セミナー・発表会・公開授業

【寄稿】浜脇中学校の公開授業を終えて

※10月26日の西宮市立浜脇中学校の公開授業を担当した渋谷仁崇主幹教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

「主権者として住み続けられるまちづくりをデザインしよう~NIE活動を通して協働的な学びを基盤として「深い学び」を目指した授業づくり~」

概要
 本校は2021年度から全生徒を対象に「NIEノート」活動を展開し、社会の動きに関心をもち、自らの意見やアイデアを表現できる人物の育成を目指している(「NIEノート」については後述)。この数年は、日本万国博覧会協会との万博リサーチ企業ミーティングや、おおさかATCグリーンエコプラザとの持続可能な開発目標(SDGs)連携講座、桃山学院大学ビジネスデザイン学部のSDGsアイデアコンテストへの参加など、大学や企業との連携を図り、生徒が「主権者としての学び」を深めてきた。

 公開授業も「NIEノート」活動を中心に据えた。生徒が新聞記事から社会的な課題を取り上げ、SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」の実現に向け、アイデアを出し合い、お互いの考えを深めることを目指した。

NIEノート
 「NIEノート」活動は週に一度、生徒各自が興味関心のある新聞記事を選び、考察し意見や提案をまとめる。その内容を社会科の授業でプレゼンテーションし、クラスメートと意見交流することで、考えを深めている。

「 NIEノート」にみられる生徒の感想 「普段ニュースを見ないから、いろんなことが知れて楽しい」「新聞を読む機会が増え、起きている出来事などが分かる」「普段テレビのニュースを流し見している。自分から新聞記事にしっかり目を通すことで新しい発見があったり、そのニュースとしっかり向き合って自分の意見を持てる」「ニュースを調べて感想を書くだけじゃなくて、知らなかったことを共有できて楽しいし、いろんな人の感想が聞ける」「自分が選んだのとは違う新聞のニュースを知れる」「NIEノートを使うことで新聞を読む機会が増え、家族とのニュースや記事の会話がより弾むようになった」「いろいろなニュースを知れて好きな特集(記事)も見つけられる」「ニュースを知ろうとすることは、普段は時間がなかったり面倒だったりする」

 生徒たちは好奇心旺盛で現代の社会的な課題に興味を抱くが、その解決にどう貢献できるかという自信が必要だと考える。個々の関心やアイデンティティーを尊重しながら、「NIEノート」で自らの意見やアイデアを発信できる環境を提供し、共感することや協力し合うことの大切さを育み、自己実現への道を支援していきたい。

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[写真説明]各自での新聞記事選びの様子

公開授業について
 事前の学習では、習得した知識を活用しきれないグループが多く見られたことから、まとめ方を見直した。生徒一人に一つのテーマを設定させ、プリントに学習した内容をまとめさせておく。地域社会の未来を予想するにあたって、「住み続けられるまちづくりを」のアイデアを出すのに活用できそうな具体事例をまとめさせておく、などだ。

[写真説明]授業で活用した資料 

本時の学習では、住み続けられる地域社会について何に取り組んだらいいか、まずは個人で考え,次に小グループ(5~6人)で考える。新聞記事で知った社会的事象について、まずはこれまでの学習で得た知識をあてはめて、地域社会がよりよく発展するための方向性を見いだしていく。さらに生徒がさまざまな意見を聞く中で、自分の考えの変容や深まりを実感し、新たな提案へとつなげることを目指した。  

 特に先進的な技術開発が進む社会のイメージについて、毎授業での「NIEノート」を活用した発表のほか、5月、おおさかATCグリーンエコプラザでのSDGs学習、日本万国博覧会協会による講座を通し、将来生まれる課題やそれを解決する可能性(ビジネスチャンス)を生徒に考えさせたいと考えた。

 アイデアを出すにあたっては、四つの視点―地域(浜脇、香櫨園、西宮、兵庫▽日本(各都道府県)▽万国博覧会(最新技術)▽世界(各州)―を提示し思考の助けにする。これらの視点は、歴史学習で近世・近代・現代の単元に入ったときの深い学びにもつながるのではないか。

 グループの話し合い活動では「司会」「計時」「記録・発表」「ムードメーカー」と役割分担を明確にした上で、途中で議論が止まったり、うまく意見を表せなかったりしたときの生徒の考えの引き出し方をどうするか。指導者がファシリテーションの技術を使い、生徒の動機づけをうまく維持させ、考えを上手に引き出して提案につなげさせることが大切である。

さらなる発展へ
 11月21日、日本博覧会協会ジュニアEXPO主催のリサーチ企業ミーティングを全校生で実施し、日本の大手企業4社のSDGsの取り組みについて企業側と質疑応答も行う。日々の学びやアイデアを社会へ直接発信することで、さらなる深い学びにつなげていく。また、クラス内で行ったアイデアミーティングの成果を学年や学校単位で共有し、優秀な作品は地域やスタートアップ企業に発信していく。

全体の感想
 授業者として4月、生徒たちと出会った当初から「進取果敢」をスローガンとして「人に言われる前に進んで行動する」を意識して生活してほしいと伝えている。日頃から学校の教職員、管理職、地域、保護者の支えと理解があってこそのNIE活動であり、その中で伸び伸びと学習活動をする生徒たちの成長を感じている。今日の公開授業でも、日常の彼らの姿があった。日頃より新聞・ニュースに触れ、社会的な事象を考え、地域課題に向き合い、その中で「住み続けられるまちづくりを」について、主権者として考える人間になってほしい。そのために、各教科を主体的に学び、物事を多面的・多角的にとらえる力をつけてほしい。日本博覧会協会や兵庫県NIE推進協議会の多大なるバックアップがあってこその学習活動である。この場を借りて、日頃の感謝をお伝えしたい。

 さらなる授業改善を目指して、今後も研さんを積んでいきたい。