教員によるNIE実践の記事一覧

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    9年制の義務教育学校・姫路市立豊富小中学校は、隣接する市立豊富小・豊富中が一つになって、2020年4月1日に開校しました。特色ある取り組みとして「NIE推進」を掲げています。コンセプトは、新聞を「つかう」と「つくる」活動を通した情報活用能力の育成で、体験活動やICTの活用、調べ学習と連動した活動など、工夫しながら「つかう」「つくる」活動を進めています。

    19年度、小中両校とも日本新聞協会のNIE実践指定校となり、実践を積み重ねてきました。その体験をベースに、「つかう」活動では、記事の活用を中心に朝の全校読み聞かせ、コラムの書き写し、まわしよみ新聞などの活動のほか、防災スリッパづくりなど、新聞そのものを素材にした取り組みも行いました。

   「つくる」活動では、教科や総合的な学習・行事・体験活動のまとめとして、新聞づくりを実施。5~9年生(中学3年生)では、神戸新聞社のクラウド型アプリ「ことまど」を使った新聞づくりにも取り組みました。

 前期課程(小学校)には新聞委員会があり、19年度に引き続き、校内のニュースを取材して毎月、壁新聞を発行。委員会の児童たちからは「みんなが読んでいる姿をみるとうれしい」「『次はどんな記事を書こうかな』と考えながら、記事を探している」などの感想が聞かれ、「情報の作り手」としての意識の芽生えを感じます。

 さらに、学校図書館や校内の掲示板に新聞コーナーを設けるなど、日常的に新聞に触れて感じることのできる場づくりも行っています。

 「新聞のある風景」が根付きつつある本校ですが、教員たちが、NIEに関する特別な会議や研修を行っているわけではありません。一人一人が新聞の存在を少しだけ意識し、教育活動の中に新聞の特性を自然に溶け込ませているイメージです。

 以前から校種を超えた教育研究が活発で、新しいことにトライする雰囲気がNIE推進につながっているように感じます。

 新型コロナ感染拡大防止の休校措置を経て、6月15日から通常の教育活動が再開しました。後期課程(中学校)では、毎日届く新聞から生徒がお勧めの記事を順に紹介する取り組みもスタートしています。

 新しい生活におけるNIE実践に向け、これからも「新聞のある風景」をみんなで創っていきます。

井上幸史(姫路市立豊富小中学校教頭)(7月6日)

[写真説明]お勧めの記事を選び、発表内容を考える9年生

 ※日本新聞協会NIEサイト・各地の教員研究組織で、豊富小中学校NIE研究チームを紹介しています。 

各地の教員研究組織

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  西宮市立浜脇中学校では6月1日から、クラスを半分に分けての分散登校を実施し、15日からは通常の授業を再開しています。新型コロナウイルス感染拡大防止対策の休校期間中は、教師がポスティングで課題を配布したり、学校ホームページに授業の動画を配信したりと対応してきました。

 授業では、社会科の課題として、「日本と外国を比べてみよう~新型コロナウイルスの対応~」として、生徒各自が「この国のこんな対応がいいな」と思うものをリポートにして提出し、授業で意見交換しました。

 道徳の授業では「正しく知り、正しく恐れる新型コロナウイルス」をテーマに新聞記事を活用し、生徒からは「飛沫(ひまつ)感染」「フェイスシールド」「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」というキーワードがたくさん出てきました。

  「コロナ差別」についても考えました。生徒からは「新聞記事で、医療従事者に対する差別や、親が医療関係の仕事をしているから保育所が受け入れてくれないことなどを知った」「自分の知り合いが、体調が悪くて発熱し回復した後に、周囲の人が何か避けているように感じたことがあった」などの声が上がり、新型コロナ禍を身近に感じているようでした。

  さらに、「『コロナちゃうん?』など何気ない言葉や行動が、差別につながり、相手に大きなダメージを与える」「新型コロナウイルスは世界からなくならないと思うから、正しく理解したい。ネットでは偽情報もあるから、新聞やニュースを見て、正しく行動したい」など、感想も出されました。

  本校では、今後も新聞記事を生徒各自にスクラップさせ、まとめ、感想を書く「NIEノート」の取り組みを続け、社会科の授業で交流させることを継続し、社会的事象への興味や関心・理解を深めていきたいと思います。

渋谷 仁崇(西宮市立浜脇中学校教諭)(6月29日)

[写真説明]分散登校時の道徳の授業。1年生が新型コロナ禍について考えた

    新型コロナウイルスの影響で突然、臨時休校要請が発表されたのが、3学期の期末テスト最終日の前日夜。いつ再開できるか見通せない臨時休校が始まり、結果的に3カ月に及びました。その間、兵庫教育大学附属中学校では、生徒の「学びの保障」をどう確保するか、全職員が何度も話し合い、できることから行ってきました。

    本校では臨時休校中、各教科の担当教員が課題プリントなどを作って生徒に配ってきました。新型コロナと同様、100年前、世界的に大流行した「スペイン風邪」について報じた朝日新聞の記事を引用、世界全体および日本で多数の人が亡くなったことや、当時の政府が呼び掛けた対策が「マスク着用」など、今と変わらないことなどを、3年生向けの通信で紹介したケースもありました。

    その頃、全国各地の先進的な学校では、双方向のオンライン会議形式の授業や、授業の動画を教師自ら制作しネット配信しているといったニュースが新聞などで取り上げられていました。本校でもそのような取り組みができないか教員間で話し合いを進め、20代後半~30代前半の教師を中心にプロジェクトチームを立ち上げ、動画配信やオンライン授業の実施に向け、打ち合わせや研修を行ってきました。

    そして、マイクロソフト社のOffice365の中にある「Sway」(プレゼンテーションソフト)と、「Forms」(アンケート、問題集計ソフト)」を活用することを決めました。「臨時休校に伴う特設ホームページ」を開設し、4月20日からは教科ごとに課題やプリント、問題、オリエンテーション動画を載せた「非同期型」授業を試行しました。この中には、新型コロナで亡くなった1千人の名前や享年、一言紹介を載せた、ニューヨーク・タイムズ紙の紙面を紹介したケースもありました。

 「Sway」で作成したホームページからプリントや問題をダウンロードでき、「Forms」では出席を確認したり、体調管理調査を行ったりすることもでき、体温が高かった生徒にすぐ連絡する対応もとりました。さらに、5月11日からは「非同期型」ですが、全教科で週1回以上の動画を配信し、「特設ホームページ」を使いオンライン授業を開始しました。

    数学科の動画は、教師2人が教師役・生徒役として登場し、質問に答えながら進めたり、これを見た生徒からの回答に次の授業で答えたりするなど、双方向を意識した内容です。体育科の動画は、体育科教員が生徒たちの運動不足解消に役立つダンスなどを披露したりしていました。それぞれの動画へのアクセス数を見ると、多くの生徒が、本校教員が作成した動画を見て学習を進めていることが分かりました。質問したいときは、「Forms」を利用して行っていました。

   学校再開後もしばらくは分散登校のため、引き続き、オンライン授業を行っている教科もあります。臨時休校で登校できない生徒のために、われわれ教員は何ができるのか―。苦手なことにも果敢に挑戦し、各教員が試行錯誤しながら取り組んでいます。なお、ネット環境により、十分に動画配信やオンライン授業を見ることができない生徒には学校再開後、放課後の時間を使って学校で見られるようにしています。今後、ウイルスの流行の第2波、第3波に備え、「非同期型」と「同期型」の融合も視野に、オンライン授業の深化・充実に取り組んでいきます。

    NIEについては現在、新聞3紙の提供を受けています。当面は「三密」とならないよう配慮しながら、廊下や図書室に閲覧場所を設置して、生徒がいつでも新聞を手に取って読めるようにしていきます。そして、生徒一人一人が新型コロナなどに関心を持ち続け、多面的・多角的に考えることができるようになってほしいと考えています。

大山 隆史(兵庫教育大学附属中学校校長)(6月19日)

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 当校では2020年3月から新型コロナウィルス感染拡大防止のための休校が続いていましたが、緊急事態宣言の解除を受け、5月下旬から分散登校を始め、6月1日から学校を再開しました。

 愛徳学園中・高等学校では臨時休校になった3月上旬から、これから受験期に入る高校2年生(現・3年生)を対象に、普段使っている授業支援アプリ「ロイロノート」(タブレット端末)を使って遠隔授業ができないか検討を始めました。日頃は対面授業の中で、文房具の一つとして使っている「ロイロノート」ですが、対面ではない授業は初めてで、どう使えばよいか各教員で試行錯誤しました。その結果、ロイロノートのカード(スライドのようなもの)に文字や図、写真、ときには動画を入れ、音声も載せて、自宅にいる生徒と送受信し、添削や解説を行うことで授業ができると考えました。

 3月下旬からオンライン授業(名称・『愛ちゃんねる』)として、高校3年生と2年生に講習を実施しました。講習では、生徒の「学びたい」という気持ちが強く感じられ、「伝わる」「できる」という手ごたえを感じ、大いに励まされました。4月に入っても休校が続いたため、中1生を除く全学年を対象に科目を絞ってのオンライン授業と、課題の郵送などで授業を行いました。さらに、5月11日からは全教科で正規の授業としてオンライン授業を行いました。

 そうした中、20年度からNIE実践を強化することになり、「新聞のすすめ」として、高校2年生と3年生を対象にした選択国語表現のオンライン授業で「新聞スクラップ」に取り組みました。

 「新聞スクラップ」は過去の授業でも行ったことがありますが、自分の興味のあることや進路に応じてA4サイズのノートに新聞記事を貼り、①記事のあらまし②問題点③その背景④自分の考えーを記入し、週に一度、自分のスクラップ帳をロイロノートで写真に撮り、送信し、教員がコメントを付けて返却するという取り組みです。

 離れていてもやり取りはスムーズで、教員からも話題を広げたり、他の記事の紹介などのコメントを付けたりしています。また、生徒がスクラップした新聞記事をテストの範囲にした漢字テストも週に一度行い、新聞を読む、新聞に興味・関心を持つということにつなげています。これから「コロナ後について考える」という小論文に取り組む予定で、さらに新聞記事の利活用を考えているところです。

 現在、学校も再開し、対面授業を行っています。オンライン授業は準備に時間がかかることや、ときに通信環境が不安定になることなど大変な面もありましたが、教員の「伝えたい」という思いを形にでき、生徒も後から繰り返し見たりするなど、オンラインならではの良さや可能性を実感できました。これからの授業の中で、対面とオンラインの良さを生かしたハイブリッドな授業で、生徒一人一人の深い学びを実現していきたいと思っています。

米田 俊彦(愛徳学園中・高等学校教諭)(6月8日)

[写真説明]生徒が提出したスクラップ帳。教員がコメントを書いて返信する

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     新型コロナウイルスの感染拡大で休校が長引き、子どもたちの学力向上をどう図ればいいか―。家庭学習に頼ることが多く、各家庭の協力にとても感謝しています。そして、学校は何ができるのかを日々模索してきました。

    伊丹市立天神川小学校が4~5月の休校中に行った、各家庭への課題プリントのポスティングは計5回に及びました。アナログな作業で、たくさんのプリントを印刷し封筒に入れ、子どもたちの顔を思い浮かべながら、こんなにも回ったことがないというくらい一軒一軒を回りました。

 算数や国語の宿題だけでなく、何か強く興味をもてる課題はないかと模索しているとき、読売新聞ワークシート(小学生版)が目に留まりました。各新聞社が作成しているワークシートは家庭での学習にとても役立つと感じています。読売新聞東京本社の教育ネットワーク事務局に問い合わせたところ、ワークシートを印刷して配布することを快諾していただきました。

 使用させてもらったのは、5月13日付の「明石・天文科学館 紙芝居や体操配信」です。明石市立天文科学館が、同館の人気キャラクター「軌道星隊シゴセンジャー」による紙芝居や簡単にできる体操の動画「おうちで天文科学館」をつくり、投稿サイト「YouTube」で配信しているという内容で、兵庫県の話題だったのも大きな理由です。

   ワークシートの「あなたは、手を洗っていますか」という質問に、ある子どもは「ちゃんとしっかり20秒洗っています」と回答していました。

 新聞には、リアルタイムで必要な情報が掲載されていることに気づいてほしい。こんな時期でも明るいニュースも載っていることも知ってほしいー。そんな思いがありました。

 まだまだ新型コロナウイルスの感染は心配ですが、「みんな待っているよ」を合言葉に、つながりを大切にした取り組みを進めています。NIEについても子どもたちの笑顔につながる実践を推進していきます。

竹安 雄一(伊丹市立天神川小学校教諭)(5月29日)

[写真説明]児童が回答を書き込んだ新聞のワークシート

社説から学ぶ、説得力のある文章とは?

~「意見」に着目して、社説を要約しよう~

1. はじめに

 聴覚に障害がある子どもは耳から入る情報が限られるため、言語力を高めるための支援が重要になる。近年は小論文やリポートなど、自分の意見を論理的に述べる力(論述力)がますます求められるようになり、より丁寧な指導が必要になってきた。

論述を苦手とする生徒の文章は、主張の羅列に終始したり、あるいは主張が見えなかったりして、事実と意見がバランスよく構成できていないことが多い。そういう生徒に、社説の要約を勧めてきた。

社説は、今、社会で生じている問題を解説し、意見を述べたものである。事実をもとに論述するという点で小論文と重なることが多い。視野を広げながら、論述力を高めるには、絶好の教材といえる。

一方、社説は難しいというイメージをもっている生徒もいる。実践にあたっては、生徒の興味・関心が強い記事を用い、論理構成をつかみやすくするために「意見」の部分にマーキングさせるなど留意した。

2. ねらい

・事実と意見を区別し、要約することができる。

・論理の構成や展開をとらえながら読み取る。

3. 実 践

(1) 対象 高等部の希望者

(2) 時間 休憩時間や家庭学習

(3) 方法

社説のタイトル一覧から、読みたい社説を3つ選ぶ。ワークシート1

意見の部分に、蛍光ペンでマーキングする。(事実と意見を区別しながら読む)

意見に注目して段落に分ける。1つの段落を1行で要約する。(要旨をつかむ)

各段落の要約をもとに全体を150字程度で要約する。(俯瞰的にとらえる)

(4) 留意したこと

・生徒の興味・関心が高い記事を選ぶ。(アニメーション、オリンピックなど)

・事実と意見が区別しにくい文は、別の色でマーキングさせる。

事実と意見を区別するためのワークシート2

・できれば漢字に振り仮名をつける。

4.結 果

 (1) 事実と意見の区別について

事実と意見を明確に区別できない場合がある。たとえば、「~という指摘もある」という文は、指摘された事実を提示しつつ意見を示唆している可能性があるが、今回は、事実として扱った。その結果、実施した生徒が抽出した意見は、概ね一致した。

 (2) 生徒の要約文

1行要約では、段落の中心文を抜き出す程度で良いと考えていたが、生徒は短い文章にするために言葉に選び変えたり、語順を入れ替えたりと工夫していた。全文の要約(150字)では、1行要約を柱にしつつ、何度も本文に立ち戻り、必要と思われる言葉を追加していた。


    Aさんの事例〉

150字要約「京都アニメ放火/若者らの未来が奪われた」(神戸新聞,2019,7.20)

・どんな理由であれ、絶対に許せない暴力行為だ。

・「地方発」モデルを築いてきた人々の夢を壊した犯行である。

・ガソリンの購入時の規制策を検討する必要がある。

・必ず素晴らしい作品づくりができるように支えたい。


段落の要約「京都アニメ放火/若者らの未来が奪われた」(神戸新聞,2019,7.20)

若者らの未来が奪われた京都アニメ放火。夢を壊した犯行で、絶対に許せない暴力行為だ。ガソリンを悪用した犯罪は繰り返されてきた。凶器となる危険性を考えれば、購入時の規制策を検討する必要があるのではないか。平成以降、最悪の惨事の衝撃は世界にも広がった。素晴らしい作品作りができるよう、復活を支えていきたい。


冗長さはあるが、1つの提案を挟み、生徒なりに意見をよく表現できたように思う。なお、Aさんが選んだ社説は、「アニメ会社放火 夢描く若者の未来絶たれた」(新潟日報,2019.7.20)、「『京アニ』惨事 奪われた才能を悼む」(中日新聞,2019.7.20)、そして、「京都アニメ放火 若者らの未来が奪われた」(神戸新聞,2019.7.20)の3本であった。見出しに含まれた「夢」「才能」「未来」という言葉にひかれたという。

 (3) 生徒たちの感想

生徒たちの感想は肯定的だった。感想は概ね次の5点であった。


・新聞社によって表現方法だけでなく、重視している論点が違うことがわかった。

・社説は事実を述べたうえで意見を短く述べているとわかった。

・語彙力が向上すると思った。

・考え方や意見を述べる力が鍛えられると思った。

・要約するのにすごく時間がかかったが、とても良い経験になった。


 

5.成果と課題

高校生の自律的な学習を促すには、「学びの面白さ」、「自分の力が向上した」、「自分の見方・考え方が広がった」、「人の役に立つ」などを実感することが重要だといわれる。今回の実践で、そういった感想が得られ、「社説に込められた力」を感じている。

この実践前に生徒B君が書いた自己アピール文は「やる気と主張」が熱くつづられた文章だった。実践後、彼は自主的にアピール文を書き直してきた。文章は、具体的事実が加わっていて、説得力が格段に高まっていた。客観的な事実を入れる大切さを理解したようだ。

社説には難しい表現(たとえば「憤りを禁じ得ない」など)がある。それが生徒のモチベーションを低下させないかと憂慮していたが、参加した生徒の多くは「語彙が増える」と肯定的に答えた。たいへんうれしいことだと思う。今回の実践を機に、自主的に生徒が毎日できる方法へとつなげたい。

6.おわりに

 私自身も社説の読み比べを続けている。

過日、新型肺炎による「小・中学校の一斉休校」について、各紙が社説で取り上げ、多くが保護者や子どもへの影響を指摘した。一方で、各紙の特徴もうかがえた。

秋田魁新報は「新型肺炎、臨時休校 感染拡大防止へ正念場」(2020.2.28)と感染防止を呼びかけ、北國新聞は「臨時休校の波紋 全国一律の必要性あるか」(2020.2.29)は一律実施への疑問を表明し、神戸新聞は「政府の肺炎対応 丸投げの前に責務果たせ」(2020.2.29)と政策の進め方への疑問を投げかけた。後日、政府が具体的に動き始めた様子をみていると、社説を参考にしたのかと思えるほどである。まさに新聞の読み比べは、社会や政治への関心を高め、視野を広げ、自らの考えを深めるための教材だと思う。

斎藤 治(神戸聴覚特別支援学校教諭)(3月31日)

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 2020年4月開校予定の姫路市立豊富小中学校(同市豊富町)が、将来への指針となる特色ある取り組みに「NIE(教育に新聞を)の実践」を掲げている。同小中学校は、隣接する市立豊富小・豊富中が一つになる、小中一貫の義務教育学校。助走期間の19年度は、両校とも日本新聞協会から実践校の指定を受け、新聞記事を基に環境問題などの調べ学習をしたり、修学旅行など体験活動を新聞にまとめたりしたほか、「朝の時間」には一斉放送で記事の読み聞かせも。20年度に向け、両校の教員によるNIE研究も始めている。  (田中茂典・兵庫県NIE推進協議会コーディネーター)

 「NIE活動の実践」を掲げるのは、「新聞を『つかう』『つくる』活動を通し情報活用能力を育みたい」(阪本靖・豊富小学校長)「『調べる力』を育てる柱に新聞活用を位置づけている」(山下雅道・豊富中学校長)からだが、何より両校には、NIEに前向きな教諭が多い印象がある。今年8月、宇都宮市であった日本新聞協会主催のNIE全国大会や、近畿NIEフォーラム(大阪市)に参加した教諭たちが、紹介された取り組みを授業に取り入れている。

 豊富中の井上佳尚教諭は、NIE全国大会で、ことばの貯金箱「夢」プロジェクト代表・渡辺裕子さんが実践する「つぶやきNEWSっす」を知ったという。これは数人ずつで班を作り、各自が気になった記事を切り抜いて紹介。模造紙に貼り付け、余白にみんなで共感や疑問など「つぶやき」を書き込む。そして読み返し、考えを班内で発表する―という内容。井上教諭は9月、尼崎市立大庄北中学校であったNIE公開授業も参考に、学校司書とこうした授業を行ったという。  豊富中に取材に訪れた日、井上教諭の指導で、小学校の教員ら5人が「つぶやきNEWSっす」に取り組んだ。兵庫県稲美町と熊本県益城町の災害協定の記事を選んだ花折了介教諭は、「各自が選んだ記事について考えを話したり聞いたりすることで、自分の考えを深めることができる」と述べた。

 こうした活動は、校内にとどまらない。両校は9月、地元公民館と共同で地域住民を対象に、「人権」をテーマに新聞を使ったワークショップ「まわしよみ新聞」を開いた。豊富小の井上幸史教頭は「新聞は社会への扉。楽しみながら、地域も巻き込んだNIEを模索していきたい」と話している。 

[写真説明]「つぶやきNEWSっす」のワークショップ。気になる記事を選ぶ豊富小教諭ら(写真左)、新聞を使って調べ学習しやすいよう専用コーナーを設けた中学校の図書室。来春から小学生も利用できる(同右)=いずれも姫路市立豊富中学校 

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    日本新聞協会が任命するNIEアドバイザーは、地域のNIE普及・発展のリード役だ。兵庫では現在、NIEの実践経験豊かな10人の先生たちに務めてもらっている。アドバイザーによる最近のNIE研究活動を紹介する。

 明石市のNIE研究会が6月24日、同市二見町の二見西小学校で、2019年度の第1回研修会を開いた。この日は、若手教諭4人とベテラン教諭1人の計5人が参加。同校の若生佳久主幹教諭が講師となり、前半はNIEや新聞活用法について説明。後半は新聞紙面から「文字数の多い熟語」を探すなどのワークショップを行った。若生教諭は長年、新聞を授業に活用した指導を手がけており、日本新聞協会NIEアドバイザーを務めている。研究会は同校のフレッシュ研修会と兼ねて開催された。
 研究会の19年度のテーマは「情報化社会とNIE~学校現場での新聞活用の広がりをめざして~」。若生教諭は、新聞には「作る」「読む」「資料として使う」「活用する」「新聞の仕組みを知る」などの活用法があることを紹介した。
ワークショップでは、これまでの授業で利用してきた自作のワークシートを紹介。「(文字数の多い)熟語(複合語)を探そう」では、普段新聞を読まない児童も「熟語探し」に懸命になり、自然と記事を読み進めていくようになることや、10文字以上の言葉を見つけたときには教室から歓声があがった経験を話した。参加した教諭が実際に取り組んだ中では17文字が最高だった。
 切り離した4コマ漫画の順番を決めるワークシートでは、二通りの並べ方が見つかるなど、話を組み立てたり漫画をもとにお話を作らせたりすることが、文章表現力の学習にも有益であると紹介した。
参加した教諭は「NIE活動の面白さが分かった。国語や社会だけでなくいろいろな教科で活用できる可能性にも気づいた。早速授業で熟語探しをやってみます」と話していた。
田中 茂典(兵庫県NIE推進協コーディネーター)(7月30日)

[写真説明]紙面から文字数の多い熟語を探す教諭たち