28日、神戸市長田区の地域人材支援センター(旧・二葉小学校)で、二三さんによる「アニメーション背景美術教室」が行われました。プロの技術を間近で見られた2時間、二三さんの一挙一動に参加者たちの真剣な視線が集まりました。
集まったのは、小学生から60代まで約80人。
二三さんはまず、モニターを使って
「時をかける少女」の設定画やイメージボード、
ピクチャーハンティングの際の写真などを紹介し、
アニメ―ションの背景画ができるまでを説明。
奥行きのある「真琴の家の廊下」の絵では、
「どの部分から描いているかが気になると思うのですが、
絵のいちばん奥の部分から描いています」
と技術的な解説も。
デモンストレーションのあとは、
二三さん自らが筆を持っての実演が始まりました。
「おととい見た、積乱雲を描きます」と、
おもむろに大きな筆で画用紙に水分を含ませ始めた二三さん。
その作業と並行して、
絵の具を混ぜ合わせて必要な色を作っていきます。
画用紙が十分に水分を含んだら、鮮やかな青をとり、
雲の輪郭を残すように空から描き始めました。
にこやかな二三さんも、
絵を描いているときは無言で真剣な表情。
その緊張感が会場を包み、参加者のみなさんも
モニターに映る二三さんの筆の動きに夢中です。
わずか20分たらずで二三雲ができあがりました。
このままでは水分が多すぎるので、
実際にはエアブラシで調整して完成に至るそうです。
雲だけにとどまらず、このあと
森と火の絵、さらには参加者からのリクエストで飛び出した
渓流の絵まで描いてくださった二三さん。
「黄に対して青、青に対して緑、緑に対して赤という
補色の関係を意識しながら描くと、自然らしさが出ます」、
「神戸市立博物館で展示されている
『火垂るの墓』の家が燃えているシーンは、
建物ではなく火から描いています。
描きにくいものから描くというのも手です」など、
経験を感じさせるアドバイスがたくさん飛び出した2時間。
二三さんのテクニックを目の当たりにできた貴重な機会に、
尼崎市から訪れた高校生は
「背景の"奥"の部分から描いていくという話が印象的だった。
いつも手前から描いていたので、実践したい」と
満足そうでした。
・・・おまけ・・・
教室では前述の4枚の絵を描いてくださったのですが、
1枚描くごとに絵の具をのせた小皿と水入れを
二三さん自ら洗いに行ってらっしゃいました。
声をかけた人に対して、
「自分でやらなきゃだめなんだよ」と言う姿に、
絵に対する二三さんの真摯な思いを
垣間見たように思いました。