セミナー・発表会・公開授業

2021年度NIE兵庫セミナー 発表者のコメント、参加者の感想

6月23日・愛徳学園中高校と神戸山手女子中高校をオンラインでつないで開催、Zoom(ズーム)でも公開 参加者約90人(時事通信神戸総局・丸山実子総局長の記者授業は愛徳学園の高1~3年94人も聴講)

【発表者のコメント】
<記者授業>
 丸山 実子・時事通信神戸総局長
 「進路を考えるときの材料になれば」と、この職業に就いたきっかけが「漢字」であることや、海外特派員の経験をお話しさせていただいた。伝えたかったのは、▽さまざまな取材相手や異文化との出会いを通じ、自ずと視野が広がること▽多様性を知り、受け入れることの大切さ・難しさ―だったが、時間オーバー。話の前置きとして、通信社や記者の仕事について紹介したため、こうした思いを伝えきれず、お恥ずかしい限りだった。
 しかし、愛徳学園の生徒さんからいただいた感想には、「何がきっかけで自分に合う職業に出会えるか分からない。今の一つ一つの経験を大事にしよう」「現地に行かないと食い違いなど分からないことがあり、恐怖を感じたりするんだ。これをきっかけにニュースを見る機会を増やしたい」といった声。うれしく、ありがたく思った。

<タブレット体験ワーク>
    近藤 隆郎・神戸山手女子中学高校教諭
 香港紙・アップル・デイリーが、発行停止に追い込まれた。言論の自由を封じる暴挙に怒りが込み上げる。
 一方で、それが保障されているわが国で新聞離れが進んでいることに重大な危機感を覚えている。
 新聞、とりわけ紙の新聞は、知りたい情報をピンポイントで探すだけでなく、その一覧性により知らなかったこと、興味や関心すらなかったことと出合えることが最大の特長といえるだろう。学齢期の子どもたちにとって、それがいかに大きな意味を持つのかはあらためて論じるまでもないことだ。インターネット全盛の時代だからこそ、検索のための道具としてではなく、脳にシワ、心にヒダを刻むための手立てとして授業で紙面を活用する必要性はかえって高まっている。
 今回のセミナーでは、小学校から高校まで使えるワークシートと、それをICT機器で活用する方法についてご紹介した。
 NIEをICTで進めることに関心をお持ちの方に多少なりとも参考にしていただけたなら、幸甚至極である。

   廣畑 彰久・愛徳学園中・高校教諭
 対面とオンラインの両方を同時に対応するということで、行き届かない点があったかもしれません。
 特に、画面の向こう側の方のサポートが十分できなかったことが悔やまれます。
 しかし、今回のセミナーを通じて、少しでもシンキングツールの有用性、可能性、楽しさを感じてくださったら幸いです。
 今回はICT機器を用いましたが、模造紙などでも活用できますので、今後シンキングツールが広がり、さまざまな活用事例の探究や情報交換ができればうれしいです。     

   米田 俊彦・愛徳学園中・高校教諭
    これまで続けてきた新聞を使った授業を振り返り、「NIEにICTとシンキングツールを使った授業作り」として自分の体験から得たことについてまとめてみました。紙の新聞で授業を行う良さを踏まえつつも、デジタル化して新聞を扱うことで、一度に読み、考えることのできる記事が増えることや、自分の考えを共有しやすくなり、協働学習やプレゼンテーションがやりやすいことをお伝えしました。
     さらにシンキングツールを用いて一つの記事を他の記事と比較・分類し、意味を考え、自分の意見をつくっていくと、考えようとしている対象とその操作が、「見える化」で試行錯誤や共有がしやすく、視野を広げ、考えを深めるのに有効なのではないかと体験をもとにお話ししました。
     紙の新聞の持つ重さや手触り、においなどに加えて、多くの人が作り、届けているという実際に形のあるものとしての新聞の存在感を大切にしながら、双方の良いところを生かしつつ取り組んでいこうとあらためて思いました。

  【参加者の感想】

    中野 憲二・神港学園高校校長(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー)
 初めて参加させていただきました。
 今回のセミナーの案内をいただいたときには日程が重なり参加できないと思っていました。オンラインで両校をつないだ開催のおかげで、職場で拝聴するという形で参加することができました。事務局の皆様、両校の先生方に心から感謝いたします。
 時事通信社の丸山実子神戸総局長のご講演では、ご自身のキャリア形成にかかる選択の場面、記事の背景にある取材現場での戸惑いや機転の場面など、具体的な経験に基づいたキャリア教育の要素あふれるお話をお聞きすることができました。
 神戸山手女子中・高等学校の近藤先生、愛徳学園中・高等学校の廣畑先生、米田先生のワークショップは、GIGAスクール構想の流れの中で悩む先生方にとって時宜を得た、実に実践的な研修でした。参加された先生方はおそらく、学校に戻って実践してみようと思われた発表だったに違いありません。発表の中で「情報交換できれば」という言葉がありましたが、情報交換による共有化が広がることは、NIEが広がり、授業改善も進むことにつながると思います。
 「ICT初心者対象」というのは実に魅力的でした。私が所属する学校からも4人が自主的に申し込んで参加させていただきました。ありがとうございました。

   阿部 和久・山形県NIE推進協議会会長
 ICTを用いたNIEは編集力を鍛える。そうとしか思えなかった。神戸山手女子中高・近藤先生の発表を拝見しながら少しずつ気づいてはいた。それが確信に変わったのは、愛徳学園中高・米田先生による理論編、廣畑先生による体験編の時間を共有したからである。NIEは編集力を育てる、とは考えていた。しかし、ICTの力で何度でも試行し、容易に元の姿に戻し、詰まったら局面を変え、自らの思考を見える化していく授業ができる。やはり見える化された相手の思考と対話しつつ階段を一つ上ることができる。ドアを開き、知らないことを知った(体験した)セミナーだった。   

   伴 哲司・熊本県NIE推進協議会事務局次長(熊本日日新聞 読者・新聞学習センター次長)
 新聞を読み、自身の思いや感想を言語化し、他者の考えと比較して視野を広げる授業が、ICTの活用でより充実したものになる。本セミナーに参加して確認することができた。
   新学習指導要領は「主体的、対話的で深い学び」を掲げているが、その実践は始まったばかりだ。私もワークショップでロイロノートとシンキングツールを使い、生徒1人1人の考えを先生がタイムロスなく把握できるメリットを実感した。熊本でもぜひ今回の事例を紹介し、NIEでの活用を推し進めていきたい。

   たくさんの感想をいただき、ありがとうございます。ほかの参加者の感想は こちら