2020年4月開校予定の姫路市立豊富小中学校(同市豊富町)が、将来への指針となる特色ある取り組みに「NIE(教育に新聞を)の実践」を掲げている。同小中学校は、隣接する市立豊富小・豊富中が一つになる、小中一貫の義務教育学校。助走期間の19年度は、両校とも日本新聞協会から実践校の指定を受け、新聞記事を基に環境問題などの調べ学習をしたり、修学旅行など体験活動を新聞にまとめたりしたほか、「朝の時間」には一斉放送で記事の読み聞かせも。20年度に向け、両校の教員によるNIE研究も始めている。 (田中茂典・兵庫県NIE推進協議会コーディネーター)
「NIE活動の実践」を掲げるのは、「新聞を『つかう』『つくる』活動を通し情報活用能力を育みたい」(阪本靖・豊富小学校長)「『調べる力』を育てる柱に新聞活用を位置づけている」(山下雅道・豊富中学校長)からだが、何より両校には、NIEに前向きな教諭が多い印象がある。今年8月、宇都宮市であった日本新聞協会主催のNIE全国大会や、近畿NIEフォーラム(大阪市)に参加した教諭たちが、紹介された取り組みを授業に取り入れている。
豊富中の井上佳尚教諭は、NIE全国大会で、ことばの貯金箱「夢」プロジェクト代表・渡辺裕子さんが実践する「つぶやきNEWSっす」を知ったという。これは数人ずつで班を作り、各自が気になった記事を切り抜いて紹介。模造紙に貼り付け、余白にみんなで共感や疑問など「つぶやき」を書き込む。そして読み返し、考えを班内で発表する―という内容。井上教諭は9月、尼崎市立大庄北中学校であったNIE公開授業も参考に、学校司書とこうした授業を行ったという。 豊富中に取材に訪れた日、井上教諭の指導で、小学校の教員ら5人が「つぶやきNEWSっす」に取り組んだ。兵庫県稲美町と熊本県益城町の災害協定の記事を選んだ花折了介教諭は、「各自が選んだ記事について考えを話したり聞いたりすることで、自分の考えを深めることができる」と述べた。
こうした活動は、校内にとどまらない。両校は9月、地元公民館と共同で地域住民を対象に、「人権」をテーマに新聞を使ったワークショップ「まわしよみ新聞」を開いた。豊富小の井上幸史教頭は「新聞は社会への扉。楽しみながら、地域も巻き込んだNIEを模索していきたい」と話している。
[写真説明]「つぶやきNEWSっす」のワークショップ。気になる記事を選ぶ豊富小教諭ら(写真左)、新聞を使って調べ学習しやすいよう専用コーナーを設けた中学校の図書室。来春から小学生も利用できる(同右)=いずれも姫路市立豊富中学校