「習近平中国をどう見るか」
元中国特命全権大使
垂 秀夫 氏
神戸新聞情報文化懇話会の6月例会が25日、神戸ポートピアホテル(中央区港島中町6)であり、元中国特命全権大使の垂(たるみ)秀夫さんが「習近平中国をどう見るか」と題して講演しました。
1961年、大阪府生まれ。京都大卒業後、外務省入省。大臣官房長、同大使などを歴任し、2023年に退官。24年に立命館大教授などに就任しました。
講演では、最高指導者の故鄧小平氏、故江沢民元国家主席、胡錦濤前国家主席と続く流れと、習近平国家主席の違いを解説しました。
鄧氏が高い経済成長を目指し、胡氏以降は保てなくなり、習氏は「強い中国」などを掲げたことを紹介。垂さんは戦略変更の背景を「習氏はアヘン戦争以降、中国が虐げられた原因を弱さにあるとし、力への信奉が強い」。その上で「中国経済の低迷などから現体制を不安視する声もあるが、鄧氏の時代の常識で考えてはいけない」と強調しました。
外交面で中国は、経済成長に重点を置いた時代は融和的な国際環境を求めたが、国家の安全を優先してからは攻撃的な姿勢に変わったという。米主導の国際秩序を否定し、せめぎ合いをしつつも、米に国力が及んでいないとの認識もあり、米中関係は「闘争と安定を繰り返している」としました。
日中関係では「中国からはアメリカの影に隠れる日本が見えない。むしろ米中関係をうまく処理すれば、日本も同調するとの認識から見てもいない」と、関係構築が厳しい状況にあると指摘しました。
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