記者派遣

事件取材の裏側語る 毎日新聞記者 神港橘高で授業

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    新聞を学校の教材に活用するNIE(教育に新聞を)活動の一環として、神戸市兵庫区の市立神港橘高校で11月27日、毎日新聞神戸支局の春増翔太記者(35)が講演し、「時事問題」の授業を選択する3年生約30人が耳を傾けた。

 県NIE推進協議会の記者派遣事業。今年春まで東京本社社会部で事件担当だった春増記者は、歌舞伎町で飛び降り自殺した若い女性の背景を探った自身の記事を紹介。街で何十人にも声をかけて女性の知人と接触し、ホストクラブに未払い代金があった話を聞き出し、警察で事実確認の取材をした上で記事にした経緯を話した。「社会の隙間(すきま)にうっかり入り込み、事件が起きてしまうと知ってほしい」と話した。

 また、京都アニメーション放火殺人事件の犠牲者が新聞で実名報道されたことについても話題になった。同校の授業で、多くの生徒から疑問視する意見があったといい、春増記者は「社内で議論になり、私も迷う。読者に被害者への想像力を働かせてもらうために名前が必要だとも思う」と話した。

 授業後、曲淵天音さんは「警察への確認までしているとは想像していなかった。1本の記事を作るのに多くの時間と手間をかけていることに驚いた」と話した。芳原楓香さんは「新聞社内でも実名を出すべきでないという意見があったのに実名報道されたことは納得できない。もっと慎重に考えるべきだったと思う」と話した。【脇田顕辞】=28日付毎日新聞朝刊神戸・明石版

 生徒の感想 木村伊吹さん「歌舞伎町という知らない世界の実話を聞くことができた。その取材手法に関心をもった」、谷水勢(はづむ)さん「一つ一つ取材を積み重ねたその先に記事があることを知った。記者の仕事に興味がわいた」