2024年10月アーカイブ

241030nojigikutokubetusiengaxtukou.JPG神戸新聞アドバイザーが講師に

 新聞記者の仕事や新聞の読み方を知ろうーと10月30日、のじぎく特別支援学校(神戸市西区北山台2)で出前授業があり、高等部1年12人が参加した。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。三好アドバイザーは朝刊をめくりながら、新聞の特長である網羅性や一覧性について説明。「新聞記事の多くは前文に大切なことを書く『逆三角形』スタイルなので、まずは見出しと前文だけ読めばよい」と話した。

 記者の仕事では「名刺1枚で誰にでも取材できる。自身の関心事を記事にできるのも魅力」「問題提起し、読者に考えてもらうのが記者の役目」と語った。

 最近、気になったニュースは何か、生徒たちは意見交換し、総選挙結果や南海トラフ地震臨時情報の影響、猛暑や台風など気象の変化、闇バイト問題などが上がった。

[写真説明]新聞の読み方を学んだ出前授業=のじぎく特別支援学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■愛徳学園中学校(10月23日、対象・3年生約20人) 修学旅行で訪れた被爆地広島を題材に班ごとに新聞を製作し、同学園小6年生を対象に「平和の授業」を行うのを前に、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーから、記事の書き方や見出しの付け方、紙面整理の要点などを学んだ。

生徒の感想

■姫路市立飾磨中部中学校(10月25日、対象・1年生80人) 神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。被爆地広島で校外学習をする生徒たちに、ヒロシマ・ナガサキや神戸・姫路空襲、沖縄戦の惨状を伝え、「努力し続けなければ『平和』はつかみとれない」と訴えた。

生徒の感想

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 被爆地広島での校外学習を前にした出前授業が10月25日、姫路市飾磨区細江の飾磨中部中学校であり、1年生80人が参加した。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 校外学習は11月25~26日に予定され、生徒たちは広島平和資料館や慰霊碑などを見学し、語り部や記憶を語り継ぐ大学生から話を聞く。

 三好アドバイザーは太平洋戦争時、原爆が投下されたヒロシマ・ナガサキや神戸・姫路空襲、沖縄戦などの惨状に触れた。姫路空襲の爪痕がいまも姫路市内に残っていることや、「原爆症治療の父」と呼ばれる、同市出身の都築正男博士のことも紹介した。

 ロシアによる軍事侵攻から2年8カ月がたつウクライナや、紛争が激化する中東情勢にも触れ、「他人の痛みを共有し、自分ごととして考えたい」と強調した。

 「たとえ戦争になっても、相手の国に友達が1人いたら爆弾を落とせないだろう。普段から各国の人々と関わりをもつことが大切だと思う」と話した。

[写真説明]命の尊さを学ぶ生徒たち=飾磨中部中学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 「ヒロシマ」をテーマに新聞をつくるのを前に10月23日、神戸市垂水区歌敷山3の愛徳学園中学校で出前授業があり、3年生約20人が参加した。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 3年生は10月16~19日、修学旅行で広島を訪れ、原爆について学んだ。広島平和資料館や慰霊碑などを見学し、語り部から話を聞いた。今後、グループに分かれて新聞をつくり、同学園小学校の6年生を対象に「平和の授業」を行う。

 授業では生徒がそれぞれ書きたいことを40字にまとめた。ヒロシマの実相を伝えるピースボランティアや、原爆の子の像について書きたい、韓国人も犠牲になったことを書きたいーなどと発表した。

 三好アドバイザーは、5W1Hを押さえて記事を書くことや、見出しの付け方、レイアウトのポイントなどを説明。自身を振り返り、「ヒロシマ・ナガサキを語り継ぎ、反戦を訴えるのは、新聞が果たすべき使命の最も大切なものの一つ」と話した。

[写真説明]何を記事にするか、発表する生徒=愛徳学園中学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。修学旅行を前に、生徒たちが被爆者の近藤紘子さんから話を聞いた記事はこちら

■神戸大学付属中学校(10月17日、対象・1年生120人) 神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務め、夏休みに読んだ新書のエッセンスや感想をポスターにまとめるポイントを伝えた。書いてある情報を整理する▽写真や図表を使えないか考える、などとアドバイスした。

生徒の感想 01   生徒の感想 02   生徒の感想 03

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神戸新聞アドバイザーが講師に

 新書を読んでエッセンス(核心)や感想をポスターにまとめようーと、10月17日、神戸市東灘区住吉山手5の神戸大学付属中学校で出前授業があり、1年生120人が参加した。神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが講師を務めた。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。生徒たちは夏休み、好きな新書1冊を選んで、内容の要約に取り組んだ。言語と文化、話術、医療など、幅広い分野の本が選ばれた。

 出前授業で生徒たちは、ポスターで何を伝えるのか―を考えた。三好アドバイザーは「書いてある情報を整理し、自身が関心の高いポイントを見定める」「Q&Aなどを活用し、わかりやすくまとめる」「感想や意見は視点記事として別立てにする」などを提案した。

 「書いてある内容をうのみにせず、他の文献を調べたり、フィールドワークやアンケートで確かめてみたりすることも大切」と強調した。

 また、読みやすくするため「トップと真ん中の記事を目立たせる」「写真を使えないか、表やグラフにできないか考えてみる」「縦書きと横書きの併用など、変化をつける」などとアドバイスした。

[写真説明]ポスターで何を伝えたいか―を発表する生徒=神戸市東灘区住吉山手5

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 近藤紘子(こうこ)さん(79)=三木市=は広島原爆の、著名な被爆者の一人である。愛徳学園中学校(神戸市垂水区)の3年生は10月、広島に修学旅行に行き、帰校後、NIE活動の一環として、「ヒロシマ」をテーマにした新聞製作や、同学園の児童に「平和」について伝える授業を行う。修学旅行前の学習として9月25日、生徒たちは近藤さんから話を聞いた。生徒たちは何を感じ、何を思ったのだろう―。同校の米田俊彦教諭にご寄稿いただいた。

 「1945年8月6日、その日の朝は本当にきれいな青空だった」という言葉で講話が始まりました。生後8カ月でおかあさまの腕の中で被爆され、その後を生きてこられた体験の講話です。 

本校の中学3年生は10月16~19日、3泊4日の日程で広島、中国地方へ修学旅行にまいります。「平和」「ともに生きる」とはどういうことかについて深く学びます。

 近藤紘子さんは、被爆直後の様子や、その後成長していく中で被爆した方と出会い、交流されたこと、ABCC(原爆傷害調査委員会)で健康調査を受けたときのつらい体験など、原爆に対する思いとその思いの変化についてお話しくださいました。

 近藤さんは、原爆を落とした行為と落とした人に対する強い怒りとともに生きてこられました。しかし、原爆を投下したエノラ・ゲイ号の副操縦士とアメリカで会い、その方の「自分のしたことに対する後悔」の言葉と涙を目にし、手を触れたそのときに、「憎むべきは戦争です」とお気づきになりました。この近藤さんの言葉は、私の心にも深く刻まれ、これからも問い、考えていかなければならないことだと強く思いました。

 また、被爆者のため力を尽くされたお父さまのこと、原爆投下直後のルポルタージュ「ヒロシマ」(ジョン・ハーシー著、石川欽一・谷本清・明日川融訳)をめぐるお話や、2016年のオバマ米大統領(当時)の広島訪問のことなど、現代に至るまでのエピソードを交え伺いました。幼少期のお召しものなど実物も紹介されました。

 講話の後、「平和な地球にするにはどうすればいいと思いますか」という近藤さんの問いに対し、生徒一人ひとりが話した言葉に「希望」を強く感じました。

(以下、生徒の言葉です)
「自分のことだけじゃなくて、人のことも考えて過ごしていったら戦争はなくなるのではないか」
「今のことや未来のことだけじゃなくて、過去のこともしっかり見ていくことが大切だ」
「これまでに戦争で亡くなった方々のことや傷ついた人々のことを忘れずに過ごしていくこと」
「過去の戦争のことを一人ひとりが忘れないこと」
「他人の気持ちを思いやって過ごしていくことが平和につながる」
「一人ひとりが平和について考えて、生きていくことが大切」

 そして、「たくさんの人に会い、意見を聞いて、知識を得て自分より下の世代に受け継いでもらう」など、生徒たちははっきりと、あるいは自分の中から絞り出すように、一言一言、ゆっくりと思いのたけを言葉にしていました。

 近藤さんからも「自分が言いたいことを言うことが大切で、自分の意見がしっかり言えていましたね。地球はとってもきれいで美しい。これを壊われないようにし、真の平和の実現を皆さんにゆだねていきたいと思います。これを受け継いでいってほしい」というお言葉をいただき、生徒の思いと近藤さんの思いが交わりつながった、生涯心に残る講話になりました。

 今年のノーベル平和賞は「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」の受賞が決まりました。戦後約80年間、世界の戦争で核は使用されていません。これは苦しみを受け、繰り返してはいけないというメッセージを訴え続けてこられた多くの方の力だと思います。

 そんな今、近藤さんのご体験と思いを受け継ぎ、生徒の言葉を実践していくことが大切なのだと改めて思いました。 

 生徒たちの帰校後も含めた取り組みは、来年夏の「NIE全国大会神戸大会」で実践発表する予定です。

米田 俊彦(愛徳学園中高等学校教諭、日本新聞協会NIEアドバイザー)(10月16日)

[写真説明]平和への思いを語る近藤紘子さん=愛徳学園中学校

■姫路市立あかつき中学校(9月30日、対象・1~3年生24人) 神戸新聞姫路本社の井上駿記者が講師を務めた。外国にルーツがあったり、家庭の事情などで十分に義務教育が受けられなかったりした生徒が受講、昨年4月の同校開校までの歩みを取り上げた記事などを通し、新聞の役割や読み方を伝えた。

生徒の感想

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神戸新聞記者が講師に

 新聞の読み方や文章の書き方を学ぶ授業が、夜間中学のあかつき中学校(姫路市市之郷町2)であった。神戸新聞姫路本社の井上駿記者(35)が講師を務め、同校の開校までの歩みを取り上げた記事を読みながら新聞の役割を伝えた。

 同校は、教育に新聞を取り入れる日本新聞協会のNIE指定校。9月30日にあった授業では、外国にルーツがあったり、不登校や家庭の事情などで十分に義務教育を受けられなかったりして同校で学ぶ、若年層や高齢者ら24人が受講した。

 授業の前半は、実際に朝刊を見せながら、県内の出来事を詳報している本紙の構成を紹介。また、2021年6月に同市議会で夜間中学の設置方針が表明されてから昨春に開校するまでに、本紙に掲載された同校の関連記事を示し、そうした内容を世の中に伝える意義などについて考えた。

 後半は、文章の基本となる「5W1H」などを学んだ。受講した加山楓輝さん(17)は「新聞の読み方が分からなくて読みづらかったけれど、改めてじっくりと読みたくなった」と話した。=10月9日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真説明]朝刊の読み方を学んだNIEの出前講座=あかつき中学校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

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 広島の原爆について学ぶ授業が9月25日、神戸市垂水区歌敷山3の愛徳学園中学校であった。生後8カ月の時に被爆した近藤紘子さん(79)=三木市=が、自身の体験、平和を訴えてきた戦後の歩みについて語った。

 同学園は平和教育、新聞を使った授業「NIE」に力を入れており、3年生は10月の修学旅行で広島を訪問する。来年、神戸市で開かれるNIE全国大会で、原爆と広島に関する学習成果について発表する予定。

 近藤さんは原爆が投下された時、爆心地から1・1キロ地点にある教会施設にいて一命を取り留めた。やけどで傷ついた被爆者を身近に見て育ったこともあり、「米軍は鬼」と思っていた。

 だが戦後、米爆撃機B29の搭乗員が涙を流して悔やむ姿に接した近藤さん。愛徳学園の生徒たちに「(米兵の)彼らも優しい人間の心を持っていた。憎むべきは戦争だ」と訴えた。

 授業を受けた生徒は「相手を恨むのではなく、理解しあうことが平和につながると思った」と話した。(津谷治英)=30日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]生後8カ月の時に広島で被爆した体験を愛徳学園中学で話す近藤紘子さん=神戸市垂水区歌敷山3

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。同校の米田俊彦教諭の寄稿はこちら

241002sikamatyuubutyuusaeki.jpg新聞の写真から一句、 「対立」と「合意」テーマに

  学校でNIE活動に取り組む、姫路市立飾磨中部中学校(姫路市飾磨区細江)で10月2日、二つの公開授業が行われた。3年生約60人が、新聞記事の写真から俳句を作ったり、「対立と合意」をテーマに記事を選んで意見交換したりした。 県内各地から教員ら25人が参加し、授業後に意見交換会もあった。

  兵庫県NIE推進協議会の主催。同校は日本新聞協会のNIE実践指定校になっている。

 3年1組の授業のテーマは「NIE俳句~記事の写真から豊かにイメージしよう~」。国語科の佐伯奈津子教諭(43)=日本新聞協会NIEアドバイザー=が担当し、奥田夕貴教諭(29)がサポート役を務めた。

  新聞は歳時記でもある。佐伯教諭はまず、一面の菜の花畑や、傘の花が咲くまち景色、収穫期を迎えた丹波のクリ園、立山の紅葉、姫路城と花火、浅草・雷門の雪景色など、新聞に掲載された折々の写真を紹介。計12点を黒板に貼り出した。

 「新聞記事の写真からイメージを膨らませ、俳句を作ろう」との呼びかけに、生徒たちはタブレット端末の写真と記事を見ながら俳句を練った。

  生徒たちの俳句を一部紹介すると―。

  五月雨や傘の花咲く交差点
  菜の花の黄色に染まった たつのの町
  白鷺城夜空を彩る花火かな
 
  授業を受けた石田晄大さん(14)は「新聞の写真から句作するのは初めて。写真や記事を詳しく見ると、より深い見方ができる」と話した。

                           ◆

  3年3組の授業のテーマは「新聞から読み取る対立と合意」で、社会科の皆光潤教諭(45)が担当した。

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  生徒たちはあらかじめ各自が選んだ記事について、班ごとに紹介し合った。生徒たちが関心を寄せたのは、「被爆体験者」の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決や、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチール買収計画を巡り審査を再申請したニュースなど、多岐にわたった。

  班ごとに発表する1本を決め、対立のポイントや合意に向けた動きについて活発に議論し、ワークシートやスライドの作成に取り組んだ。
                           ◆

 「NIE俳句」を担当した佐伯教諭は兵庫で約15年、NIEに取り組んできた。来年夏の「第30回NIE全国大会神戸大会」でも、同校は「NIE俳句」の取り組みを実践発表する予定だ。「俳句の聖地」といわれる愛媛県のNIE関係者に講評いただくことになっている。

 ◆実践された飾磨中部中学校・佐伯奈津子教諭と皆光潤教諭の寄稿(授業のめあてや感想、展望)はこちら=佐伯教諭の寄稿皆光教諭の寄稿

◆参加者の感想はこちら

網 麻子(神戸新聞社NIE・NIB推進部次長)(10月11日)

[写真㊤]新聞記事の写真からイメージを膨らませ、俳句を作る授業=いずれも姫路市立飾磨中部中学校[写真㊨㊤]「対立と合意」をテーマに選んだ新聞記事について話し合う生徒たち(写真はいずれも画像を一部加工しています)

※飾磨中部中学校の公開授業は、10月3日付朝日新聞朝刊ひょうご版、10月9日付神戸新聞朝刊姫路版に記事を掲載していただきました。ありがとうございました。

伍賀 正晃・神戸市教育委員会事務局学校教育部教科指導課指導主事

 「個別最適な学びと協働的な学びの一体化」を進める現在において、多様な意見・見解に触れることや、他者に向けて自分の考えを伝えること、またそれらの活動の土台となる語彙力や表現力、感性を磨くことは非常に重要である。今回の公開授業では、その語彙力・表現力・感性を高める授業が目指されていた。

 国語の授業では、新聞の中の写真からイメージを膨らませ、記事の内容を織り込みながら、俳句を作る学習が行われていた。頭で考えるよりも写真を見た方がイメージしやすく、生徒たちが独自の感性を働かせながら、17文字の制限の中で自分にある語彙力を注ぎ込む様子が見られた。社会の授業では、新聞から「対立と合意」に関係する記事を選び、背景やポイントをまとめる活動が行われていた。記事に記されている内容は端的であるため、生徒たちはわかりやすく伝えることに苦心しながらも、グループで協力して活動を進めることができていた。

 新聞のよさとは、写真や文章がコンパクトにまとめられていることや、情報の信頼性が高いこと、紙ならではの手触りやぬくもりなどが挙げられる。各紙を比較することによって、一つの出来事でも見方や表現の仕方が様々で、いろいろな考え方があることに気付くこともできる。新聞は社会につながるための一つの入り口である。各自の興味・関心に応じて学習を深めたり、ICTの活用を通して気になる記事を見せ合い、意見を交換したりするなど、「何のために使うのか」ということを意識して活用することによって、新聞が各教科等の見方・考え方を育むうえでの強力なツールになると改めて感じた。

小島 幹子・姫路市立城山中学校教諭  

 N IE教育について改めて考え直す貴重な機会となりました。ありがとうございました。

 それぞれの授業で新聞を効果的に活用されており、身近に新聞があれば、自分事として深い学びを得ることができると実感しました。

 自由に新聞が読める環境があることが何より幸せなことだと思います。ただ、目の前の子ども達は普段から新聞にふれていないがために敷居が高くなってしまっています。

 今、私たちが生きている社会でどんなことが起こっているのか、まずは知ることで自分の見方や考え方ができ、意見をもつことができます。新聞を各教科の中で効果的に扱ったり、教科横断的に取り入れていくような少しの工夫があれば、新聞は子どもたちにとって身近な存在に変わっていくと感じます。

※10月2日の姫路市立飾磨中部中学校の公開授業を担当した皆光潤教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

           新聞から読み取る「対立」と「合意」
                          授業者:皆光 潤

◎ねらい
 生徒にアンケートを取ったところ、家で新聞を取っているは約40%で、そのうち毎日読むは0%、週に1度程度読むは約11%、であったことから、新聞に触れる機会も少ないこと、新聞に触れる機会があるのに触れていない生徒が多いことが分かる。また「ニュースの情報源は何か」の質問に、新聞と答えたのは約3%で、テレビは約22%、インターネットは約74%であった。その一方で、「信用できるメディアは何か「の質問には、新聞と答えたのは約40%で、テレビは約44%、インターネットは約15%であった。生徒の主な情報源はインターネットであるが、信用できる情報ではないとの認識を持っている。
 社会ではいつの時代も、あらゆる場所で「対立」があり、その度に「合意」が図られる。新聞記事は今起こっている「対立」や「合意」を事実に基づいて、多面的・多角的に報じている。この授業は、「対立」・「合意」が何であるか、新聞を読み解く中で理解を深めるとともに、新聞に関心を持つ生徒を増やすことを目的としている。
 社会科は暗記科目だとよく言われるが、そうではない。授業中に学習した「対立」や「合意」といった用語(概念的知識)の解説に終始する授業は、社会科嫌いを生む要因である。概念的知識とは社会における公式・法則であり、社会における具体的事象を当てはめ、一般化することで思考力を高めることができる。社会科的思考が働くことで、自分の生きている社会をより深く理解でき、関心を持つことができる。また、そのことが国民一人一人の社会参画を促すことにもつながる。この授業を通じて、新聞に興味を持つ生徒が少しでも増え、社会問題を自分事として捉え、社会を主体的に生きる公民の育成につながればと思う。

◎実践内容
 3年生の生徒30人を対象に、新聞記事から「対立」と「合意」を読み取り、その背景にあるものや今後の見通し、調べて思ったことなどを班ごとにまとめ、プレゼンする授業を行った。①個人で自分の興味を持った新聞記事を1つ選び、「対立」「合意」のポイントを個人用ワークシートにまとめる。②班員(3~4名)に紹介する。その後、班の中で他班にプレゼンする記事を選ぶ。班員でさらにニュースを追求し、プレゼン用ワークシートを協力してまとめる。③ワークシートを基にプレゼン用のスライドや発表原稿を作成する。④すべての班のワークシートと新聞記事を全生徒に配布し、目を通して他班のプレゼンもある程度理解する。全体でのプレゼンをおこなう。
 4時間の構成で実践したが、公開授業を行ったのは②であった。新聞の見出しから「対立」を読み取るのが難しく、苦戦した生徒が多かったが、それぞれが何らかの対立を含む記事を紹介した。「レバノンのイスラエル爆撃」や「リニア建設をめぐる静岡県とJR東海の対立」など、深い歴史を紐解く必要があるものや地下調査に関する高度な科学的知識が必要とされるものなど、難解なテーマを選んだ班もあったが、こちらが何を明らかにすべきか、どのように検索すべきかなどのヒントを与えていく中で、何をすべきかを思いついた生徒が班員に指示を出し、発表の準備を進めていた。

◎さらなる発展へ
 今回の実践のほかにも、1つの記事を多面的、多角的にみんなで検証することや同じ出来事の新聞記事を各新聞社の比較することなど、さまざまな手法が考えられる。今回の実践とは逆にこちらが意図的に提示した複数の新聞記事から、授業で学習する概念的知識を抽出する手法も考えられる。どの単元で、どの手法を用いて学習させるのが最も効率的なのか、これからの実践の中でも探っていきたい。ともあれ、生徒と新聞の距離をいかに近づけるかも課題である。廊下に設置しているだけでは、手に取る生徒も少ない。本校では、新聞記事の書き写しや感想を書くなどの取り組みをしているが、まだ不十分である。いかに新聞を身近なものとするかの取り組みも模索していく必要がある。

◎全体の感想
 新聞にふれる機会が少ないこともあり、新聞から読み取ることに苦戦している生徒が多かった。特に語彙力に乏しい生徒には、新聞に使われている言葉の壁にぶつかり、読む気力を失う者も少なからずいた。その一方で、写真やグラフから興味を持つ生徒、インターネットなどでも話題になっている記事を選ぶ生徒、中にはある記事の出来事に自分の親類が深く関わっているという生徒もいた。一度そのニュースを理解すれば、それに関連するニュースや類似するニュースにも興味を持ち、再度新聞を手に取ることに繋がる。新聞にはそれ以外の記事もたくさんあり、次第にそれが目に入るようになり、視野が広がっていく。また、新聞を読む中で、これは授業で習ったあのことと関連していると気付けば、既習事項が自分のものとなり、それを活用する力(=思考力)にも繋がっていく。今回の研究授業を受けて、社会科の思考力を高めるうえで、新聞を利用することは大変有益であることを実感した。

※10月2日の姫路市立飾磨中部中学校の公開授業を担当した佐伯奈津子教諭に、ねらいや展望をご寄稿いただきました。

                          「NIE俳句 ~記事の写真から豊かにイメージしよう~」
                                                                                                    授業者:佐伯奈津子
◎ねらい
 新聞になじみがない生徒が増える一方で、新聞をめくると目を奪われるような美しい写真とたびたび出合うことがある。「この写真をたくさんの人に見てもらいたい」という思いがこみ上げるとともに、「この写真を使って何か授業ができないだろうか」と考え、毎月切り貯めた写真記事を活用して「俳句作り」をする授業を計画した。美しい写真から豊かにイメージを膨らませ、新聞記事を通して語彙が豊かになってもらいたいというのがねらいである。

◎実践内容
 新聞の写真パネルを提示しながら、作品作りに必要な「季節」、「季語」、「どんな様子か」などを紹介し、俳句作りのヒントを与えた。そして1学期で学習した俳句の復習(「季語」「音の数え方」「切れ字」)をしたのち、記事を参考に俳句作りをするという学習活動をした。俳句作りに苦戦する生徒には、マス目にひらがなを入れると俳句ができる補助プリントを渡し、いろいろな言葉をあてはめていくように助言をした。
 最後に次の時間に句会をすることをクラス全体に伝え、自分の作った作品の中で、良いものを選ぶように伝えた。

◎さらなる発展へ
 今回で俳句を創作するのは2回目であった。俳句を作ることには慣れてきたけれども、句会をする際、友達の俳句を選んでしまったり、面白おかしい句を選んでしまったりして、よい句を選ぶ力はまだまだであると感じた。今後、創作された俳句を取り上げてその作品の良いところ、直すべきところを教師が指摘したり、生徒間で話し合いの時間をもったりしてよい句を選ぶ力を育てていけたらと思う。
 また、切れ字の使い方に苦戦する生徒の姿も見られた。俳人の作品で切れ字が使われているものを提示し、切れ字の使い方や位置、上五、中七、下五のどこで使われているのかを確認すると更なる作品創作のレベルが向上するかと思われる。

◎全体の感想
 新聞の写真を使っての俳句作りをしてみて56%の生徒が「新聞の写真があっていつもより俳句作りが簡単になった」と答えた。言葉だけではなく、映像から「色」や「形」を俳句の中に折り込み豊かに作品作りができたのではないかと思う。
 俳句作りで大切にしていることは「作って楽しかったという体験」や「表現の違いの面白さ」を生徒自身が実感してもらうことである。今回幸いにも授業の感想で「俳句作りが楽しかった、またしたい」という感想が多数見られた。教科書に載っている出来上がった作品ではなく、同級生の作った作品が新鮮に思えたからだろう。俳句に触れる機会が授業の中の1回だけではなく、今後の人生で何度も折に触れてもてるようになってほしいと考えている。
 公開授業後の意見交換会の中で、「私たちは学校や仕事といった日常生活に追われ、四季の移ろいを感じにくくなっている中、ふと新聞に目をやれば、その季節らしい写真を見つけることができ、新聞が歳時記の代わりをしてくれている」という意見があった。実際に出かけたりすることはできなくても、日本が持つ四季の美しさを新聞の写真を通して感じ取ってもらえたらと思う。
 今回授業をするにあたって、生徒に多くの選択肢を与えたいと12枚の写真を用意したが、今後授業をするならば、もっと少ない枚数でもよいかと思った。じっくりと写真に注目し、「言葉で風景を描く」という活動を生徒たちとしていけたら...と思う。最後に公開授業の中で創作された作品を紹介して終わりたい。

〇五月雨や 傘の花咲く 交差点

〇あつい夏 闘志あふれる 甲子園

〇あせなみだ 皆でながす 甲子園

〇菜の花の 黄色に染まった たつのの町
 
〇白鷺城 夜空を彩る 花火かな

 ■愛徳学園中学校(9月25日、対象・3年生約20人) 昭和20年8月6日、広島ー。生後8カ月で被爆した近藤紘子さん(79)=三木市=が自身の体験や平和を訴えてきた戦後の歩みを語った。10歳の時、原爆を投下したエノラ・ゲイの副操縦士と出会ったことに触れ「憎むべきは人ではなく戦争」と語った。

生徒の感想 01   生徒の感想 02

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※この記事はサンケイリビング新聞社が発行する、リビング西宮・宝塚・芦屋版、尼崎・伊丹版9月27日号に掲載されたものです                PDFはこちらから

網干高校 生徒の感想

■網干高校(9月25日、対象・2年生40人) 神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーが「阪神・淡路大震災」をテーマに授業を行い、「当時を知らない世代が、大震災を語ってほしい」と呼びかけた。生徒たちが防災ツーリズムに取り組むのを前に、29年前の震災を知ろうと企画した。 

生徒の感想

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 新聞を教育に活用する「NIE」の研究授業が9月27日、明石市立大久保小学校で行われた。児童が読売新聞に連載されている「コボちゃん」などの4コマ漫画を使って、話題を展開する起承転結の仕組みを学んだ。

 4年生31人を日本新聞協会NIEアドバイザーの若生佳久教諭(62)が指導した。子供たちはタブレット端末で、1コマずつバラバラにしたコボちゃんなどの4コマ作品を、セリフ、話の流れ、絵をヒントに並べ替えた。

 3~4人の班で意見交換した後、代表者が順序についての意見を発表。他班の子らが「話が急に変わっている」「別のセリフなら話が通る」などと指摘した。

 参加した田中梓さん(9)は「みんなで意見を出し合って楽しかった」と笑顔だった。

 授業については来年夏、神戸市で開催される「NIE全国大会神戸大会」で発表する予定。若生教諭は「新聞の4コマ漫画は日常生活を取り上げているので子供が取っつきやすく、季節感もあるので教材に適している」と話していた。=28日付読売新聞朝刊神戸明石、阪神、三田、淡路、播磨姫路、但馬、丹波の各版
  
[写真説明]「コボちゃん」の4コマの順序や起承転結を考える児童(明石市で)

                      ◆

4こま漫画で「起承転結」学ぶ  明石市立大久保小・若生教諭が授業  4年生31人が参加

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 バラバラにした新聞4こま漫画を正しい順序に並べ直すNIE授業が9月27日、大久保小学校(明石市大久保町大久保町)であり、4年生31人が参加した。日本新聞協会NIEアドバイザーを務める、同校の若生佳久教諭(62)=写真㊨=の指導で、児童たちが4こま漫画の「起承転結」について学んだ。

 この取り組みは長年、NIE活動を続けている若生教諭が考案した。

 2409274komanarabenaoshi.jpgこの日は、本紙朝刊7月21日付の「ねえ、ぴよちゃん」など二つを教材にした。「ねえ、ぴよちゃん」は、ぴよちゃんがパフ(ポンポン)でメークするお母さんをまねて、ネコ(又吉)のしっぽで自分の顔をポンポンとするという話。児童たちは登場人物のセリフや表情をもとに4こまを並べ直した。

 続いて、並べた順番とその理由を班ごとに発表。授業を受けた吉田芽生さん(9)は「正しい順に並べることができてうれしかった」と話した。ぴよちゃんのセリフを少し変えれば、正解と違う順でも意味が通る―との発表もあった。

 新聞4こま漫画は1923年10月から東京朝日新聞で連載された「正チャンの冒険」が最初といわれる。事件事故などのニュースも多い紙面の「一服の清涼剤」となっている。

 若生教諭は「新聞の4こま漫画は、生活に密着した話題や風物詩が多く扱われ、児童がとっつきやすい。日頃から新聞を開く機会になれば」と話す。この取り組みは来年夏の「第30回NIE全国大会神戸大会」で、若生教諭が発表する予定だ。(三好正文)=10月2日付神戸新聞朝刊明石版

[写真㊤]4こまマンガを並べ直す児童=いずれも大久保小学校[写真㊦]新聞の4こま漫画について学ぶ子どもたち

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神戸新聞社員が出前授業

 網干高校(姫路市網干区新在家)で、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザー(64)が「阪神・淡路大震災」をテーマに出前授業を行い、2年生40人が参加した。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。各地の防災施設を巡りながら地域防災について調べる「防災ツーリズム」に取り組むのを前に、29年前の震災について知ろうと出前授業を企画した。

 9月25日にあった授業で三好アドバイザーは震災当日、神戸・三宮の神戸新聞本社で宿直勤務をしていた体験などを語り、「当時を知らない世代が、震災のことを語り継いでほしい」と呼びかけた。「能登半島地震や先日の能登の豪雨など、災害が頻発している。一つ一つの災害から学ぶことが大切。『備え』にゴールはない」と強調した。

 2年生の一井陽人さん(17)は「授業で得た知識を自分たちの防災活動に生かしたい」と話した。=10月2日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真説明]阪神・淡路大震災について学んだ出前授業=網干高校

※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■県西宮高校(9月18日、対象・1年生約30人) まちづくりや地域に関わる仕事をしている人から話を聞き、自分に何ができるかを考える特別授業があり、16人が講師を務めた。神戸新聞阪神総局の広畑千春記者は「『事実』って?」と題して、記者の仕事や事実確認など取材で心がけている点を説明した。

生徒の感想

 「ひょうごNIE通信」第2号を発行しました。来年7月31日、8月1日の「第30回NIE全国大会神戸大会」で、愛徳学園小・中・高校(神戸市垂水区)が実践発表を予定する、「ヒロシマ」をテーマにした小中連携授業などを紹介しています。神戸大会2日目に行われる各校の公開授業や実践発表の内容が決まりつつあります。順次お伝えしていきます。

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