推進協の取り組みの記事一覧

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兵庫県NIE推進協事務局長が講師に

 「阪神・淡路大震災」をテーマにしたオンライン講演会(神奈川県NIE推進協議会主催)が3月20日開かれ、神奈川県内外の教員やNIE関係者ら22人が参加した。兵庫県NIE推進協議会の三好正文事務局長(64)が講師を務めた。

 同協議会3月NIEミーティングの特別企画。三好事務局長は29年前の大震災当日、神戸・三宮にあった神戸新聞本社で宿直勤務をしていた。「爆発時のように窓ガラスが割れた」などと震度7の瞬間を振り返り、社のホストコンピューターがダウンし、京都新聞社に新聞発行を依頼するまでの経緯などを語った。

 元日に発生した能登半島地震についても触れた。「阪神・淡路の教訓を伝えきれなかった」と悔しさをにじませ、「南海トラフ巨大地震では兵庫、神奈川ともに大津波の襲来が予想されている。震災を知らない世代にこそ教訓を語り継いでほしい」と話した。

 参加者から「海岸近くに学校がある。どう対応すればいいか」「災害時、SNS(交流サイト)を使うときの留意点は」などの質問が寄せられた。

[写真説明]「大災害の教訓を語り継ごう」と呼び掛けたオンライン講演

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 東日本大震災から13年を迎えた3月11日、尼崎市南武庫之荘4の南武庫之荘中学校で、東京電力福島第一原発事故について考える授業があり、1年生36人が参加した。同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。授業は、兵庫県NIE推進協議会の吉田尚美コーディネーターが講師を務めた。

 東日本大震災では巨大津波が沿岸地域を襲い、福島第1原発でメルトダウン(炉心溶融)が起きた。吉田コーディネーターは新聞記事をもとに原発事故の経緯や、放射能が人体に及ぼす影響を説明した。

 また、大学時代の友人が当時、原発事故で帰還困難区域となった福島県浪江町に住んでおり、震災から3年半後、友人とともに同町を訪れた経験を語った。生徒たちは放射能汚染のため復興が進まない現状を知り、被害の深刻さについて認識を新たにしたようだった。

 生徒たちは数人ずつの班に分かれ、これからのエネルギー問題を話し合ったり、神戸新聞社が記事や社説をもとに作成している「新聞ワークシート」を解きながら、処理水問題について考えたりした。

◆神戸新聞NIEワークシートはこちら

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2024年3月13日)

[写真説明]吉田コーディネーターが浪江町訪問時に着用した放射能防護服も紹介された=尼崎市立南武庫之荘中学校

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社説読み解き、発想広げる 甲南高・中で講座

 新聞社が記事や社説をもとに学校向けに作成している「ワークシート」。教育現場での新聞活用を進める兵庫県NIE推進協議会の吉田尚美コーディネーターが、県内の学校でワークシートを活用した出前授業を行っている。甲南高校・中学校(芦屋市山手町)では2月20日、吉田コーディネーターによる「新聞から学ぶイノベーション(革新)講座」があり、経済や会社経営に興味のある高校1年生36人が参加した。

 同校は日本新聞協会のNIE実践校で、2023年度から新聞を使った授業を続けている。この日、活用したワークシートは、吉田コーディネーターが週に数回作成し、電子版神戸新聞NEXTのNIEサイトに掲載している教材の一つ。1月12日付神戸新聞朝刊に掲載された社説「日常の先の紛争」を読み、問いに答える。

 社説では、スマホなどの部品のレアメタル(希少金属)が、コンゴで長年続く民族紛争の資金源になっており、消費者は企業が「何を使っているか」を知り「何を買うか」で社会的責任を果たそうと呼びかけた。ワークシートは、文中にある米国の「紛争鉱物」の法規制でどんな効果が生まれたかを短文でまとめるなどして記事を読み解く。

 授業では、生徒たちにこのワークシートに取り組んでもらい、「売る側」「買う側」ともに人権や環境、SDGs(持続可能な開発目標)の視点が欠かせないことを伝えた。

 さらに、「革新的な技術や発想が新たな価値を生み出す」として、登山ブームの中で低山に特化した商戦が地域経済を潤す―など、イノベーションのヒントになりそうな最近の記事を紹介した。

 授業を受けた男子生徒(16)は「紹介された新聞記事を通し、発想を広げることができた」と言う。別の男子生徒(16)は「能登半島地震の被災者にドローンで医薬品を運ぶ発想を知り、知識が増えた」と話した。

 吉田コーディネーターによるワークシート活用授業は3月11日、同じくNIE実践校の尼崎市立南武庫之荘中学校でも予定されている。

◆神戸新聞NIEワークシートはこちら

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(3月4日)

[写真㊤]新聞ワークシートに取り組む生徒たち=芦屋市山手町、甲南高校・中学校

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[写真㊨]神戸新聞の社説をもとに作成したワークシート

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 貧困や気候変動など、地球規模の課題を解決するため国連が採択した17の持続可能な開発目標(SDGs)。兵庫県内の中高生がSDGsについて学ぶ機会が増え、兵庫県NIE推進協議会が各校で出前授業を続けている。授業では、SDGsの実現に取り組む企業などを取材して新聞にまとめるときのポイントや、新聞記事の活用法などを伝えている。

 6月、滝川中学校(神戸市須磨区宝田町2)の1年生132人が、淡路市にある体験型農場「タネノチカラ」のSDGs探究プログラムに参加するのを前に、取材の要点を学んだ。同農場で火おこしや草刈りを体験した後、新聞作りのノウハウも学習。各班で「環境を支える土新聞」「みんなで地球を守る新聞」などの名前を付けて新聞を作り上げた。

 甲南女子中学校(神戸市東灘区森北町5)では、2年生197人が神戸市の「SDGsの探究教育プログラム」の一環として、市内五つの企業を訪問して個人新聞を作った。取材を前にした6月の授業では「何を一番取材したいか」「その企業の理念はどの開発目標と関連しているか」などを考えた。「神戸どうぶつ王国」(同市中央区港島南町7)を訪れた80人は、絶滅危惧種を守る取り組みなどを取材した。

 両校とも同協議会事務局長が講師を務め、「SDGsを身近な、自分ごととしてとらえたい」「世界的な課題について、知る力や伝える力をはぐくむことが大切」と強調した。

 8月には神戸市立六甲アイランド高校(同市東灘区向洋町中4)でも授業を行い、1年生25人が参加した。授業後、生徒たちは新聞記事を使ってSDGsに関する調べ学習に取り組んだ。

 SDGsの期限は2030年。その達成が危ぶまれているが、甲南女子中の辻本智史教諭は「生徒たちが遠く離れた場所とつながっていることを実感し、SDGs学習による気づきを自身の未来を彩る糧にしてほしい」と話している。同校の生徒たちは2学期、奈良や和歌山への研修旅行でもSDGsについて学んでいる。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(10月27日)

[写真㊤] 取材のポイントを学ぶ甲南女子中の生徒たち=神戸市東灘区森北町5231027SDGstaakigawatyuu.jpg

[写真㊨]滝川中の生徒が作った新聞の一例(画像の一部を加工しています)

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「何を一番記事にしたいか」まとめて 取材のポイント、紙面製作を指南

 兵庫県内の中学2年生が地域の事業所などで働く「トライやる・ウィーク」。生徒がそれぞれの職業体験を振り返り、個人新聞にまとめる取り組みが活発になり、兵庫県NIE推進協議会が各地の中学校で、取材のポイントや新聞製作のノウハウを教える出前授業を続けている。

 5月18日、姫路市立家島中学校(同市家島町宮)で出前授業があった。2年生10人が島内外の幼稚園や小学校、ラーメン店、介護施設、ペットショップ、スーパーで働くのを前に、インタビューの仕方や取材時のメモの取り方、よい写真の撮り方などを学んだ。

 トライやる期間(6月5~9日)終了後の6月12日には、生徒たちが体験したことを紹介し合い、「何を一番記事にしたいか」を短文にまとめ、記事の書き方や見出しのつけ方、紙面レイアウトなどについて学んだ。

 両日とも講師を務めた同協議会事務局長は「働く楽しさや苦労したことを自分の言葉で伝えよう」「『トライやる』を自分の夢を見つけるきっかけにしよう」と呼びかけた。6月12日の授業では、生徒から「毎日の授業など、小学校の先生の仕事は大変だと感じた」「ペットショップでウサギの餌やりを体験できてよかった」などの感想が聞かれた。

 同協議会では1学期、明石、加古川市の計3中学校の2年生約670人を対象に同様の授業を行った。取材時の参考にしてもらおうと、講師が担当教諭に「好きなもの」をテーマにインタビューし、その場で記事にしたり、生徒がお互いにインタビューしたりするワークショップをすることも多い。

 「トライやる・ウィーク」は1995年の阪神・淡路大震災、97年の神戸連続児童殺傷事件をきっかけに、兵庫県が心の教育を見直そうと、98年から始めた。家島中の下村早希教諭は「出前授業を通し、読み手に伝わりやすいまとめ方を知ることができた。新聞づくりは、自分の考えを形にするきっかけになったと思う」と話している。

[写真説明]「トライやる・ウィーク」の感想を話し合う生徒たち=6月12日、姫路市立家島中学校

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(7月21日)

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 兵庫県NIE推進協議会が2022年度、県内のNIE実践指定校の全24校で行った記者の出前授業が、過去最多の延べ40回に達した。すでに23年度の出前授業も始まり、同協議会は新聞を身近に感じ、情報の価値を再認識してもらう授業にいっそう力を入れる。

 出前授業には兵庫に取材拠点を置く新聞・通信計8社が記者を派遣する。派遣先のNIE実践指定校には小中高と小中・中高一貫校、特別支援学校が参加。外国籍の生徒が多く、NIEへの参加が珍しい夜間中学も含まれている。

 22年度は授業テーマが多岐にわたった。記者の仕事や新聞の読み方、記事の書き方、新聞製作の実践のほか、新型コロナウイルス禍やウクライナ危機、成人年齢の18歳への引き下げといったニュースを反映し、有事における情報の読み方、主権者教育と選挙報道なども目立った。

 高校では「総合的な探究の時間」の一環として、新聞を使った調べ学習や世論調査の意義、裏付けの大切さを学ぶ授業も行われた。

 この1年、授業を受けた児童・生徒から寄せられた感想は延べ約2200人に上り、同協議会サイトのコーナー「わたしの感想NIE」で紹介している。

 産経新聞記者らが授業を行った神戸市立白川小学校(同市須磨区)の長崎康子校長は「出前授業は、担当教師と記者の方が共につくり上げる授業。ねらいを共有するため、事前打ち合わせが非常に大切」と話している。

(兵庫県NIE推進協議会事務局長 三好正文)(2023年5月19日)

[写真説明]共同通信神戸支局の斉藤奏子記者の話を聞く生徒たち=2022年12月12日、尼崎市立南武庫之荘中学校

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 教育現場での新聞活用を進める兵庫県NIE推進協議会が、県内の小学校で2~3年を対象に、新聞記事に見出しを付ける授業を行っている。日刊紙を読むのはまだ難しい学年だが、すべての漢字にふりがなが付いた「こども新聞写真ニュース」を教材にしたり、事前に家族で見出しを考えてもらったりすると、授業はスムーズに進む。同協議会は「見出しを付ける作業を通し、新聞に親しんでほしい」と参加を呼びかけている。

 3月6日、尼崎市立立花南小学校でのNIE授業には2年生91人が参加した。教材の記事は、神戸新聞「こども新聞写真ニュース」や神戸新聞朝刊から、児童が親しみやすいものや比較的わかりやすいものを選んだ。

 今年1月、西宮神社(西宮市)の行事「福男選び」が3年ぶりに復活した記事では、3年ぶりの開催と、一番福を目指し、境内を駆ける様子が見出しの肝と説明。真冬の姫路セントラルパーク(姫路市)でカピバラが風呂に入っている記事では、カピバラのほっこり感が伝わる言葉を考えるのが大切と伝えた。

 さらに、記事の扱いや内容に合わせ、文字の大きさや色、字体も工夫すると見栄えのする紙面になると強調した。

 授業では一部の記事について、担任の先生に易しく読み聞かせしてもらった。

 これまで同協議会は、小学校低学年向けとして、折々の写真を選んで「季節新聞」を作るなどのNIE授業を行ってきた。見出しを付ける授業も、児童が楽しみながら新聞に触れる機会になってくれればと期待している。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(3月13日)

[写真説明]記事の見出しを考える児童たち=尼崎市立立花南小学校

見出しをつけるポイント  新聞ワークシート 見出しをつけよう  新聞ワークシート 解答例

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 兵庫県NIE推進協議会が県内の小学校で、新聞から「師走」を感じさせる記事を探すワークショップを行っている。児童たちは一般記事だけでなく、広告や発言欄のイラストにも「師走」を見つける。「新聞は歳時記の役目も果たしていることを知ってほしい」。同協議会は、そんな願いを込める。

 12月9日、神戸市立塩屋北小学校(同市垂水区)でのNIE授業に5年生58人が参加。「師走」の記事探しは、この日の神戸新聞朝刊を使った。1面に、神戸で来年の干支(えと)「卯(う)」にちなんだ人形作りが本格化、地域版に警察署による年末パトロール隊の発隊式―。この時期ならではの記事だ。

 県が職員の冬のボーナスの支給額を発表、神戸の企業が来年のカレンダーをプレゼントなど、扱いの小さい記事も年の暮れを伝える。

 児童たちは広告にも目を向ける。冬の味覚・ズワイガニやスタッドレスタイヤの広告は、本格的な冬の入りを知らせる。発言欄のイラストはクリスマスツリー、クロスワードパズルの解答は「トシコシソバ」だった。

 国際面には、米誌タイムが毎年恒例の「今年の人」にウクライナのゼレンスキー大統領を選んだとあった。この日の朝刊の「師走」を感じさせる記事などは15本を数えた。

 これまで同協議会は、新聞の特長である網羅性や一覧性を知ってほしいと、NIE授業で、新聞からコロナ禍やウクライナ侵攻の関連記事を探してもらうワークショップを行ってきた。「師走」の記事探しは、新聞をめくりながら見出しや写真に目を通すだけでも、年の瀬のまちの様子や一年の終わりを感じてもらえそうだ。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(12月26日)

[写真説明]
新聞からは「師走」の記事が数多く見つかる。「真珠湾攻撃81年」(手前の記事)も児童たちに伝えたいニュースだ

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 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、兵庫県NIE推進協議会が県内の小中高校で、「有事(非常事態)におけるメディアリテラシー」をテーマに授業を行っている。同協議会は「新聞を通し、世界情勢をより正しく把握し、戦争終結に向け、わたしたちに何ができるか考えたい」と力を込める。2月末から始めた授業は7回を数えた。

 メディアリテラシーは、メディアの情報を正しく見極め、読み解く力。授業は同協議会事務局長が担当し、神戸新聞朝刊の各面からウクライナ侵攻の関連記事を探してもらうワークショップなどを行っている。侵攻が始まった翌日の2月25日付朝刊の関連記事は34本に上った。

 その上で、新聞の特長である網羅性・一覧性などを説明し、「見出しだけでも一通り目を通せば、人命が奪われ続けているウクライナの状況や、各国の反応、経済への影響など、全体像が見えてくる」とする。

  気になった記事の関連記事を探し、関心を深める▽新聞各紙を読み比べ、記事の扱いや視点の違いを知る―なども勧めている。

 さらに、有事における会員制交流サイト(SNS)の功罪や、ロシアのプーチン大統領が軍事行動に踏み切った歴史的背景などを解説。「力による外交に対抗するには、強靭(きょうじん)な民主主義の国づくりが必要」「今回の出来事を、日本や世界の未来について友達や家族と話し合う大きな契機にしたい」と強調している。

 3月22日には、南あわじ市の広田中学校で授業を行った。生徒からは「今、誰もが平和について考えている。しっかりと正確な情報を得て、平和のためにできることをしたい」「世界情勢から地域ニュースまで、正確な情報を得るため新聞を読みたい」などの感想が寄せられた。

 同校の河野真也教諭(43)は「ウクライナ有事をはじめ社会の動きを自分のこととして考え、情報を整理するには新聞活用が有効」と話している。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(3月27日)

[写真説明]ロシアによるウクライナ侵攻の関連記事を探す生徒たち=南あわじ市広田中筋、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校

授業で使った資料から抜粋

 ※「有事のメディアリテラシー」の授業は尼崎市立立花南小学校、加古川西高校、姫路市立朝日中学校、多可高校、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校、須磨友が丘高校、伊川谷高校、尼崎市立南武庫之荘中学校、大阪市立梅香中学校、兵庫高校、神港学園高校、2022年度NIE兵庫セミナー(教員向け、西宮市立浜脇中学校の生徒も参加)、西宮市立西宮高校(「主権者教育」の一環として)、蒼開高校(同)、クラーク記念国際高校芦屋校(同)、播磨特別支援学校(「新聞の読み方」「主権者教育」の一環として)、葺合高校(「新聞の作り方」の一環として)、神戸市立夢野中学校(「SDGs新聞作り」の一環として)、滝川中学校(同)、加古川市立加古川中学校(「新聞で調べ学習」の一環として)、明石市立中崎小学校(同)、神戸市立西須磨小学校(「新聞について知ろう」の一環として)、伊川谷高校(「新聞の持つ表現力」「18歳成人のあなたへ」をテーマにした授業の一環として)、須磨学園高校(「生徒の全質問に答える」授業の一環として)、神戸市立神出児童館(「新聞と新聞記者の仕事を知ろう」をテーマにした授業の一環として)、神戸市立住吉中学校(「新聞記者って楽しい?」をテーマにした授業の一環として)、丸山中学校西野分校(NIE授業の一環として)、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校(「主権者教育」の一環として)、神戸市立竜が台小学校(新聞の特長や役割を学ぶ授業の一環として)、神戸学院大学(情報リテラシーを学ぶ講義の一環として)、流通科学大学(同)、姫路市立豊富小中学校(「播磨の戦争遺跡と平和の遺産」をテーマにした授業の一環として)、同市立大塩小学校(同)で行いました。兵庫教育大生を対象にした「NIEと新聞社の仕事を学ぶ研修会」でもウクライナ有事を取り上げました。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年4カ月―。現在も多くの学校で「有事のメディアリテラシー」の授業を行っています。

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「升田の里芋」の魅力を伝えようと壁新聞を作る児童たち=加古川市立東神吉小学校

 加古川市立東神吉小学校の3年生33人が、地元で採れる「升田の里芋」のキャラクター「里ねばちゃん」を作った。PRソングやアニメCM、グッズも作り、升田の里芋のおいしさをアピールしている。兵庫県NIE推進協議会が、キャラクターの作り方に始まり、キャラクターを選ぶ「総選挙」、里芋の魅力をPRする壁新聞作りまで関わった。

 里ねばちゃんは、里芋の大きな葉を傘のように広げ、かわいらしい小芋が二つくっついている。粘りがあっておいしいから「ねば~」が口癖だ。「ありがとねば~」「よろしくねば~」という風に使う。

 同校の西垣美由紀教諭から「里芋のゆるキャラ作りを教えてほしい」と推進協議会事務局に電話が入ったのは、昨年9月。里芋は同校の校区を中心に栽培され、作付面積は約1.7㌶に上る。やわらかな食感が人気だ。私も加古川市での記者経験があるので特産品なのは知っていた。

ゆるキャラの里ねばちゃん(東神吉小学校提供)

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 聞けば「子どもたちが地元農家にも取材した。いずれ里芋の魅力を伝える壁新聞も作りたい」という。「取材をもとにして、ゆるキャラを作る」「壁新聞も作る」のであれば、「これもNIE」と引き受けた。

 キャラクターの作り方の授業では、くまモンやひこにゃんなどの人気キャラを例に、「何をアピールするか考える」「目や表情に性格を反映させる」などを伝えた。キャラクターは児童33人全員が一つずつ考えた。「総選挙」は、同校教諭のほか、市教委やJAの職員らも(もちろん私も)投票し、昨年10月、一児童の作品を選んだ。名前や口癖もみんなで考え、「ねば~」が決めゼリフの「里ねばちゃん」が誕生した。

 さらに、児童たちは里ねばちゃんのポスターやのぼりを作り、学校近くにあるJAの直売所に掲示した。店内には、児童らが作詞したPRソングが流れている。

 2月2日、一連の取り組みや里芋の魅力を壁新聞にまとめる授業を行った。「『5W1H』はニュースの基本」「見出しで興味関心を引く」などを伝えた。

 昨年9月から続いてきた、私の授業もひとまずこの日で終わり。私が子どもたちに感じてほしかったのは「古里を大切に思う心」と、「みんなで取り組む喜び」だ。それと「新聞を作る楽しさ」も少し。5カ月間にわたる、楽しいNIEの取り組みとなった。

 児童の作った壁新聞はこちら。

 児童たちが作詞、西垣教諭が作曲したPRソング「♪ハッピー 里いも♪」の音源はこちら。

※「わたしの感想NIE」 に児童のみなさんの感想を掲載しています。感想はこちら。

                                   アニメCMのワンシーン

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2月10日)Screenshot 2022-02-02 11.37.06.png

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 兵庫県NIE推進協議会が県内の中学・高校や大学で、1票の意義について考える「選挙報道と主権者教育」の授業を続けている。「18歳選挙権」が2016年に導入されて6年。成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法の施行も来年4月に迫り、同協議会は「若者の社会参加を促したい」と力を入れる。

 同協議会事務局長が各校を訪れ、新聞の社会的任務である選挙報道について説明する。また、「どの政治課題に関心があるか」を考えるグループ討議や、国の予算額から「1票の価値」を換算するといった実践を通じ、政治を身近に感じてもらう。衆院選を前に今年9月から始め、延べ10回を超えた。

 10月には多可高校(多可町中区東山)で3年生36人に実施。今年7月の兵庫県知事選を取り上げ、世論調査や出口調査をはじめとする選挙報道を説明した。また、新聞社などが主催した立候補予定者の公開討論会の意義についても解説した。

 政治課題についてのグループ討議では「医療従事者を目指しているので、医療の現状に関心がある」「子育てに関心がある。待機児童を減らすため保育士の待遇改善が必要」など、生徒らが活発に意見を交わした。「1票の価値」をお金に換算するのは、滋賀県立大学環境科学部の村上一真准教授が考案した計算式で、生徒たちの興味を引いた。

 投票するかしないかで政策決定が左右されるゲームも行った。同校3年の金沢健斗さんは「選挙に行くのは自分たちのためだと実感した」と話した。

 10代の投票率は国政選挙で低迷していたが、10月の衆院選では回復傾向。会員制交流サイト(SNS)では若者に投票を呼びかける運動も起こった。9月22日に授業を受けた神戸山手女子高校(神戸市中央区)の近藤隆郎教諭は「報道を通して政治や選挙をとらえ直すことは、生徒が視野を広げたり、より深い理解を得たりすることにつながっている」と話している。

                          ◆

 12月16日に行った尼崎市立南武庫之荘中学校の授業では、2年生約210人が事前に記入したワークシート「どの政治の争点に関心があるか」を持参し、グループ討議した。

 生徒たちの選んだ「関心のある政治の争点」はこちら

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2021年12月22日)

[写真説明]関心のある政治課題について、グループ討議する生徒たち=多可高校

 ※主権者教育の授業は神戸山手女子高校、伊川谷高校、多可高校(2回)、クラーク記念国際高校芦屋校(2回)、西宮市立西宮高校(2回)、流通科学大学、尼崎市立南武庫之荘中学校、神港学園高校、姫路女学院高校(2回)、蒼開高校、播磨特別支援学校、南あわじ市・洲本市組合立広田中学校、有馬高校、神戸市立高倉中学校、伊川谷高校(「18歳成人のあなたへ」をテーマにした授業の一環として)で行いました。

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 新聞記事を題材に人権問題を考える授業が11月25日、明石市大久保町西島の江井島中学校であった。米プロバスケットボールNBAなどで活躍する八村塁さんと弟の阿蓮さんが、会員制交流サイト(SNS)で人種差別的な内容のメッセージを送られたと明かした記事を取り上げ、差別を身近な問題として考えた。

 NIE(教育に新聞を)事業の一環。県NIE推進協議会コーディネーターの石原丈知(じょうじ)さん(62)を講師に、3年生約120人が授業を受けた。石原さんは、アフリカ系の人々への蔑称を含むメッセージが送られたとの記事を踏まえ、なぜ差別的なコメントを送る人がいるのか問い掛けた。生徒からは「活躍している人への嫉妬」「正しいことをしていると信じている」などと意見が出た。

 さらに差別的な発言を減らす方法をグループに分かれて議論。「法律で規制する」「差別的な発言をする人に注意する」と解決策を出し合い、大勢の協力が必要か、すぐにできることかで分類して発表した。

 木津ここねさん(14)は「差別問題について深く考えたことはなかった。個々に関心を持って行動することが大事だと思った」と話した。(有冨晴貴)=26日付神戸新聞朝刊明石版

[写真説明]差別を減らす方法について議論する生徒=明石市大久保町西島

 石原コーディネーターから 授業では、明石市教委が導入している学習支援アプリ「ロイロノートスクール」を活用した。発問に対し、意見を書き込んで提出することで、クラス内で意見を共有でき、他者の意見と比較しながら自分の考えを深めることができる。「Ýチャート」「座標軸」というシンキングツール(思考ツール)を活用することで、意見を多角的に考えることができる。

 生徒たちはアプリの扱いに慣れており、すばやく意見を書き込みながら、シンキングツールを使って意見をまとめていった。グループごとの発表も、画面にシンキングツールを投影することで分かりやすく、説得力があると感じた。

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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    愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)では、学習支援アプリ「ロイロノートスクール」を活用した取り組みが進んでいます。このアプリを活用し、新聞記事を題材に人権差別問題を考える授業が11月4日、神戸市垂水区の愛徳学園中・高校であり、中学3年生30人が参加しました。同校の廣畑彰久教諭のサポートの下、兵庫県NIE推進協議会コーディネーターが講師を務めました。

 県NIE推進協が続ける「コーディネーターによる人権授業」の一環で、教材として、米プロバスケットボール、NBAのウィザーズで活躍する八村塁選手と、弟で東海大の八村阿蓮選手に対し、会員制交流サイト(SNS)で人種差別的なメッセージが送られてきた記事(21年5月6日付神戸新聞夕刊)を使用しました。

 授業では「なぜ、SNS上でこのような書き込みが行われるのか」と問い掛け、シンキングツールの「Yチャート」を使って、八村兄弟に対して▽投稿者自身のこと▽SNSに関して―の3つの指標別に意見を整理してもらいました。生徒たちは「うらやましさからしっとした」「日頃の不満やストレスをぶつけている」「匿名を利用して勝手な考えを広めようとした」などの意見を共有しました。

 さらに、「この問題に対し、私たちができること」として、シンキングツールの「座標軸」を使って、すぐにできること▽じっくりやること▽自分でできること▽他の人の助けが必要なこと―に意見を分類してもらいました。「誹謗中傷以上に応援する」「外国の文化について詳しく学ぶ」「周りの人を大切にするのが基本」「国連で人種差別解消キャンペーンを行う」など多様な意見が出され、生徒たちの思考の深まりを感じました。

 授業後、生徒たちは「新聞記事を使うと、学習した内容を新しい視点でとらえ直すことができる」「(今回のように)新聞には悲しくなる記事もある。被害者や弱者のことを考えられようになりたい」と話してくれました。

                    ◆
                              愛徳学園中・高校教諭 廣畑 彰久

 本校は、生徒1人にタブレット端末を1台ずつ付与し、主に学習支援アプリ「ロイロノートスクール」を多くの授業で活用しています。日本新聞協会のNIE実践校に指定された2020年度以来、ICTを活用した授業を多くの先生方に知ってもらおうと、米田俊彦教諭と私が、県NIE推進協主催の公開授業やセミナーで事例紹介してきました。

 この日の授業でも、アプリの扱いに慣れている生徒たちはすばやく意見を書き込みながら、いつものように、シンキングツールを使って意見をまとめていきました。現実に起こっている問題と照らし合わせることで、社会科で学んだ基本的人権を自分たちの身近な問題としてとらえ、より考えを深める時間になったように思います。新聞は、教科書に載っている言葉と現実社会のできごとをつないでくれる、格好の教材だとあらためて感じました。

 また、新聞記事は裏付け取材や校閲がなされており、信頼できる教材です。新聞記事から疑問点や課題を洗い出し、自らの考えを深めていく。このような授業のあり方は、今日の「探究的」な学びそのものであると感じました。教育における新聞というメディアの果たす役割や可能性は、今後いっそう高まるのではないか、と考えています。

 <ロイロノートスクール> 生徒が主体的に学び合う双方向授業を実現するアプリで、実装されているシンキングツール(思考ツール)は児童生徒の思考を可視化できるため、他者の意見と比較しながら、自分の考えをつくり出せます。教師と生徒、生徒同士の情報のやり取りがスムーズに進むメリットもあります。

廣畑彰久(愛徳学園中・高校教諭)、石原丈知(県NIE推進協議会コーディネーター)(11月22日)

[写真説明]シンキングツールを使った授業=愛徳学園中・高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 新聞紙を使って遊んだり学んだりするNIE(教育に新聞を)活動が11月19日、神戸市北区大沢町中大沢の大沢幼稚園であった。4、5歳児6人が参加し、新聞紙で防災スリッパを作ったり、新聞紙を胸に当てて落とさないよう走ったりした。教室に歓声が響いた。

 兵庫県NIE推進協議会の三好正文事務局長が講師を務めた。同協議会のNIE活動の一環で、対象年齢を下げ、幼児に新聞や新聞紙に親しんでもらおうと企画した。

 防災スリッパは災害時に避難所で履きものがないとき、役に立つ防災アイテムだ。作り方は数回折れば出来上がり。園児たちは次々と作り上げ、全員で履き心地を確かめていた。

 この日の朝刊をめくって食べ物の写真を探した。松葉ガニ、ホウレンソウ、野菜ジュースなどが見つかった。神戸市西区で特殊詐欺被害防止キャンペーンを行う、乳酸菌飲料「ヤクルト」の公式キャラクター「ヤクルトマン」も見つけた。

 5歳児は「新聞じゃんけん」に挑戦。じゃんけんに負けるたび、新聞紙を半分に折ってその上に立つ。立てなくなったら負けー。4歳児は2人で新聞紙をねじって輪を作り、的に入れる「手作り輪投げ」も体験した。

 同園の中山貞二園長は「子どもたちが楽しそうなのがとてもよかった」と話していた。

[写真㊤]手作りの防災スリッパを履いて勢ぞろい=いずれも神戸市立大沢幼稚園

[写真㊧]新聞じゃんけん。勝負はこれから―

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[写真㊨]新聞紙の真ん中に開けたのぞき窓、何が通るかな? 

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※参加をご希望される幼稚園は☎078・362・7054までお問い合わせください。

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 紙面の向こうの社会を体感

 教室でその日の朝刊を開き、新型コロナウイルスの関連記事を探す―。そんなワークショップ(WS)を、兵庫県NIE推進協議会が続けている。関連記事は各面に日々掲載され、感染拡大のピーク時には50本を超える日も。県内の小学校から大学まで、2020年7月に始めたWSは延べ30回を超えた。

 WSは「有事のライフライン」としての新聞の役割や、新聞の特長である網羅性・一覧性、正しい情報を得ることの大切さについて知ってもらうのが狙い。同協議会事務局長が担当し、児童生徒らにその日の神戸新聞朝刊を配って、1面から国際、文化、地域、社会面まで各面から関連記事を探してもらう。

 各面の記事にくまなく目を通すことで、兵庫と全国、世界の感染状況をはじめ、政府や自治体は何をしているか、何ができていないか▽医療や保健の現状はどうなっているか▽今困っている人は誰か▽経済や文化、スポーツ、地域にはどんな影響が出ているか―などさまざまなニュースを知ることができる。緊急事態宣言の度重なる延長や全面解除といった大きなニュースだけでなく、地域版のイベント延期のお知らせにも、市民の苦労が透けて見える。

 児童生徒には「コロナの記事がこんなにたくさん、隅々まで載っているのか」と驚きをもって受け止められることが多い。また「新聞の全ページをめくる体験は初めて」という子どもが多い。

 今年3月、関西学院大生を対象にしたオンライン講義では、帰省中の学生には地元で発行されている毎日新聞や中国新聞、福井新聞を活用してもらい、それぞれの地域のコロナの状況を知ってもらった。

 9月21日のWSに参加した兵庫県立伊川谷高校(神戸市西区)2年の小林葵さん(17)は「多くの分野にさまざまな形でコロナ禍が影響しているのを実感した」と話した。愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)の米田俊彦教諭は「記事の数を数えるのは、一見新聞を読むことから離れていくようで、紙面の向こうの社会を体感できる貴重な機会になっている」としている。

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2021年10月18日)

[写真説明]新型コロナ関連の記事を探す高校生=兵庫県立伊川谷高校

 ある日の朝刊から 10月22日、県立播磨特別支援学校でのWSで使用したスライドの一部(10月21日付神戸新聞朝刊1~4面、社会面ほか)がこちら

   <実施した学校>洲本市立鮎原小学校、養父市立建屋小学校、県立伊川谷高校(2回)、姫路市立豊富小中学校、関西看護医療大学、県立須磨東高校、神戸大学付属小学校,、洲本市立洲浜中学校、姫路市立砥堀小学校、福崎町立田原小学校、尼崎市立南武庫之荘中学校、愛徳学園小学校、神戸市立葺合高校、伊丹市立笹原小学校、県立須磨友が丘高校(2回)、神戸市立小束山小学校、同市立福住小学校、関西学院大学新聞総部、西宮市立西宮高校、三木市立自由が丘中学校、神戸市立淡河中学校、同市立箕谷小学校、姫路市立広畑中学校、県立播磨特別支援学校、三田市立富士中学校、明石市立高丘中学校、尼崎市立長洲小学校、神戸市立千鳥が丘小学校、流通科学大学、神戸市立葺合中学校、同市立美野丘小学校、丹波市立西小学校、神戸市立有馬小学校、姫路市立朝日中学校、神戸市立白川小学校(自宅学習として)、県立伊川谷高校(同)、愛徳学園小学校(同)、神戸市立平野小学校(同)

 教員向けとして、神戸市立淡河小学校・同市立淡河好徳幼稚園、愛徳学園小学校、養父市立宿南小学校、兵庫教育大学免許状更新講習でも同様の研修を行いました。   

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  兵庫県NIE推進協議会が、幼児向けNIE活動に取り組んでいる。新聞は読むだけじゃない。新聞紙を使った工作も新聞活用術。5歳児なら、防災スリッパだって作れる。新聞から食べ物などの写真を探すのは、もう立派なNIEだ。

 同協議会事務局長が幼稚園などで講師を務めている。9月28日、神戸市北区淡河町萩原の淡河好徳幼稚園で行ったときは、3~5歳児28人が参加した。

 防災スリッパを5歳児10人が作った。作り方は意外と易しく、数回折ればできあがる。園児は自分用を作った後、家族のスリッパも作っていた。新聞紙も防災アイテムの一つということを感じてほしい。

 「何が通るかな」(3~5歳児向け)は、新聞紙の真ん中に開けたのぞき穴から見え隠れするイラストや写真が何かを当てる。園児からは「しょくぱんまん」「パンダ」「(同幼稚園の)M先生とK先生」と歓声が飛んだ。

 「新聞紙VSかけっこ」(3~5歳児向け)は、新聞紙を胸に当て、「よーいドン」で手を上げて新聞紙を落とさないようにゴールを目指して走る。単純だが、盛り上がる。講師も走ったが、すぐ息が上がった。

  「新聞じゃんけん」(5歳児向け)は、広げた新聞紙の上に立ち、じゃんけんに負けたら新聞紙を半分に折って、その上に立つ。じゃんけんを続けて、立てなくなったら負け。講師も参加したが、足が大きい分、すぐに負けてしまった。

   新聞をめくる活動も取り入れている。5歳児が、この日の朝刊から食べ物の写真を探し、おせち料理やアイスクリームの写真を見つけた。少し怒っているような顔をした人の写真も探し、2021年の大相撲名古屋場所千秋楽で優勝を決め、雄たけびを上げる横綱白鵬の写真を見つけた。

 同協議会では本年度、小学校低学年向けのNIE活動に取り組んでいる。児童は新聞記事をまだ読みこなせなくても、写真を中心として紙面に親しむことは十分できる。さらに対象年齢を下げ、幼児にNIEを楽しんでもらうのが、今回の趣旨だ。ネット検索すれば、幼児向け「新聞遊び」の事例はいくつも見つかる。参考にしながら活動の幅を広げていきたい。

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2021年10月1日)

[写真㊤]防災スリッパを作る園児ら=いずれも神戸市立淡河好徳幼稚園 

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[写真㊧]「新聞紙VSかけっこ」で走る事務局長

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    新聞に親しむ〝鍵〟は楽しさ

 幼稚園児や小学校低学年の児童教育にも、新聞を活用してもらうには―。兵庫県NIE推進協議会が、幅広いニーズに応えようと、学年別の教員向けNIE研修会をスタートさせた。初回は6月30日、神戸市北区の市立淡河小学校であり、近くの幼稚園教諭を含む12人が参加。子どもたちが楽しみながら新聞に親しめるコツを伝授した。

 同校は2021年度の日本新聞協会NIE実践指定校。学校全体でNIEに取り組む中で、「低学年はどう新聞を活用すればいいのか」などの声が上がったのを受け、同協議会が学年別の研修会を企画した。

 講師は同協議会の三好正文事務局長が務めた。研修会では「新聞活用で情報を読み解く力を磨く、という大目標は大切にしてほしい」と語る一方、「楽しくなければNIEじゃない」として、多様な取り組みを紹介した。

 幼稚園・小学1年向けには、新聞からクイズの答え(文字)を探す▽新聞から動物や食べ物を探すーなどを提案した。「新聞に出てくる動物などが何を話しているか考える」という例題には、参加した教員が、神戸市立王子動物園で飼育中のパンダ「タンタン」がササを食べる写真を選んで「淡河産はおいしいな」と答え、場を和ませた。

 小学校低学年向けには、新聞から「夏」を見つけよう▽4コマ漫画を切り離して「起承転結」を考える―などのワークショップに取り組んでもらった。

 「新聞に載っている大きな数を探そう」というワークショップでは、参加教員がその日の朝刊をじっくり調べた。その結果、最も大きな数は「30億」。世界で行われた新型コロナワクチン接種の累計回数だった。

 高学年向けには、記事に見出しをつける▽3~4人の班ごとに各自がイチオシ記事を選び、話し合って壁新聞を作る企画「まわしよみ新聞」▽「食品ロス」「平和」など、自分たちでテーマを決めて取材し、新聞を作る―などを提案。子どもの年齢が上がればできることも増えるため、より幅広いアイデアを示した。

 例えば「新型コロナ関連の記事を、当日の朝刊から探す」取り組み。新聞の全ページをめくって目を通す作業を通じて、新聞の特長のひとつ「網羅性」を体感できる。また、「いろんな新聞を読み比べる」ことをすれば、記事の扱いや、見出し・写真・記事内容の違いから、それぞれの新聞社が伝えたいことの違いが分かる。

 小学4年を担任する竹下歩教諭は「数字や文字を探す活動は、新聞を親しみやすくする上で有効な学習だと感じた。トップ記事を選んだ理由を話し合う活動は、他者の多様な考え方やものの見方を聞くことができるので、今後の指導に生かしたい」と振り返った。淡河好徳幼稚園で5歳児を担任する小西みゆき常勤講師は「研修で幼稚園児に合った新聞の活用方法について、教わることができてよかった」と話した。

 同協議会は今後も各校で研修会を重ねながら、学年別のNIE授業を順次行う予定だ。

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 研修会で紹介したワークショップのうち、「4コマ漫画を切り離して『起承転結』を考える」と「新聞に載っている大きな数を探そう」はともに、明石市立大久保小学校の若生佳久主幹教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)の授業例。日本新聞協会が2020年発行した、教員向けガイドブック「 新聞で授業が変わる」(小学校編)に収録されている。

 参加した教員の感想はこちら。

[写真説明]新聞の活用法を学年別に考えた研修会=神戸市北区淡河町萩原、淡河小学校

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 新聞記事を題材に人種差別問題を考える授業が7月2日、加古川市志方町宮山の志方中学校であり、2年生58人が参加した。講師は同校元校長で、兵庫県NIE推進協議会の石原丈知コーディネーター。「人種差別解消のため、わたしたちができることは何か」―。生徒たちは身近な問題として考えた。

 同推進協議会コーディネーターによるNIEワークショップ。2020年度、コロナ禍の影響で見送られ、2年ぶりに再開した。同校では道徳の授業で取り組んだ。同校は本年度、日本新聞協会のNIE(教育に新聞を)実践指定校に内定している。

 石原コーディネーターは、米プロバスケットボール、NBAのウィザーズで活躍する八村塁選手と、弟で東海大の八村阿蓮選手に対し、会員制交流サイト(SNS)で人種差別的なメッセージが送られてきた記事(21年5月6日付神戸新聞夕刊)を取り上げた。

 まず、生徒たちに「なぜ、こんな投稿をする人がいるのか」と質問。生徒は意見を書いた付箋を黒板に貼っていき、黒板上で「八村兄弟に対して」「投稿者自身のこと」「SNSに関して」の3つに分けて意見を整理した。八村兄弟に対して=うらやましいから、しっとしている▽投稿者自身のこと=相手が嫌がるのを楽しむ▽SNSに関して=無記名だから軽い気持ちでするーなどの意見が出た。

 続いて、「わたしたちができること」を考えた。「すぐにやること」として、応援コメントを送る▽差別的なコメントはすぐ通報して消去してもらう▽アカウントを凍結する▽自分はしないーなど、「じっくりやること」として、人権についてしっかり学ぶ▽投稿者に考えを改めてもらうよう説得する▽差別についてみんなで考える―などの意見があった。

 生徒たちは「差別は絶対なくさないといけない。差別全体に対し反対の声を上げていきたい」「SNSで差別的な発言を見つけたら通報するなど、できることからしていきたい」と話した。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(7月2日)

[写真説明]意見を書いた付箋を黒板に貼る生徒たち=志方中

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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    兵庫県NIE推進協議会の秋田久子会長が2月7日、神戸市垂水区福田1の神戸聴覚特別支援学校で「言葉を増やし、言葉で伝えるために~NIE活用のすすめ~」と題して講演した。

 近畿聾教育研究会中学部研究会の特別講演で、近畿各地の聴覚特別支援学校の教諭ら約30人が参加した。秋田会長は「言葉の意味を理解し共有することでコミュニケーションの輪が広がり、安全に生きやすくなる」と話し、知識を持っていると意味が分かる例として、時事ニュースを反映した、新聞の川柳コーナーを取り上げた。

 同校は2018年度から日本新聞協会のNIE実践校に指定されている。秋田会長は聴覚障害児が自立に向けて必要な3点として、助詞の習得▽抽象的な語彙の習得▽時事的な語彙の収集―を挙げ、新聞活用が効果的とした。

 新聞のインタビュー記事を例に「一部の見出しだけでは誤解が生じる。クリック1回で知ったつもりになるのがネット情報の怖いところ」と述べた。さらに、結論を先に伝える▽分かりやすい接続詞を使う▽一文を短くする―などに留意し、伝える技術を磨こうと呼びかけた。

   参加者からはNIE実践指定校の申し込み方法について質問があったほか、「聴覚障害児の主体性を大切にするという提案がとても新鮮だった」などの意見があった。

[写真説明]聴覚障害児の自立に向け、NIE活用を呼びかけた講演=神戸聴覚特別支援学校

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 兵庫県NIE推進協議会の秋田久子会長が10月29日、神戸市灘区篠原伯母野山町1の神戸松蔭女子学院大学文学部でNIEの講義を行った。日本語日本文化学科の6人が参加し、将来、教壇に立ったときのNIE展開例を学んだ。

 学生たちは2班に分かれて二つのワークショップに取り組んだ。「投書にお返事」は、実際に新聞投書欄に採用された「大人の行動 若者は見ている」など6点から1点を選び、投稿者に書いた返事を読み上げた。秋田会長は「返事を書いて、感想を共有することが人権意識の啓発にもなる」と強調した。
 「出生前診断...支えるために必要なことは?」では、学生たちは新出生前診断に関する記事を読み、模造紙に妊婦はじめ、夫、親類、勤め先など、考えられる関係者を記した。続いて、関係者の感情を付せんに書いて貼り、よりよい社会生活の在り方について話し合った。学生からは「個人的な問題に軽々に意見を挟まず、見守る節度をみんなが持つことが必要」などの意見が出た。
 大村美喜さん(3年)は「どんな意見でも児童生徒を元気づけることが大切だと思った」、井上柚(ゆう)さん(4年)は「各段階の取り組み時間を短めに設定すると教室が活発になる」と話した。

[写真説明]新出生前診断について考えたワークショップ=神戸松蔭女子学院大学

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、養父市建屋の建屋小学校で10月31日、ゲームを通じて英語を学ぶ授業「イングリッシュマラソン」が行われた。全校児童44人が縦割りの5班に分かれ、各教室を巡りながら、教員らが出題する課題に取り組んだ。

 英語教育改革が進む小学校で児童と教員に英語に親しんでもらう試み。県NIE推進協議会の提案で、NIE実践指定校の同校が昨年度から取り入れている。
 この日は八つのゲームが用意され、英字新聞を活用したものが目立った。同じ新聞記事を見つける神経衰弱や、数ピースに切った記事を元の形に並べ直してふさわしいタイトルを考えるジグソーパズルなど。6年才木啓輔君は、外国語指導助手(ALT)キャティ・ムーワさん(24)が出す三つのヒントから、どの記事に関することか当てるクイズが楽しかったという。
 6年田村千奈さんは「キャティ先生の発音を聞いて、アルファベットを1文字ずつ並べて単語にするゲームが楽しかった」と話した。=11月2日付神戸新聞朝刊但馬版

[写真説明]1週間の英字新聞を月―日曜の順に並べるゲーム=養父市建屋(撮影・山畑由美)

 坂本和宏教諭(53)の話 「レベルの高いゲームもあったが、児童たちは十分こなしていた。英語力が身に付いてきたと思う」

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 「自分の思いを文章で表現する」をテーマにした講演が9月17日、神戸市垂水区福田1の神戸聴覚特別支援学校であり、教職員70人が、兵庫県NIE推進協議会の三好正文事務局長の話を聞いた。

 同校は2018年度から日本新聞協会のNIE(教育に新聞を)実践校に指定されている。講演は、教職員の文章力アップを図り、NIEへの理解をいっそう深めようと企画した。

 三好事務局長は、採用された新聞投書の良い点を考えたり、エッセーに見出しを付けたり、悪文を直したりする作業を通し、教職員に文章の書き方を指導。「常にテーマを意識しながら書こう」と呼び掛けた。

 続いて、NIEの展開例として、希望者30人を対象にワークショップを行った。4人一組の班に分かれ、各自が気になった記事を選んで紹介。A3判の用紙に貼り付け、余白にその記事を選んだ理由、ほかの人の用紙には記事に対し、共感したり、疑問に思ったりしたことを書き込んだ。

 衣笠晴彦教頭は「書くことで論理的な力が養われることを強く感じた。インタビューするときに大切なのは『相手に尊敬の念を抱くこと』という言葉が心に残った」、齋藤治教諭は「NIE活動の参考になる事例が多かった。自分の文章を客観的にとらえることが大切だと感じた」と話した。

[写真説明]自分が選んだ記事を紹介する教員=神戸聴覚特別支援学校

 新聞を題材に人権問題を考えるワークショップが8月29日、高砂市阿弥陀町阿弥陀の鹿島中学校で開かれた。NIE(教育に新聞を)事業の一環。生徒たちは、いじめや差別を身近な問題として考えた。

 講師は県NIE推進協議会コーディネーターで、同校元校長の田中茂典さん(62)。1年生各クラスの道徳の授業で取り組んだ。
 田中さんは、性別を巡る不適切な取材をしたとして批判されたテレビ番組の記事を取り上げた。
 お笑い芸人が飲食店の客を直撃し、体を触り、被保険者証を見て男性か女性かを確認する様子を笑いを交えて放映すると、「人権侵害だ」と批判された。田中さんは生徒たちに人権を脅かすとはどういうことかを問い掛けた。
 生徒は3、4人のグループに分かれ、無視やいじめ、暴力など自分がされたくない具体的な事柄を考えて、縦80センチ、横50センチの模造紙に書き込んで発表した。
 小原大翔(こはら・ひろと)君(12)は「みんなが嫌なことを、共有できて良かった。いじめや差別をなくすため、自分も行動する必要があると、あらためて感じた」と話した。(本田純一)=30日付神戸新聞朝刊東播版

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田中茂典さんに促され、模造紙に人権を脅かす事例を書き込む生徒たち=鹿島中学校

 生徒の感想 田中柚葵(ゆずき)君「たとえ本人が構わなくても周りの人が不快に思うことをするのは良くない」、山元ひなたさん「いじめは絶対だめ。みんなが楽しく過ごせる教室にしたい」

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 養父市建屋の建屋小学校で7月24日、ゲームを通じて英語を学ぶ授業「イングリッシュマラソン」のノウハウを学ぶワークショップがあった。小学校の教諭や保護者約25人がゲームを企画し、実際に体験した。

 「イングリッシュ―」は、教育に新聞を活用する「NIE」の一環。英字新聞などを利用して新聞や英語への理解を深めてもらう。同校では昨年11月、県NIE推進協議会の提案で1回目の特別授業を実施。今年10月末にも第2回を開く。
 ワークショップでは、切り抜き記事のペアを見つける神経衰弱や、記事中の英単語を使ったしりとりなどの企画が持ち寄られた。参加者は5、6人で組をつくり、体を動かす▽絵や写真を使う▽異なる学年のグループで取り組む―などの要素を追加するなどしてゲームの改良に挑んだ=写真 。

 養父市の八鹿小学校教諭林昇吾さん(39)は「音やリズムを取り入れた学習法が新鮮」と話し、同協議会の秋田久子会長は「手探り状態だった昨年と比べ、子どもの意欲をかき立てるための議論があり、先生たちの気合を感じた」と話した。(末吉佳希)=25日付神戸新聞朝刊但馬版

  参加者の感想 猪名川町立つつじが丘小学校・桑村恭子教諭「英字新聞を用いてこれほどたくさんのゲームができることに驚いた。2学期に子どもたちと一緒にいくつかを楽しみたい」