新聞3紙読み比べ 読解力、批評力向上へ 西宮・深津中
生徒の読解力や批評力を高めようと、西宮市立深津中学校が新聞3紙を読み比べる取り組みを続けている。各学年の廊下に神戸、朝日、読売新聞を並べ、生徒は自由に読むことができる。国語や社会の授業でも活用。生徒へのアンケートでは回答した285人のうち86%が「新聞を読むことは、さまざまな学習の役に立つ」とした。
「トランプ初来日」「天皇退位」「神奈川・死体遺棄事件」「神戸マラソン」...。1年生の社会科の授業。生徒たちは気になった記事を切り抜いて貼ったプリントを持ち寄り、回し読みをして、それぞれ意見や感想を書き込んだ。どの新聞の記事かも記しており、担当する岩永将伸教諭は「情報の発信基をしっかりと認識してもらう狙いがある」と説明。山田ももかさん(13)は「自分が選んだ記事以外を知ることで、いろんな学びがあった」とする。
取り組みは昨年5月末に始めた。きっかけは、入試対策のグループ討議だった。指導した星川雅俊校長は「生徒に社会問題への基礎知識がなく、話が5分と持たない。いかに時事問題などに触れていないか痛感した」と振り返る。
学校の調査では全生徒のうち約65%がスマートフォンを所持。一方、45%の家庭では新聞を購読していない。星川校長は「ネットから得る知識は自分の好きなものに偏る傾向があり、生徒たちが多様な情報に出会う機会は乏しいのでは」と分析。3紙の読み比べにしたのは「新聞によって1面や社説、記事に特徴がある。単に知識を得るだけでなく、同じ出来事でも捉え方が違うことを知ってほしい」という思いからだ。
国語の授業は記事の内容をまとめ、自分の意見を述べる1分半のスピーチを行った。総合的な学習では人権に関わる記事を選んで作文を書いた。
1年の弘田光次郎さん(13)は「日本や世界で起きていることを知ることができた。同じニュースについて、友達から異なる意見を聞くのも面白い」。星川校長は「今の時代だからこそ、情報の見方を身に付けてほしい」と話していた。(土井秀人)