大ヒット作を多く手がけてきた山本二三さんですが、以前「山本二三さんて、どんな人?」の記事で紹介したとおり、とっても控えめな人柄のよう。自らの技術についても、「才能は努力で補える」と断言しているようです。
そんな二三さんの描く作品は、
試行錯誤を繰り返しながら進めた
緻密な検証の上に成り立っているもの。
たとえば、下の画像は「もののけ姫」で登場した、
緑のコケがみっしり生えた"木霊(こだま)の道"。
宮崎駿監督から「様式的、デザイン的にならないように」と
依頼されたというこの作品は、
コケのみずみずしさや、フワフワとした質感を出すために、
日本画の画材を混ぜた絵具で描いたそう。
何度も何度も検証を繰り返して描き直し、
この表現にたどりつくまで2カ月ほどかかったとか。
(『アニメーションノート』2007年第5号、誠文堂新光社)
写真と見まがうほどのコケの質感は、
ぜひ会場で確かめてみてください。
▲「もののけ姫」 木霊の道
さて、二三さんといえば、特に有名なのが「二三雲(にぞうぐも)」。
もこもことボリュームのある立体的なカタチ、
光の輝きと豊かな表情を見せるこの雲は、
アニメーションの世界では広く知られています。
「山本二三展」のポスターに使われている
「時をかける少女」のワンシーンでも、
踏切からまっすぐ伸びる坂道の先に立派な二三雲が見られます。
▲「時をかける少女」 踏切
緻密な描写と詩情あふれる風景表現、そして二三雲、
作品を鑑賞するときには
そんなディテールにもぜひ注目してみてください。