紙面の向こうの社会を体感
教室でその日の朝刊を開き、新型コロナウイルスの関連記事を探す―。そんなワークショップ(WS)を、兵庫県NIE推進協議会が続けている。関連記事は各面に日々掲載され、感染拡大のピーク時には50本を超える日も。県内の小学校から大学まで、2020年7月に始めたWSは延べ30回を超えた。
WSは「有事のライフライン」としての新聞の役割や、新聞の特長である網羅性・一覧性、正しい情報を得ることの大切さについて知ってもらうのが狙い。同協議会事務局長が担当し、児童生徒らにその日の神戸新聞朝刊を配って、1面から国際、文化、地域、社会面まで各面から関連記事を探してもらう。
各面の記事にくまなく目を通すことで、兵庫と全国、世界の感染状況をはじめ、政府や自治体は何をしているか、何ができていないか▽医療や保健の現状はどうなっているか▽今困っている人は誰か▽経済や文化、スポーツ、地域にはどんな影響が出ているか―などさまざまなニュースを知ることができる。緊急事態宣言の度重なる延長や全面解除といった大きなニュースだけでなく、地域版のイベント延期のお知らせにも、市民の苦労が透けて見える。
児童生徒には「コロナの記事がこんなにたくさん、隅々まで載っているのか」と驚きをもって受け止められることが多い。また「新聞の全ページをめくる体験は初めて」という子どもが多い。
今年3月、関西学院大生を対象にしたオンライン講義では、帰省中の学生には地元で発行されている毎日新聞や中国新聞、福井新聞を活用してもらい、それぞれの地域のコロナの状況を知ってもらった。
9月21日のWSに参加した兵庫県立伊川谷高校(神戸市西区)2年の小林葵さん(17)は「多くの分野にさまざまな形でコロナ禍が影響しているのを実感した」と話した。愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は「記事の数を数えるのは、一見新聞を読むことから離れていくようで、紙面の向こうの社会を体感できる貴重な機会になっている」としている。
三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2021年10月18日)
[写真説明]新型コロナ関連の記事を探す高校生=兵庫県立伊川谷高校
ある日の朝刊から 10月22日、県立播磨特別支援学校でのWSで使用したスライドの一部(10月21日付神戸新聞朝刊1~4面、社会面ほか)がこちら
<実施した学校>洲本市立鮎原小学校、養父市立建屋小学校、県立伊川谷高校(2回)、姫路市立豊富小中学校、関西看護医療大学、県立須磨東高校、神戸大学付属小学校,、洲本市立洲浜中学校、姫路市立砥堀小学校、福崎町立田原小学校、尼崎市立南武庫之荘中学校、愛徳学園小学校、神戸市立葺合高校、伊丹市立笹原小学校、県立須磨友が丘高校(2回)、神戸市立小束山小学校、同市立福住小学校、関西学院大学新聞総部、西宮市立西宮高校、三木市立自由が丘中学校、神戸市立淡河中学校、同市立箕谷小学校、姫路市立広畑中学校、県立播磨特別支援学校、三田市立富士中学校、明石市立高丘中学校、尼崎市立長洲小学校、神戸市立千鳥が丘小学校、流通科学大学、神戸市立葺合中学校、同市立美野丘小学校、丹波市立西小学校、神戸市立有馬小学校、姫路市立朝日中学校、神戸市立白川小学校(自宅学習として)、県立伊川谷高校(同)、愛徳学園小学校(同)、神戸市立平野小学校(同)
教員向けとして、神戸市立淡河小学校・同市立淡河好徳幼稚園、愛徳学園小学校、養父市立宿南小学校、兵庫教育大学免許状更新講習でも同様の研修を行いました。