教員によるNIE実践

【寄稿】中学生が小学生に伝える「ヒロシマ」 愛徳学園の取り組み

※2月20日の小・中連携授業を担当した先生たちにねらいや成果についてご寄稿いただきました。

愛徳学園中学校・廣畑彰久教諭

 本校の中学3年生は修学旅行で広島を訪れる。事前学習では、被爆された語り部の方からお話を聞くというプログラムを実施しているが、被爆者の方の高齢化が進み、記憶の継承が課題とされている。そこで、生徒に平和を積極的に発信する経験をしてもらう、というのがこの取り組みのねらいである。

 限られた時間の中で、自分たちの思いをまとめるのは、難しい作業である。しかし、紙幅が限られているので伝える内容を焦点化できること、言葉で表現しきれない場合は写真を掲載することで表現を補えること、読み手の存在を意識して表現できること、このあたりに新聞というツールを用いたメリットがあったように思う。

 どのように小学生に伝わったかは、これから検証をしていかなければならない。しかし生徒たちは、教員側が思っていた以上の熱量を交流の時間に発揮してくれたと感じている。

 くしくもマスメディアの役割が問われる昨今、自分たちが体験したことを記事にして読んでもらうという体験の意味を、生徒たちにはぜひかみしめてほしい。

愛徳学園小学校・彦野周子教諭

 本学園では3年前から、中学3年生が修学旅行で広島平和記念資料館を訪れたり、被爆被害を受けた方から話をうかがったりして、学んだことや感じたことを新聞にまとめ、小学6年生に伝える学習に取り組んできた。今回、講師として話を伝えた中学3年生は、3年前に小学6年生として当時の中学3年生から話を聞いた学年だ。

 3年前の交流で、普段の授業や調べ学習だけではつかみ取れない被爆者の方の願いや市井の人々の被害の実態などを、現地を訪れ実際に話をきいた生徒たちから学べたことはとても意義があった。しかし、受け手である児童がそこから自分の考えを深め、発信するということができていなかった。

 今回は、交流を通して学んだことや考えたことを児童が一歩進めて、平和の実現のため「自分たちができることは何か」を考え、中学3年生に新聞で伝えるという活動を学習の最後に取り入れた。

 戦後80年を迎える今年、戦争を知らない世代から戦争を知らない世代へ、何のために何をどう引き継ぐのかを考え、今後も取り組みを続けていきたい。