1月21日 に掲載された記事

 阪神・淡路大震災を伝える「震災モニュメント」が、国内外でこれまでに292カ所になったことが、神戸市のNPO法人の調査で分かった。東日本大震災では過去の津波到達地点を示した石碑が、命を救ったケースもあったが、阪神・淡路では慰霊の意味合いが強い。同法人は「災害の実態を具体的に伝え、教訓を継承しないといけない」と話し、加筆などの協力を呼び掛けている。

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▲震災で破損して取り壊され今年モニュメントとして新たに追加された鳥居。長年、調査に携わる上西さん=大阪市中央区、玉造稲荷神社


 阪神・淡路大震災を伝える「震災モニュメント」が、国内外でこれまでに292カ所になったことが、神戸市のNPO法人の調査で分かった。東日本大震災では過去の津波到達地点を示した石碑が、命を救ったケースもあったが、阪神・淡路では慰霊の意味合いが強い。同法人は「災害の実態を具体的に伝え、教訓を継承しないといけない」と話し、加筆などの協力を呼び掛けている。(斉藤絵美)


 モニュメントは、犠牲者の名前や「鎮魂」と書かれた石碑、焼け焦げた電柱などで、阪神・淡路大震災の犠牲者を悼み、当時の様子を伝えている。市民らが1999年に地図を作成し、震災遺族やボランティアでつくるNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」(神戸市兵庫区)が引き継いだ。


 モニュメントの調査は、阪神・淡路で父親=当時(95)=を亡くした同法人理事長の上西勇さん(84)=神戸市東灘区=が主に担当。市民から情報を募り、趣味の自転車ツーリングを兼ねて震災の痕跡を探している。


 関東大震災(1923年)や伊勢湾台風(59年)など全国の被災地も訪ねており、2007年から2年間、東北で調査。明治と昭和の三陸地震で津波に襲われた沿岸部で、約260の碑を確認した。


 東日本大震災で被害を受けた岩手県宮古市には、「此処(ここ)より下に家を建てるな」と書かれた石碑があり、教訓を守った集落の大部分が被害を免れた。想定を超える津波で教訓が生かされなかったケースもあったが、モニュメントは災害記録として見直されつつある。


 ただ、阪神・淡路では鎮魂や慰霊の言葉をつづった碑が多く、当時の状況などについて正確に記したものは少ないという。上西さんは「例えば、地震後の火災がなぜ広がったのか、なぜ消火できなかったのか。それすら分からないことが多い」と指摘する。


 神戸市では転出、転入などで市民の3分の1以上が震災を知らない。「モニュメントは次世代への遺言。災害の実態を伝えてこそ具体的な防災を考えられる」と話し、被災状況などを書いたプレートを添えるなど、地元住民の協力を求めている。モニュメントの情報は、同法人TEL078・682・1117

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