2022年12月アーカイブ

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 兵庫県NIE推進協議会が県内の小学校で、新聞から「師走」を感じさせる記事を探すワークショップを行っている。児童たちは一般記事だけでなく、広告や発言欄のイラストにも「師走」を見つける。「新聞は歳時記の役目も果たしていることを知ってほしい」。同協議会は、そんな願いを込める。

 12月9日、神戸市立塩屋北小学校(同市垂水区)でのNIE授業に5年生58人が参加。「師走」の記事探しは、この日の神戸新聞朝刊を使った。1面に、神戸で来年の干支(えと)「卯(う)」にちなんだ人形作りが本格化、地域版に警察署による年末パトロール隊の発隊式―。この時期ならではの記事だ。

 県が職員の冬のボーナスの支給額を発表、神戸の企業が来年のカレンダーをプレゼントなど、扱いの小さい記事も年の暮れを伝える。

 児童たちは広告にも目を向ける。冬の味覚・ズワイガニやスタッドレスタイヤの広告は、本格的な冬の入りを知らせる。発言欄のイラストはクリスマスツリー、クロスワードパズルの解答は「トシコシソバ」だった。

 国際面には、米誌タイムが毎年恒例の「今年の人」にウクライナのゼレンスキー大統領を選んだとあった。この日の朝刊の「師走」を感じさせる記事などは15本を数えた。

 これまで同協議会は、新聞の特長である網羅性や一覧性を知ってほしいと、NIE授業で、新聞からコロナ禍やウクライナ侵攻の関連記事を探してもらうワークショップを行ってきた。「師走」の記事探しは、新聞をめくりながら見出しや写真に目を通すだけでも、年の瀬のまちの様子や一年の終わりを感じてもらえそうだ。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(12月26日)

[写真説明]
新聞からは「師走」の記事が数多く見つかる。「真珠湾攻撃81年」(手前の記事)も児童たちに伝えたいニュースだ

■須磨友が丘高校(12月15日、対象・1年生224人) 毎日新聞神戸支局の中田敦子記者が講演した。盗撮の疑いで逮捕された男性とその恋人の女性を追った記事を題材に「事件の裏には、加害者やその周囲の人、被害者それぞれの思いがある。ニュースを見る際は多角的な視野を持って考えてほしい」と話した。

生徒の感想

■神戸山手女子高校(11月9日、対象・3年生22人) 毎日新聞神戸支局の村田愛記者が講師を務めた。明石歩道橋事故の発生20年を機に取材した記事などを紹介し、「被害者や遺族の『声なき声』を伝えるよう意識している」と強調。「早く正確に情報提供するため、新聞はしばしばチームで作られる」と話した。

生徒の感想

 日本新聞協会は、家族や友達と新聞を読み、話し合ってまとめた感想文が対象の第13回「いっしょに読もう!新聞コンクール」の最優秀賞に、鳥取県岩美町立岩美北小学校6年、森川遙人さんら3人を選んだと発表した。

 国内外の小・中・高・高専生から5万6998点の応募があった。兵庫県内からは2303点の応募があり、個人の奨励賞に5人、学校奨励賞に5校が選ばれた。(三好正文)=12月18日付神戸新聞朝刊教育面

 県内の入賞は次の通り。(敬称略)
 【奨励賞】天川花(姫路市立大塩小6年)落合美里(神戸市立葺合高1年)塚本結風
(同)藤江晴滋(六甲学院高1年)小野川幸樹(同2年)
 【学校奨励賞】尼崎市立南武庫之荘中、西宮市立浜脇中、六甲学院中、須磨友が丘高、六甲学院高

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 NIE(教育に新聞を)の一環として、日経新聞神戸支社の岩本隆支局長が12月15日、西宮市上甲東園2の県立西宮高校で「新聞記者の仕事と裏付けの大切さ」と題して講演した。2年生280人が参加した。

 同校は兵庫県NIE推進協議会の独自認定校で、授業で新聞を活用している。岩本支局長は「何がネタになるか」のリサーチに始まり、取材、執筆を経て、記事化されるまでの記者の仕事を説明。「徹底した裏付けが大切。『その情報は本当か』というクールな視点が求められる」と強調した。

 注意しているポイントして、SNSの情報はあくまで参考で、確認をとる▽多くの関係者に取材したり、資料を集めたりする▽原稿を徹底チェックするーなどを挙げた。

 講演を聞いた渡瀬駿介さん(17)は「SNSをよく利用するが、情報をうのみにしてはいけないと再認識した」と話した。

[写真説明]「裏付けの大切さ」を語る岩本支局長=県立西宮高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)活動の一環として、県立須磨友が丘高校(神戸市須磨区)で12月15日、毎日新聞神戸支局の中田敦子記者(28)が講演した。1年生224人を前に、記事ができる過程を紹介し、「多角的な視点を持とう」と訴えた=写真(同校提供)

 中田記者は、盗撮の疑いで逮捕された男性とその恋人の女性を追った記事を題材に、盗撮行為の検挙件数が増えている実態や、事件を巡って繰り広げられる人間模様を紹介。「一つの事件の裏には、加害者やその周囲の人、被害者に、それぞれの思いがある。ニュースを見る際は広い視野を持って考えてほしい」と話した。

 講演を聞いた藤川颯月(さつき)さん(16)は「事件の背景を知ることができて面白かった」。海野舞玲(まいれ)さん(15)は「SNSの普及でいろいろな視点を持つことが大切になる。新聞を読んでみようと思った」とそれぞれ話した。=16日付毎日新聞朝刊神戸版

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■尼崎市立南武庫之荘中学校(12月12日、対象・3年生234人) 共同通信神戸支局の斉藤奏子記者が講演した。発生から17年がたつ尼崎JR脱線事故やサッカーW杯など、阪神地域の取材体験を披露。「取材を通し、知らないことを知れるのが楽しみ」と語った。生徒たちが寄せた多数の質問にも丁寧に答えた。

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 NIE(教育に新聞を)の一環として、尼崎市南武庫之荘4の南武庫之荘中学校で12月12日、共同通信社神戸支局の斉藤奏子記者(26)が出前授業を行った。3年生234人が参加した。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。斉藤記者は、大学時代の恩師の「タフで優しい記者になれ」という言葉を座右の銘にしていることや、発生から17年がたった尼崎JR脱線事故やサッカーW杯など、担当している阪神エリアの取材体験を披露。「取材を通し、知らないことを知れることが楽しみ」と語った。

 生徒の「取材で大切にしていることは」との質問には「相手の目を見て話を聞くことや、下準備することを心掛けている」と答えた。

 授業を受けた坂元小柚さん(15)は「一本の記事にも、取材時の苦労などさまざまな背景があることを知った」と話した。=16日付神戸新聞朝刊阪神版

[写真説明]共同通信の斉藤奏子記者の話を聞く生徒たち=南武庫之荘中学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■伊川谷高校(12月13日、対象・1年生40人) 神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが「人権を考える」と題して講演した。人権問題を扱った記事を紹介し、ネットいじめなどについて考えてもらった。「人権を侵害する最大の愚行が戦争」と指摘し「戦争反対の声を上げ続けよう」と呼び掛けた。

生徒の感想

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 「人権を考える」をテーマにした授業が12月13日、神戸市西区伊川谷町長坂の伊川谷高校であり、1年生40人が参加した。神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。三好アドバイザーは、北朝鮮による日本人拉致問題や教育現場での体罰など、さまざまな人権侵害に関する記事を紹介。身近な人権侵害として「ネットいじめ」を取り上げ、「LINEは言葉がとがりやすいので、注意しながら使いたい」「ネットいじめは、傍観者でいないことが大切」と話した。

 「人命を奪い、人権を侵害する最大の愚行が戦争」と指摘。ロシアによるウクライナ侵攻が9カ月を過ぎたいま、「強い民主義国家をつくる意志を持ち続けるとともに、戦争反対の声を上げ続けよう」と呼び掛けた。

 コロナ差別や社会的弱者にしわ寄せがくる自然災害についても取り上げた。

[写真説明ウクライナ侵攻を取り上げた、新聞のワークシートに取り組む生徒たち=伊川谷高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■姫路市立大塩小学校(12月6日、対象・6年生71人) 神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが「播磨の戦争遺跡と平和の遺産」と題して授業を行った。1945年の姫路空襲や明石空襲の犠牲者を悼み、各地に立つ慰霊碑などを紹介。「戦争の記憶を受け継ぐ遺跡を大切にしたい」と力を込めた。 

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 「播磨の戦争遺跡と平和の遺産」をテーマにした授業が12月6日、姫路市大塩町汐咲2の大塩小学校であり、6年生71人が参加した。神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。三好アドバイザーは祖父が戦死していることや、小学生のときに沖縄が米国から返還された記憶をたどり、「新聞記者になった原点は、世界の平和を願う気持ち」と話した。

 太平洋戦争時、姫路空襲や明石空襲で犠牲になった人たちを悼み、各地に立つ慰霊碑を紹介。「戦争の記憶を受け継ぐ遺跡を大切にしたい」と力を込めた。

 太平洋戦争末期、特攻隊が編成された鶉野(うずらの)飛行場跡にある平和学習拠点施設「Sora(そら)かさい」(加西市)も紹介。展示品のひとつ、出撃命令を待つ隊員たちの絶筆が書かれた落下傘の話に、児童たちは熱心に耳を傾けていた。

 三好アドバイザーは児童たちに「ロシアによるウクライナ侵攻から9カ月がたった。すべての命は等しく尊い。停戦に向け、兵庫からできることを考えよう」と呼び掛けた。

[写真説明]戦争の取材から得た教訓を話す三好アドバイザー

※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

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教育関係者ら視察 「正しい日本語習得に効果」

 夜間の神戸市立丸山中学校西野分校(同市須磨区大黒町5)で、NIE(教育に新聞を)活動を進める兵庫県NIE推進協議会による公開授業があった。さまざまな背景を持つ生徒が新聞を用い、社会問題などへの関心を深めた。(安藤真子)

 同校は1950年1月、戦後の混乱や貧困などを理由に昼間の学校に通えない生徒を対象に開校した。現在は28人が在籍し、外国籍の生徒が約8割を占める。

 県内の公立夜間中学は神戸、尼崎市にある計3校。来春、姫路市に4校目が開校を予定している。

 11月30日にあった公開授業は学年をまたいだ少人数授業で本来の「国語」と「社会」「日本語」の時間を使って行われ、神戸市内を中心とした県内の教育関係者ら約40人が見学した。

 社会の授業には日本のほか、フィリピンや中国にルーツを持つ10~70代の生徒5人が出席。生徒はまず、新聞から地球温暖化などのそれぞれが気になるニュースを選択。続いて、画用紙に見出しや要約をまとめた。日本語が母語でない生徒はふりがなを付けた子ども向けの新聞や英字新聞を活用した。

 3年の古牧未穂さん(17)は、書店が減少傾向にあり、若者の活字離れが進んでいる―という記事を選んだ。「普段はあまり新聞を手に取ることはないが、開いてみると知らないニュースがたくさんあった」と驚いた様子。画用紙へのまとめ作業では「一目見て内容が伝わるよう、見出しを大きくした」と話した。

 公開授業の後には、研究協議会が開かれ、見学者らが意見を交換。授業を踏まえつつ「新聞を教材に用いることで、生徒が正しい日本語を学ぶことができる」という声が多く上がった。=12月4日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]新聞を教材にして関心のあるニュースを選ぶ生徒ら=神戸市須磨区大黒町5

※公開授業を担当された先生方の寄稿(ねらいや展望)をこちら  参加者の感想をこちら に掲載しています。

   日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

 ※11月30日の公開授業を担当された先生方にねらいや展望をご寄稿いただきました。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 神戸新聞 11月27日付 編集委員インタビュー「子どもの貧困、現状どうみますか」
 ・国語クラス  日本人3人、中国人1人
 ・さまざまな人生経験をもつ生徒の琴線に触れる話題について、記事を読解し、意見を述べ合うことを目標に行った。中国語が母語の生徒には中国語訳をつけ、難解な語句は全員に解説を配布し、章ごとに内容確認をした。年配の学生は、敗戦後の児童労働のイメージが強かったし、他の生徒も現代の「子どもの貧困」が「目に見えない」ことに驚き、共感しつつ理解していくことができた。言語面や内容面では高度だったが、多様な学習者が互いに補いながら読み込めていた。新聞を通じて、見方を自ら伸ばせる習慣を育てていきたい。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 新聞広告、「みんなの日本語第2版初級Ⅰ」
 ・日本語初級クラス ネパール男性2人、ネパール女性2人、ベトナム女性1人
 ・日本語の授業で比較表現まで既習となった今、新聞広告をもとに自ら発話し、復習ができることを目標にした。漢字の壁が克服できたとしても、文法的、語彙的な壁があるので、この方法を採用した。従来、チラシや新聞は日本語教育においてレアリア(実物教材)として使うことは一般的だ。生鮮食品のチラシには、本校生徒の生活者として必要度の高い語句も多いため、積極的に発話し、自ら他の質問をして会話する経験を多く持てた。今後、日本語運用能力が上がれば、新聞記事の読解に結び付けてゆきたい。

【桑原 岳人先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月30日付
 ・クラス 日本語初級Cクラス ネパール 女性1人 ベトナム 女性1人
 ・新聞記事を聞き取り文字に起こしていく。日本語を母語としていない生徒に日本語を正確に聞き取る練習とする。また、新聞の記事は時事問題を取り扱っており普段日本のニュースに触れることの少ない生徒に現在日本で起こっていることを学習する機会とする。教科書では触れることない語彙に触れるとともにその意味を解説することで習得語彙数を増やすことが期待できる。
 
【奥 芳恵先生】
 ・使用教材 神戸新聞 産経新聞 朝日小学生新聞 日本経済新聞
 ・クラス  日本語上級クラス社会科
 ・本時の目標は「新聞を通して、社会の出来事に興味関心を持ち、社会問題をみつけよう」、新聞記事の切り抜きを選び、ポスターにはって、それについて自らの意見を考える取り組みを行った。テーマは「社会問題」に限定した。
 人生経験豊富な大人の方々は、自らの経験と結びつけて「北朝鮮拉致問題」「円安打撃」「地球温暖化」「若者の活字離れ」などの記事を選んだ。授業が終わった後に「新聞を持って帰って家でもっと読みたい」というフィリピンの女性や、「私の書いた記事はどうですか。がんばりました」と笑顔でこちらの感想を聞きに来る中国の女性、また不登校生だった17歳の女性は、苦手ながらもポスターの字を一生懸命書き込んだ。教科書にはない学びがここにあり、新聞教育の持つ可能性を感じた。

【阿部 俊之先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月27日付
 ・日本語初級クラス ネパール 男性1人
 ・新聞記事の数字に着目し、そこから理解を広げていくことを目標に授業を行った。新聞は〇日、〇カ国、〇回などがどんどん出てくるので、読み方、意味、使い方を学ぶのには最適な教材である。記事がワールドカップの内容だったので、対戦相手の名前や試合結果なども、上手に記事の中から読み取ることができた。ふりがながあっても内容を理解することが難しい生徒もいるが、新聞にはきれいで美しく正しい日本語が書かれており、自分たちの身を守る正しい情報がそこにあるということに気付いてくれることを目指している。

 <番外編>当日は授業をしていませんが、廊下に英字の壁新聞を展示していましたので、製作時の授業の感想を書いてもらいました。

【宇都宮マツヨ先生】
 ・使用教材 Japan Times (英字新聞)
 ・英語B ネパール 男性3人 女性4人 
 ・英字新聞を読んで、①自分の好きな記事を読み、②クラスメートの前で発表、③自分が選んだ新聞の記事の要約と自分の考えを書く、④手作り新聞を作る、を目標に授業を行った。英字新聞を読む機会が、今までなかったので、読むことがとても新鮮で、生徒たちは、とても楽しんでいた。また、新聞の記事の内容に刺激を受け、他の友人がどんな内容に興味を持っているか理解することができた。課題としては、英語のライティングスキルをより向上させ、できるだけ文法の間違いをなくすように、日々、英字新聞を読むことに慣れ親しむことを目指している。

 赤松三菜子・神戸市立高倉中学校長
 さまざまな国籍や年齢層の人たちが共に助け合って学んでいる西野分校では、どの授業においても、主体的に学びに向かう姿が印象的でした。
 新聞を活用した授業では、ルビ振り等の丁寧な教材準備と、生徒の反応を生かす教員の適切な声掛けにより、生徒と先生が一体となって対話的な学びが展開されていました。サッカーW杯や子供の貧困など幅広い内容の新聞記事を教材とすることで、生徒が日本語能力だけでなく、それぞれの人生経験から、その意味を理解していく場面もあり、新聞の大きな力を感じました。意見交換会では、授業者より本時のねらいやNIE実践への具体的取組についてうかがい、参加者と活発な情報交換をすることができ、有意義な時間となりました。
 NIE実践校として、創意工夫を凝らし新聞を活用した教育活動を推進することは、夜間中学校で学ぶ生徒たちの思考力を高め、主体的で対話的な深い学びを実現することにつながることでしょう。学びへの力、新聞の力が大いに感じられる実践をありがとうございました。

 河辺 有希生・兵庫県立西宮高校キャリア教育推進部教諭
 11月30日の授業に、27日の新聞が使われ、教材化されていること、各授業のキーワードが日本語教育や生活にしっかりつながっていくのにまず驚きました。
 日本語教育の専門家でない先生方が、学校全体体として研修・学びをし、それぞれの学年(日本語能力)にあわせてつけさせたい力を考え、きめ細く授業を展開されていることを感じました。
 また、今、生徒の皆さんが必要としている興味・内容・知りたい事を新聞のなかにみつける授業に、「学び」の姿を感じました。
 ありがとうございました。

 河辺 桂子・兵庫県立西宮今津高校教諭
 生徒のみなさんの学ぶ意欲と、どこまでもそれに応えようとなさる先生方の姿勢に強く感動しました。
 最新の新聞記事を使った授業が展開されていること、特に日本社会で生きていくために知っておくべきことを取り上げ、オリジナル教材を作って活用されていることに驚きました。
 また、授業のために日本語教育の研修を積まれているとお伺いし、私も頑張ろうと思いました。
 学習の成果が発表される機会には、また授業を参観させていただければ有難く存じます。
 事務局のみなさま、先生方、ありがとうございました。

 米田 俊彦・愛徳学園中高校教諭
 夜間中学と聞き(どなたかも授業後の会で同様のことをおっしゃっておられましたが、私も)遠い昔、夜間の高校で初めて教職に就いたときのことを思い出しながら参加しました。その時は全力で生徒一人ひとりと向き合い、かかわっていたと思っておりましたが、公開授業でお見せくださった先生方の授業を拝見し、本当はここまでできたのではないか、こんなやり方もあったのではないかとあの頃の自分の未熟さ、痛さを改めて思い知らされました。授業の途中、不意に、当時の生徒への至らなさと申し訳なで涙が出ました。びっくりしました。
 現在の毎日の授業では1時間の中で、一人一人の生徒と向き合い、「たくさん」教材を読み、深く「考える」、より「はやく」生徒同士で意見や考えを交流し、さらには生徒と教師、生徒と社会とを「つなぐ」ことや様々なかたちに「のこす」ことで授業を構成していますが、今日の授業ではその中の、深く「考える」、学びを「のこす」、人と人を「つなぐ」場面やかかわりが強く印象に残っています。「ひとつひとつ」の言葉や出来事を「じっくり」と確かめつつ、生徒の言葉や思いを紡いでいかれた授業を拝見して心の深いところが温かく、そしてきゅんとなりました。私にとって大切な「授業」となりました。
 ついつい、新聞の即時性や一覧性という「はやく」、「たくさん」の視点で新聞を使いがちですが、新聞の信頼性と表現の規範性、さらにはルビも振ってあるという優しさや懐の深さに触れることができました。夜間中学という学びの場と新聞との親和性の高さと、今だから使える「ICT機器」の可能性をも感じた充実した時間でした。
 深い気づきと学びの多い公開授業を本当にありがとうございました。

 福田 浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭
 小学生新聞は文字も大きく漢字にルビが振ってあるため、母語が日本語でない生徒対して効果的な活用が期待できると考えていたが、その実践例から自身の想像以上の効果が得られていると感じた。理解が困難な語彙や難しい漢字も使われていないため、生徒の日本語学習にも適し、加えて日本における時事問題にも興味関心を高めることが期待できると感じた。これから日本が向かえる多文化共生の世界の実現に向け、小学生新聞のような教材活用は必須であると考える。ただ一つ難点を言えば、小学生新聞を活用する母語が日本語でない方々は年齢も様々であるため、『やさしい新聞』など今後名称が検討されればよいのかと感じた。
 夜間中学校の生徒は様々なルーツをもつ生徒がいるため、主義主張や考えが日本とは異なる場合も想定されるので、生徒から新聞の記述内容に対する質問を受けたときは、その返答に細心の注意を払ったつもりである。言葉の問題だけでなく、主義主張の違いも多文化共生社会における注意点であると身をもって体感することができた。

 近藤 隆郎・日本新聞協会NIEアドバイザー
 県下でも数少ない夜間中学校の授業は、多くの人が家路を急ぐ時刻に始まった。
 年齢も国籍も様々で、仕事帰りの生徒も少なくないようだ。
 熱いまなざしを向ける生徒に優しいまなざしで応える先生。
 それを、入学からの折々の場面を捉えた写真が、教室の壁から温かく見守っている。
 おかげで、この秋一番の冷え込みだったことをしばし忘れさせてもらえた。

 NIEの公開授業が行われた国語、日本語、社会では、いずれも工夫を凝らして新聞が利用されていた。
 なかでも、日本語以外を母国語とする生徒に対して小学生新聞を用いることの有用性には、大いに首肯させられた。
 国内外で起きていることをこどもたちに正確にわかりやすく、また正しい表現で伝えることを使命とするこども新聞の力が存分に発揮されていたからである。
 ワールドカップの記事から数字や数詞を抜き出したり、政府が発表した経済政策に関する記事から聞き取ったことを文字に起こしたり、各自が選んだ記事について自身の意見を添えて発表したり、といったものにどれもみな生き生きと取り組んでいた。
 また、ルビが振られていることや、写真やイラストがふんだんに使われていることが、語彙や知識を増やしたり関心を高めるのに大いに役立っていることも見てとれた。
 こうした実践を通して日本語が上達し日本のことをよりよく知るようになった生徒は、日本の社会や人に対してこれまで以上に親近感を持つようになってくれるだろうし、同時に、日本の側からもより身近で大切な存在として受け入れられるようになるのではないだろうか。
 これからも是非地道な取り組みを続けていただきたい。
 教育や紙面の果たす力について思いを新たにする機会をいただけたことに感謝している。

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