実践発表や講演 パネル討論
新聞を学校の授業で活用するNIE(教育に新聞を)活動について考える「第30回NIE全国大会神戸大会」(日本新聞協会主催)が31日と8月1日、神戸市で開かれる。「時代を読み解き、いのちを守るNIE」をスローガンに、県内外の教育関係者ら約1500人が参加し、実践発表などが行われる。
初日は、中央区の神戸ポートピアホテルで開会式に続き、芥川賞作家の小川洋子さんが「言葉は人をつなぐ」と題して記念講演。「情報で、いのちを守る」をテーマに、ジャーナリストの池上彰さんの司会で、教育、報道関係者らによるパネル討論がある。会場では、阪神大震災から30年を振り返るパネルの展示や、新聞を利用したアート作品の紹介も行われる。
2日目は、東灘区の甲南大で、県内の小中高教諭らによる実践発表や公開授業が行われる。大学生や社会人のためのNIEについて、意見を交換する特別分科会も開かれる。
情報見極める力を
県NIE推進協議会会長の竹内弘明・神戸親和大教育学部教授(70)に大会の意義などを聞いた。
――スローガンの意味は
2025年は阪神大震災から30年、終戦から80年の節目の年だ。スローガンには新聞を通して命を大切にする取り組みを進めるという思いが込められている。
命を守るというのは災害や戦争そのものから命を守るというだけではない。昨年の県知事選や災害時のように、SNSで誹謗(ひぼう)中傷やフェイクニュースが飛び交うこともある。それがきっかけで命を落とす人もいる。これからの時代はあふれる情報を見極める力が必要で、子どもたちにはその力の一つを新聞を通して養ってほしい。
――新聞の良さとは
新聞は情報が伝わるスピードがインターネットに比べて遅いが、新聞の歴史は古く、その情報への信頼度は下がっていない。
新聞記事は情報を編集するデスク、間違いがないかを確認する校閲など様々な人の目を通し、誰が読んでも公正なように報道倫理に基づいて掲載される。
阪神大震災の発生当時の新聞が記録や資料になっていることからもわかるが、新聞は紙として残るためそもそも間違いが許されない。
ネットだけでは、関心のあるものしか見ない、知らないようになってしまう。新聞はあらゆる情報が載っているので知らない価値観に触れるのに最適で、知らない世界の窓になっている。
――今大会の特徴は
兵庫の取り組みは全国でも先進的だ。NIEに取り組んでいる学校も多く、被災地として防災分野での強みもある。当日は防災、戦争、SNSなど幅広いテーマの発表が行われるので、ぜひ注目してほしい。(聞き手・辻井花歩)
[写真説明]NIEの意義について話す竹内会長(神戸市北区で)=八木良樹撮影
※記事は30日付読売新聞朝刊兵庫県版から転載