2022年3月アーカイブ

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 地理の授業の冒頭で、1日1人ずつ新聞記事を紹介する取り組みをしている。今年の2月になり、何人もの生徒がウクライナのことを取り上げ始めた。発表を聞いている生徒の中には、「何が起こっているの?」「どういうことなの?」との疑問の声もあった。そうこうしているうちに2月24日、ロシアがウクライナに本当に侵攻してしまった。これは大変なことになる。どうしよう。自分には何ができる? 迷ったあげく、同僚に「授業でウクライナを取り上げませんか」とメールを送った。

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 子どもたちは、地理、歴史、道徳などで、ある程度はヨーロッパのことや戦争を学んでいる。教科書の学びにとどめず、現実に起こっている世界的な大事件に、日常の学びを結びつけられるかもしれない。単に「戦争反対」や「かわいそう」にとどまらず、学んだ知識や調べた情報をもとに、自分の頭で、この大事件を考えさせたい。そんな思いのもと、授業を企画した。

 生徒たちはまず、ウクライナ・ロシアの地理・歴史を調べてまとめた。小麦の産地であったり、地下資源のパイプラインが地理の教科書に掲載されたりしているのを見つけていた。歴史の教科書では、ロシアの国の広がりの歴史を見つけたり、日露戦争、ロシア革命、ソ連崩壊のページを丹念に読み込んだりしていった。

 次に生徒たちは、いくつかのキーワードを検証していった。こちらが指定したのは、クリミア、アフガニスタン、ヒトラー、キューバの四つ。ここで一つ興味深い現象が起こった。クリミアを調べた生徒のなかに、2014年のクリミア問題のみならず、19世紀のクリミア戦争を調べる生徒がいた。アフガニスタンでも同様で、20世紀のアフガニスタン侵攻を検証した生徒と、2021年のアフガニスタン問題を検証した生徒がいた。

 僕たち大人は、どうしてもNATO(北大西洋条約機構)やソ連といった冷戦構造に縛られて考えてしまうが、生徒たちにそんな縛りは存在しない。生徒たちは、大人が想像するより、もっと柔軟で、もっと思慮深く、もっと多面的に分析を進めていった。

 最終段階で、生徒たちは、これから先に心配されるシナリオを予想したり、自分の意見をまとめたり、今回の当事者への手紙を書いたりしていった。ある者はウクライナから避難している人々宛てに、ある者はロシアの中で戦争に反対している人宛てに、またある者はウクライナの中学生宛てに。ウクライナ語、ロシア語で表現しようとする生徒もいた。

 授業する教師にさえも解決方法が分からない大事件。生徒も教師も自分の頭で考え続けるしかない。「考え続けること」こそが本当の意味での社会科授業なのかもしれない。

西村 哲(西宮市立浜脇中学校教諭)(2022年3月30日)

[写真説明]ロシアによるウクライナ侵攻をテーマにした授業=西宮市宮前町3、浜脇中学校

多可高校 生徒の感想

■多可高校(3月17日、対象・1年生61人) 神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが「知っておきたいトレンドニュース」をテーマにZoom授業を行った。ロシアによるウクライナ軍事侵攻の記事を使って、有事における情報の見極め方を考えた。会員制交流サイト(SNS)の功罪にも触れた。

生徒の感想

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 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、兵庫県NIE推進協議会が県内の小中高校で、「有事(非常事態)におけるメディアリテラシー」をテーマに授業を行っている。同協議会は「新聞を通し、世界情勢をより正しく把握し、戦争終結に向け、わたしたちに何ができるか考えたい」と力を込める。2月末から始めた授業は7回を数えた。

 メディアリテラシーは、メディアの情報を正しく見極め、読み解く力。授業は同協議会事務局長が担当し、神戸新聞朝刊の各面からウクライナ侵攻の関連記事を探してもらうワークショップなどを行っている。侵攻が始まった翌日の2月25日付朝刊の関連記事は34本に上った。

 その上で、新聞の特長である網羅性・一覧性などを説明し、「見出しだけでも一通り目を通せば、人命が奪われ続けているウクライナの状況や、各国の反応、経済への影響など、全体像が見えてくる」とする。

  気になった記事の関連記事を探し、関心を深める▽新聞各紙を読み比べ、記事の扱いや視点の違いを知る―なども勧めている。

 さらに、有事における会員制交流サイト(SNS)の功罪や、ロシアのプーチン大統領が軍事行動に踏み切った歴史的背景などを解説。「力による外交に対抗するには、強靭(きょうじん)な民主主義の国づくりが必要」「今回の出来事を、日本や世界の未来について友達や家族と話し合う大きな契機にしたい」と強調している。

 3月22日には、南あわじ市の広田中学校で授業を行った。生徒からは「今、誰もが平和について考えている。しっかりと正確な情報を得て、平和のためにできることをしたい」「世界情勢から地域ニュースまで、正確な情報を得るため新聞を読みたい」などの感想が寄せられた。

 同校の河野真也教諭(43)は「ウクライナ有事をはじめ社会の動きを自分のこととして考え、情報を整理するには新聞活用が有効」と話している。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(3月27日)

[写真説明]ロシアによるウクライナ侵攻の関連記事を探す生徒たち=南あわじ市広田中筋、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校

授業で使った資料から抜粋

 ※「有事のメディアリテラシー」の授業は尼崎市立立花南小学校、加古川西高校、姫路市立朝日中学校、多可高校、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校、須磨友が丘高校、伊川谷高校、尼崎市立南武庫之荘中学校、大阪市立梅香中学校、兵庫高校、神港学園高校、2022年度NIE兵庫セミナー(教員向け、西宮市立浜脇中学校の生徒も参加)、西宮市立西宮高校(「主権者教育」の一環として)、蒼開高校(同)、クラーク記念国際高校芦屋校(同)、播磨特別支援学校(「新聞の読み方」「主権者教育」の一環として)、葺合高校(「新聞の作り方」の一環として)、神戸市立夢野中学校(「SDGs新聞作り」の一環として)、滝川中学校(同)、加古川市立加古川中学校(「新聞で調べ学習」の一環として)、明石市立中崎小学校(同)、神戸市立西須磨小学校(「新聞について知ろう」の一環として)、伊川谷高校(「新聞の持つ表現力」「18歳成人のあなたへ」をテーマにした授業の一環として)、須磨学園高校(「生徒の全質問に答える」授業の一環として)、神戸市立神出児童館(「新聞と新聞記者の仕事を知ろう」をテーマにした授業の一環として)、神戸市立住吉中学校(「新聞記者って楽しい?」をテーマにした授業の一環として)、丸山中学校西野分校(NIE授業の一環として)、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校(「主権者教育」の一環として)、神戸市立竜が台小学校(新聞の特長や役割を学ぶ授業の一環として)、神戸学院大学(情報リテラシーを学ぶ講義の一環として)、流通科学大学(同)、姫路市立豊富小中学校(「播磨の戦争遺跡と平和の遺産」をテーマにした授業の一環として)、同市立大塩小学校(同)で行いました。兵庫教育大生を対象にした「NIEと新聞社の仕事を学ぶ研修会」でもウクライナ有事を取り上げました。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年4カ月―。現在も多くの学校で「有事のメディアリテラシー」の授業を行っています。

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 西上三鶴・兵庫県教育長

 多様な情報が凝縮された新聞

 新型コロナウイルス感染症が確認されて2年がたち、世の中の在り方は大きく変わりました。社会全体でデジタル化、オンライン化が推進され、学校では遠隔・オンライン教育に注目が集まりました。このような変化の中、学校においては「守るべきもの」と「変わるべきもの」のバランスを取ることが重要となっています。

 かつて、新聞は代表的な情報入手ツールでしたが、今の子どもたちは、スマートフォンやタブレットで簡単に情報を手に入れます。しかし、その情報は自分の見たいものに限られているのではないでしょうか。

 新聞は、限られた紙面に多様な情報が凝縮されており、子どもたちの新たな興味を生み出すきっかけとなります。本年度の実践発表で、子どもたちが関心のある記事を集め、まとめる取り組みを通し、教員は子どもたちの興味のあることを知り、子どもたちは意見を考え、まとめる力を身に付けたという報告がありました。これは、さまざまな情報が掲載されている紙面をもつ新聞を教材としたからこそ得られた学びだと思います。

 これからの学校教育の幅を広げるツールとしてのICTをNIE活動にも活用することで、大人が想像している以上の新聞の活用方法が、現場から生み出されるかもしれません。工夫されたNIEの活動を通じて、児童・生徒がこころ豊かに成長することを期待しています。

 長田・神戸市教育長○.jpg長田 淳・神戸市教育長

 新聞とICTで主体的な学び

 新聞には、私たちの生活を取り巻くさまざまな事象について、多様な視点や考え方が掲載されています。

 日頃から新聞記事に触れることは、「数多くの情報から必要な情報を抽出し、課題を見つけ、考える」という主体的な学びにつながるものであり、今後、「主体的・対話的で深い学び」を展開していくうえで、学校での新聞の活用はよりいっそう重要になると考えています。

 現在の国際情勢を新聞で注視し、見識を広げている子どもも多いのではないでしょうか。

 昨年4月から、学習用パソコンを活用した授業が小・中学校で進められています。

 神戸市内の小学校と市外の小学校では、それぞれの歴史や話題について紹介する新聞を合同で製作し、オンラインでつないで発表し合う取り組みも行われました。

 共同作業の中では、児童が互いの郷土に興味をもち、さらに学びを深めたいという意欲につながったと聞いています。

 このように、新聞とICTを効果的に組み合わせながら、子どもたちの主体的な学びに向けた取り組みを推進していきたいと考えています。

 今後もNIEの活動の充実を期待しています。

蒼開高校 生徒の感想

■蒼開高校(3月15日、対象・2年生約70人) 時事通信神戸総局の丸山実子総局長と神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが「主権者教育」をテーマに授業を行った。丸山総局長は通信社の選挙報道について説明し、三好アドバイザーはゲームやワークショップを通じて「投票する意味」を伝えた。 

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生徒の感想 02

生徒の感想 03

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の記事を使って、有事のメディアリテラシー(メディアの情報を正しく見極める技術)を学ぶ授業が3月17日、多可町中区東山の多可高校であり、1年生61人が参加した。神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。授業は、新型コロナ対策としてビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を活用した。

 生徒たちに、軍事侵攻が始まった翌日の2月25日付本紙朝刊から関連記事を探してもらった。記事は34本に上り、三好アドバイザーは「見出しと前文を読むだけでもいい。一通りめくれば、ウクライナの状況や各国の反応、経済への影響など、全体像が見えてくる」と話した。

 さらに、有事における会員制交流サイト(SNS)の功罪に触れ、「SNSはフェイクニュースが拡散する弊害が大きいが、今回はロシアによる言論弾圧への対抗手段にもなっている」と説明した。

 主権者教育の授業も行い、「力による外交に対抗するには、強靭(きょうじん)な民主主義の国づくりが欠かせない」と強調した。

 授業を受けた梶原もな果さん(16)は「多くのニュースを見て、自分に何が必要かしっかり考えたい」、宮崎留衣さん(16)は「1票の価値を知り、選挙に行った方がよいと思った」と話した。=18日付神戸新聞朝刊北播版

[写真説明]有事のメディアリテラシーをテーマに行われたオンライン授業=多可町中区東山(多可高校提供)

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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ロシアのウクライナ侵攻 有権者選択「命に関わる」

 選挙権を得る18歳を前に、主権者とは何かを学ぶ講演会が3月15日、洲本市下加茂1の蒼開高校であった。教育現場で新聞を活用するNIEの一環。時事通信社の丸山実子神戸総局長と、神戸新聞社の三好正文シニアアドバイザーが、選挙報道の厳格さと若者が投票する重要性を伝えた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校で、2年生約70人が参加した。

 丸山総局長は選挙報道について、有権者の判断材料になるよう、全ての立候補者に調査票の記入を求め、経歴や政党推薦などの情報を集めると説明。全国の地方紙などに記事を配信する通信社として、「記事の内容を間違うと広範囲に影響してしまう。速さと正確さ、過不足ないコンパクトな記事を目指している」と話した。

 三好シニアアドバイザーは投票のシミュレーションをした。「大学の学費無料化」が争点の選挙があると仮定。生徒5人が、「18高校生」「45歳主婦」「65歳会社社長」など異なる年代になったつもりで模擬投票した。

 結果は3対2の賛成多数。しかし、三好アドバイザーは年代別の人口比や投票数によっては逆の結果になるとの試算を示し、「若者の意見を反映させるには投票に行くことが近道」と呼び掛けた。

 さらに、市民の死傷が連日報道されるロシアのウクライナ侵攻に触れ、「正しい情報を得て、誰が国のトップにふさわしいのか選ばないと命に関わる」と力説。「今年は参院選がある。社会の出来事に興味を持ち、ウィズコロナ時代に未来を描ける国や地域のリーダーを選んで」と話した。

 倉光瑛太さん(17)は「少子高齢化が進む中、若者の意見が取り入れられるには投票が大切だと学べた。選挙権を得たら、候補者の公約や世界情勢も判断材料にして投票したい」と話した。(吉田みなみ)=16日付神戸新聞朝刊淡路版

[写真説明]生徒を年代別の主権者に見立て、投票の仕組みを解説する三好正文シニアアドバイザー(左)=蒼開高校

※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

兵庫教育大付属中学校(3月10日、対象・1、2年生14人) 生徒たちがそれぞれ、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」に関連した記事を選び、調べ学習した成果をまとめた新聞の発表会があった。神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが、生徒たちの取り組みや紙面の工夫を高く評価した。

生徒の感想

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 兵庫教育大学付属中学校(加東市山国)の生徒たちが、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」に関連した記事を選び、調べ学習した成果をまとめた新聞の発表会が3月10日、同校であった。

 情報収集・活用のスキルを身に付ける「ニュースです! 編集長」を選択した1、2年生14人。昨年12月から数人の班ごとに、関心のある新聞記事について調べ学習し新聞にまとめたのに続いて、各自で今回の新聞製作に取り組んできた。

 製作にあたっては、神戸新聞社が開発したアプリ「ことまど」を活用した。

 発表会では、生徒一人一人が、脱炭素社会の実現やミャンマー国軍クーデター1年、プラスチックごみ問題などを取り上げた紙面を紹介。なぜ、その記事を選んだのか▽SDGsの目標達成に向け、自分ができること▽紙面づくりの工夫―を話した。

 神戸新聞NIXの三好正文シニアアドバイザーが生徒たちの取り組みや紙面を高く評価し、「わたしたちはウクライナ有事の真っただ中にいる。これからも社会の動きに関心を持ち続けてほしい」と呼び掛けた。

 生徒たちが製作した紙面は、こちら。

 生徒たちが発表した紙面づくりの工夫は次の通り。
 記事の内容がすぐ分かるような見出し▽選んだ記事の出典を書く▽多様な取り組みの中から具体例を上げる▽複数の関連記事を入れ、内容を深める▽内容を具体的にするためインタビュー記事を盛り込む▽印象的な写真を掲載▽グラフ、図解を用いる▽ミャンマーのクーデターの記事を選んだ。あえて住民の笑顔の写真を使うことで、この問題について読者に問いかけた▽興味を引く題名▽写真と図解を関連づける▽記事を読み進めやすい文脈の工夫

[写真説明]「ことまど」で製作した新聞を紹介する生徒=兵庫教育大付属中

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

SDGsの新聞作り、授業の記事

アプリで新聞作り体験、授業の記事

班ごとの新聞作り、授業の記事

 阪神地区で実践を重ねてきたNIEアドバイザー3人に「NIEで得られる力は、入試でどう生きるか」をテーマに話し合ってもらった。(本記はこちら=日本新聞協会NIEサイト内

 西宮市立浜脇中学校教諭 渋谷仁崇さん
 県立尼崎高校教諭    瀧口梓さん
 県立鳴尾高校教諭      桝田安史さん
      (司会は石原丈知・兵庫県NIE推進協議会コーディネーター)

 これまでのNIEの取り組みを。

 渋谷 社会科で週に1回、自分の興味のある記事を張って感想を書く「NIEノート」の活動に取り組んでいる。生徒は、そのノートを授業の初めに電子黒板上でプレゼンする。新聞は、教科書に載っていない最新の社会の出来事が分かるので、生徒たちは新聞を楽しみにし、新しいことを知ろうとする姿勢が見られる。

                                                                     渋谷教諭

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 瀧口 私も「情報をインプットしアウトプットする力」の育成を目指してきた。各自が新聞記事の紹介と記事を読んで疑問に思ったことを調べた内容を5分で紹介したり、見出しを書いて感想を書いたりする活動を行ったりしてきた。生徒たちは仲間の発表に興味を持ち、集中して聞いていた。同時に、興味があるものを集めることで、自分の進路希望が明確になっていくように感じている。

 桝田 進路と結びつくことは私も同じように経験した。班ごとに関心を持ったテーマで記事を3カ月追いかける「定点観測」と名づけた新聞スクラップの活動を行った。さらに、自分たちが集めた記事をまとめ、ポスターにして内容を要約して伝えるコンクールを開いた。教育や国際紛争といった難しい問題にも切り込み、わかりやすく解説できていた。特に看護系に進みたい生徒は関連記事を選ぶことが、自分の進路に直結した。

 ―高校・大学入試に生きた事例は。

 渋谷 高校の推薦入試での小論文で、最近気になったニュースを問われ、気候変動に関するパリ条約やCOP26といった事柄について具体的に書けたようだ。面接では、人権やジェンダーの問題について話すことができたとも聞く。

 瀧口 大学入試でも、総合型選抜入試(旧AO入試)に生かすことができる。時事問題を問われる面接では、日ごろから新聞に親しんでいると成果がはっきりと表れる。社会学部の事前レポートとして、関心を持った新聞記事を500字程度に要約する問題が出たこともある。

                                          瀧口教諭

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 渋谷 神戸新聞の投書欄「若者BOX席」への投稿と、国語科の200文字作文の相乗効果で、生徒たちは文章を書くのが好きになり、文章力も向上した。

 瀧口 文章を読む力をつけるために、新聞の書き写しを行った。漢字検定2級(高校卒業程度の漢字)程度までの漢字が使われているので、入試レベルの文章を読む力になる。

 桝田 文章を読むのが少し遅いので、コラムや社説を数多く読ませたり、筆者の意見を受け止めて小論文を書く対策として、見出しを考える活動に取り組ませたりして、力がついてきた。

   桝田教諭 

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 渋谷 新聞活用は即効的な力がつく面と、将来社会に出たときの情報活用力をはぐくむ面がある。生徒は知識が豊かになるとともに、世の中の進む方向を知ることから、社会に向けて自分の考えを発信していけるのではないか。

 瀧口 多分野の内容が網羅され、自分の興味を深めたり、新しいことを知ったりする契機になる。例えるなら、カンフル剤や栄養剤を打って力を出させるのではなく、日々の体を健康にして、力を蓄えておく活動ではないか。

 桝田 新聞は、身近な話題から世界に目を向けた内容まで、多様なテーマを探究していくことができる。その活用を通し、社会で必要になる論理的思考力や表現力を高めることができ、自立に向けたキャリア形成につながる。

                                     

■尼崎市立立花南小学校(2月28日、対象・6年生110人) 神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが「有事におけるメディアリテラシー」をテーマに授業を行った。ロシアのウクライナ侵攻について取り上げ、真偽入り交じった情報とどう向き合うか説明し、平和な世界を築く大切さを強調した。 

児童の感想