日本新聞協会が任命するNIEアドバイザーに2023年度から、姫路市立豊富小中学校(前期課程)の川村かおり教諭▽尼崎市立南武庫之荘中学校の中嶋勝教諭▽西宮市立浜脇中学校の西村哲教諭▽県立伊川谷高校の福田浩三教諭▽愛徳学園高校の米田俊彦教諭―の5人にご就任いただいた。NIEの実践豊かな教諭として、兵庫県NIE推進協議会が新聞協会に推薦した。5人の先生に抱負を寄せていただいた。
※NIEアドバイザーの名簿はこちら。
新聞を「つくる」「つかう」が未来を拓く 姫路市立豊富小中学校(前期課程)教諭 川村かおり
NIEアドバイザーに就任した川村です。令和2年度に義務教育学校として開校した姫路市立豊富小中学校の前期課程の教員として働いています。「新聞を『つくる』と『つかう』が未来を拓く」をテーマに、さまざざまな取り組みを行ってきました。本校はICTを活用した実践にも力を入れており、新聞とICTが当たり前にある風景を子どもたちとつくる取り組みを行ってきました。まわしよみみ新聞や新聞製作アプリ「ことまど」を使った新聞づくりなどを中心に、子どもたちが楽しみながら取り組める活動をしてきましたが、今後はさらにNIE教育を通した言語能力・情報活用能力を育成する実践を行い、義務教育学校として9年間を網羅した事例を蓄積し、発信していきたいと考えています。
NIE活動の裾野を広げたい 尼崎市立南武庫之荘中学校教諭 中嶋 勝
「あっ、オレもやってみたいな亅
新任間もないこ頃、神戸大学附属住吉中学校で、遠藤瑛子先生の新聞を使った授業内容を聞いてそう感じました。教員になりたての私も生徒が意欲的に取り組むそのような授業をしたいと思い、新聞を使い始めました。後年、NIE実践校に指定されてからは、選んだ記事について班で討論したり、調べてきたことを発表したりすることを継続的に行ってきました。
未来を担う生徒たちには、ネットだけでは決して得ることができない、世の中の事象に関心を持ち、多様な意見に耳を傾け、互いの価値観を共有しながら、自分の意見を持てる人に成長してほしいと願っているからです。
今、学校現場は課題が山積し、教員は多忙を極めており、授業研究に取り組む余裕すらありませんが、生きた教材を使うNIE活動の裾野を少しでも広げていきたいと考えています。
生徒の探究心伸ばすNIEを 西宮市立浜脇中学校教諭 西村 哲
NIEという語句を知らなかった平成のころ、中3社会での内閣の単元。当時の小泉内閣総理大臣に中学生に手紙を送らせようという授業を考えた。最近の新聞記事を持ち寄って、中学生の意見を書こうということにして、総理に送った。いま思えばこれが私の初めてのNIE。それから10年以上たったある年、NIEを社会科授業で挑戦することとなった。今回は、毎時間1人ずつ、気になる記事を発表してクラスで共有している。発表5分、質疑応答5分、記事の共有と意見記述5分の合計15分。記事を共有するとき、僕が記事を持って机の間をまわるのだが、この時、生徒達が身を乗り出して記事を読もうとする、あの瞬間がなんとも言えず心地よい。そんな出来事があったんだという素直な驚き、テレビで見たあの事件の真相は何なんだろうという探究心、今年もNIEがとても楽しみだ。
新聞の持つ表現力を活用 県立伊川谷高校教諭 福田 浩三
新聞好きが高じて生徒や保護者との交流に活用するための校内発行新聞を発行し始めて11年がたちました。事実を伝えるだけでなく、「どうすれば読んでもらえるか」「どのような表現だと相手に楽しく伝わるか」など、新聞を通し研究してきました。
このたび、NIEアドバイザーという役割を与えていただき、今まで蓄積してきた「新聞の持つ表現力」をより幅広く伝えていくことが可能となり、うれしく思う限りです。
新聞は文字と写真だけで事実を正確に伝えます。この手法こそが今のSNSに慣れた世代にとって学び活用すべきものです。「はがき新聞作り」や「やさしい日本語」を中心とする教育実践により、生徒や若い世代の教育者に母語である日本語の素晴らしさを伝えていきたいと考えます。この活動の輪を今後も広く大きくと願います。
新聞の役割を問い直すとき 愛徳学園高校教諭 米田 俊彦
インターネットの高速化やデジタル化により、私たちは日々、高速、大量の情報の中でつながりを持ち、極めて便利になった社会で生きている。その中で、紙を用いて、人の手によって配達され、必ずしも高速ではない「新聞」と言うメディアの役割が、改めて大切になっている。
新聞は、人によって集めた情報を、時間をかけ、エビデンスに基づいて取捨選択された、実際に触れることができる実感のあるメディアである。
時に今、これまでとは次元を異にするさまざまなAIが登場し、新たな地平を開きつつある。また戦争や紛争、地球レベルでの環境の変化や、さらには少子化や物価高など多くの課題や問題に直面しつつ毎日を生きている。そんな時代を知り、未来を見通し、考える確かなツールとして新聞を活用した授業に微力ながら取り組んでいきたい。