セミナー・発表会・公開授業

【寄稿】神戸市立丸山中学校西野分校 公開授業を終えて

 ※11月30日の公開授業を担当された先生方にねらいや展望をご寄稿いただきました。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 神戸新聞 11月27日付 編集委員インタビュー「子どもの貧困、現状どうみますか」
 ・国語クラス  日本人3人、中国人1人
 ・さまざまな人生経験をもつ生徒の琴線に触れる話題について、記事を読解し、意見を述べ合うことを目標に行った。中国語が母語の生徒には中国語訳をつけ、難解な語句は全員に解説を配布し、章ごとに内容確認をした。年配の学生は、敗戦後の児童労働のイメージが強かったし、他の生徒も現代の「子どもの貧困」が「目に見えない」ことに驚き、共感しつつ理解していくことができた。言語面や内容面では高度だったが、多様な学習者が互いに補いながら読み込めていた。新聞を通じて、見方を自ら伸ばせる習慣を育てていきたい。

【井口 幸治先生】
 ・使用教材 新聞広告、「みんなの日本語第2版初級Ⅰ」
 ・日本語初級クラス ネパール男性2人、ネパール女性2人、ベトナム女性1人
 ・日本語の授業で比較表現まで既習となった今、新聞広告をもとに自ら発話し、復習ができることを目標にした。漢字の壁が克服できたとしても、文法的、語彙的な壁があるので、この方法を採用した。従来、チラシや新聞は日本語教育においてレアリア(実物教材)として使うことは一般的だ。生鮮食品のチラシには、本校生徒の生活者として必要度の高い語句も多いため、積極的に発話し、自ら他の質問をして会話する経験を多く持てた。今後、日本語運用能力が上がれば、新聞記事の読解に結び付けてゆきたい。

【桑原 岳人先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月30日付
 ・クラス 日本語初級Cクラス ネパール 女性1人 ベトナム 女性1人
 ・新聞記事を聞き取り文字に起こしていく。日本語を母語としていない生徒に日本語を正確に聞き取る練習とする。また、新聞の記事は時事問題を取り扱っており普段日本のニュースに触れることの少ない生徒に現在日本で起こっていることを学習する機会とする。教科書では触れることない語彙に触れるとともにその意味を解説することで習得語彙数を増やすことが期待できる。
 
【奥 芳恵先生】
 ・使用教材 神戸新聞 産経新聞 朝日小学生新聞 日本経済新聞
 ・クラス  日本語上級クラス社会科
 ・本時の目標は「新聞を通して、社会の出来事に興味関心を持ち、社会問題をみつけよう」、新聞記事の切り抜きを選び、ポスターにはって、それについて自らの意見を考える取り組みを行った。テーマは「社会問題」に限定した。
 人生経験豊富な大人の方々は、自らの経験と結びつけて「北朝鮮拉致問題」「円安打撃」「地球温暖化」「若者の活字離れ」などの記事を選んだ。授業が終わった後に「新聞を持って帰って家でもっと読みたい」というフィリピンの女性や、「私の書いた記事はどうですか。がんばりました」と笑顔でこちらの感想を聞きに来る中国の女性、また不登校生だった17歳の女性は、苦手ながらもポスターの字を一生懸命書き込んだ。教科書にはない学びがここにあり、新聞教育の持つ可能性を感じた。

【阿部 俊之先生】
 ・使用教材 朝日小学生新聞 11月27日付
 ・日本語初級クラス ネパール 男性1人
 ・新聞記事の数字に着目し、そこから理解を広げていくことを目標に授業を行った。新聞は〇日、〇カ国、〇回などがどんどん出てくるので、読み方、意味、使い方を学ぶのには最適な教材である。記事がワールドカップの内容だったので、対戦相手の名前や試合結果なども、上手に記事の中から読み取ることができた。ふりがながあっても内容を理解することが難しい生徒もいるが、新聞にはきれいで美しく正しい日本語が書かれており、自分たちの身を守る正しい情報がそこにあるということに気付いてくれることを目指している。

 <番外編>当日は授業をしていませんが、廊下に英字の壁新聞を展示していましたので、製作時の授業の感想を書いてもらいました。

【宇都宮マツヨ先生】
 ・使用教材 Japan Times (英字新聞)
 ・英語B ネパール 男性3人 女性4人 
 ・英字新聞を読んで、①自分の好きな記事を読み、②クラスメートの前で発表、③自分が選んだ新聞の記事の要約と自分の考えを書く、④手作り新聞を作る、を目標に授業を行った。英字新聞を読む機会が、今までなかったので、読むことがとても新鮮で、生徒たちは、とても楽しんでいた。また、新聞の記事の内容に刺激を受け、他の友人がどんな内容に興味を持っているか理解することができた。課題としては、英語のライティングスキルをより向上させ、できるだけ文法の間違いをなくすように、日々、英字新聞を読むことに慣れ親しむことを目指している。