セミナー・発表会・公開授業

【寄稿】姫路・豊富小中 公開授業を終えて

 例年であれば、生徒たちが頭を突き合わせ、切り抜いた新聞記事を「ああでもない、こうでもない」と読み合い、内容を吟味し合う姿が見られるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染症による感染予防の観点から、対面によるグループワークは避けなければいけない。しかも2度目の緊急事態宣言の発出である。もう、今回は一切生徒間の会話をしない授業を行おう、ということで腹をくくった。そして、2学期開始とほぼ同時に1人1台端末となったタブレット型端末(Chromebook)を活用し、生徒が画面上で語り合い、複数の記事を画面上で共有するというスタイルをとることとなった。

 私が国語の授業で生徒たちに心がけて欲しいと考えていることは一つ。さまざまな文章を、いろいろな方向から読み、思考することだ。「雪がとけると何になる?」の解答が「水になり、春になる」と言えるような生徒の育成である。

 今回の授業でも同様に「事実は一つだが、考え方はたくさん」という見地に立っている。各々の班で興味関心のあるニュースを3紙から選び出し、「この新聞はどんなふうに報じているのだろう」「この新聞は肯定的な意味合いで捉えているけど、こっちの新聞は否定的な感じがするなぁ」「あれ? この記事同じことが書いてある、なぜだろう?」といったように各々の疑問や発見を1カ所に蓄積してゆく。ICTを活用することで、協働学習の形態をとっているが、個人で表現する活動が大幅に増え、それぞれが課題や活動に没頭するため、より深く、主体的な学びへとつながってゆく。その上、データや成果物を共有しているので、進行の度合いなども相互に確認でき、他の班員が手伝い、班全体で読み比べを進めることができた。授業では新聞に出てきた漢字の読み方や難解な用語を、画面上で相互に共有し、教えあう姿も散見された。

 公開授業後に班での発表活動を行ったが、どの生徒も感じたことや読んで気づいたことを端的にまとめ、画面を共有しながら他の班に分かりやすく伝える姿を見ることができた。また、人前に立つことを得意としない生徒や、話すことが苦手な生徒も、画面を通じての活動なので、あまり他の生徒の視線や自分の状況を意識せずに発言ができていたように思う。

 今回、新聞を中心に据え、ICTのネットワーク機能やデジタルホワイトボード(Jamboard)の共同編集機能を活用した授業を行った。そこで、「まわしよみ新聞」をはじめとする新聞記事の共有や新聞を活用した探究活動に関して、ICTとの親和性は非常に高いと感じた。また、同じ情報を扱うツールとして、もっと活用や研究の余地があるとも感じた。今後も生徒の主体的な学びに直結するような授業デザインを研究し深めていきたい。

井上佳尚(姫路市立豊富小中学校後期課程教諭)(1月31日)