アニメ・特撮脚本家、推理冒険作家、漫画原作者、旅行評論家、エッセイストなどの肩書をもつ辻真先さんが30日、山本二三展の関連イベントとして講演会を行いました。テーマは「アニメ、むかしといま」。60年代から現代まで日本アニメ界を支え続けている辻さんの話が聞けるとあって、会場はたくさんのアニメファンでいっぱいになりました。
辻真先さんは、
「一休さん」、「デビルマン」、「魔法使いサリー」など
数えきれないほどの作品に携わった経験をもち、
日本のアニメーションを黎明期から支えている方。
会場には、ラジオ関西が放送している
アニメファンに人気の番組「青春ラジメニア」
のリスナーの姿も見られ、
ときには拍手も起こる盛り上がりを見せました。
二三さんの作品の印象を辻さんは、
「圧倒されます。特に『火垂るの墓』は。
私自身に空襲の体験があるので思い出しますね」と語り、
描かれた炎のようすで焼夷弾の種類を推理するほど。
戦時中の体験についても話し、
「貧しくて、腹が減って、でも豊かで楽しかった時代」と回想。
空襲に怯え、死を意識しながら過ごした日々、
映画を見ながら「自分ならこう作るのに」と
頭の中で想像をかきたてたこと。
こども時代のそんな体験が、
考えや筋書きを練る訓練になっていたのかもしれない
といいます。
ここ数年のアニメ界の動向について
中国や韓国の制作本数が伸びてきていることに触れ、
「日本アニメが戦前から長い時間をかけて
築いてきた他との"距離"を今、
一足飛びで詰めてきている」と辻さん。
「ライバルと並んだときの日本アニメが、
芸術的に優れながらも商業的にはハリウッドに及ばない、
フランス映画のような状態になるのでは」と懸念しつつも、
制作本数で一番になる必要はないと"質"の大切さも強調。
「若い人たちに頑張ってほしい」と
これからの日本アニメへの期待を語りました。
御年79歳にして現役で、最近のアニメについて
ツイッターで自身の感想をつぶやく辻さん。
「仕事だからじゃなく、好きだから見てるんだよ」
とアニメに対して本当に深い愛情をお持ちのようす。
そんな辻さんが講演会中におっしゃった
「3カ月くらいでやめちゃったらダメだけど、
70年も"好き"を続けているとそれが商売になる」
の一言がとても印象的でした。