1月13日 に掲載された記事

 東日本大震災の津波で宮城県七ケ浜町の民家とともに流されたピアノを、女性歌手が自費で修理し所有者から借り受けた。東日本の被災地を中心に歌手のバックで美しい音を響かせており、阪神・淡路大震災から丸17年の17日、神戸市長田区二葉町4、西神戸センター街である「神戸震災復興フリーライブ」にも登場する。

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▲修理したピアノを前に握手するメティスさん(右)と所有者の鈴木さん=東京都内(メティスさんの所属事務所提供)


 東日本大震災の津波で宮城県七ケ浜町の民家とともに流されたピアノを、女性歌手が自費で修理し所有者から借り受けた。東日本の被災地を中心に歌手のバックで美しい音を響かせており、阪神・淡路大震災から丸17年の17日、神戸市長田区二葉町4、西神戸センター街である「神戸震災復興フリーライブ」にも登場する。(三宅晃貴)


 修理したのは、広島市出身で被爆3世の歌手Metis(メティス)さん(27)。祖父母が語る戦争体験から命の大切さを学んで育った。ジャマイカの音楽レゲエを歌い、2008年から毎年、神戸の復興ライブに出演する。


 メティスさんは昨年4月11日、ボランティアで宮城県七ケ浜町を訪れ、海辺のがれきのそばでグランドピアノを見つけた。大屋根はペンキで汚れ、側板などに無数の傷痕を残していたが「まだ演奏してほしい」と訴えているように感じた。


 ピアノに記されていた持ち主の音楽講師鈴木由美さん(47)=宮城県塩釜市=を、3日後に捜し出し、修理を申し出た。


 ピアノは震災前、同町の鈴木さんの実家2階に置いてあった。2階部分は津波で二軒隣の民家敷地まで流された。ピアノは解体時に取り出されたが、放置されていた。


 このため状態はひどく、修理は100件以上の楽器店に断られた。昨年4月下旬、横浜市内の店が引き受けてくれ同9月に完了した。


 直後に東京・渋谷で開いたライブ。台風の影響で終演後に到着した鈴木さんのために、メティスさんはピアノの伴奏で歌った。鈴木さんは「3・11は忘れられない衝撃だったが、今日はそれを超えるほど感激した。これからも思う存分歌って」と涙を流した。


 神戸での復興ライブは、メティスさんにとって5回目だが、今年は東日本で出会った人々の顔が浮かぶ。「一層気持ちを込めて命の大切さを歌いたい。復興した神戸と東日本を結ぶ懸け橋になりたい」と意気込む。


 ライブは午後5時半から。西神戸センター街TEL078・611・0294

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