日中関係とアジア情勢
~問われる日本外交
共同通信社アジア室長
中川潔氏
神戸新聞情報文化懇話会の12月例会が14日、中央区波止場町のホテルオークラ神戸で開かれ、共同通信社アジア室長の中川潔さんが「日中関係とアジア情勢―問われる日本外交」と題して講演した。
中川さんは1957年生まれ。京都大学卒業後、83年に共同通信社入社。2001年中国総局長、07年外信部長を経て、09年から現職。共著に「日中の壁」などがある。
中川さんは、日本政府による尖閣諸島の国有化をめぐり、日中関係が悪化している現状を「国内で領土ナショナリズムのような感情が強まっている」と表現。ただ中国では大半の市民は反日的な感情を抱いているわけではないといい、「それを伝え切れていないことはメディアの人間として反省点だ」と話した。
尖閣問題について大切なのは「中国側が何を考えているのかを分析すること」として、中国共産党の第18回党大会(11月)をにらんだ政治闘争、貧富の拡大で高まる低所得者らの不満感など、背景にある中国の複雑な内情を解説。
1972年に日中の国交が正常化された際に尖閣問題が「棚上げ」され、以来、これを前提として付き合ってきた歴史を再評価し、「戦争の危険を冒してまで、今あえて領有権を主張するのはいかがなものか」と疑問を投げ掛けた。
(2012年12月15日 神戸新聞掲載)
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