2023年10月アーカイブ

■姫路市立大塩小学校(10月18日、対象・4年生59人) 神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務め、書写山円教寺(姫路市書写)で行った林間学校の体験をそれぞれ新聞にまとめるのを前に、何をトップニュースにするか考え、記事の書き方や見出しのつけ方、レイアウトの要点を学んだ。

児童の感想

西宮市立浜脇中学校

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https://www.youtube.com/watch?v=BohihWRMJqg&t=4s

上記URLを範囲指定して右クリックから開いてください。

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※公開授業の新聞各紙の記事はこちら 公開授業を担当された浜脇中学校・渋谷仁崇主幹教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちら 参加者の感想をこちらに掲載しています。

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朝日新聞 元特派員が語る

 「死の通り ブチャ生存者の証言―特派員が語るウクライナ」をテーマにした「出前授業」が10月20日、芦屋市の甲南高校・中学であった=写真。8月まで朝日新聞ヨーロッパ総局員だった金成隆一記者(現大阪本社社会部次長)が高校生約120人に、ロシアによる侵攻が続くウクライナでの取材について語った。

 金成記者はウクライナ侵攻前後の2022年に計4回、首都キーウなどで取材をしてきた。

 ロシア軍に一時占領されたブチャの「死の通り」の動画が流れると、大教室が静まりかえった。路上のあちこちに遺体が横たわる。金成記者は「遺体はフェイクだ、とSNSで主張する人たちがいて、それが拡散された。だから自分の目で確かめなければと考えた。皆さんもSNSで見たものを安易には信じないでほしい。意図的なうそがある。ブチャの件はその典型のひとつだと思う」と語りかけた。

 ロシア兵がいる中で遺体の埋葬を続けた人に墓地で取材をしたこと。「処刑場」と思われる弾痕の残った建物の写真。夜中に空襲警報が鳴るたびに何度も避難した経験。質問時間も含め100分間の授業でも、生徒たちは集中力を切らさなかった。

 柿田悠吾さん(17)は「ウクライナで取材した人にしか語れない話だった。『死の通り』は日本にいたら見ることのない光景。改めて戦争は良くないと思った。勇気がいるが特派員という仕事にも興味を持った」と語った。=23日付朝日新聞朝刊神戸・阪神・ひょうご版

 朝日新聞デジタルの記事はこちら

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。同校の足立恵英副校長に授業についてご寄稿いただきました。寄稿は こちら

辻井昭也・市川町立市川中学校長

 NIEの公開授業に参加したのは初めてだったので、教育的効果や県下の実践状況などをまずご説明いただき、その後に授業参観へとつながればよかったように思います。 時間的な制約もあったと思いますが、会自体は淡々と進んでしまいました。 授業を参観し、まさしくこれが「主体的・対話的で深い学び」だと感銘しました。加えて、「思考力・判断力・表現力」の育成にも大変効果的であることがわかりました。ICTもうまく活用され、今、学校現場で育成が求められている子供たちの資質・能力の多くが、あの授業で育成できているように感じました。  多くの示唆を与えていただきましたので、来年度に向けた経営方針や指導計画に反映させていきたいと思っているところです。

宮本直子・小野市立旭丘中学校教諭 

 公開授業では、幅広いジャンルの新聞記事をもとに、自分の考えを広げたり、深める生徒の姿に非常に感銘を受けました。目を輝かせながら、自信をもって自分の意見を発表する姿は本当に頼もしかったです。
 これまで私自身、新聞を活用することは生徒の成長にとって有効であるということは感じていましたが、なかなか形にするところまで至らずじまいでした。しかし、今回の参観授業を通して、新聞の具体的な活用を目にし、ぜひ自身の授業でも実践したいと思いました。
 新聞は、生徒の視野を広げさせてくれる存在だと改めて感じました。日々社会の情勢が大きく変化し行く中で、生徒たちには社会の様子を的確にとらえ、自分ごととして考え行動できる人に育ってほしいと考えています。そのためにも、まず1歩として、社会科授業で新聞記事クイズや、記事を読んだ感想を書かせたいと思います。

中嶋 勝・尼崎市立南武庫之荘中学校教諭

 新聞を活用することによって、「思考力・判断力・表現力等」が育成されることはもちろんのこと、自分たちの社会をより良いものにするためという、明確な目標がその授業にあるなら、生徒たちは生き生きと取り組み、学習する過程で「主体的・対話的で深い学び」を生徒自身が実感する。ということを私も学ぶことができました。
 問題意識をもって新聞記事を読み、見つけた身近な問題を解決するためには何が必要かを考える。そして、そのアイデアを交流しあって具体的に提案するという、新聞とICT、SDGsとを使った質の高い授業でした。
   他にも驚かされたことはたくさんあります。発表した生徒の感想をタブレットを使って素早く打ち込む生徒や、スライド作成の技術の高さなど、ICTを日ごろから使いこなしていることです。そして、大勢の見学者に取り囲まれても楽しそうな表情で意見を出し合う様子や、手際よく司会をする生徒、前で堂々と発表する生徒の姿から、日々の授業の積み重ねを見ることができました。1年生集団とはとても思えないはるかにレベルの高いものでした。
  渋谷先生や他の先生方が日ごろから授業改善に取り組まれることで、先生同士がつながり、生徒とつながる。さらに保護者、地域ともつながっていく。そんな素敵な授業づくりをしている雰囲気を肌で感じ取ることができました。今回学んだことを、私も日々の授業づくりに生かせるようにしていきたいと思います。

矢延和樹・神戸市立高倉中学校教諭 

 渋谷先生のされる授業名を始めてみたとき、「1年生の歴史分野なのに主権者教育?」と疑問を感じました。1年生にとって、「主権者」という言葉は難しく、理解するのに苦戦すると考えられます。そんな題材に、どのようなところで新聞を活用していくのか、とても興味深い気持ちをもって授業に臨みました。
 授業が終わり、真っ先に感じたことは「子供たちのゴール」です。生徒は中学校を卒業することがゴールではなく、社会の一員として、よりよい未来を切り開くことがゴールになります。それに向けて、中学校3年間で公民分野だけの「主権者教育」で十分ではなく、1年生からの積み上げが必要になってきます。どのようにすれば、1年生であっても主体的に「主権者」の意味・役割を理解できるのか、そして思考・表現することができるのかが、渋谷先生の姿を見てイメージすることができました。また、新聞の持つ、子供たちの力をもう一段階引き上げる凄味を実感させられました。
 今回の学びを、同じ1年生を担当している社会科教員として、子供たちに返していきたいと思います。素晴らしく、勉強になる授業をありがとうございました。

※10月26日の西宮市立浜脇中学校の公開授業を担当した渋谷仁崇主幹教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう~NIE活動を通して協働的な学びを基盤として「深い学び」を目指した授業づくり~」

概要
 本校は2021年度から全生徒を対象に「NIEノート」活動を展開し、社会の動きに関心をもち、自らの意見やアイデアを表現できる人物の育成を目指している(「NIEノート」については後述)。この数年は、日本万国博覧会協会との万博リサーチ企業ミーティングや、おおさかATCグリーンエコプラザとの持続可能な開発目標(SDGs)連携講座、桃山学院大学ビジネスデザイン学部のSDGsアイデアコンテストへの参加など、大学や企業との連携を図り、生徒が「主権者としての学び」を深めてきた。

 公開授業も「NIEノート」活動を中心に据えた。生徒が新聞記事から社会的な課題を取り上げ、SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」の実現に向け、アイデアを出し合い、お互いの考えを深めることを目指した。

NIEノート
 「NIEノート」活動は週に一度、生徒各自が興味関心のある新聞記事を選び、考察し意見や提案をまとめる。その内容を社会科の授業でプレゼンテーションし、クラスメートと意見交流することで、考えを深めている。

「 NIEノート」にみられる生徒の感想 「普段ニュースを見ないから、いろんなことが知れて楽しい」「新聞を読む機会が増え、起きている出来事などが分かる」「普段テレビのニュースを流し見している。自分から新聞記事にしっかり目を通すことで新しい発見があったり、そのニュースとしっかり向き合って自分の意見を持てる」「ニュースを調べて感想を書くだけじゃなくて、知らなかったことを共有できて楽しいし、いろんな人の感想が聞ける」「自分が選んだのとは違う新聞のニュースを知れる」「NIEノートを使うことで新聞を読む機会が増え、家族とのニュースや記事の会話がより弾むようになった」「いろいろなニュースを知れて好きな特集(記事)も見つけられる」「ニュースを知ろうとすることは、普段は時間がなかったり面倒だったりする」

 生徒たちは好奇心旺盛で現代の社会的な課題に興味を抱くが、その解決にどう貢献できるかという自信が必要だと考える。個々の関心やアイデンティティーを尊重しながら、「NIEノート」で自らの意見やアイデアを発信できる環境を提供し、共感することや協力し合うことの大切さを育み、自己実現への道を支援していきたい。

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[写真説明]各自での新聞記事選びの様子

公開授業について
 事前の学習では、習得した知識を活用しきれないグループが多く見られたことから、まとめ方を見直した。生徒一人に一つのテーマを設定させ、プリントに学習した内容をまとめさせておく。地域社会の未来を予想するにあたって、「住み続けられるまちづくりを」のアイデアを出すのに活用できそうな具体事例をまとめさせておく、などだ。

[写真説明]授業で活用した資料 

本時の学習では、住み続けられる地域社会について何に取り組んだらいいか、まずは個人で考え,次に小グループ(5~6人)で考える。新聞記事で知った社会的事象について、まずはこれまでの学習で得た知識をあてはめて、地域社会がよりよく発展するための方向性を見いだしていく。さらに生徒がさまざまな意見を聞く中で、自分の考えの変容や深まりを実感し、新たな提案へとつなげることを目指した。  

 特に先進的な技術開発が進む社会のイメージについて、毎授業での「NIEノート」を活用した発表のほか、5月、おおさかATCグリーンエコプラザでのSDGs学習、日本万国博覧会協会による講座を通し、将来生まれる課題やそれを解決する可能性(ビジネスチャンス)を生徒に考えさせたいと考えた。

 アイデアを出すにあたっては、四つの視点―地域(浜脇、香櫨園、西宮、兵庫▽日本(各都道府県)▽万国博覧会(最新技術)▽世界(各州)―を提示し思考の助けにする。これらの視点は、歴史学習で近世・近代・現代の単元に入ったときの深い学びにもつながるのではないか。

 グループの話し合い活動では「司会」「計時」「記録・発表」「ムードメーカー」と役割分担を明確にした上で、途中で議論が止まったり、うまく意見を表せなかったりしたときの生徒の考えの引き出し方をどうするか。指導者がファシリテーションの技術を使い、生徒の動機づけをうまく維持させ、考えを上手に引き出して提案につなげさせることが大切である。

さらなる発展へ
 11月21日、日本博覧会協会ジュニアEXPO主催のリサーチ企業ミーティングを全校生で実施し、日本の大手企業4社のSDGsの取り組みについて企業側と質疑応答も行う。日々の学びやアイデアを社会へ直接発信することで、さらなる深い学びにつなげていく。また、クラス内で行ったアイデアミーティングの成果を学年や学校単位で共有し、優秀な作品は地域やスタートアップ企業に発信していく。

全体の感想
 授業者として4月、生徒たちと出会った当初から「進取果敢」をスローガンとして「人に言われる前に進んで行動する」を意識して生活してほしいと伝えている。日頃から学校の教職員、管理職、地域、保護者の支えと理解があってこそのNIE活動であり、その中で伸び伸びと学習活動をする生徒たちの成長を感じている。今日の公開授業でも、日常の彼らの姿があった。日頃より新聞・ニュースに触れ、社会的な事象を考え、地域課題に向き合い、その中で「住み続けられるまちづくりを」について、主権者として考える人間になってほしい。そのために、各教科を主体的に学び、物事を多面的・多角的にとらえる力をつけてほしい。日本博覧会協会や兵庫県NIE推進協議会の多大なるバックアップがあってこその学習活動である。この場を借りて、日頃の感謝をお伝えしたい。

 さらなる授業改善を目指して、今後も研さんを積んでいきたい。

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 新聞を教材として授業に生かすNIEの公開授業が10月26日、西宮市の市立浜脇中学校であった。1年生約40人が新聞などで関心を持ったニュースをそれぞれ発表し、意見を交わした。

 この日は、渋谷仁崇主幹教諭(44)の社会科の授業で「住み続けられるまちづくり」をテーマに関心を持った記事を持ち寄り、6班に分かれて意見交換した。生徒からは「ドローンで薬を運ぶ」「3Dプリンターでグランピングや休憩の施設をつくって観光スポットにする」などの案が出た。

 島本陽葵さんは、西宮市と飲料メーカーがペットボトルのリサイクル協定を結んだニュースに着目。高齢者が歩きやすいよう歩道にユニバーサルレーンを設け、ペットボトルを原料につくった手すりを備え付けるアイデアを披露した。(勝亦邦夫)=27日付朝日新聞朝刊阪神・神戸版

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231026hamawakityuusannkei.jpg 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の公開授業が10月26日、西宮市の市立浜脇中学校で行われた。1年生の生徒らが新聞記事を活用し、持続可能なまちづくりや社会課題について考え、活発な議論を交わした。

 授業のテーマは「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう」。生徒らは気になる記事についてのアイデアや提言を考え、グループ内で議論した後、それぞれ発表した。

 2025年大阪・関西万博で会場周辺に約600台が止められる駐輪場を整備するとのニュースに対して、「スポーツバイクも止めやすいように固定力の高いものをつくる」といったアイデアが披露されるなどした。

 授業を受けた見﨑一椛さん(13)は「新聞で今どんなことが起こっているのかを知って、それをどう解決できるかを考えるのが楽しかった」と振り返った。=28日付産経新聞朝刊阪神・神戸版、播州版

[写真説明]グループ内で議論する生徒たち=西宮市宮前町

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 新聞を教育現場で活用するNIE(教育に新聞を)に取り組む西宮市立浜脇中学校で10月26日、生徒が記事をヒントにアイデアを出し合い、互いに考えを深める公開授業があった。「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう」をテーマに、1年の約30人が活発に話し合った。

 浜脇中は日本新聞協会のNIE実践指定校。興味のある記事をノートに貼って考えをまとめ、クラスで意見交換する「NIEノート」など、日常的に新聞を生かしている。

 公開授業は県NIE推進協議会が企画。渋谷仁崇教諭(44 )が受け持つ社会科の単元で行われ、教育関係者ら数十人が見学した。

 生徒は6班に分かれ、まずはNIEノートやタブレット端末を使って、興味のあるニュースを互いに紹介した。貧困にあえぐ世界の子どもたちや臓器移植のドナー数、人工知能(AI)で生成された架空のタレントを起用したCM、スポーツ、事件など幅広い話題が飛び交った。

 続くアイデアミーティングでは「住みやすい街」の実現に向け、記事から着想した案を1人ずつ発表。2025年大阪・関西万博に絡む話題も多く、生徒からは「街にAIカメラをつけ、燃えやすい物を感知したら火災が防げる」「その人ごとに最適な食事を提案し、健康維持に役立つアプリ開発を」など独創的な案が次々に飛び出した。

 「こうすれば実現できるかも」と補足する意見や質問も相次ぎ、議論を発展させた。最後は各班が発表し、クラスで共有した。

 本宮颯馬さん(13)は、関西一円の街や空港に空飛ぶクルマの拠点となる「ドローンステーション」を設け、訪日外国人が便利に移動できる仕組みを提案。「国際交流や経済活性化につながる」とアピールした。

 本宮さんは「毎朝ニュースを見て、家族と話し合ったり調べものをしたりするのがすごく楽しい」と話していた。(山岸洋介)=30日付神戸新聞朝刊阪神版

[写真説明]記事からアイデアを出し合い、意見を交わす生徒ら=西宮市宮前町、浜脇中学校

※公開授業の動画配信中。動画はこちら 公開授業を担当された浜脇中学校・渋谷仁崇主幹教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちら 参加者の感想をこちらに掲載しています。

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 10月17日、大阪市立本田(ほんでん)小学校で、兵庫県NIE推進協議会の三好正文事務局長を講師に招き、小学1年生140人を対象にした出前授業「新聞って何? 新聞づくりに挑戦しよう!」を行った。

 秋の遠足で10月13日、天王寺動物園(大阪市天王寺区)に行った思い出を個人新聞にまとめるのを前に、授業をお願いした。1年生の子どもにとって、新聞づくりは初めての活動である。

 三好事務局長は、新聞に触れたことがない多くの子どもたちに、「新聞とはどのようなものか」(世の中のあらゆる出来事を記事にして、みんなに伝えるもの)や、新聞をつくるときのポイントについてわかりやすく説明。

 記事を書くときは、「自分のイチオシの動物について書こう」「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を使って、わかりやすく書こう」、見出しをつけるときは「10文字以内、具体的に考えよう」(「キリンさん、高いね」ではなく「高さ6㍍、キリンの〇〇くん」という感じに)、レイアウトでは「写真を紙面の真ん中に載せよう」など、1年生が理解できるように具体的に伝えた。

 今後、子どもたちは動物園で感じたことを記事にする予定だ。「キリンが葉っぱを食べていたことを書きたいな」「ペンギンが泳いでいたことを1番目の記事にしよう」「クロサイとホッキョクグマについて書こうかな」と、記事の内容を考え、早く新聞づくりに取り組みたいという意欲がみられた。子どもたちは、完成した新聞を三好事務局長に読んでもらうことを楽しみにしている。

 今回の授業は、日本新聞協会の近畿ブロックNIEアドバイザー・NIE事務局長会議(8月24日、朝日新聞大阪本社)で、三好事務局長とNIE実践について交流したことがきっかけで実現した。府県の垣根を越え、幼稚園から大学までたくさんの出前授業をされている三好事務局長の授業は、小学1年の子どもたちにとって、新聞とのすてきな出合いの場になった。

田内 智恵(日本新聞協会NIEアドバイザー/大阪市立本田小学校主務教諭)(2023年10月27日)

[写真㊤]「イチオシの動物は何かな?」。府県を越えて実現した出前授業=大阪市立本田小学校[写真㊦]授業で使われた資料の一部。「阪神リーグV」の神戸新聞号外が登場するのは、兵庫ならでは

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 児童が作った新聞の一例はこちらからご覧になれます。

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 貧困や気候変動など、地球規模の課題を解決するため国連が採択した17の持続可能な開発目標(SDGs)。兵庫県内の中高生がSDGsについて学ぶ機会が増え、兵庫県NIE推進協議会が各校で出前授業を続けている。授業では、SDGsの実現に取り組む企業などを取材して新聞にまとめるときのポイントや、新聞記事の活用法などを伝えている。

 6月、滝川中学校(神戸市須磨区宝田町2)の1年生132人が、淡路市にある体験型農場「タネノチカラ」のSDGs探究プログラムに参加するのを前に、取材の要点を学んだ。同農場で火おこしや草刈りを体験した後、新聞作りのノウハウも学習。各班で「環境を支える土新聞」「みんなで地球を守る新聞」などの名前を付けて新聞を作り上げた。

 甲南女子中学校(神戸市東灘区森北町5)では、2年生197人が神戸市の「SDGsの探究教育プログラム」の一環として、市内五つの企業を訪問して個人新聞を作った。取材を前にした6月の授業では「何を一番取材したいか」「その企業の理念はどの開発目標と関連しているか」などを考えた。「神戸どうぶつ王国」(同市中央区港島南町7)を訪れた80人は、絶滅危惧種を守る取り組みなどを取材した。

 両校とも同協議会事務局長が講師を務め、「SDGsを身近な、自分ごととしてとらえたい」「世界的な課題について、知る力や伝える力をはぐくむことが大切」と強調した。

 8月には神戸市立六甲アイランド高校(同市東灘区向洋町中4)でも授業を行い、1年生25人が参加した。授業後、生徒たちは新聞記事を使ってSDGsに関する調べ学習に取り組んだ。

 SDGsの期限は2030年。その達成が危ぶまれているが、甲南女子中の辻本智史教諭は「生徒たちが遠く離れた場所とつながっていることを実感し、SDGs学習による気づきを自身の未来を彩る糧にしてほしい」と話している。同校の生徒たちは2学期、奈良や和歌山への研修旅行でもSDGsについて学んでいる。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(10月27日)

[写真㊤] 取材のポイントを学ぶ甲南女子中の生徒たち=神戸市東灘区森北町5231027SDGstaakigawatyuu.jpg

[写真㊨]滝川中の生徒が作った新聞の一例(画像の一部を加工しています)

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阿部俊之・神戸市立丸山中学校西野分校教諭

 「A5用紙の大きさで新聞を書く」。この発想に驚きました。

 この大きさで書いたことにより、新聞を書くというよりも友達にニュースを届けるような感覚で書けたことが、自由な発想と構想につながったような気がしました。

 文字フォントや大きさだけではなく、色を上手に使って見出しを工夫していた作品も多くて見ごたえがありました。

 また「やさしい日本語」を用いることへの書き換えは、授業だけにとどまらず、これからの生活においてもこの経験が活かされていくような気がしました。

三嶋祐貴子・明石市立高丘中学校教諭

 県立伊川谷高等学校による「やさしい日本語」新聞書き換え講座があった。母語としての日本語の理解を深め、グローバル社会における多文化共生の意義を考える授業だった。「やさしい日本語」講座講演会を行い、母語である日本語について考えなおし、実際に自分が気になる新聞記事を「やさしい日本語」に置き換えたはがき新聞を作っていた。どの作品も相手がわかりやすいように文字を大きくしたり、絵を挿入したりと工夫がされていた。また、新聞記事の要約だけでなく、その記事について自分がどう思うかも書かれており、班や全体で意見を交流するときに自分の意見を発表することで、互いの価値観を理解できる授業だった。

 本校も、本年度から委員会や総合の時間に新聞を活用した取り組みを行っている。生徒の表現力、発想力、発信力、コミュニケーション能力を高められるように、新聞記事を活用していきたいと思う。

岩本 隆・日本経済新聞社神戸支社支局長

 授業前、配られたタブレットで生徒が書き換えた記事を見て驚いた。「相手にわかりやすく伝えよう」という気持ちにあふれていたからだ。見出しをつけたり、イラストを描いたり、大事な文章をマーカーで囲んだり...。外国人でも読みやすいように、漢字にふりがなをつける工夫をした生徒もいた。

 授業が始まると、各班の中で生徒が熱心に発表。各班で決めた5人の代表者が自分の書き換え記事をみんなの前で堂々と発表する姿にまた驚いた。

 少し残念だったのは、記事が伝えたいポイントに触れずに書き換えていたものがあったこと。「高校1年生にそれを求めるのは少しハードルが高いかな...」と思った後、「むしろポイントがわかりやすいように、我々記者が努力しなければ...」と思い直した。

村上ともこ・愛媛県NIE推進協議会事務局長、愛媛新聞社地域読者局読者部副部長

 「やさしい日本語」への記事書き換えを通して、「相手に伝わるように伝える」ことに真摯(しんし)に向き合う生徒たちの姿が印象的でした。記事を書き換えるためには、元の記事を読み込み理解し、ポイントを絞り、わかりやすい言葉に置き換えるなどたくさんの工夫が必要で、有効な言葉のトレーニングになると思います。また、読み手を想像しながら表現することは、生徒の視野の広がりに繋がると感じました。今後夜間中学との交流も予定されているとのこと、どのような交流が行われるのかも気になります。

 オンラインでの参加だったため、スクリーンに投影されたはがき新聞の文字があまり読めませんでしたが、大きな文字で書かれ「伝わるように大きく書いた」と発言していた生徒の発表はよく理解できました。文章の内容だけにとどまらず、さまざまな工夫で相手に伝えようとする姿勢は大切だと感じました。今回は貴重な学びの機会をいただきありがとうございました。

木場翔太・兵庫県立相生産業高等学校定時制課程教諭 

  初めてNIE実践指定校の公開授業に参加させていただきました。本校はNIE実践指定校ではありませんが、県の「心のサポート推進事業」の一環として、新聞を活用した行事を月2回実施しています。内容は、当番の学年が選んだ新聞記事をその学年以外の生徒が読み、感想を書くといったものです。選んだ記事にはその理由も書くように指導しています。この取り組みの中で「文章を読む練習」「文字を書く練習」「文章の内容を理解する」「他者の考えを吸収する」の4つの力を身につけることを目標にしています。特に「文章の内容を理解する」「他者の考えを吸収する」の2つを身につけさせることに苦労していますが、伊川谷高校の生徒さんは1年生で新聞の記事をしっかり理解され、伝え方にも自分なりに工夫されており、大変驚きました。

 私自身、今の勤務校までは新聞を活用した授業等の経験がなかったので、今回の公開授業はどの内容も新鮮で今後の本校の実践にぜひ活かしたいと思いました。伊川谷高校、福田先生をはじめ大変有意義な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

 ※10月10日の伊川谷高校の公開授業を担当した福田浩三教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。 

多文化共生への橋がけ
-新聞記事のやさしい日本語書き換えを通して-

 ◇ねらい
 伊川谷高校は現在、日本新聞協会のNIE実践指定校3年目であり、これまで日本のグローバル化・情報化社会に必要なコミュニケーション能力を生徒が獲得することを目指してきた。この公開授業では近年、在留外国人とのコミュニケーション促進に効果が期待される「やさしい日本語」をNIE実践に取り入れることで、生徒による多文化共生・国際理解への意識付けを目指した。

 ◇実践内容
 1年コミュニケーション類型生徒30名を対象に、これからの社会のグローバル化を見据え、生徒が日常的に、幼い子どもや日本語を母語としない他者の観点で日本語を捉えることを目的に、「やさしい日本語」を用いた新聞記事の書き換えを行った。
 生徒が興味を持った新聞記事(神戸新聞社主催「ひょうご新聞感想文コンクール」応募用に選んだ記事)を書き換え記事として活用し、「やさしい日本語」を用いるだけでなく、A5用紙という制約の中で、より読み手に内容が伝わるようなまとめの工夫を行い、最後にその発表まで行った。
 初回は「やさしい日本語講演会」を基に、文章の「やさしい日本語」を用いた書き換え演習を行い、2~4回目で生徒は選んだ新聞記事を基に、その伝えたい内容や要約として必要な箇所を選び出し、その内容を「やさしい日本語」を用いてA5用紙にまとめ直した。この際、新聞紙面を参考に、より内容が伝わりやすいように見出しや文言、紙面レイアウト等について検討した。
 最終回となる5回目がこの公開授業であり、まとめ直したA5紙面を用いて、生徒各自が興味を持った新聞記事の発表を行った。初めに班内発表を行い、その後各班より代表者を選出し、その代表者がプロジェクターで拡大提示された自作品の紙面を用いて全体発表を行った。発表で、生徒は記事の興味を持った点に触れながら書き換え記事の読み上げを行い、書き換え時の工夫点などを説明した。

 ◇さらなる発展へ
 「やさしい日本語」の活用実践として、在留外国人との交流を希望する生徒を募り、地元の夜間中学校生との交流を行った。この中学校は在籍生徒の8割が外国籍であり、本校と同じくNIE実践指定校として新聞を活用した日本語教育にも力を入れているため、交流した生徒も「やさしい日本語」を通して、多文化共生・国際理解について考えることができた。今後も「やさしい日本語」を通した交流の機会が増えていくことを望んでいる。

 ◇全体の感想
 近年、新聞記事もデジタル配信が浸透しつつあるが、紙面としての新聞のもつ一覧性・網羅性と、読者を意識した見出しやレイアウトなどの表現力は、NIEの実践に欠かすことのできない大事なポイントである。その点で、今回の「やさしい日本語」を用いたNIE実践は、「読む・まとめる・書く」の一連の流れにおいて新聞のもつ表現力を学び、多文化共生・国際理解にまで繋げることができ、実践者として一定の満足を得ることができた。本実践で「やさしい日本語」を学んだ生徒たちが、今度はこれを伝える側になっていくことに期待したい。

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生徒ら工夫点紹介

 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、新聞記事を「やさしい日本語」に書き換える取り組みを進めている伊川谷高校(神戸市西区)の公開授業が10月10日、同校であった。県内の学校教諭を中心に、オンラインも含めて33人が参加した。

 県NIE推進協議会が企画。同校では2学期から、自身が興味をもった新聞記事をまとめ直す授業を継続実施しており、総まとめの回を公開した。

 この日は1年生29人が5班に分かれて各自の記事を紹介し、工夫した点などを説明。代表者が発表したテーマは、ヤングケアラーや中国のゼロコロナ政策、戦争と原爆などさまざま。「漢字にふりがなを付けた」「イラストを添えた」などの工夫点も述べた。

 瀬戸口淳宏(あつひろ)さん(16)は「新聞記事は難しかったが、自分で調べたり班の仲間と話したりして気付くことも多かった。きょうの発表も含めて良い経験になった」と振り返った。

 愛徳学園中学・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は「難しい記事内容を本当に理解していなければ自分なりのアウトプットはできない。NIEの取り組みの中でも斬新な切り口だと感じた」と感心していた。(安福直剛)=13日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]やさしい言葉でまとめ直した記事を紹介し合う生徒たち=伊川谷高校

 公開授業の後、現地参加者など20人で意見交換会を実施した。「記事の内容を在留外国人などに『やさしい日本語』で説明するには、自分が記事の内容をよく理解し、自分の言葉で的確にまとめる練習を行うことが大事だ」との意見があった。評価については「評価基準を明確にし、評価をもとに、発表の仕方や内容を改善していくことが大切である」との意見が出された。

 締めくくりに、この授業の最初から、指導や助言を行っていた塩川雅美(しおかわ・ まさみ)・ 大学未来創造研究所代表、吉開章(よしかい・あきら)・やさしい日本語普及連絡会代表理事、藤原孝章(ふじわら・たかあき)・同志社女子大学名誉教授から講評があった。(この稿、兵庫県NIE推進協議会事務局)

  ※公開授業を担当された伊川谷高校・福田浩三教諭の寄稿(ねらいや展望)をこちらに掲載しています。参加者の感想をこちらに掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

    

 NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会は10月26日午後2時~4時45分、西宮市立浜脇中学校(西宮市宮前町3)で公開授業を行う。

 同校の渋谷仁崇主幹教諭が「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう」をテーマに、NIE授業を実施する。生徒たちが新聞記事から社会的事象の課題などを取り上げ、住み続けられるまちづくりについてアイデアを出し合い、お互いの考えを深めていく。終了後に意見交換会や、武庫川女子大学の大和一哉特任教授の講評を予定している。

 参加無料。希望者は10月17日までに申し込む。申込書は同協議会のホームページから取り出せる。同協議会☎078・362・7054

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申込み用紙2023NIE公開授業浜脇中学_page-0001.jpg2023公開授業 西宮市立浜脇中学校Word申込書.docx

 NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会は10月10日午後1時50分~4時、兵庫県立伊川谷高校(神戸市西区伊川谷町長坂)で公開授業を行う。

 同校の福田浩三教諭が「多文化共生への橋がけ」をテーマに、新聞記事を易しい日本語に書き換えるNIE授業を実践する。終了後に意見交換会を予定している。

 参加無料。授業はビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でも公開する。希望者は10月3日までに申し込む。申込書は同協議会のホームページから取り出せる。同協議会☎078・362・7054

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2023公開授業案内 伊川谷高校Word申込書.docx