教員によるNIE実践

「はがき新聞」共生懸け橋に 兵庫県立伊川谷高校

231216ikawadanikouhukudasannkeikiji.jpg

外国人など配慮 やさしい日本語使う

 教育に新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の実践や、成果を話し合う日本NIE学会第20回大会が12月2日、福岡県宗像市の福岡教育大学教育総合研究所で行われた。兵庫県立伊川谷高校の福田浩三教諭は、外国人や高齢者、障害者にも配慮した〝やさしい日本語〟で「はがき新聞」を作ることで、多文化共生への懸け橋としての日本語理解を深める授業を紹介した。

 大会は過去3年間、新型コロナウイルス感染対策でオンライン開催が続いたが、今回は対面とオンラインを併用。教員らによる自由研究発表と、現役高校生らによる「NIE生徒研究発表会」、シンポジウムの3部構成で行われた。

 数学科教員の福田教諭は専門にこだわらず、同校のコミュニケーション類型に所属する1年生29人に「やさしい日本語新聞書き換え講座」を実施した。

 前段階として校内に各紙を掲示し、週1回、福田教諭手作りの「学年通信」を配布。B4判両面カラーで、生徒紹介や写真、イラストなどを使って身近なニュースを盛り込み、新聞に親しめる工夫を重ねた。

 さらに全4回の新聞の読み方講座を実施したほか、気になった記事を、A5判の「はがき新聞」に、外国人や高齢者、障害者にも配慮した〝やさしい日本語〟で書き換える授業を行った。「限られたサイズの中で、読み手の立場に立ち、より分かりやすく内容が伝わるよう、まとめ直すことが、在日外国人との共生を考えるきっかけになり、母語である日本語の見つめ直しにつながる」と福田教諭。

 阪神大震災を経験した土地だけに災害時は、拙い外国語より、素早く「やさしい日本語」で情報発信した方が、有益なコミュニケーションができるという統計結果も踏まえ、多文化共生社会をはがき新聞から考えてほしいとの願いを込めた。

 生徒作成のはがき新聞では、日本の男女格差や、強制不妊などが取り扱われ、相互評価も行った。生徒からは「やさしい日本語は、外国人だけでなく日本の子供にも伝わりやすくてよい」「全く知らないニュースも、分かりやすい」などの感想が出されたという。

 生徒の中から希望者4人が、在籍生徒の8割が外国籍の夜間中学、神戸市立丸山中学西野分校の生徒と交流も行った。実際に「やさしい日本語」の力を実感し、何を伝えたいか明確にする必要性などを学び取った。

 福田教諭は「生徒には校内行事もはがき新聞で定期的に感想をまとめさせて、教室に掲示している。こうした実践を続けると、国語力が驚くほどアップする」と評価している。(飯塚友子)=12月16日付産経新聞朝刊「増刊 学ぼう産経新聞」

[写真㊤]日本NIE学会で、はがき新聞を活用したNIE活動について発表を行う福田浩三教諭=12月2日、福岡県宗像市の福岡教育大学[写真㊦]福田浩三教諭手作りの学年通信

231216ikawadanikougakunenntuusinsannkeikiji.jpg

.