姫路で実践を重ねてきたNIEアドバイザー3人に、子どもの力を伸ばす新聞活用術について語り合ってもらった。(本記は兵庫NIEニュース第66・67号に掲載)
姫路市立豊富小中学校教頭 井上幸史さん
姫路市立青山小学校教諭 万寿本寛之さん
姫路市立朝日中学校教諭 佐伯奈津子さん
(司会は石原丈知・兵庫県NIE推進協議会コーディネーター)
―NIE実践例の紹介を。
万寿本 よくやっているのは、子どもたちが新聞記事をスクラップし、記事を要約するなどの取り組みだ。児童は社会の動きに興味を持つようになる。スクラップした記事を子ども同士が交換して見出しを考えたり、オンラインでつないで、5年生が3年生に見出しのつけ方を教えたりもした。子どもたちは新聞を通して主体的な学びができる。最近では、世界遺産になった「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、新聞記事と教科書の解説を関連づけ、自分の意見をまとめた子どももいた。
万寿本教諭
また子ども新聞の閲覧場所を設け、そばに辞書や地球儀などを置いている。
佐伯 前任校のときから週1回、新聞記事を題材にワークシートを作成し、10分間の「朝の学習」で使う取り組みを続けている。ある週はクイズ、ある週は書き写し。現在、クイズは教員が当番制で出題している。記事にグラフや表が付いている場合は、そこからクイズを出題し、記事の内容を読み取らせたりしている。
最近のクイズでは、月食の影の部分の色は何色か、というのを出した。正解は「黒」ではなくて「赤銅色」で、家族で話題にした生徒がいた。生徒の新聞に対する関心が高まり、自宅でニュースを調べ直している子もいる。
井上 これからNIEを始めてみようという先生にとって、お二人の事例発表がヒントになる。ワークシートは「朝の学習」で取り組むとよい。新聞の閲覧場所に辞書や地球儀を置けば、調べ学習できるようになる。ちょっとした工夫が大切だ。
NIE活動は「新聞に親しむ」というより、情報をどう活用するかという視点でとらえたい。そこで、学校での新聞活用は、情報を専門としている空間である学校図書館や、各自に1台端末が与えられているICTの活用とどう連携を図るかがキーポイントになる。
―実践で工夫している点は。
万寿本 新聞記事のスクラップは教師が中身を強制せず、まずは、子どもたちが興味関心のある分野の記事だけ切り抜いてもいい。阪神タイガースの記事ばかりでも、歴史の記事ばかりでもいい。記事を読むというより、最初は、むしろ「探す」。最初は面白い写真を探すことから始めてもいい。
佐伯 私も前任校で、新聞の写真に着目し、季節ごとの美しい写真を切り抜いて掲示した。生徒が面白いと思う、楽しめる取り組みが必要では。今でも心に残る写真を教室に貼ったりしている。NIE活動は面白いと感じてもらうことが大切だ。
佐伯教諭
井上 NIE実践校に指定されたら、新聞6紙が4カ月無償で届く。まず、新聞のある環境づくりを進めたい。さらに、実践者以外の先生にも関心を深めてもらうには、教科書で「新聞」「情報」が取り上げられるとき、記者の出前授業を紹介するなど、どんな機会を提供できるかもカギになる。
―今後のNIE展開は。
万寿本 新聞記事をスマホで撮影し、グーグルメモに感想を書き込むとか、ICTを活用したスクラップなら、子どもたちはよりいっそう取り組みやすいのではないか。
佐伯 フェイクニュースがはんらんする中で、情報の真偽を見抜く力が必要になっている。どこを見たら正しい情報にたどり着くのか、そういった教育も必要かと思う。
井上 現在、アクセスできる情報量は膨大だが、SNSだけでは情報が偏りがちだ。NIE活動を通じ、取材をもとにした、多様な情報を入手できる新聞が見直されるべきだと思う。
井上教頭
<座談会に寄せて>
3人のNIEアドバイザーに新聞活用の工夫を語っていただいた。長年の実践経験に裏打ちされたアドバイスは、これからNIEに取り組まれる先生方の参考になったのでは、と思う。
万寿本先生や佐伯先生が言われるように、子どもたちの「好きな分野」「楽しめること」から始めることも、井上教頭先生が言われるように「子どもたちの立場に立った、ちょっとした工夫」も大切だと感じた。
教育現場での新聞活用は、情報を見極める力や使う力を身に付け、自分の考えを広げていけることを再確認できた座談会だった。
兵庫県NIE推進協議会コーディネーター 石原丈知