教員によるNIE実践

【寄稿】合同で新聞製作 県内4小学校の取り組み

※昨年12月17日、県内4小学校の児童たちが合同で作った新聞のオンライン発表会が行われました。担当した4校の先生にねらいや成果についてご寄稿いただきました。

                              藤岡絵美・神戸市立淡河小学校教諭

 「NIEで4校を繋(つな)ぐ会」では、各校の高学年児童が、各地域の事柄について調べたことを新聞記事にまとめ、内容をオンラインで発表し合った。

 オンライン交流に向けて、本校の6年生は地域の歴史について、5年生は地域の産業について調べ活動を行った。地域に取材に出かけ、新聞記者になったつもりで見出しを考え、文字数に気を付けながら文を作成した。子どもたちは制限された文字数の中で自分の考えをまとめることの難しさを感じつつも楽しみながら活動していた。オンライン交流では、他校の児童の発表を聞いたり、他校の児童の前で発表したりと、少人数では体験が難しい貴重な経験をすることができた。

 児童は、新聞づくりを「限られた字数の中で自分の思いを表現するのは難しい。でも、面白い」と話し、みんなに興味をもってもらえるよう文の構成を考えていた。また、オンライン交流会では、「いろんな学校の人と交流ができて楽しかった」「その学校の地元のことを知り、行ってみたくなった」と話すなど、日ごろできない体験に大きな刺激を受けていた。

 子どもたちは、言語力の育成はもちろん、地域取材をきっかけとした古里を愛する心の育成、他校の児童との交流によるコミュニケーション能力の向上など、非常に多くの力を培うことができたと感じている。

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                                   豊田耕司・神戸市立有馬小学校教諭

 4小学校をつないで、合同新聞の製作とオンライン発表会をすることになり、有馬小学校の6年生が選んだテーマは「有馬川のホタルを守りたい」という内容であった。

 本校は30年にわたって、ホタルの飼育に取り組んでいて、毎年、近くの有馬川に放流している。そんな中、昨年、ホタルのすみかを奪う河川工事が始まった。子どもたちから「何とか生息地を守りたい」という声が上がり、ホタルを飼育していることを知ってもらうことで、観光地・有馬の整備とホタルが棲(す)める環境の両立についてみんなに考えてもらいたいという思いで、新聞づくりに取り組んだ。

 新聞づくりに当たっては、デスクやカメラマンなど子どもたちが役割分担をして主体的に進めることができたことも、各自の意欲を高めることにつながった。

 県内の小規模校の友達と意見交流する機会が持てたことも、子どもたちにとって大きな経験になったと感じている。また、他の小学校がそれぞれの地域を調べ、発表したニュースについて、とても興味深く聞くことができていた。

 今後、小規模校であることをメリットととらえ、オンラインのいっそうの活用など新たな交流の方法を模索したい。

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                              栄羽麻里・養父市立宿南小学校教諭

 5年生は、兵庫で一番高い氷ノ山について調べ、記事にまとめた。関心を持ったのは、昨年9月の自然学校が契機になった。登山を前に標高や自然、頂上の様子を調べたことで、美しさや雄大さ、険しさを体感した。その感動をぜひ発信したいという思いで交流会に臨んだ。

   6年生は、宿南地区の先人で、江戸期の儒学者である池田草庵先生についてまとめた。草庵先生については3年生から学び、草庵先生が教えを説いた私塾「青谿(せいけい)書院」を訪ね、地域の方の話も聞いてきた。その体験から、各自が大切にしている草庵先生の教えを披露した。

 記事をまとめ、発表の練習を行う中で、児童に交流会を楽しみにする気持ちが生まれた。はっきりした目標を持つことで、一人一人が意欲的に臨めた。

 当日は堂々と発表できた。日ごろは少人数のため、声が小さいなどの課題がみられるが、この日は他校の児童を意識し、大きな声で、ゆっくり、はっきりと発表した。感想も一人一人がよく考え、他地域の環境や産業、歴史的建造物のすばらしさや発表方法の工夫についてしっかりと伝えることができた。

 児童は、県内にはさまざまな地域があり、特性を生かした取り組みが行われているのを知った。小規模校でもオンラインを使えば他校とつながり、見聞が広がることも実感した。来年度も4校で協力したい。

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                             大下真季・淡路市立大町小学校教諭

 今回、このような「ふるさと新聞」の製作を通して、兵庫県内の4地区の小学校で交流することができ、担任、児童ともども、貴重な経験をさせてもらうことができた。

 事前に自己紹介する記事を選ぶときに、他地区に伝えるとしても、「淡路島」や「淡路市」というくくりではなく、主語が校区である「大町」であることも、担任としては大きな発見だった。子どもたちが、慣れ親しんだ地元の大町に愛着をもち、その良さを伝えたいという気持ちの強さをあらためて確認することができた。

 現在、コロナ禍で他校との交流が積極的にはできない中、小規模校である本校の児童たちにとって、オンラインを通じての他地区との交流は、新鮮で刺激的、かつ視野を広げられる、よいきっかけとなったようだ。

 自分たちが発表することだけでなく、発表に対して、他校の児童から質問を受けたり、感想をもらったりして、照れながらもとても喜んでいる児童の表情がとても印象的だった。

 一方的なものだけではなく、交流することで、子どもたちもやりがいや達成感を強く感じ、さらに自分たちのふるさとへの想いを強めていると感じた交流会だった。

※4小学校によるオンライン発表会の記事はこちら。