ新聞を作る3年生たち=甲南小学校[写真㊧㊦]児童の作品の一例              

児童の作品◎.jpg児童の作品 1(4グループ).pdf

児童の作品 2(4グループ).pdf

児童の作品 3(4グループ).pdf

※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにもリポート「やっぱり、『まわしよみ新聞』」が掲載されています。リポートはこちら 

 気になる新聞記事を選んで、わいわいと話し合いながら壁新聞に仕上げる「まわしよみ新聞」作りが、兵庫県内の学校などで続いている。記事選びを通じて自分の世界を広げることができ、他者の関心事にも気づくなど、さまざまな効果が期待される。なんといっても気軽に取り組めるのが人気の秘密だろう。県NIE推進協議会は出前授業などを通し、各校・団体の取り組みをサポートしている。

◆明石市立中崎小学校(6月20日、対象=4年生74人) 講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

◆甲南小学校(9月16日、対象=3年生52人) 日本新聞協会のNIE実践指定校。講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら  ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

 

 兵庫県内の小中学校で、児童・生徒がお互いをインタビューして記事にまとめる取り組みが活発になっている。県NIE推進協議会は、インタビューや記事の書き方のポイントを伝える出前授業を通し、各校の取り組みをサポート。授業では担当講師が教員にインタビューし、記事になるまでの過程も紹介している。

◆神戸市立鶴甲小学校(5月15日、対象=6年生59人) 日本新聞協会のNIE実践指定校。講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

◆甲南小学校(5月15日、対象=4年生59人) 日本新聞協会のNIE実践指定校。講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

◆西宮市立浜脇中学校(5月27~28日、対象=2年生延べ36人) 日本新聞協会のNIE実践指定校。講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

◆愛徳学園小学校(6月6日、対象=5年生10人) 日本新聞協会のNIE実践指定校。講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「はがき新聞」作成、「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

◆芦屋市立精道中学校(6月13日、対象=1年生240人) 講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

◆甲南女子中学校(6月18日、対象=2年生176人) 講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※神戸市内の企業のSDGs推進の取り組みを取材するのを前にした出前授業、「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

◆関西学院大学新聞総部(6月20日、対象=部員17人) 講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※記事の末尾に学生のみなさんの感想を掲載しています。

◆流通科学大学(9月25日、対象=全学部1年生約25人) 講師=神戸新聞NIE・NIB推進部・三好正文シニアアドバイザー 記事はこちら ※記事の末尾に学生のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにもリポートが掲載されています。リポートはこちら

  

■姫路市立坊勢中学校(9月8日、対象・2年生26人) 中2生の職業体験「トライやる・ウィーク」で、生徒たちが島内外の各事業所で取材したことを個人新聞にまとめる。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーがインタビューの仕方やニュース写真の撮り方などを教えた。

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 県内の中学2年生が地域の事業所などで働く「トライやる・ウィーク」。坊勢中学校(姫路市家島町坊勢)の2年生26人がそれぞれの職業体験を個人新聞にまとめることになり、取材のポイントを学ぶ出前授業が9月8日、同校で行われた。

 島内外の幼稚園や小学校、専門学校、魚介類の直売所、美容室などで働くトライやる期間(9月29日~10月3日)を前に、インタビューの仕方やニュース写真の撮り方を知ろう―と同校が開いた。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 三好アドバイザーは「その仕事のやりがいや楽しさ、しんどいところを具体的に取材しよう」「どんな接客をしているか目を凝らし、耳を澄まそう」と呼びかけた。ニュース写真の撮り方では、テーマに沿った要素をいろいろ入れる―などと説明した。

 生徒たちは動物園、ペットショップ、洋食店、結婚式場、書店でも働く。美容室で働く岡田楓夏(ふうか)さん(14

)は「5W1Hを押さえ、五感で感じたことを記事にしたい」と話した。生徒たちはトライやる終了後、個人新聞を作る。=12日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真説明]取材のポイントなどを学んだ後、「トライやる・ウィーク」の抱負を語る生徒(右)=坊勢中学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 兵庫県立湊川高校は、働きながら学びたい人のための定時制学校で、間もなく創立100周年を迎える。時代とともに多様な生徒を受け入れる同校のNIE活動についての実践発表を振り返る。 私は講評者として参加した。

 発表した住本拓自教諭は、校長室で2年間(2024~25年度)のNIE活動が始まり、そのプロジェクトチームのメンバーになることを告げられた。「本校で実現可能なのかという不安を抱えながらのスタートだった」と振り返りつつ、生徒たちの新たな「気づき」を引き出し、主体的に考え、表現できる機会にしようと考えたと話した。

初年度の課題とアンケート結果

 24年度の課題は「生徒へのメリットの伝え方」と「目標値の設定」とし、事前アンケートを行った。その結果、約8割の家庭が新聞になじみがなく、今まで一度も新聞を読んだことのない生徒が4割いることが分かった。さらに、SNS(交流サイト)を含めた時事ニュースを確認する頻度が週1回以下の生徒が半数以上だと判明した。

 そこで、時事ニュースを確認する頻度が週5回以上の生徒を2年間で50%以上にする数値目標を設定。具体的な取り組みとして、各教科での新聞を活用した授業の実践▽プロジェクトチームとして、今月のおすすめ記事の掲示と、コグトレ(認知機能を強化する)教材の作成―の3つを推進した。

 沖縄への修学旅行の事前学習の一つとして、兵庫県NIE推進協議会の記者派遣事業「沖縄と兵庫のつながりについて」の講演の報告があった。各教科での取り組みが、生徒にとって記事を丁寧に読む習慣や考えるきっかけになっていると感じられた。

 先生方の新聞記事を使った教材やテスト、生徒に読んでもらいたい記事の共有(掲示)、デジタルでの具体的な取り組みについて報告があった。教員自身も選んだ記事を楽しみながら、生徒や他の教員と意見や感想を気軽に出し合い共有することは、新聞を身近にすることにつながる活動であると感じた。

成果と課題

 事後アンケートでは、生徒のうち4割が時事ニュースに触れる機会が増えてはいるが、依然として変化が見られない生徒も多い▽ニュースを確認する頻度も16%から2.2.7%に伸びたが、目標に向けてまだ課題があることが報告された。アンケートの記述には「自分のペースでゆっくり読める」等の新聞のプラスのイメージが増加しているなど、今後につながる報告で締めくくられた。

質疑応答と今後

 実践発表での参加者との意見交換は活発で、「今月のおすすめ記事の掲示」に教員だけではなく、学生も感想やコメントを書いた付箋を貼ってはどうか、教科の取り組みでは教材に使う記事のルビに関して、新聞にもルビを振るべきではーという提案もあった。

 定時制高校で学ぶ生徒が時事ニュースに触れる機会が少ないという現状に対し、新聞に触れる、内容を読み、社会とのつながりを意識する活動の大切さを再認識した報告だった。

河辺有希生(流通科学大学特任講師)(9月11日)

[写真説明]熱心に聴講する参加者=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス

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新聞は社会の「のりしろ」

 NIE全国大会神戸大会の分科会では、愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)と神戸新聞社が「ICTで拓くNIEの新たな地平~新聞の信頼性を確保するために~」と題し、実践発表を行った。

 社会が目まぐるしく変化し、新しい技術が次々と登場する中で、NIEはICT(情報通信技術)とどのように向き合っていくべきか--という視点からの発表となった。

 学校教育の立場からの報告では、愛徳学園での国語科・社会科の授業実践から、ICTを利用することで見られた変化やメリットについて言及させていただいた。その上で、NIEの場面においては、取り扱える情報量が圧倒的に増えること、情報の交換が容易にでき、編集をじっくり行えることで、活動の幅が大いに広がる可能性について指摘した。

 新聞社の立場からは、神戸新聞社の新聞づくりアプリ「ことまど」の利用例についての報告があり、テンプレートの利用によって本格的な紙面の作成や編集が容易にできること、文字数が制限されていることで工夫の余地が生まれることなどのメリットが紹介された。

 私たちはさらに、ICTやSNS(交流サイト)の普及によって、対立や分断が加速する現代におけるNIEの役割を、「新しい地平」として提案した。

 不正確な情報が広がる中で、確かな情報を発信する新聞の役割は重要であり、新聞の確かな情報を社会の「のりしろ」とすることで、情報をベースにした意見の交換や交流など、議論が成り立っていくのではないか、というのがその趣旨である。

 助言者の井上幸史・姫路市立英賀保小学校長(日本新聞協会NIEアドバイザー)からは、ICTを使う人が仕組みを理解し、正しい知識を得ることが必要ではないか▽自分が取材をして確かな情報にもとづいて新聞を作る経験をすることも「のりしろ」の形成に役立つのではないかーというご指摘をいただいた。

 講評では、法政大学の坂本旬教授から、取材は信頼関係がなければ成立しないことを理解すること▽AI(人工知能)の仕組みを理解することが必要である--と指摘していただくとともに、新聞などの表現は多様な人が多様に表現し、多様に読むものであるということを前提に、批判的かつ対話的に考え、議論を深めていく必要があると締めくくっていただいた。

 「新聞は社会の『のりしろ』」をキーワードに、人と人とをつなぐ実践をこれからも心掛けたい。

廣畑彰久(愛徳学園中・高校教諭)(9月10日)

[写真説明]「ICT×NIE」はどんな化学反応を起こすかー。実践発表する愛徳学園中・高校教諭(左から2人目が筆者)と神戸新聞記者(右端)=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス

高校公民科・公共での取り組み

 兵庫県高等学校(社会系教科)研究会が主催する「授業創り&考査作成 学びと悩み解決ワークショップ」が8月20日、神戸市・三宮で行われ、講師として参加した。

 この研究会は兵庫県の地歴・公民科教員を中心に運営されており、普段は月1回のオンライン勉強会や、同じく月1回ペースのオンライン読書会を行っている。年1回ペースで今回のような対面形式の会も開いており、今回は群馬から参加された先生をはじめ、県内外から46人の先生方が参加した。

 私は灘中学校・高校(神戸市東灘区)の池田拓也先生とともに「公共」の授業づくりを担当した。ワークショップでは、私が公共の導入部分を担当し、池田先生には探究的な学びへの接続部分を担当していただいた。

 私が紹介したのは、新聞記事を授業の導入に活用する方法だ。私が導入教材に選ぶ新聞記事のポイントは、①生徒の感性に訴える、②キャッチーな見出しがついている、③多面的にとらえられる、④価値判断をめぐって葛藤できる、といった要素が含まれている記事だ。

 具体的には、朝日新聞朝刊(2024年5月5日付)に掲載されていた「『女の子なんだから』浪人許されず」という記事を使った公共の授業を紹介した。この記事は、大学受験の際に姉には許されなかった浪人・県外受験が、弟には許されたという事例を伝えるもの。「大学進学をめぐるジェンダーバイアス」をテーマに生徒とともに考えた教材としてご紹介した。

 続いて、参加された先生方に7月31日付、8月1日付の朝日新聞、神戸新聞、読売新聞を実際にめくっていただき、「公共」の授業で使えそうな記事を探していただいた。先生方の目に留まったのは、「ふるさと納税最高1.2兆円」「最低賃金1100円超へ」などの記事だった。

 また「新聞広告から社会が見えてくるのではないか」という指摘された先生もいた。アンケートからは「2学期以降の授業作成に活かしたい」「手軽に面白い記事を見つけることができる」「新聞が学びのきっかけになる」といった感想が寄せられた。

 後半の灘中学校・高校の池田先生からは、新聞データベースを活用した授業の実践方法や、横浜市にあるニュースパーク(日本新聞博物館)からの貸し出しキットの案内、そして、公共での探究的な学びのための外部団体・組織との連携について説明があった。

 今後も新聞教材の活用法を考え、発信していきたい。

大石昇平(兵庫県立洲本高校教諭、日本新聞協会NIEアドバイザー)(9月8日)

[写真説明]新聞記事を授業の導入に活用する方法について発表があった=神戸市・三宮

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 「NIE全国大会神戸大会」では、会議などの内容を文字やイラスト・図・記号で模造紙に描きだすグラフィックレコーディング(グラレコ)を初めて導入した。1日目の記念講演やパネル討議、2日目の4つの公開授業の様子をリアルタイムで描き、会場に掲示した。参加者の関心は高く、写真撮影の列ができた。

 スタッフの姫路市立英賀保小学校・井上幸史校長(日本新聞協会NIEアドバイザー)に当日の様子を振り返ってもらった。

[写真説明]グラレコを見る参加者=7月31日、神戸市中央区港島中町6、神戸ポートピアホテル                

                                       ◆
グラレコで描くNIEの未来

 グラレコは、その場の学びや雰囲気を可視化するツールだ。これまで兵庫県NIE推進協議会の実践発表会などで導入しており、今回、10人のスタッフで「らくがきレコーダーズ神戸」を組織して神戸大会に臨んだ。

 大会1日目、神戸ポートピアホテルでの全体会は、グラフィックレコーダー2人(井上幸史、原純哉)が担当。会場のポートピアホール後方に設けられた特設エリアに模造紙を広げた。

 開会式の世界的指揮者・佐渡裕氏とスーパーキッズ・オーケストラの素晴らしい演奏から感動のエネルギーをもらいつつ、芥川賞作家・小川洋子さんの記念講演「言葉は人をつなぐ」では、あふれる言葉の中に込められたメッセージを読み解きながら1枚の模造紙にまとめた。

 ジャーナリスト・池上彰氏がコーディネーターを務めたパネル討議「情報で、いのちを守る」では、3つの視点(参院選、災害対応、NIEに求めること)をもとに、90分にわたるパネリスト4人の活発な議論と対話を要約・構造化した。

 開会式、開会あいさつ、記念講演、基調提案、パネル討議を描いた5枚のグラレコはすぐさまロビーに展示。周りには人だかりができ、「メディアとしてのグラレコ」に手応えを感じた。

 甲南大学岡本キャンパスを舞台にした2日目の分科会では、4つの公開授業を各2人計8人のグラフィックレコーダー(栗山こまよ、山國瞳、井上慶子、松下喜子、岡田英之、畑田千香、川原諭、西村奈美)が担当した。

 甲南小学校の「シンブリオバトル」、西宮市立浜脇中学校の「NIEノート」、姫路市立豊富小中学校(前期課程)の、全国の子ども新聞から迫る「メディリテラシー」、兵庫県立北神戸総合高校の「新聞にツッコミを!」。これらをどのように描くか、事前に何度も打ち合わせ、模造紙1枚目に公開授業の中身、2枚目に参加者との意見交換会や助言・講評を描くことにした。水色を基調として、新聞風のグラレコを目指した。NIEの大会ならではの仕上がりになるよう工夫した点である。

  できあがったグラレコは大学構内のロビーに展示。1日目のグラレコも一緒に並べ、2日間の「学び」を振り返ることができるようにした。

 参加者からは「授業のポイントがよく分かる」「公開授業や意見交換の内容を俯瞰(ふかん)できる」「リアルタイムに描きあがることに感動した。なんだか新聞と似てますね」などの感想が数多く寄せられた。参加者の皆さまの「学び」を豊かにすることに微力ながら寄与できたことは、担当したグラフィックレコーダーにとって大きな喜びとなった。

 さて、メディアの在り方に関心が集まっている今は、新しい時代のNIEを切り拓くチャンスである。今こそ「新聞記事をいかに活用するか」から「新聞というメディアを切り口に、ニュースを読み解くリテラシーの育成」への視点の転換が大切だと感じている。

 グラレコは情報をわかりやすく伝え、人々の対話を促し、新たな気づきや創造性を生み出す力も持つ。今回の大会のようなグラレコ活用とあわせ、例えば、メディアリテラシーを育む新たなアプローチとして「まわしよみ新聞×グラレコ」のような取り組みはどうだろうか。NIEの魅力と可能性を引き出すグラレコの在り方を模索していきたい。

 最後に、このような貴重な機会を提供いただいた、NIE神戸大会実行委員会と兵庫県NIE推進協議会に感謝申し上げます。

井上幸史(姫路市立英賀保小学校長)(9月5日)

※「らくがきレコーダーズ神戸」の皆さんがNIE神戸大会で描いたグラレコすべてを紹介します。

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オープニング、あいさつ、基調提案.pdf

記念講演.pdf

パネル討議1.pdf

パネル討議2.pdf

パネル討議3.pdf

甲南小学校・公開授業.pdf

西宮市立浜脇中学校・公開授業.pdf

姫路市立豊富小中学校(前期課程)・公開授業.pdf

兵庫県立北神戸総合高校・公開授業.pdf

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兵庫県立神戸甲北高等学校

生涯探Cue時代のNIE=出展されたポスター ポスター.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 「読む」から「問いを立てる」へ。高齢化が進む地域を背景に、社会課題に触れ、自らの未来を見つめるきっかけ(Cue)として新聞を再定義した。記者講演や防災教育をはじめとする多角的な活動を通じてキャリア・地域・表現を結ぶ探究的な学びを設計し、生徒の思考力と社会接続力を育成した新聞活用の実践について報告する。

             ◆

兵庫県立伊川谷高校①
はがきと學年通信でNIE―京都探究で残そう、はがき文化―=出展されたポスター2枚のうちの1枚 ポスター①.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 京都遠足を題材とする「事前学習はがき新聞の作成と投函」「學年通信活用による京都への興味関心付け」「京都遠足実施時の事前学習内容の確認」「帰校後の感想はがき新聞の作成」という、一連の内容を関連付けた、はがき新聞・學年通信・京都遠足のコラボによるNIE実践である。

兵庫県立伊川谷高校②
 ○○教育を包括した學年通信の提案と実践―読まれる通信作りを通した新聞文化の継承― ポスター②.pdf

【神戸大会資料集のメッセージ】
 教育の多様化に伴い教育現場で必要とされる○○教育の学習に、學年通信を活用する。學年通信は生徒・保護者が「読みたくなる」演出を施しており、学校における働き方改革など、學年通信の発行は減少の一途をたどるなか、「生徒に読まれる」「生徒が学ぶ」「保護者の情報源となる」ための學年通信の在り方について考察を行う。

              ◆

神戸市立雲雀丘中学校

新聞は子どもと世の中の架け橋=出展されたポスター ポスター.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 本校は少子高齢化が著しい市街地に位置し、児童生徒数が激減する地域の学校である。新聞を通じて世の中につながる取り組みを行い、地域課題の発見、解決に向けた提案に役立ててきた。新聞はテーマ別に保管し教科の学習や推薦入試対策として活用している。誕生日の新聞や震災当時の新聞も活用している。

             ◆

神戸大附属中等教育学校

自身の主張を新聞形式でまとめる=出展されたポスター ポスター.pdf 

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 本校は、神戸市東灘区にある中高一貫校で、本学年(中3生)の生徒は1年時からKP(本校独自の総合的な学習)においてNIEを取り入れてきた。課題を見つける・調べる・まとめる・発表する、という場面で講師を招き事前学習を行った。新聞形式にまとめることで、図・表・画像などを使って、自分の主張したいことを発表する。

              ◆

<防災とNIE>
南あわじ市立沼島小中学校

未来へ希望を! 石川ピカピカ大作戦で感じたこと=出展されたポスター2枚のうちの1枚 ポスター①.pdf ポスター②.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 淡路島の南、太平洋に浮かぶ沼島。「国生み神話」の舞台であり、沼島音頭や子供太鼓の伝統が根付いている。能登半島地震は、南海トラフ地震が想定される沼島にとってまさに「自分ごと」であり、能登半島と沼島の未来へ「希望」を描こうと子どもたちは活動を展開した。そして、沼島の人や全国への語り継ぎに発展していった。

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 NIE全国大会神戸大会(8月1日)に出展された77枚のうち、兵庫県で本年度、日本新聞協会のNIE実践指定校または兵庫県NIE推進協議会の独自認定校としてNIE活動を続ける各校が作成したポスターを2回にわたって紹介する。(リレー寄稿にポスター掲載済みの4校を除く)

姫路市立飾磨中部中学校

新聞から読み取る「対立」と「合意」=出展されたポスター ポスター.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 社会科公民分野で学ぶ「対立」と「合意」だが、社会ではいつの時代もあらゆる場所で「対立」が起こり、そのたび「合意」が図られることに気づく生徒は少ない。新聞は現代社会のそれらを読み解く最善のツール。時事に興味を持ち、生徒の社会参画を促し、社会を主体的に生きる公民の育成につながればと思い、今回の授業を企画した。

              ◆

兵庫県立山崎高等学校

新聞を通して批判的なものの見方を養い、主権者としての自覚を促す=出展されたポスター ポスター.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 選挙権を持つ者が日々増えていく高校3年生。しかし、政策と自分自身のつながりに実感はなく、政治への関心は薄い。そこで総合的な探究の時間を用い、社会にある問題を知り、批判的思考を養うことを目的に、さまざまな新聞記事を読み議論した。折しも耳目を集めた選挙が行われ、その結果が効果的な学習の場となった。

             ◆

明石市立大久保小学校

新聞記事から「大きな数」さがし=出展されたポスター ポスター.pdf 

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 新聞記事の中には、数多くの記事や広告がある。それらには、数字が含まれていることが多い。小学3年「1万をこえる数」、小学4年「1億をこえる数」の学習時に「大きな数」見つけを設定し、数の表記方法や大きさ比べをおこなった。また、国語科とも関連させ使われている「単位」にも目を向けさせた。

              ◆

明石市立大蔵中学校

新聞で小中交流会!=出展されたポスター 250915ookuratyuu.JPEG ポスター.pdf

【神戸大会資料集のメッセージ】
 特別支援学級の授業に「子ども新聞」などを取り入れ、記事について意見交流を行っている。1学期、神戸新聞記者に「より新聞になじむこと、新聞を使ってできること、新聞の読み方について」をテーマに出前授業してもらい、学んだことを校区の小学生に伝える。どう伝えるかを考えて取り組み、発信する力を育てたい。

               ◆

愛徳学園小学校

1分間スピーチの原稿を書こう=出展されたポスター ポスター.pdf

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 情報を伝える力を育むため、新聞の「伝える工夫」について学び、「新聞作り」に取り組んだ。しかし、新聞を読む体験が少なく、紙面の様子が分からない児童もいた。そこで、「子ども新聞」を読んで、はがき新聞を作成し、毎朝発表した。新聞を読むことから始めた新聞作成の取り組みを紹介する。  
 

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奈良女子大学附属中等教育学校ならふく

中学3年 災害に学ぶメディアリテラシー=出展されたポスター㊨㊦ 中3ポスター.pdf  250904narajyotyuu3.JPEG

【神戸大会資料集のメッセージ】
 新聞における災害報道をテレビや交流サイト(SNS)といった他のメディアの情報と比較することで、各メディアによる特徴や違いを認識すること、また災害という非常時においても自ら適切に情報を選別し、その情報を判断することのできる批判的思考力を養うことを目指した探究について報告する。

高校2年、1年 高校新聞を用いた教育の可能性と課題―高校生の自主的な探究の学びー=出展されたポスター㊧㊦が高2、高2ポスター.pdf ㊨㊦が高1、高1ポスター.pdf

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 【神戸大会資料集のメッセージ】   本発表では、奈良女子大学附属中等教育学校の高校1年生の自主的な探究活動である、学校及び地域の防災機能や意識向上の活動を発表する。また高校2年生はフェイクニュース時代にあって「リアル」な情報の重要性を理解する体験的な学びとして、修学旅行に新聞を活用した学びについて提案する。

【感想】
 神戸大会では、本校から中学3年、高校1年、高校2年の3チームがポスター発表の機会をいただいた。フェイクニュースが氾濫する時代にあって、中高生が自分自身の課題として考え、具体的な提言を行えたことは、神戸大会で発表の機会をいただけたからこそと感謝している。
 発表の時には、NIEの実践者や各新聞社の皆さまからたくさんの質問や、励ましの言葉をいただき、生徒たちにとって大きな喜びであった。こうした機会は昨年度の京都大会から設けられたが、本年度も継続実施していただき、NIEの全国大会が教員のみならず、児童生徒たちの探究的な学びをも活性化させる場となっていると実感している。

二田貴広(奈良女子大学附属中等教育学校教諭)

                                 ◆

帝塚山大学教育学部(奈良県)

シチズンシップを育む新聞スクラップと投書活動=出展されたポスター ポスター.pdf250904tedukayamadaigaku.JPEG

【神戸大会資料集のメッセージ】
 社会への関心を高めるため、1年生から週1回教育に関する新聞記事をスクラップして、意見を書いてファイルにまとめている。スクラップした記事を交流する活動や、自分の考えを投書欄に投稿する活動も続けている。よりよい社会の実現のために、社会での出来事を自分ごととして捉え、主体的に考え行動する力が育っている。

【感想】   
 参加者から実践の評価をいただき、学生は次のように振り返っている。
「新聞を活用することにより、社会への関心を高め、社会との関わり方を学ぶ機会になっている」「名刺をいただいた。このようにして人と人の輪は広がっていくのかなと思った」「新聞を使って、いろいろな教育ができるのだと改めて知ることができた。新聞を活用した授業を行っていきたい」
 ポスター発表を通して、学生は「新聞スクラップ」や「投書活動」の意味を改めて考える機会になったようである。今後、社会に積極的に参加する知識や能力を身に付けさせる教員になり、学んだことを生かしていくことが期待される。

徳永加代(帝塚山大学教育学部こども教育学科教授)

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  NIE全国大会神戸大会2日目(8月1日)では、昨年の京都大会に続いてポスター発表が行われ、北海道から沖縄まで全国各地の71校・団体・新聞社が77枚を出展した。

 発表者がポスターそばで説明するポスターセッションは、各校の教諭や児童・生徒のプレゼンが好評だった。

 発表した学校や個人に感想を寄せてもらった。

[写真説明]発表する甲南小6年生=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス

甲南小学校(神戸市東灘区)

地域のきずなを!=写真㊨㊦は出展されたポスター3枚のうちの1枚

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【神戸大会資料集のメッセージ】
 神戸市東灘区。海と山が迫る神戸らしい坂道の多い町。その風光明媚(ふうこうめいび)な町では、毎年5月の連休に「東灘だんじり祭り」が行われる。地域の方々と一緒に汗を流し、大声を出しながら「だんじり」を引く経験を記者になったつもりで記事に書いたり、調べたりしたものを発表したい。低学年で行った活動が中学年、高学年にどのようにつながっていくのか、その様子も一緒に発表する。

【感想】
 号外! 6年生が目の前を歩いていらっしゃるゲストに号外を語る!!
 5月の「東灘だんじり祭り」に参加し、実際にだんじりを引いた6年生。その中の9人の仲間がポスター発表当日、生の、自分の声で、言葉で号外(ポスター)についてセッションする貴重な経験ができた。
 だんじりを引き、道の真ん中から見える景色。一日中鳴り続けるお囃子(はやし)。屋根の上やだんじりの前で統率のとれた踊りを見せる若い衆。だんじりの動きに合わせて変化する掛け声。他のだんじりと出合ったときの独特の答礼等々。
 子どもたちが感じたままの「30秒号外発表」を何度も繰り返し、その都度いただく、温かい拍手と質問が何よりのご褒美だった。ホールや教室で着席しているゲストを前に話す機会はある。けれどもこのような形で話を伝える経験はめったにないだろう。この機会をいただけたことを心から感謝したい。

宮下尚也(甲南小学校教諭)
                     ◆

新潟県新発田市立東小学校5年 大竹 葵さん                ポスター.pdf

新聞から広がる防災の輪=出展されたポスター、写真㊨250904ootakeaoi.JPEG

【神戸大会資料集のメッセージ】
 私は能登半島地震に衝撃を受け、もっと防災について知りたいと思い、防災士の資格を取った。新聞で紹介されたことで、地域や施設の方々、同じ防災士の資格を持つ県外の小学生とつながることができた。また、地域で日頃から災害に備えていることも発信できた。防災の輪からさらに広げてゆけるものを追求したい。

【感想】 
 私は、防災士の資格をとったきっかけやその後の活動をポスターにまとめた。このポスターを作るときに工夫したことは、色分けして読みやすくしたところだ。書くときには、新潟日報の方がレイアウトを考えるのをサポートしてくれた。見出しを考えるのが楽しかった。
 発表中はいろいろな人が質問をしてくれたが、防災士という存在を知らない、または知っているが何をするかは曖昧という人が多かった。今後は、いろいろな人に防災士や防災の知識を知ってもらうために、さまざまな活動を率先してやっていきたいと思う。新聞作りもとても勉強になったので、これからもNIE活動があるときは率先して、活動に取り組みたいと思う。

大竹 葵(新潟県新発田市立東小学校5年)

[写真説明]ポスターの内容や防災活動について説明する大竹葵さん=8月1日、甲南大学岡本キャンパス(新潟日報社提供)

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「自分らしく学び、つながる教育」実現へ

 私が教育長を務める姫路市では、日本語指導が必要な児童生徒が増加している。来日直後や、来日して数年たった児童生徒だけでなく、日本生まれ・育ちの児童生徒であっても、学年相当の日本語言語能力が不足し、学習活動に支障をきたすケースもある。

 「すべての人が自分らしく学び、つながる教育」を目指す姫路市において、外国人児童生徒等に対する教育は重要なテーマの一つとなっている。

 「第30回NIE全国大会神戸大会」で私が助言者として関わったのは、姫路市立あかつき中学校の実践発表だ。2023年4月に開校した兵庫県内4校目の夜間中学校で、幅広い年齢層で、日本を含めて5つの国にルーツを持つ生徒が通っている。世代も文化も言語もさまざまな生徒たちが、新聞を活用することで、身近で現在の生活につながる事柄だからこその共通点を見いだし、学びにつなげている。発表では、新紙幣に関する新聞記事を取り上げ、肖像に採用された人物や紙幣に採用された技術に発展させていく様子などが説明された。

 発表の中で、NIEのメリットについて2点挙げられていた。一つは、好機を逃さず学習できることだ。実際、新紙幣についての授業は、発行の翌日に行われており、生徒の興味関心が最も高いタイミングで実施されている。

 もう一つは、身近な話題を共有できる点だ。経験や知識を交流しながら学習を深められるという利点が示されており、ここには「すべての人が自分らしく学び、つながる教育」の実現に向けた希望を強く感じた。

 同じ事象を見ていても、人の感じ方はさまざまだ。育った環境や文化が異なればなおさらで、それが可視化された取り組みが発表の中にあった。それは姫路・灘のけんか祭りの記事を読んで、見出しを考えるという授業で、「神輿(みこし)激しくぶつけ合わせる」といった事象を表現する文言だけでなく、「神様にドスン」「人生の憂さ晴らし」など、新鮮なまなざしによる受け止めが披露されていた。

 日本語指導というと、どうしても画一的な学習になってしまう可能性がある。しかし、身近で共通の話題を入口に、それぞれの多様な受け止めを共有し合うことは、日本語の習得に寄与するだけでなく、それぞれの違いが力となり、学習者同士がお互いに視野を広げあう充実した学びにつながると感じた。

久保田智子(姫路市教育長)(9月3日)

[写真㊤]あかつき中学校の実践発表。NIE活動に取り組み夜間中学は全国でも数少ない=8月1日、神戸市東灘区岡本8、甲南大学岡本キャンパス[写真㊦]当日出展された、あかつき中学校のポスター「総合的な学習の時間『新聞記事をつくろう』」           ポスター.pdf

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