NIEについて

NIEとは|NIE 教育に新聞を より)

NIEとは

NIE(Newspaper in Education=「エヌ・アイ・イー」と読みます)は、学校などで新聞を教材として活用することです。1930年代にアメリカで始まり、日本では85 年、静岡で開かれた新聞大会で提唱されました。その後、教育界と新聞界が協力し、社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会の発展などを目的に掲 げて、全国で展開しています。

日本新聞協会は96年にNIE基金を発足させるとともに、NIE事業を「新聞提供事業」と「研究・PR事業」に分け積極的に推進し始めました。そして、NIE事業は、新聞協会から98年3月2日新たに設立された日本新聞教育文化財団(新聞財団)へと引き継がれました。

学校に新聞を提供する活動は、89年9月パイロット計画として東京都内の小学校1校、中学校2校でスタートし、96年に「NIE実践校」制 度となった翌97年には、47都道府県全ての地域での実践が実現しました。当初、学校総数の1%である400校を目標としていましたが、2004年にこれ を達成。その後は500校を目標に掲げ07年に達成しました。09年4月から「NIE実践指定校」制度として活動を進めています。

新聞財団は00年10月、日刊新聞発祥の地である横浜市に、学校等での新聞活用を支援する機関として、日本新聞博物館内にNIE全国センターを開設しました。また、全国47都道府県に教育界、新聞界の代表で構成されるNIE推進協議会が設立され、地域のNIE活動の核となっています。

新聞財団は11年3月に新聞協会と合併し、NIE事業は新聞協会で引き継ぐこととなりました。

NIEは世界共通

世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の調査によると、NIEは11年1月現在、世界74か国で実施され、多くの国で「民主主義を支え、よりよい市民を作る」と考えられています。

アメリカ、フランス、ノルウエーなどではNIE週間を設け、期間中、新聞記者が学校で記事の書き方を指導したり、教師向けセミナーや公開授業を開催しています。このほか、実際に授業で使う新聞の提供を実施しているところもあります。

ここに掲載する「NIE Get Started(さあ、NIEを始めよう)」は世界新聞協会(WAN)事務局が新たにNIEを始める人たちのために作成したものです。新聞財団NIE部が翻訳しました。

WANは2009年7月、国際新聞技術研究協会(IFRA)と組織を一元化し、現在は世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)となっています。

多彩なNIEの実践

NIE実践指定校だけでなく新聞を教材として活用することは、古くから社会科や国語科を中心に行われています。NIEにはこうした新聞活用 のほか、「新聞や新聞記者について学ぶ」「新聞づくりを通して学ぶ」――ことも含まれます。先生の指導のもと「朝の時間」で新聞を読むのもNIEといって よいでしょう。

全国のNIE実践指定校では、工夫をこらした多彩な取り組みが行われています。その一部をご紹介します。

  • 新聞から知っている文字を探し出す(小学校低学年)
  • 新聞記事や広告を切り抜きパンフレット「あこがれの海外旅行」を作って、地理の授業で使う(中学校)
  • 各紙を一面から最終面まで精読して、最も興味をもった記事を選び、内容について論述する(中・高校)
  • 政治、経済、社会、文化、スポーツ、地域ニュースと各面にわたってクラス全員で考えてみたいテーマを手分けして探し出し、ディベートの素材にする(小・中・高校)
  • 生徒一人ひとりが作った理科に関する新聞切り抜きシートを集約して、現代版「理科百科事典」を作る(高校)

新聞活用は家庭のほか、大学や地域生涯教育での実践も広く行われています。

NIEでつく閲読習慣

子どもたちの「読解力」の低下や文字・活字離れが心配されるなかで、成果をあげているのがNIEです。新聞財団が実施した「NIE効果測定調査」によると、児童・生徒の新聞を読む頻度がNIEを通じて校種を問わず拡大しています。

これまで新聞を読まなかった子どもたちも新聞を手に取るようになり、新聞の閲読習慣が芽生えていることがうかがえます。

第5回調査でNIEによって児童・生徒にどんな変化がみられたかを先生にたずねたところ、約75%が「新聞を進んで読むようになった」と回答。

このほか、「記事について友人や家族と話すようになった(約70%)」「生き生きと学習する(約60%)」「自分で調べる態度が身に付く(約68%)」といった項目で、多くの先生が児童・生徒の学習態度の変化を指摘しました。

地域に根付くNIE

公民館や地区センター、図書館などを会場に、生涯学習や親子学習で新聞を活用する事例も増えています。子どもと大人が新聞を題材に対話する 世代間交流の講座や、地域の高齢者同士が新聞を通じて交流する講座、新聞記者などが講師となって新聞の読み方や報道の仕組みを説明するプログラムなどさま ざまな取り組みがあります。

NIE教育コンサルタントの渡辺裕子さんに地域NIEの実践例をご報告いただきました。

児童・生徒の感想から

「生きた教材」である新聞を通じて子どもたちは多くの発見をしています。そんな児童・生徒の感想を、実践指定校の実践内容を地域ごとにまとめた「NIE実践報告書」からいくつか紹介します。

小学生

  • ぼくはいつもテレビしか見てないんだけど、テレビで放送している以外にも新聞はくわしくのっているんだと思いました。
  • 新聞を読む機会が増えた。記者や記事が伝えたいことは何だろうかと思って読むようになった。
  • 新聞の難しい言葉も読んで理解しようとするから、言葉がわかって面白い。

中学生

  • 新聞の切り抜きが宿題になったので、新聞を見る習慣がついた。
  • 新聞社が取材した情報や編集の仕方で同じ事件でも内容が違うんだと思った。
  • 新聞には暗い話も多いけれど、反対に地域であった温かいニュースとかもあって「新聞って面白いんだなぁ」と思いました。日本に住んでいるんだから、日本の良いところも悪いところもちゃんと知っておきたい!!という気持ちが大きくなりました。
  • 今まで新聞を読んだりして自分の意見を持っても、誰かと話すことがなかったけれど、NIEの活動で友達と話し合う機会が増え、新聞は出来事を知るだけではないという考えに変わりました。

高校生

  • 新聞の記事から知識が深まり、その知識をもとにして発言や発表など表現力が高まった。
  • これまでテレビ欄、スポーツ欄しか読んでなかったが、その他の記事を読むようになった。毎日読んでいると世の中の動きがつながっていることに気づいた。
  • 自分の考えをまとめて自分の言葉で書く力もついたと思う。そしていろいろな記事の感想を書いていくうちに「知らなかった自分」を知ることができたと思います。私はこういう風に考えるのかと、文字になって初めて気づいたことがたくさんありました。