2021年5月アーカイブ

  教育の場に新聞を取り入れることを目指す県NIE推進協議会の総会が5月26日、神戸新聞社報道展示室(神戸市中央区)で開かれ、活動のさらなる発展に向けた取り組みについて協議した。新聞社、通信社各社の神戸総支局長、県や市の教育長ら教育関係者が参加した。

 秋田久子会長は「学校とのつながりをさらに広げ、同じ体温を維持しながらNIEのエネルギーを大きくしていきたい」とあいさつ。新たな取り組みとしてタブレット端末を活用したワークショップや複数の学校をオンラインでつなぐNIE授業などを提案した。

 県小学校長会の副会長を務める尼崎市立武庫北小の武市俊彦校長は「新聞のあたたかみや魅力に気づかせていくための戦略が必要」と指摘した。=27日付産経新聞朝刊神戸版

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 新聞を学校教育に活用してもらう取り組みを進めている県NIE推進協議会の2021年度総会が5月26日、神戸市内で開かれた。児童・生徒数の少ない小規模校をオンラインでつないで授業を行うなど、新たな事業を盛り込んだ計画を承認した。

 推進協では、記者による出前授業や、県内の小中高校など「教育に新聞を」を実践している指定校を中心に、授業の研究・発表を行っている。21年度はこのほか、NIEに詳しくアドバイザー役の教諭らが授業での工夫や課題を披露する「座談会」を始める。

 推進協の秋田久子会長は「学校現場との体温を共有して活動を大きくしていきたい」と抱負を述べた。指定校による20年度の実践報告書もまとまり、推進協のHPで公開されている。【石川隆宣】=27日付毎日新聞朝刊神戸・明石版ほか

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 学校教育の現場で新聞の活用を進める「兵庫県NIE推進協議会」の総会が5月26日、神戸市中央区の神戸新聞社で開かれた。2021年度の実践指定校は例年通り20校とし、オンラインで複数校をつないで授業を実施するなどとした事業計画を承認した。

 同協議会は学識経験者や兵庫県教育委員会、神戸市教委、県内の学校、新聞・通信社で組織する。

 同協議会の秋田久子会長は「昨年度はNIEにとってオンライン元年だった。今後の事業に生かしていきたい」とあいさつ。県教委の西上三鶴教育長は「デジタル社会でも表現力や文章力の重要性は変わらない。デジタルと紙の両方が大切だ」と話した。

 NIEの活動の幅を広げるため、普段は関わりのない複数の学校で、同じテーマで新聞活用授業をしてもらったり、小規模校をオンラインでつないで一緒にNIE授業を受けてもらったりする新規事業が紹介され、承認された。

 意見交換では「新聞を読んで自主的に考える力を養ってほしい」「新聞を読まない若手教員も増える中、活用方法をイメージしてもらう必要がある」といった声が出た。(安福直剛)=27日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]兵庫県NIE推進協議会総会であいさつする秋田久子会長=神戸市中央区東川崎町1

niesoukai.jpg  神戸市教委の長田淳教育長の話(総会あいさつで)「デジタル社会に適応する力や深い思考力を身に付けるため、NIEが重要となってくる」

 

                                      令和3年5月26日
兵庫県NIE推進協議会総会 ご挨拶
                                      会長 秋田久子

 皆さま、こんにちは。お忙しい中ご参会くださいましてありがとうございます。いつもご支援ご協力下さいまして感謝申し上げます。
 
    昨年度はNIEのオンライン元年でございました。実践校ではタブレットを用いたNIE授業が始まりました。公開授業も実践発表会もオンラインのおかげで、県外からや学校関係者以外からも、多数のご参加を得ました。
 本日は、昨年度の経験をいかした新しい取り組みを三つ、お諮り申したいと思います。

 一つ目は、タブレットによるNIE授業のワークショップです。6月23日のセミナーで実施します。愛徳学園中・高等学校と神戸山手女子中学高等学校のご支援のおかげで、2校をオンラインでつなぎ、それぞれから約1時間、計2時間の授業をしていただきます。講師は愛徳学園中・高等学校の廣畑先生と米田先生、神戸山手女子中学校高等学校教諭でNIEアドバイザーの近藤先生です。「生徒」は、対面でご参加の先生方30名です。タブレットも1人1台貸し出してくださいます。皆さんにタブレットを用いたNIE授業の感触を得ていただけると思っております。

 二つ目は、複数の学校をつなぐオンラインNIE授業です。小規模校の児童が、また高校では学科の異なる生徒たちが意見交換する機会を設定します。それに先立って、NIEアドバイザーの近藤先生と神戸市立淡河小学校の藤岡先生を世話人に、研究会も発足しました。気楽に効果的なオンライン授業をする糸口を作りたいと考えています。

 三つ目は、アドバイザーによる座談会の開催です。先生方の実践への戸惑いを少なくしたいと思います。座談会はHPや兵庫NIEニュースで発信していきます。

 一方、今後も、会員各社のご講演は継続させていただきとうございます。昨年度、実践発表会での日経新聞・滝川神戸支社長に続いて、6月のセミナーでは、時事通信社の丸山神戸総局長にお願いいたしております。先生方の関心が深く、反響が大きゅうございます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 最後に、新しい特任アドバイザーのご紹介を申し上げます。大変お世話になった、中川透・特任アドバイザーがご定年退職をなさいました。ご後任は、神港学園高等学校の中野憲二校長先生でございます。会員各社とアドバイザー13名の先生方のお力添えも得て、一層、学校とのつながりを広く温かく維持して、NIE活動のエネルギーを高めていきたいと思います。

 今年度も、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 「第10回近畿NIEフォーラム」(日本新聞協会、兵庫県NIE推進協議会など近畿各府県のNIE推進協議会主催)の日程を2021年夏から22年夏に延期します。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う措置で、併せて開催する「近畿ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議」も22年夏に延期します。

 同フォーラムは隔年ごとに大阪で開かれ、第9回フォーラム(19年8月)は近畿各府県の教員や学生ら約90人に参加いただきました。

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 姫路市立豊富小中学校は特色ある取り組みの一つにNIEを掲げ、2020年4月、9年制の義務教育学校として開校しました。「新聞をつくるとつかう」をコンセプトに推進してきた1年間の中で大きな節目となったのが、児童生徒1人1アカウントの付与、そして、20年9月14日、児童生徒1人1台のタブレット型端末の整備が完了したことです。児童生徒がアクセスできる情報量が圧倒的に増えたことや、情報の編集・加工・発信・共有が手軽に行えるようになったことで、紙媒体の新聞との併用をいっそう意識するようになりました。

 新型コロナウイルス感染症対策として、兵庫県NIE推進協議会による記者派遣事業(出前授業)もすべてオンラインで実施。1回目(20年7月30日)は5年生3クラス103人を対象にして、新型コロナに関する記事をもとに「新聞の読み方」を学び、ワークショップも実施しました。大人数でも均質な授業を受けられ、プレゼンテーションソフトの情報を全員が共有している一体感もあり、オンライン授業の可能性を感じた時間でした。

 2回目(21年2月5日)、7~8年生176人を対象に行った「阪神・淡路大震災」をテーマにした授業でも、同様のスタイルで実施しました。オンデマンド(録画方式)では実現できない質疑応答やワークショップなど双方向性も高く、記者派遣の新しい形を提案することができました。

 これらの成果を反映し、3回目(21年3月10日)は6年生88人が「オンラインまわしよみ新聞」にチャレンジしました。まわしよみ新聞は、それぞれが関心を持った新聞記事を題材に意見交換し、オリジナルの紙面として再構成する手法です。児童は別のクラスの児童と3人一組になり、タブレット型端末を使ってクラウド上でやりとりを重ねました。

 単に選んだ記事を貼り付けるだけではなく、紙面で最も大きなスペースを割くトップ原稿をクラウド上での投票や話し合いで決め、記事の配置も同様に話し合いながら構成していきました。

 ICTを活用し、会話しないで対話する――。この手法は21年1月26日、7年生を対象に実施した教育関係者向けの公開授業「オンライン多紙読み比べ」がヒントになりました。緊急事態宣言下ということもあり、対面でのグループ活動にも制限がありました。そこで、同じ教室の離れた場所にいるメンバーと複数紙を読み比べた意見や感想を交流。音声言語でのやり取りがほとんどない異色の授業公開でしたが、日本各地からオンラインで参加いただいた皆さまから「学びに向かう姿がすばらしい」「新しい形でのチャレンジが大変参考になった」などうれしい感想をいただき、次へのさらなる一歩につながりました。

 私たちの挑戦は、兵庫県NIE推進協議会のご支援、ご助言があってこそ実現しました。今後も、同協議会の秋田久子会長の「生徒がタブレットを通じて意見交換するオンライン授業の長所は『言語化の必然』です。生徒は自分の考えを言葉にする必要があります」(同推進協議会サイト巻頭コラム)という言葉を胸に、これからもテクノロジーが拓(ひら)く新しいNIEの形を模索していきます。

井上幸史(姫路市立豊富小中学校教頭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(5月8日)

[写真㊤]当日朝刊から新型コロナの関連記事を探す児童=2020年7月30日、姫路市立豊富小中学校                                             

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[写真㊨]クラウド上で意見交換しながら紙面を作る児童=2021年3月10日、姫路市立豊富小中学校

20年7月31日付神戸新聞朝刊姫路版の記事

21年2月6日付神戸新聞朝刊姫路版の記事

21年3月12日付神戸新聞朝刊姫路版の記事

21年1月27日付読売新聞朝刊姫路版、28日付神戸新聞朝刊姫路版の記事

兵庫NIEニュースを発行しました。第65号となる今回は2020年度の実践発表会や愛徳学園中学・高校、姫路市立豊富小中学校の公開授業、オンライン授業を含む記者派遣事業の様子などを紹介しています。

下記リンクからPDFファイルをご覧いただけます。

 NIEニュース(65号)・PDFファイルを開く

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 兵庫教育大学附属中学校(加東市山国)は毎年、阪神・淡路大震災が発生した1月17日の前後に「防災学習」を行っています。2020年度は、日本新聞協会のNIE実践校に指定され、兵庫県NIE推進協議会の記者派遣事業(出前授業)を活用し、防災学習することにしました。

 震災から27年目に入った21年1月18日、神戸新聞阪神総局の名倉あかり記者(現・社会政経センター員)と、神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーを講師に招きました。お二人の震災報道のあり方についての講演と、本校の生徒3人と幼児の頃に震災に遭った教師も加わったパネルディスカッションを通し、全校生徒約280人が防災学習への理解をより深めてもらうねらいです。

 テーマは「震災報道を通じて阪神・淡路大震災を伝える意義」。震災の年に姫路市で生まれた名倉記者は「震災を知らない世代が、次の世代に震災をどう伝えていくかを考えることが必要」と話されました。震災当日、神戸・三宮の神戸新聞本社で宿直勤務だった三好アドバイザーからは、当日の壊滅的な街の様子や、全壊した神戸新聞本社の被災状況について話がありました。

 パネルディスカッションでは、震災報道や防災学習を通じ、私たち一人ひとりが26年前の大震災にどう向き合うか。これから予想されるさまざまな災害に対し、どう対応し、防災・減災につなげるか―を考えました。

 パネリストとして参加した生徒の一人は「26年前、母は西宮市で被災した。初めは生きるのに必死だったが、しばらくして『記録を残さないといけない』と写真を撮った。その写真を見せられ、『記憶を記録する大切さ』を教えられた」と語りました。

 当日、会場には神戸新聞が被災地を定点観測して撮影した写真パネルも展示されました。今回の記者派遣事業を通じ、生徒たちは、阪神・淡路大震災に向き合う貴重な経験ができたと感じています。

安永 修(兵庫教育大学附属中学校教諭=当時、現・川西市立清和台中学校教諭)(5月7日)

[写真説明]「震災の記憶」を語り継ぐ意義を語り合ったパネルディスカッション

21年1月19日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面の記事