阪神地区で実践を重ねてきたNIEアドバイザー3人に「NIEで得られる力は、入試でどう生きるか」をテーマに話し合ってもらった。(本記はこちら=日本新聞協会NIEサイト内)
西宮市立浜脇中学校教諭 渋谷仁崇さん
県立尼崎高校教諭 瀧口梓さん
県立鳴尾高校教諭 桝田安史さん
(司会は石原丈知・兵庫県NIE推進協議会コーディネーター)
―これまでのNIEの取り組みを。
渋谷 社会科で週に1回、自分の興味のある記事を張って感想を書く「NIEノート」の活動に取り組んでいる。生徒は、そのノートを授業の初めに電子黒板上でプレゼンする。新聞は、教科書に載っていない最新の社会の出来事が分かるので、生徒たちは新聞を楽しみにし、新しいことを知ろうとする姿勢が見られる。
渋谷教諭
瀧口 私も「情報をインプットしアウトプットする力」の育成を目指してきた。各自が新聞記事の紹介と記事を読んで疑問に思ったことを調べた内容を5分で紹介したり、見出しを書いて感想を書いたりする活動を行ったりしてきた。生徒たちは仲間の発表に興味を持ち、集中して聞いていた。同時に、興味があるものを集めることで、自分の進路希望が明確になっていくように感じている。
桝田 進路と結びつくことは私も同じように経験した。班ごとに関心を持ったテーマで記事を3カ月追いかける「定点観測」と名づけた新聞スクラップの活動を行った。さらに、自分たちが集めた記事をまとめ、ポスターにして内容を要約して伝えるコンクールを開いた。教育や国際紛争といった難しい問題にも切り込み、わかりやすく解説できていた。特に看護系に進みたい生徒は関連記事を選ぶことが、自分の進路に直結した。
―高校・大学入試に生きた事例は。
渋谷 高校の推薦入試での小論文で、最近気になったニュースを問われ、気候変動に関するパリ条約やCOP26といった事柄について具体的に書けたようだ。面接では、人権やジェンダーの問題について話すことができたとも聞く。
瀧口 大学入試でも、総合型選抜入試(旧AO入試)に生かすことができる。時事問題を問われる面接では、日ごろから新聞に親しんでいると成果がはっきりと表れる。社会学部の事前レポートとして、関心を持った新聞記事を500字程度に要約する問題が出たこともある。
瀧口教諭
渋谷 神戸新聞の投書欄「若者BOX席」への投稿と、国語科の200文字作文の相乗効果で、生徒たちは文章を書くのが好きになり、文章力も向上した。
瀧口 文章を読む力をつけるために、新聞の書き写しを行った。漢字検定2級(高校卒業程度の漢字)程度までの漢字が使われているので、入試レベルの文章を読む力になる。
桝田 文章を読むのが少し遅いので、コラムや社説を数多く読ませたり、筆者の意見を受け止めて小論文を書く対策として、見出しを考える活動に取り組ませたりして、力がついてきた。
桝田教諭
―今後、新聞をどう活用していくか。
渋谷 新聞活用は即効的な力がつく面と、将来社会に出たときの情報活用力をはぐくむ面がある。生徒は知識が豊かになるとともに、世の中の進む方向を知ることから、社会に向けて自分の考えを発信していけるのではないか。
瀧口 多分野の内容が網羅され、自分の興味を深めたり、新しいことを知ったりする契機になる。例えるなら、カンフル剤や栄養剤を打って力を出させるのではなく、日々の体を健康にして、力を蓄えておく活動ではないか。
桝田 新聞は、身近な話題から世界に目を向けた内容まで、多様なテーマを探究していくことができる。その活用を通し、社会で必要になる論理的思考力や表現力を高めることができ、自立に向けたキャリア形成につながる。