2013年1月10日

 街中を歩けば、未曽有の災害があったとは思えないほどに整備が進みました。一方で、あの日のできごとが「過去」になりつつあることも事実です。本紙の震災報道の中で、映像写真部では歳月の流れをどのように表現するか検討を続けています。

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 カメラマンの一人は、神戸の元町商店街で、震災当時のメッセージの書かれたレンガの歩道の傷み具合に目を奪われました。また、神戸港の被災を伝えるモニュメントでは、たばこの吸い殻が捨てられている状況に心を痛めます。時間の経過とともに、当時の情熱や考えは色あせていくものなのかもしれません。被災地各地ではどのようになっているだろうとの思いから、10日付朝刊「現代写界」の写真と記事が生まれました。
 
 兵庫県を中心に国内外で約290カ所の震災モニュメントがあります。取材では「あの日を忘れない」という気持ちをたどるように各地を訪ねました。老朽化が進むものや移動を強いられたものもあり、「後世に伝えるという役割が果たせているのか」という声も聞いたそうです。現場を歩いたカメラマンたちは、人々の記憶の「風化」と向き合う難しさに直面しましたが、日々の暮らしに溶け込む風景にも出会い「伝える」という多様性を実感したようです。
 
(藤家 武)

■ 写真集「老いゆくモニュメント」 → http://www.kobe-np.co.jp/rentoku/photo_gallery/01/201301/0005659013.shtml

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