「新聞コーナーできました。よろしくね」。尼崎市立立花南小学校の図書室には、入り口にそんな案内がある。室内には子どもたちが選んだ新聞記事の切り抜きが、お薦めの理由を書き添えてあちこちに貼られている。子どもたちの手で切り抜きをまとめたスクラップブックもあった。児童が新聞の面白さに触れ、他の児童に紹介し、社会への関心を高める―。図書室を拠点にNIE(教育に新聞を)活動の好循環を実現した、同校の取り組みを紹介したい。(兵庫県NIE推進協議会コーディネーター 石原丈知)
同校は2021年度の日本新聞協会NIE実践指定校。全てのクラスで、図書の授業時間に記事紹介作りに取り組んでいる。
子どもたちが新聞に興味を持つ活動を始めたのは、尼崎市の読書力向上事業で同校の図書室に勤務する阿部奈津子司書。新聞を配置しても、手に取る児童が少ない。読まれないままたまっていくだけではもったいない―。そんな思いが出発点になったという。
まず、各学年の図書の授業で最初の時間に、その日の新聞の1面を紹介する。低学年の児童には子ども新聞を、高学年には一般紙を用いる。そして子どもたちに、自分の好きな記事を選び紹介してもらう。
図書室に貼られた記事紹介を見ると、お薦め理由が学年ごとに異なり興味深い。例えば6年生は憲法記念日に掲載された、憲法9条への自衛隊明記をめぐる記事を取り上げ「6年生で憲法を勉強しました。読んでみてください」と薦めていた。一方、1年生は海の生きもののイラストを選んで「海の中がきれいだしかわいい」、また月の写真に「月がすごかった」と記していた。中には新聞広告を切り抜いていた子もいた。
毎木曜2~3時間目の間の休み時間には、児童会役員5人が図書室に集まり、記事紹介を作りつつ、みんなの記事紹介をスクラップブックにとじる。「1・2年」「3・4年」「5・6年」と学年別に分かれたそれらは、いわば「みんなが好きな記事」集。ゆっくり眺めていると、1年生の児童がのぞきこんで「これ、僕の記事」と教えてくれた。
児童会役員の川瀬心望(ここみ)さん(5年)は「低学年でも高学年でも共通で楽しめる記事を選んでいます。子ども新聞の工夫が楽しいと思いました」。中西祥千(さゆき)さん(同)は「新聞に載っているゲームや、自分が知らない生きものの記事を紹介します。知らないことが新聞で分かるのが楽しい」と笑顔で語る。
実践代表者の山川和宏教諭は「最近は新聞を取っていない家庭も多いので、図書室をまず新聞に親しむ場所にしてもらった。これからは新聞紹介をさらに発展させた壁新聞作りや個人新聞作りに発展させていきたい」と話した。
[写真㊤]新聞に目を通し、みんなに紹介したい記事を選ぶ子どもたち=いずれも尼崎市三反田町2、立花南小学校
[写真㊦]児童が、自分の選んだ新聞記事を紹介するコーナー(画像の一部を加工しています)