オンラインで求められる「言語化の必然」

兵庫県NIE推進協議会会長 秋田久子

実効性あるオンライン学習は喫緊の課題です。生徒がタブレットを通じて意見交換するオンライン授業の長所は「言語化の必然」です。生徒は自分の考えを言葉にする必要があります。

これまでは授業に「体だけ参加」する生徒が一定の割合でいました。発表する人は発表できる人です。大人からは一見活発に見える話合いや実習であっても、積極的に流れに乗っていける生徒と、時間をやり過ごす生徒がいます。私たち大人側からは見えませんが、学力だけでなくキャラクターや関係性も参加のレベルに大きく影響しているようです。

ところが、オンラインでの意見交換では、自分の意見を文章で書き込こまねばなりません。対面の時のように「雰囲気」で補えません。自分と向き合い文章にするのは孤独な作業です。書き込んだ文章だけが授業参加の証明です。オンラインでの意見交換は、考えるための孤独を守り言語化能力を鍛えます。

数年のうちに、オンラインでの個別のやり取りが通常授業に組み込まれていくでしょう。そうなれば言語化能力が日常的に鍛えられ、個々人が自分の輪郭をはっきりさせていけます。その次には、対面でよりよく伝えるための、非言語コミュニケーションの技術にも意識が及ぶに違いありません。自分で自分を演出する意識は生き方を変える力を持ちます。主体的な生き方の原資として、正確な情報収集力は更に一層必要になると思います。

ところで、意見の書き込みを通じて言語化能力を伸ばし、対面での発表で非言語コミュニケーション技術を訓練するには、どんなテーマがいいでしょうか。結論が決まっていないダイナミックなテーマが意見交換を活発にすると思いませんか。NIEがここで使えます。事後学習に新聞を活用して、教科書「で」教える授業ができます。NIE活用でご一緒に、平和で民主的な社会の形成者を育ててまいりましょう。推進協をどうぞご活用ください。

(2020年度兵庫県NIE実践発表会の挨拶から抜粋)

令和3年2月6日

新着ニュース

 兵庫県NIE推進協議会が任命する特任アドバイザーに神港学園高校の中野憲二校長に、同協議会からの推薦で日本新聞協会が任命するNIEアドバイザーに姫路市立豊富小中学校の井上幸史教頭と、西宮市立浜脇中学校の渋谷仁崇教諭にご就任いただいた。いずれも2021年度から。NIEに関心が高く、実践豊かな先生ばかり。抱負を寄せていただいた。

  普段着のNIE活動の定着図る
                   神港学園高校 校長 中野憲二
 特任アドバイザーに就任しました中野と申します。
 HPを拝見し、NIEの活動・実践が、本格的に始まって四半世紀の間に、全国の小・中・高校で、近年は海外でも取り組まれていることを知りました。あらためて、学校現場で継続して取り組まれている先生方の熱意、それを支える事務局の皆様に敬意を表します。
 このたび、NIEの優れた実践の場面に触れることができる貴重な機会を与えていただき、大変ありがたくうれしく思います。
 学ぶという営みは人が成長していくプロセスそのものです。私自身は微力ですが、未来を生きるこどもたちが、NIEを通じて成長していくお手伝いができるよう、先生方と意見交換もしながら一緒に考えていきたいと思います。
 NIE学習が普段着のように、子どもたちの日常生活に定着していけば、と願っています。
                   
  「つくる」と「つかう」キーワードに
                   姫路市立豊富小中学校 教頭 井上幸史
 VUCA(Valatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる時代の中、新型コロナウイルスにより、私たちを取り巻く社会環境の複雑性がいっそう増し、将来についての予測が困難な状況が続いています。生活様式や行動様式の劇的な変化は、私たちの消費行動にも大きな影響を与え、あふれる情報を取捨選択するとともに、その真偽を見極め、適切に意志決定する力がますます必要になっています。
 このような時代だからこそ、一歩前へ。情報の消費者としてだけでなく、創造・発信など「情報のよりよい創り手」としての資質・能力を育むことが大切だと感じます。
 このたび、機会をいただいたアドバイザーという立場と役割に感謝しつつ、「つくる」と「つかう」をキーワードに、皆さんと一緒にNIEの可能性を模索していきます。
                  
  生徒の力を最大限に引き出せる環境づくり
                   西宮市立浜脇中学校教諭 渋谷仁崇
 「わかる世界と変わる自分」をテーマに、NIEノートを活用した授業実践をしています。
 生徒が興味ある記事をノートにまとめ、それを用いてプレゼンテーションを行います。
 この学習を通して、探究する力や、言語力、思考力など、さまざまな力を引き出していきたいと思います。
 SNSを多く活用する現代では、自分の興味あることを深く掘り下げる機会が多くなっていますが、それ以外のことが目に触れない。しかし、新聞は多角的・多面的に物事をとらえることができます。
 年明けには小中学生1人に1台PCが配布されました。
 このコロナ禍で世界は大きく変化し、新たなものが生み出されたり、また見直されたりしています。
 新聞もデジタル化されるなど、時代のニーズは多岐にわたります。
 そんな中で新聞の普遍的な部分も大切しながら、持続可能な社会の中で、生徒たちが持つ力を「最大限に発揮できる環境づくり」を、今後もNIE活動を通して目指したいと思います。

  NIEアドバイザーの名簿はこちら

 兵庫県NIE推進協議会は2020年度、新型コロナウイルス感染防止のため、NIE実践指定校6校で、オンラインでの記者派遣事業(出前授業)を計8回行った。

 全面オンラインでの出前授業は姫路市立豊富小中学校と県立神戸高塚高校の2校で計4回行った。ほかに密を避けるため対面に加え、各教室をオンラインでつないで他学年の生徒らが同時視聴したのが3校。残る1校では、生徒の意見発表に無料通信アプリ「LINE」のグループ通話機能を使った。

 オンライン授業は突然のフリーズなど意思疎通に一部不安を残すが、画面やチャットを通じ質疑応答も行ってきた。また授業の内容を事前に録画し、生徒たちが夏休みに視聴したケースもあった。

 同協議会は学識経験者や兵庫県教育委員会、神戸市教委、県内の学校、県内に取材拠点を置く新聞・通信社8社で組織し、学校教育の現場での新聞活用を進める。出前授業は8社が行い、20年度は21校で計24回実施した。

 21年度は、児童数の少ない複数校をテレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」でつなぐ授業を本格化させる予定。対面とオンラインを併用し、新聞を活用した授業を実践していく。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(4月11日)

 takakou.JPG

 教育現場で新聞を活用する「NIE」活動の一環として、多可町中区の県立多可高校で3月19日、産経新聞神戸総局姫路駐在の小林宏之記者が授業を行った。「新聞に目を向けて」と題し、1年生75人に新聞の魅力や取り巻く状況などについて話した=写真。

 同校は今年度、日本新聞協会からNIE実践校の指定を受けた。校内に新聞閲覧コーナーを設け、社会や国語などの時間に新聞を読み、議論を深める授業を進めてきた。

 小林記者は「インターネットの普及で新聞の在り方が激変している」と現状を説明。その一方、新聞記事は責任の所在が明らかであること、見出しの大小や記事の掲載位置などで各ニュースの価値が一目で分かることなど、新聞の優れた点を紹介した。

 また、新聞を手に「一般記事だけでなく首相の動向や人生相談、小説などさまざまなコンテンツが一つの新聞に掲載され、その情報量は文庫本1冊に匹敵する」と説明、新聞に関心を持つよう勧めた。=20日付産経新聞朝刊播州面

 生徒の感想 笹倉勝さん(16)「記者の仕事を知ることができた。X JAPANのボーカルToshIさんら有名人に話が聞けてすごいと思った」、藤本菜月さん(16)「スマホで情報を入手していたが、これからは、より詳しく情報が分かる新聞も読むようにしたい」

   ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

tunakou3.jpg

 淡路市志筑の県立津名高校(魚井和彦校長)で3月15日、「新聞記者の仕事について」と題した授業があった。新聞を教育現場に採り入れるNIE活動の一つ。朝日新聞神戸総局長の堀江泰史記者(57)が1、2年生計約320人に話した。

 堀江記者は、2018年11月に日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が逮捕された際に、朝日新聞が翌日の朝刊より先にデジタル版で「逮捕へ」と速報したことを紹介。「以前、特ダネは新聞で報じるのが常識だったが『紙もデジタルも』の時代になった」などと話した。

 2年生の岩井祐樹さん(17)は「張り込みをするような取材方法など、初めて知ることがあって面白かったです。自宅は神戸新聞を取っていますが、もっと読みたいと思いました」と話した。=16日付朝日新聞朝刊神戸版

[写真説明]新聞記者の仕事について話を聞く生徒ら=淡路市の県立津名高校

 生徒の感想 中村七星(ななせ)さん(2年)「興味のあるニュースを読めるデジタル版の良さも分かった」、野田愛加(まなか)さん(2年)「夜討ち朝駆けなど苦労して記事を作っていることを知り、新聞を読もうと思った」、谷口航大さん(2年)「取材相手に心を開いてもらう、地道な仕事だと知った」

    ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

toyotomisyoutyuumawasiyomi.jpg

 関心を集めた新聞記事を題材に意見交換し、オリジナルの紙面を作る授業が3月10日、姫路市豊富町御蔭の豊富小中学校であった。6年生の3クラス計88人は、それぞれ別のクラスの児童と3人一組になり、パソコンを通じてやりとりを重ねた。

 同校のNIE(教育に新聞を)研究チームが企画し、神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 子どもたちは事前に神戸新聞の「写真ニュース」から選んだ記事を学習支援アプリで共有。テニスの大坂なおみ選手が全米オープンで優勝した記事や、新型コロナウイルスに感染して亡くなったタレント志村けんさんの訃報などに注目した児童が多く、それぞれ選んだ理由をパソコンに打ち込んだ。

toyotomisyoutyumawasiyomi.png

  紙面で最も大きなスペースを割くトップ原稿は投票で決め、記事の配置もパソコン上で相談して構成した。村前美月さん(12)は「読んでほしい記事を目立たせることで、内容がより伝わりやすくなると感じた」と話した。(安藤真子)=12日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真㊤]別のクラスの同級生とパソコンで作った新聞について発表する6年生の児童=豊富小中学校[写真㊨]児童がパソコン上で意見交換しながら作った紙面の一例。大坂選手の全米オープン優勝(昨年9月)をトップ記事に選んだ

 児童の感想 西尾啓介さん(12)「プロ野球や政治のニュースなど、それぞれが違う視点で記事を選んでいたのが面白かった。知ってもらいたい記事を大きくすると目に留めてもらえる」

スクリーンショット (14).png

※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

  日本新聞協会NIEサイトにも「オンラインで『まわしよみ新聞』」としてリポートが掲載されています。リポートはこちら

ワークショップの主な流れ(4月11日付神戸新聞朝刊教育面から)