2021年8月アーカイブ

NIE全国大会パネル討議・道新.jpg 

  第26回NIE全国大会のパネルディスカッション=8月16日、札幌市(北海道新聞社提供)

    教育現場で新聞を活用するNIEの第26回全国大会(日本新聞協会主催)が8月16日、札幌市で開かれた。スローガンは「新しい学びを創るNIE~家庭・教室・地域をむすぶ」。新型コロナウイルス対策で、昨年の東京に続くオンライン開催となり、基調講演やパネル討議、道内の教員らによる公開授業など分科会がライブやオンデマンドで配信された。

   当日は全国各地から教員やNIE関係者約千人(うち兵庫からは24人)が参加登録した。分科会は、アイヌ民族や道央の日本遺産「炭鉄港」といった北海道独自のテーマや、パラリンピック選手の生き方に学ぶ--など、時宜にかなった授業内容が目立った。 

 兵庫県NIE推進協議会事務局からは4人が視聴した。分科会の中から、心に残った公開授業と実践発表を報告する。

   ▼札幌市立栄南小学校 パラ選手の思いに触れて 

    札幌市立栄南小学校4年生は、上野裕子教諭による道徳科の公開授業で、東京パラリンピックのトライアスロン選手、谷真海(まみ)さんの生き方を通し、夢や目標をもつことや、周りの支えや励ましの大切さを学んだ=写真㊦は動画の一場面。
 上野教諭は、谷さんが大学時代に右脚に骨肉腫が見つかって切断、義足になって夢を失いかけたときに出合ったパラリンピックで活躍する話を紹介。「谷さんが手にした大切なものは何」と問い掛けると、児童たちは、あきらめない気持ちやスポーツが好きなこと、チャレンジする心などと答えた。
 続いて谷さんのインタビュー記事を読み、見出しの「信じてくれた」のは誰かを考えた。谷さんが頑張れたのは、谷さんを信じ「神様は乗り越えられない試練は与えないよ」と声を掛けた母親の存在だった。児童たちは、ほかにも谷さんを支えた人を考え、義肢装具士や医師、仲間やライバル、ファンを挙げた。
 学びのふりかえりでは、自分を応援したり支えたりしてくれる人も考え、両親や一緒に頑張る仲間が挙がったという。上野教諭は「本校はパラリンピックを広め応援する発表活動などに取り組んでいる。調べ学習の一つとして、新聞記事を扱い、選手の願いや思いに触れることで、児童の興味関心を引き出したい」と語った。

パラ公開授業.jpg

    ▼日高町立門別中学校 アイヌ民族との共生とは

 先住民族アイヌとの共生や、アイヌが置かれてきた格差の問題を考えた実践発表が2件あった。その一つが、新ひだか町立三石中学校の川上知子教諭が「アイヌ文化学習とNIE」と題し、前任の日高町立門別中学校で行った取り組みだ。
 北海道の魅力を道外の人に伝えようと、同校2年生が、白老町にあるアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」での体験学習の成果を、それぞれ新聞にまとめた。
 北海道NIE推進協議会の上村尚生NIEコーディネーターが、記事の書き方や見出しの大切さなどを指導。完成したB4判の新聞は、ウポポイの役割や厳しい冬を生き抜くチセ(住居)の工夫、マダラや鹿肉の伝統料理などを紹介。紙面は、交流のある青森市内の中学生にもオンラインで見てもらった。
 3年生の授業では、14歳の少年の成長を通し、アイヌの人々の今を描いた映画「アイヌモシ●(小文字のリ)」(昨年公開)を取り上げた。生徒は、福永壮志監督のインタビュー記事を読み、印象に残った言葉に線を引くなどして監督の思いに触れた。
 川上教諭は「記事を効果的に活用することが、生徒たちの、アイヌ民族と共生するため自分ができることを考える姿勢につながった」と語った。

    上村尚生・北海道NIE推進協議会NIEコーディネーターの話 (「アイヌ文化学習とNIE」をテーマにした)門別中学校・北海道北見北斗高校の実践発表は、新聞を活用することで、アイヌ民族の歴史・文化に関する学びの視野を多角的に広げることができた実践といえます。小学校でのアイヌ民族の学習経験を生かした、体系的な学びへとつなげていけるのではないでしょうか。

  <兵庫からの参加者の感想>

  近藤隆郎・神戸山手女子中学高校教諭 元プロ野球選手、アスパラ農家、漁師といった多彩な面々が学校関係者とのあいだで繰り広げられたパネルディスカッションがおもしろかった。家庭や地域の生活のなかで子どもたちが新聞と〝自然に〟つながっていくことの大切さを再認識! 話の中で紹介されていた「伝える技術はこうみがけ!―読売KODOMO新聞・読売中高生新聞の現場から」(中央公論新社)には、NIEのみならず授業のヒントが満載で、皆さんにもオススメ。まだの方は、配信期間中にぜひ視聴を。

  井上佳尚・姫路市立豊富小中学校教諭 昨年度の東京大会に引き続き、オンラインでの全国大会参加となった。今回、特に興味を持った発表は、北海道という広域な土地が持つ地域の課題や良さを新聞から読み解くという真駒内中学校の取り組みと、アイヌといった固有の文化を新聞から学び、発表する門別中学校の取り組みだった。くしくも私たちが住まう兵庫県は五国と呼ばれるほど、その県域は多様であり、地域の課題や良さも多岐にわたっている。これら2校の取り組みから学んだことがたくさんあった。

 これらの発表や実践をもとに、わが兵庫県でも「多様性+一体感=新聞」を意識した実践を深めたいとあらためて感じるとともに、来年度は若山牧水の故郷、宮崎の地でさらなる研さんを深められることを願っている。

 米田俊彦・愛徳学園中・高校教諭 昨年に引き続いて参加しました。かつて住んだことのある北海道での全国大会で、ぜひ現地参加したいと願っていましたが、コロナ下でも関係者のご尽力によりオンラインで無事開催されたことに安堵しました。本当にありがとうございました。

  分科会がオンデマンド配信となり、日ごろなかなか参加できない他校種や他教科のものも聴くことができました。校種を縦断し、教科を横断することで視野を広げられ、大変刺激的で興味深く参加できました。特に、北見北斗高校の現代社会「アイヌ民族の格差問題」は格差についてあらためて考えさせれました。「金融学習とNIE」の故・中村哲先生の写真展をめぐる課題探究やクラウドファンディングには可能性を感じました。「学校図書館とNIE」は、各学校にある学校図書館が主体となって行うNIEの実践発表で、メディアセンターとしての図書館の可能性を感じることができ大変参考になりました。

  新聞の紙面は社会全体を写す鏡でもあり、その範囲は極めて多岐にわたっています。それぞれの詳細やデータを入手するにはネットやSNSも用いられますが、部分から全体を考え、時に俯瞰(ふかん)し、メタ認知レベルで物事を捉え、物事の意味を考えるには「紙の新聞」というメディアが果たす役割はますます重要になっていると感じました。北海道での学びを今後に活かしていければと強く思いました。

  中嶋 勝・尼崎市立南武庫之荘中学校教諭 1人1台タブレットが配布され、コロナ禍でリモート授業の必要性が高まり、授業でのICT活用の重要性はさらに増しています。特別分科会「GIGAスクール時代におけるNIEとICT」を拝聴させていただき、大変勉強になりました。放送大学・中川一史教授の、先進国の中で日本はICT利用が最下位で、ICTの能力を高めることは喫緊の課題とのお話と、横浜市立荏子田(えこだ)小学校・浦部文也教諭のタブレットを利用したNIEの取り組みを知り、あらためてICTに取り組まなければならないと感じました。さらに、ICTとアナログ双方の良さを有効に使う授業計画と十分な準備によって、生徒たちの学びが深まることを学ぶことができました。ありがとうございました。

    天野利佳・兵庫県立播磨特別支援学校教諭 北海道岩見沢高等養護学校の実践発表「特別支援学校におけるNIE」をお聴きし、共感することばかりでした。特に生徒たちが新聞に対し持っているイメージは、本校の生徒の話を聞いているようでした。取り組みもとても参考になりました。ありがとうございました。     

    福田浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭 初めて参加した全国大会は、コロナの影響でオンラインでの視聴となった。開催地の空気感を肌で感じられなかった反面、興味を持ったものをじっくりオンデマンドで堪能できた。新聞記事を授業に活用することもさることながら、私は「新聞の持つ表現力」を生徒が学びとることに主眼を置いており、その意味で「子ども新聞展示会」「高校生号外」にたいへん興味を持った。各地の子ども向け・中高生向け新聞の紹介を通し、「自ら必要な情報を新聞から拾う」ことの重要性を再認識した。関係機関には、全国で「小学生から本物の新聞に触れて学ぶ教育実践」が活発になるような環境整備を望むところである。

    三好正文・兵庫県NIE推進協議会事務局長 全国大会への参加は今年で5年目になる。毎回、先生たちのアイデアを凝らした授業に感心させられ、見よう見まねで兵庫のNIE活動に取り入れてきた。札幌大会では「アイヌ文化学習とNIE」をテーマにした2つの実践発表が興味深かった。ねらいが「アイヌとの共生やアイヌの経済格差問題を考える」と明確で、オンラインながら居住まいを正して視聴した。公開授業「パラリンピック選手の生き方に学ぶ」は早速、小学校教員向けのNIE研修で紹介させてもらっている。
 北の大地でNIEについて語り合うのを楽しみにしてきたが、コロナ下ではそうもいかない。今後、事態が収束に向かっても、それぞれ長所のある現地開催とオンライン開催を併用する流れは強まるだろう。「来年は宮崎に行きたいな」と思いながら、オンラインの新たな展開にも思いをめぐらせている。

 

 継続校に続いて、2021年度の新規NIE実践指定校の抱負を紹介する。(敬称略)

  新聞に触れる機会を
  【神戸市立大沢小】
        校長    長﨑 康子
        実践代表者 長﨑 康子
 小学校は、情報化社会を主体的に生きるための基礎を育てるところだと考える。情報を多面的・多角的な見方・考え方でとらえ、自らの思考や判断に生かせる子を育てたい。そこで朝の会のスピーチで新聞記事を活用するなど日常的に新聞に触れる機会をもつようにしたい。また短い言葉で的確に情報を伝える新聞の表現方法に学び、表現力の向上も目指したい。

 NIE通じ他校と交流
 【神戸市立淡河小】
        校長    黒井 陽子
        実践代表者 藤岡 絵美
 本校は、「自分の興味・関心に合わせて新聞を進んで活用していくことのできる児童の育成」を目指す。より多くの活字にふれることで、言語力の向上だけでなく、記事を通して自分の思いを伝える言語活動へと繋げていきたい。また、NIEを通して他校と交流する活動も予定している。「主体的・対話的」な活動を通して、より深い学びとなることを期待している。

 課題解決の情報発見
 【尼崎市立立花南小】
        校長    永井 君子
        実践代表者 山川 和宏
 過剰に情報があふれる現代社会において、必要な情報を選択し、正しく読み取る力は欠かせないものとなっている。そこで、新聞を活用し、児童が自ら課題を設定し、課題解決のための情報を見つけ、その情報と関連づけて自らの考えをまとめていく教育活動を推進していきたいと考えている。そして、児童の主体的かつ探究的な学びに結びついていくことを期待している。

 対話・情報発信力育む
 【養父市立宿南小】
           校長     増田真知子
        実践代表者 栄羽 麻里
 情報化社会の今だからこそ活字に親しませたい。まずは、ワークスペースにコーナーを設置し、児童が新聞にふれる環境づくりから始める。自身が住む町のことから広く世界情勢まで、知りたい情報を探して的確に選ぶことができる子、新聞を活用して主体的、対話的に他の子と意見交換し、自分の意見を深めることができる子、さらには情報を発信できる子の育成を目指す。

 しなやかに、生きる
 【神戸市立神陵台中】
        校長    赤松三菜子
        実践代表者 山本 公大
 新聞活用を通じて視野を広げ、地域や社会の中で課題を発見し行動する力、予測不能な未来社会の変化に柔軟に対応する心情を育みたい。情報活用能力の育成が主体的・対話的で深い学びを実現し、読解力や豊かな想像力を養い、多様な価値観や人間関係力の向上にも寄与すると考える。未来を担う生徒たちが夢や希望を持ち、しなやかに生きる力となるNIE実践としたい。

 要約や発表力を磨く 
 【尼崎市立南武庫之荘中】
        校長    屋敷 成治
        実践代表者 中嶋  勝
 本校は、「新聞を活用し、言語能力・情報活用能力の育成を図る」をテーマに、NIEに取り組む。国語科を中心に新聞に触れる機会を増やし、NIEノートに取り組むことで文章を要約する力や、根拠に基づいて自分の意見をまとめる力を養う。提供していただく新聞を有効に活用し、世の中の出来事に広く興味・関心を持ち、主体的に学ぶ生徒を育みたいと考えている。

    ワークシートを活用
 【加古川市立志方中】
        校長    小原 孝彦
        実践代表者 小山 真輔
 本校は本年度から実践指定校となった。新聞をとっていない家庭も多い。まずは新聞に興味・関心を持ち、社会的事象・事件などについてさまざまな視点から考え、考察し、判断できる生徒の育成を目指す。ゆくゆくは主体的に学習を進められる生徒の育成を目指す。本年度は新聞コーナーの設置や授業や総合学習などで、新聞やNIEワークシートを活用していく。

 学習者自律に向けて
 【神戸山手女子中高】
        校長    平井 正朗
        実践代表者 近藤 隆郎
 本校ではグローバルな視点から教科横断的な探究・プロジェクト型学習を試み、論理的思考力を強化することを実践している。目標は、正解のないテーマに対し、内容を掘り下げ、学び続ける「学習者自律」のかん養。その中で、社会科の取り組みの一つがNIE。リアルな社会問題へのアプローチが背景知識を鍛え、課題発見・解決力の育成につながることを期待している。

 新聞の表現力を活用
 【県立伊川谷高】
        校長    曽谷  功
        実践代表者 福田 浩三
 本校の重点目標であるコミュニケーション能力の向上に新聞の持つ表現力・情報伝達能力を活用する。学校設定科目「コミュニケーション基礎」を中心に、「やさしい日本語」の知識を学びながら生徒自らが伝えたい内容をより正確に伝える新聞紙面を作成する。生徒間で相互評価を行うことで、他者とのより良き相互理解につなげる。正しい日本語を生徒が考える機会としたい。 

 情報伝える楽しさを 
 【県立播磨特別支援学校】
        校長    下雅意一之
        実践代表者 天野 利佳
 寄宿舎生活を送る本校の生徒(普通科・職業科)たちは、メディアを使い時事問題などの情報を取得することに、時間的、物理的な制限がある。今回のNIEの実践では、まず、新聞記事の中から興味のある情報や自分が必要とする情報を探し出す力を育てたい。次に1分間スピーチや「新聞の木づくり」を通じ、得た情報を人に伝える楽しさを味わわせたい。

  2021年度のNIE実践指定校全20校の校長と実践代表者に本年度の抱負を寄稿してもらった。多様な取り組みがそろった。まずは、継続校からー。(敬称略)

 新聞を身近な存在に
 【伊丹市立天神川小】
        校長    津田 康子
        実践代表者 渡邊 奈美
 本校は本年度、実践2年目を迎える。昨年度の実績として、子どもたちが新聞に興味をもち、内容を深く読みとろうとする姿勢を育成することができた。本年度は、昨年度の取り組みを継続しつつ、朝学習の視写など、学年の範囲を超えて、新聞を身近に感じることができ、生活や学習などで必要な情報を選び、活用できる児童の育成を目指したい。

 全校で「NIEノート」
 【西宮市立浜脇中】
        校長    辻村  隆
        実践代表者 渋谷 仁崇
 本年度から、全学年で各自が「NIEノート」作成に取り組む。記事を読み、まとめ、感想を持つことで社会全体の動きが見える。あらゆる分野へ興味関心が高まり、主体的に考えるねらいがある。昨年度同様、書画カメラでのプレゼン能力を身につけ、各自に配布されたPCも活用、互いの発表がより理解しやすい環境を目指し多面的に物事を考える力を伸ばすねらいがある。

 探究的な学びを推進
 【兵庫教育大学附属中】
        校長    上野 佳哉
        実践代表者 橋本美砂子
 本校の目指す生徒像は「物事を多面的に理解し新たな価値を共創できる子ども」である。また目指す大人像は「未来を語れる本物の大人」である。昨年度は、記者による「震災報道」の講演会後、記者・生徒・教員の三者によるパネルディスカッションを行った。本年度もNIEの活動を通じて、大人も子どもも、答えのない問いに対し、探究的な学びを推進していきたい。

 小学校でもNIE実践
 【愛徳学園中・高】
        校長    宮内 健一
        実践代表者 米田 俊彦
 本校で進めている「Rainbow Program」では問題発見・解決力や思考力など「7つの力」の育成を図っている。その中で新聞を読み、ICTを用い、生徒の考えを深める授業に取り組んできた。本年度はさらに、本校小・中・高校の児童・生徒たちが新聞を通して互いに考えを深め学び合う授業を考え、実践していきたい。

 読み比べで表現力培う 
 【蒼開中・高】
        校長    阪口 寛明
        実践代表者 奥村 智紀
 本年度より新入生に対して1人1台Chrome Book端末を導入し、WIFI環境の整備がなされるなど本校においても学習環境が大きく変化した。この学習環境を生かし、紙媒体はもちろんのことICTの活用を通じた情報収集力・判断力・発信力を育みたい。また昨年度からの継続で、各社の記事の読み比べを通じ、多様な価値観の育成や表現能力の向上も図りたい。

 興味に応じ探究活動
 【県立神戸高塚高】
        校長    高本 正道
        実践代表者 伊東 琢麿
 昨年度に引き続き1年の総合的な探究の時間で、NIEで提供していただく6紙を利用する。我々が直面している地域社会等の諸課題を読み解き、その解決法を探る活動を通して、情報収集力・分析力・整理能力の基礎を身に付ける。昨年度、NIEで基礎的な力を身に付けた生徒は、2年でその力を活用して個人の興味・関心・進路に応じたテーマについて探究活動を行う。

 課題発見に新聞活用
 【県立兵庫高】
        校長    升川 清則
        実践代表者 岩見 理華
 本校は昨年度、文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」(グローカル型)の指定を受け、「総合的な探究の時間」において、SDGsの視点に基づく世界の課題に繋がる地域の課題を生徒自らが発見し、解決に向けた取組を推進している。NIEは、新聞記事を通して課題を発見し、研究をまとめる段階で活用し、批判的思考力と表現力の涵養を目指す。

 記事通じ防災考える
 【県立明石西高】
        校長    樫木 直人
        実践代表者 上田多江子
 本校は、1年次の総合的な探究の時間を中心に、新聞活用に取り組んでいる。今まで新聞に触れる機会が少なかった生徒への「新聞読み方講座」に始まり、最終的には新聞等を活用した論文を作成し、「学びに向かう力」の育成を目指す。論文のテーマは「防災・災害」とし、阪神・淡路大震災等の過去の学びを継承し、来るべき大災害への備えを考える機会ともしたい。

 課題解決力を育てる
 【県立西宮高】
        校長    萩原 健吉
        実践代表者 宮垣佳寿子
 本校は、1年次で地域的な課題、2年次でグローバルな課題(SDGsのゴール)の解決に向けた探究学習に取り組んでいる。この取り組みの中で、新聞を重要な情報ソースと位置づけ、生徒の問題発見能力や資料活用能力を伸長している。NIEを通して、社会での事象背景を世界的な視野で想像し、主体的に課題解決策を見出す思考力・行動力を身につけさせたい。

 多様な価値観育てる
 【県立多可高】
        校長    殿井 瑞穂
        実践代表者 植山 正彦
              盛岡 宗太
 本校では、新聞を活用して、主体的・対話的に他者と意見交換することで、多様な価値観を育み、めざましい社会の変化や進歩に適応できる生徒の育成を目指す。新聞記事を通して地域や社会の諸問題に目を向け、積極的に課題解決を探る態度を育成する。NIE実践指定を有効活用することで、感性を働かせて一人一人が力強く生きる力と、社会情勢に対応できる力を養う。

 県NIE推進協議会会員の新聞・通信社で6月、人事異動があり、読売新聞神戸総局長が西村泰輔さんから曽根文朗さんに交代した。人となりを自己紹介で―。

 読売新聞神戸総局長 曽根文朗

 19年ぶりの神戸勤務

 神戸に赴任するのは19年ぶりになります。前の神戸勤務は1999~2002年。阪神大震災で家を失った人たちが暮らした仮設住宅がまだ残り、街には更地が目立っていました。一方で、地下鉄海岸線開業やサッカーW杯、王子動物園に来たパンダなど、明るい話題も取材しました。

 着任後、神戸総局の書庫をのぞくと、当時の記事を貼ったスクラップブックが残っていました。新聞は、ネットやテレビに比べて記録性に優れ、テーマごとに記事をスクラップしておけば、何があったかを時系列に沿って読み返せる利点があります。過去の記事は、図書館やデータベースでも読むことができます。
 手前みそですが、激動の時代だからこそ、日々の出来事の記録が詰まった新聞を手に取っていただく意義はあると考えています。どうか、よろしくお願い申し上げます。

tatibanaminamisyou1.jpg

 「新聞コーナーできました。よろしくね」。尼崎市立立花南小学校の図書室には、入り口にそんな案内がある。室内には子どもたちが選んだ新聞記事の切り抜きが、お薦めの理由を書き添えてあちこちに貼られている。子どもたちの手で切り抜きをまとめたスクラップブックもあった。児童が新聞の面白さに触れ、他の児童に紹介し、社会への関心を高める―。図書室を拠点にNIE(教育に新聞を)活動の好循環を実現した、同校の取り組みを紹介したい。(兵庫県NIE推進協議会コーディネーター 石原丈知)

 同校は2021年度の日本新聞協会NIE実践指定校。全てのクラスで、図書の授業時間に記事紹介作りに取り組んでいる。

 子どもたちが新聞に興味を持つ活動を始めたのは、尼崎市の読書力向上事業で同校の図書室に勤務する阿部奈津子司書。新聞を配置しても、手に取る児童が少ない。読まれないままたまっていくだけではもったいない―。そんな思いが出発点になったという。

 まず、各学年の図書の授業で最初の時間に、その日の新聞の1面を紹介する。低学年の児童には子ども新聞を、高学年には一般紙を用いる。そして子どもたちに、自分の好きな記事を選び紹介してもらう。

 図書室に貼られた記事紹介を見ると、お薦め理由が学年ごとに異なり興味深い。例えば6年生は憲法記念日に掲載された、憲法9条への自衛隊明記をめぐる記事を取り上げ「6年生で憲法を勉強しました。読んでみてください」と薦めていた。一方、1年生は海の生きもののイラストを選んで「海の中がきれいだしかわいい」、また月の写真に「月がすごかった」と記していた。中には新聞広告を切り抜いていた子もいた。

 毎木曜2~3時間目の間の休み時間には、児童会役員5人が図書室に集まり、記事紹介を作りつつ、みんなの記事紹介をスクラップブックにとじる。「1・2年」「3・4年」「5・6年」と学年別に分かれたそれらは、いわば「みんなが好きな記事」集。ゆっくり眺めていると、1年生の児童がのぞきこんで「これ、僕の記事」と教えてくれた。

 児童会役員の川瀬心望(ここみ)さん(5年)は「低学年でも高学年でも共通で楽しめる記事を選んでいます。子ども新聞の工夫が楽しいと思いました」。中西祥千(さゆき)さん(同)は「新聞に載っているゲームや、自分が知らない生きものの記事を紹介します。知らないことが新聞で分かるのが楽しい」と笑顔で語る。

 実践代表者の山川和宏教諭は「最近は新聞を取っていない家庭も多いので、図書室をまず新聞に親しむ場所にしてもらった。これからは新聞紹介をさらに発展させた壁新聞作りや個人新聞作りに発展させていきたい」と話した。

[写真㊤]新聞に目を通し、みんなに紹介したい記事を選ぶ子どもたち=いずれも尼崎市三反田町2、立花南小学校

[写真㊦]児童が、自分の選んだ新聞記事を紹介するコーナー(画像の一部を加工しています)

tatibanaminamisyou2.jpg

 

 幼稚園児や小学校低学年の児童教育にも、新聞を活用してもらうにはー。兵庫県NIE推進協議会は、学年別の教員向けNIE研修会を行っています。同協議会☎078・362・7054までお問い合わせください。

 6月30日、神戸市北区の淡河小学校で行った研修会の記事はこちら。

 8月3日、神戸市垂水区の愛徳学園小学校でも研修会を行いました。参加した教員の感想はこちら。

aitokugakuennnie.JPG

[写真㊧]新聞の活用法を学年別に考えたNIE研修会=神戸市垂水区歌敷山3、愛徳学園小学校

 

 

 8月17日、養父市八鹿町の宿南小学校でも研修会を行いました。参加した教員の感想はこちら。

 [写真㊨]syukunamisyouniekennsyu.JPGイチオシ記事を紹介する教員ら=養父市八鹿町宿南、宿南小学校