鳴門教育大学大学院学校教育研究科(教職大学院)井上 奈穂さん
他県のNIEの取り組みに興味を持ち、参加させていただいた。初参加だったが、大きな刺激を受けた。伊東先生のご提案された高校の「総合的な探究の時間」の実践は大変興味深かった。
本実践では、3年間の学習の見通しを持った段階的な「課題発見・課題解決能力の育成」を目指していた。第1学年では、探究の基礎を身につけるためのグループ学習、第2学年以降は、個人での探究を深める時間が設定され、ルーブリックを通して生徒と教員が「学習のイメージ」を共有し、生徒相互の意見交換等を通し具体化していくことが計画の中に緩やかに組み込まれ、カリキュラムマネジメントの面からみても非常に優れていると感じた。
探究のプロセスだけでなく、新聞6紙を「探究」のための共通教材として位置づけ、探究の内容の質も保障していた。新聞というメディアの特徴の一つに「情報の一覧性」がある。毎日、情報が更新される新聞が教室の中にあり、それを全員が読み、アクセスできる環境をつくることで、自身の知らなかった新たな情報を得ることができ、自身の新たな興味関心に気づくこともできる。
今の社会はこれまで以上に情報に囲まれている。何か知りたければ、ネットで検索すればすぐに分かる。一方、自身が興味関心がない情報はアクセスすらできず「タコつぼ化」している。そのような現状を踏まえれば、玉石混淆(こんこう)の情報があふれる社会に踏み込む前に、「新聞」というメディアを使用し、自身の興味関心を広げ、情報活用の能力を鍛える機会を持つことは非常に有意義なのではないだろうか。2023年度から高校では新しい学習指導要領が始まり、「探究」はひとつの目玉となっている。この「探究」に新聞は大いに役立つのではないか。ぜひ、徳島でも本実践を紹介し、よりよい実践につなげていきたい。
岩橋 達彦・兵庫県立尼崎北高校教諭
圧倒的な情報量に「圧倒」されました。同じ1年生のはずなのに、発表の質が違えば量も違うことに、驚きを隠せませんでした。
生徒たちが、継続的に新聞を読み続けていることによって、情報のデータべースができあがっていたから、あのような発表ができたのだと思います。
しかも、指導教員があの発表に不十分な点を指摘したことにも驚きました。私からすれば、十分な発表だったと思います。しかし伊東先生の改善を促す姿勢に、より深い学びへ誘う熱意を感じました。
あの学びを継続的に取り組めば、多様な視点を手に入れることができると思います。3年次では小論文や面接などできっと役に立つことでしょう。普段は校務に忙殺されていますが、何らかの形で取り入れたいです。
毎度、NIEの発表には驚きと発見があります。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。
瀧口 梓・兵庫県立尼崎高校教諭、日本新聞協会NIEアドバイザー
発表を聞いて、まず初めの感想は私にはできそうにないなと思うくらい壮大な実践だと思いました。
しかし、実践の方法や困難だった点などを丁寧にお話してくださったおかげで、今から高校で本格的に始まっていく探究活動をどのように進めていくかビジョンが見えてきました。そして、探求活動を行うための情報のインプットのために新聞が最適だということも再認識することができました。
探究活動とはさまざまな科目で身につける知識や能力を使い、中等教育と高等教育の橋渡しになる重要な活動だと認識できる発表でした。
ただ、高校で全員が探究活動するには教師の人数が本当に少なすぎると感じました。伊東先生はご自身が大学でやっているようなことを探求活動でしているとおっしゃっていましたが、大学ではゼミに入って多くても10人に1人ほどの割合で指導教諭が付くと思います。それを高校の探求では40人に1人。その人手のなさの中で、どれほど達成感のある活動にしていくのか、それが課題だと感じました。
本岡 諒也・神港学園高校教諭
初めてNIEに触れました。教員2年目で、恥ずかしながらNIEについてまったく知識がなく、言葉すら知らないような状況でした。新聞の購読が減ってきている中、現在の高校生も新聞に触れ合う機会がほとんどないと思います。
そのような社会状況下、社会科としても、現在起きている政治問題や経済問題、社会情勢について考えるための基礎的な知識、さらに考える力を身に付けさせる素材のひとつとして、新聞活用は非常に大切だと感じました。政治離れが深刻な中、現代を生き抜く力を育成するためにも新聞は好材料です。
ただし、われわれ素材を扱う側の入念な準備が必要だということも考えました。計画から実行、素材の吟味や評価など、まだまだ無知なところも多いので、今後も新聞に触れつつ、こうした発表会に足を運べたらと思います。