「北極と南極の氷から見た地球温暖化」
国立極地研究所特任教授
東 久美子 氏
神戸新聞情報文化懇話会の10月例会が27日、中央区波止場町のホテルオークラ神戸でありました。国立極地研究所特任教授の東久美子さんが、「北極と南極の氷から見た地球温暖化」と題して温暖化など気候変動の現状を解説しました。
東さんによると、北極域は地球全体の平均と比べて4倍以上の速度で温暖化。さらに、1990年代までは一部を除いて温暖化していなかった南極でも進行しているといいます。
海氷の面積は、79年以降の人工衛星のデータによって、北極で確実に減少していることが判明。「太陽の光を反射していた海氷がなくなると、光を吸収しやすくなり、温暖化がより進む」と指摘しました。
こういった気候変動を正確に把握するには長期間のデータが必要といい、氷床から掘り出した「アイスコア」から過去の積雪や大気の状態を解析する研究を紹介。東さんも加わった日本の調査チームが、南極の深さ3035メートルの岩盤付近まで掘削し、72万年前の氷を取り出したこともあるといいます。
調査は、国際情勢に影響を受けやすいとされる。近年はロシアによるウクライナ侵攻といった不安定さもあり、「どの国とも平和に研究観測やデータの共有ができることを望んでいる」と話しました。
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