セミナー・発表会・公開授業

【寄稿】飾磨中部中学校の公開授業を終えて ①

※10月2日の姫路市立飾磨中部中学校の公開授業を担当した佐伯奈津子教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

                          「NIE俳句 ~記事の写真から豊かにイメージしよう~」
                                                                                                    授業者:佐伯奈津子
◎ねらい
 新聞になじみがない生徒が増える一方で、新聞をめくると目を奪われるような美しい写真とたびたび出合うことがある。「この写真をたくさんの人に見てもらいたい」という思いがこみ上げるとともに、「この写真を使って何か授業ができないだろうか」と考え、毎月切り貯めた写真記事を活用して「俳句作り」をする授業を計画した。美しい写真から豊かにイメージを膨らませ、新聞記事を通して語彙が豊かになってもらいたいというのがねらいである。

◎実践内容
 新聞の写真パネルを提示しながら、作品作りに必要な「季節」、「季語」、「どんな様子か」などを紹介し、俳句作りのヒントを与えた。そして1学期で学習した俳句の復習(「季語」「音の数え方」「切れ字」)をしたのち、記事を参考に俳句作りをするという学習活動をした。俳句作りに苦戦する生徒には、マス目にひらがなを入れると俳句ができる補助プリントを渡し、いろいろな言葉をあてはめていくように助言をした。
 最後に次の時間に句会をすることをクラス全体に伝え、自分の作った作品の中で、良いものを選ぶように伝えた。

◎さらなる発展へ
 今回で俳句を創作するのは2回目であった。俳句を作ることには慣れてきたけれども、句会をする際、友達の俳句を選んでしまったり、面白おかしい句を選んでしまったりして、よい句を選ぶ力はまだまだであると感じた。今後、創作された俳句を取り上げてその作品の良いところ、直すべきところを教師が指摘したり、生徒間で話し合いの時間をもったりしてよい句を選ぶ力を育てていけたらと思う。
 また、切れ字の使い方に苦戦する生徒の姿も見られた。俳人の作品で切れ字が使われているものを提示し、切れ字の使い方や位置、上五、中七、下五のどこで使われているのかを確認すると更なる作品創作のレベルが向上するかと思われる。

◎全体の感想
 新聞の写真を使っての俳句作りをしてみて56%の生徒が「新聞の写真があっていつもより俳句作りが簡単になった」と答えた。言葉だけではなく、映像から「色」や「形」を俳句の中に折り込み豊かに作品作りができたのではないかと思う。
 俳句作りで大切にしていることは「作って楽しかったという体験」や「表現の違いの面白さ」を生徒自身が実感してもらうことである。今回幸いにも授業の感想で「俳句作りが楽しかった、またしたい」という感想が多数見られた。教科書に載っている出来上がった作品ではなく、同級生の作った作品が新鮮に思えたからだろう。俳句に触れる機会が授業の中の1回だけではなく、今後の人生で何度も折に触れてもてるようになってほしいと考えている。
 公開授業後の意見交換会の中で、「私たちは学校や仕事といった日常生活に追われ、四季の移ろいを感じにくくなっている中、ふと新聞に目をやれば、その季節らしい写真を見つけることができ、新聞が歳時記の代わりをしてくれている」という意見があった。実際に出かけたりすることはできなくても、日本が持つ四季の美しさを新聞の写真を通して感じ取ってもらえたらと思う。
 今回授業をするにあたって、生徒に多くの選択肢を与えたいと12枚の写真を用意したが、今後授業をするならば、もっと少ない枚数でもよいかと思った。じっくりと写真に注目し、「言葉で風景を描く」という活動を生徒たちとしていけたら...と思う。最後に公開授業の中で創作された作品を紹介して終わりたい。

〇五月雨や 傘の花咲く 交差点

〇あつい夏 闘志あふれる 甲子園

〇あせなみだ 皆でながす 甲子園

〇菜の花の 黄色に染まった たつのの町
 
〇白鷺城 夜空を彩る 花火かな