1月13日 に掲載された記事

 阪神・淡路大震災の被災者に最大350万円を貸し付けた国の「災害援護資金」制度で、今も約1万3千人が返済を終えていないことが兵庫県のまとめで分かった。うち約1万1千人は毎月千円ずつといった「少額返済」を続けるが、返済ペースは年々鈍化し、完済が絶望的な人も多い。震災で自宅などを失い、「当面の生活のために」と借りた資金が、17年後の被災者に重くのしかかっている。

20120113_hensai450.jpg
▲返済残額195万円。市役所から届いた通知書のコピーを手にする74歳の男性=神戸市内


 阪神・淡路大震災の被災者に最大350万円を貸し付けた国の「災害援護資金」制度で、今も約1万3千人が返済を終えていないことが兵庫県のまとめで分かった。うち約1万1千人は毎月千円ずつといった「少額返済」を続けるが、返済ペースは年々鈍化し、完済が絶望的な人も多い。震災で自宅などを失い、「当面の生活のために」と借りた資金が、17年後の被災者に重くのしかかっている。(岸本達也)


 県によると、災害援護資金は5万6422人が計約1309億円を借りた。そのうち、昨年3月現在、全額返済したのは4万1397人で返済総額は約1072億円。本来の返済期限(10年)は過ぎたが、1万2981人(約196億円分)の返済が残っている。ほかに2044人(約40億円分)が返済免除されている。


 未返済のうち、2104人(約38億円)は本人が死亡し、保証人とも接触できないなど返済が困難なケースで、こげつけば市町の負担になる。


 残りの1万877人は少しずつ返済を続けているが、返済を終えた人は06年度の836人から10年度は737人と年々減少。一方、返済免除は要件が厳しく、10年度は179人にとどまった。


 神戸市須磨区の復興住宅に住む男性(74)は、震災で兵庫区の自宅が全壊し、災害援護資金200万円を借りた。年金生活のため、今は毎月千円ずつを返しているが、借金はまだ195万円残っており、現状のペースでは完済は困難だ。


 男性は身寄りがなく、資金を借りる時、28万円を払って民間業者に保証人を紹介してもらった。保証人とは面識がなかったが、3年ほど前、男性の返済が滞っていることを知った保証人が、突然自宅まで押しかけて返済を迫ったという。


 仮設住宅がなかなか当たらず、震災後しばらく鳥取県の公営住宅で暮らしたという男性。「200万円は生活費ですぐなくなった。今は、生活保護を受けるどうか迷っている」と話す。


 市民団体「阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議」の岩田伸彦事務局長は「17年前は公的支援が今より乏しく、約40万円の義援金のほかは援護資金を借りるしかなかった。返済できない被災者の生活は厳しく、国は未返済分の免除を認めるべきだ」と話している。


 【災害援護資金】 災害弔慰金法に基づき、全半壊世帯に150~350万円を貸し付ける。原資は国が3分の2、残りは都道府県や政令市が負担し、市町が貸付窓口となっている。東日本大震災では返済期限から10年たっても、返済の見込みがない場合は返済免除となる‐などの特例措置が設けられた。兵庫県は阪神・淡路でも同様の措置を国に求めている。

(C)神戸新聞社 ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。