推進協の取り組み

修学旅行を前に「沖縄戦」学ぶ 兵庫県NIE推進協が出前授業

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 兵庫県NIE推進協議会が修学旅行で沖縄へ行く中高生に、新聞記事を使って「沖縄戦」の実相や平和の大切さを伝える出前授業を続けている。神戸市須磨区出身で、映画化もされた当時の島田叡(あきら)沖縄県知事が住民保護に尽くしたことや、兵庫と沖縄の関わりについても解説している。

 太平洋戦末期、沖縄は凄惨(せいさん)な地上戦が繰り広げられ、犠牲者は20万人を超え、その半分は民間人だった。出前授業は、沖縄戦を長く取材している神戸新聞報道部の津谷治英記者と、兵庫県NIE推進協議会の三好正文事務局長が講師を務める。

 出前授業は2年前から行っている。1月31日、神戸市立有野中学校(神戸市北区)での出前授業には今年5月、沖縄に修学旅行に行く2年生191人が参加した。生徒たちは沖縄戦をテーマにした映画「島守の塔」(2022年公開、神戸新聞社など製作)を事前に鑑賞し、授業に臨んだ。映画は島田知事らを主役に、戦争の悲惨さや命の尊さを描いている。

 授業で津谷記者は、島田知事は住民の疎開や食糧確保に奔走し、住民を守ろうとしたと紹介した。1945(昭和20)年4月1日、米軍が上陸、戦局は悪化の一途をたどり、犠牲者の増加を懸念した島田知事は軍と対立したが、戦闘を止められず、6月26日を最後に消息を絶った。津谷記者は「兵庫の先輩の行動から、命の大切さを学んでほしい」と訴えた。

 三好事務局長は神戸、姫路空襲など太平洋戦争時の兵庫の被害から、戦後の世界の対立構造まで解説。明治中期の沖縄-本土航路の開設以来、神戸港は沖縄県民を受け入れ、今も多くの沖縄県人が兵庫で活躍していることにも触れた。三好事務局長は「戦争は絶対悪。中高生が戦争の記憶を語り継ぎ、平和な世界の実現に向けて『発信する側』になってほしい」と話した。

 戦後80年を迎え、出前授業は続く。同協議会では広島などに修学旅行や平和学習に行く生徒たちにも記者による授業を行っている。

津谷 治英(神戸新聞報道部記者)、三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2月25日)

[写真説明]沖縄戦の話に聞き入る生徒たち=神戸市立有野中学校

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