※10月10日の伊川谷高校の公開授業を担当した福田浩三教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。
多文化共生への橋がけ
-新聞記事のやさしい日本語書き換えを通して-
◇ねらい
伊川谷高校は現在、日本新聞協会のNIE実践指定校3年目であり、これまで日本のグローバル化・情報化社会に必要なコミュニケーション能力を生徒が獲得することを目指してきた。この公開授業では近年、在留外国人とのコミュニケーション促進に効果が期待される「やさしい日本語」をNIE実践に取り入れることで、生徒による多文化共生・国際理解への意識付けを目指した。
◇実践内容
1年コミュニケーション類型生徒30名を対象に、これからの社会のグローバル化を見据え、生徒が日常的に、幼い子どもや日本語を母語としない他者の観点で日本語を捉えることを目的に、「やさしい日本語」を用いた新聞記事の書き換えを行った。
生徒が興味を持った新聞記事(神戸新聞社主催「ひょうご新聞感想文コンクール」応募用に選んだ記事)を書き換え記事として活用し、「やさしい日本語」を用いるだけでなく、A5用紙という制約の中で、より読み手に内容が伝わるようなまとめの工夫を行い、最後にその発表まで行った。
初回は「やさしい日本語講演会」を基に、文章の「やさしい日本語」を用いた書き換え演習を行い、2~4回目で生徒は選んだ新聞記事を基に、その伝えたい内容や要約として必要な箇所を選び出し、その内容を「やさしい日本語」を用いてA5用紙にまとめ直した。この際、新聞紙面を参考に、より内容が伝わりやすいように見出しや文言、紙面レイアウト等について検討した。
最終回となる5回目がこの公開授業であり、まとめ直したA5紙面を用いて、生徒各自が興味を持った新聞記事の発表を行った。初めに班内発表を行い、その後各班より代表者を選出し、その代表者がプロジェクターで拡大提示された自作品の紙面を用いて全体発表を行った。発表で、生徒は記事の興味を持った点に触れながら書き換え記事の読み上げを行い、書き換え時の工夫点などを説明した。
◇さらなる発展へ
「やさしい日本語」の活用実践として、在留外国人との交流を希望する生徒を募り、地元の夜間中学校生との交流を行った。この中学校は在籍生徒の8割が外国籍であり、本校と同じくNIE実践指定校として新聞を活用した日本語教育にも力を入れているため、交流した生徒も「やさしい日本語」を通して、多文化共生・国際理解について考えることができた。今後も「やさしい日本語」を通した交流の機会が増えていくことを望んでいる。
◇全体の感想
近年、新聞記事もデジタル配信が浸透しつつあるが、紙面としての新聞のもつ一覧性・網羅性と、読者を意識した見出しやレイアウトなどの表現力は、NIEの実践に欠かすことのできない大事なポイントである。その点で、今回の「やさしい日本語」を用いたNIE実践は、「読む・まとめる・書く」の一連の流れにおいて新聞のもつ表現力を学び、多文化共生・国際理解にまで繋げることができ、実践者として一定の満足を得ることができた。本実践で「やさしい日本語」を学んだ生徒たちが、今度はこれを伝える側になっていくことに期待したい。