2021年1月アーカイブ

安永 修・兵庫教育大学附属中学校教諭
 生徒たちが集中して新聞を読み、それをパソコンでまとめるなど、真剣に授業に取り組んでいる様子が分かりました。生徒がどのように考え、まとめているのかを、ぜひ見たかったです。
 また、授業者だけでなく、各先生方が撮影やチャットなどにすぐに対応するなど、学校全体で授業づくりをしていることが分かりました。豊富小中学校のNIEやICTへの対応に学校全体と取り組んでおられ、これからの活動に期待したいと思います。

原田 祐司・姫路市教育委員会学校教育部長
 令和2年4月に、施設一体型の義務教育学校として新たに開校した「~蔭山の里学院~豊富小中学校」では、「調べる力」を育むためにNIEとICTなどを生かし、子どもたちの学びをつないできました。本時は、まさにその典型であり、3紙の新聞を読み比べ、それぞれの表現の違いや視点の違いに気づくことで、そのニュースの本質を捉えようとするものでした。
 生徒は、自分たちで選んだ記事について、「Jamboard(ジャムボード)」というソフトを用い、班員と同時に編集を進めながら読みを深めていました。本時は、緊急事態宣言を受けて画面越しの対話に切り替えたとのことでしたが、生徒たちの学びに向かう集中した姿からは、1人1台端末環境になる前から「調べる力」を育むために積み重ねてきた実践の成果が見て取れました。
 また、画面越しの対話により考えを文章化する必然性が生まれることや読解力の異なる複数の生徒を支援するために1人1台端末は親和性が高いことなどが分かりました。
 複雑で不確かな状況だからこそ、ある程度の見通しを持った上で「まずはやってみよう」と一歩前に踏み出すことが求められます。豊富小中学校の授業公開は、そのことを私たちに教えてくれました。

丸山 実子・時事通信社神戸総局長
 新聞記事の取り込みや意見の書き込みなど、生徒一人ひとりがJamboard(ジャムボード)を使いこなしていることにまず驚きました。GIGAスクール時代におけるNIEの幅広い可能性を実感させていただく機会にもなりました。
 拝見した授業が、多紙読み比べの作業が中心だったため、作業の結果発表を受け、どのように指導されるのか非常に関心を持ちました。ただ、生徒の集中ぶりはZoomを介しても十分伝わってまいりました。新聞による表現や視点の違いを色分けした付せんに書き込み、ボードを作り上げる作業は、デジタル慣れした世代にとって、はまりやすい要素があるのでしょう。
 離れていても内容を共有できるボードの特性は、グループ学習の意義をつかみやすいという効果もありそうです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、非接触型の行動が求められる中、教育現場もさまざまな制約を受けていますが、ICTの活用で補完できることは数多くあると感じました。その教材としても新聞は応用自在だと思います。

新田 憲章・広島県NIE推進協議会・中国新聞社NIEコーディネーター
 コロナ禍第3波の中で授業公開をしていただいた豊富小中学校の先生方に感謝します。授業者の井上先生のお話では、本来ならグループワークで行う活動を、緊急事態宣言のためJamboard(ジャムボード)を活用されたとのこと。生徒が対話することなく、オンラインのJam上で「協働」した学習が展開されるという学習方法の提案でした。コロナ禍が終わり、13歳の中学生がしっかりとした声でNIE活動のグループワークが再開できることを祈っています。
 広島県でもNIE学習会は、中止が続き、やっとオンライン形式での実施ができるようになりました。今回のZoomでの公開授業では、オンライン研修会の運営について重要な示唆をいただきました。会場参加者とオンライン参加者の理解度には大きな差が生じます。その差を埋める情報共有が重要だと感じました。貴重な学びの機会を提供いただきました兵庫県NIE関係者の皆様に感謝いたします。

藤塚 正人・神奈川県NIE推進協議会・神奈川新聞社NIE推進委事務局長

 新型コロナウイルスの影響で、NIEの実践もまた、当たり前を見直すことが迫れています。人との接触が制限される中、姫路市立豊富小中学校のオンライン公開授業は、NIEにおける新たな学びの在り方が情報通信技術(ICT)学習の成果とともに、「見える化」されました。

 一人ずつ端末を用いて自分の考えを書き込むことで、共同作業をしている形となり、教える側もそれぞれの理解度を把握することにもつながる、と報告されました。

 クラスメートとのやり取りを通して考えを深め、表情や仕草も含めて気づきにつながる対面ならではの学習機会を、どこまでフォローできるか。さらに、情報機器に不案内な世代を含めて教える側がICT学習の練度をどのように高めるか。課題とともに認識を深め展望する機会になりました。

 例年であれば、生徒たちが頭を突き合わせ、切り抜いた新聞記事を「ああでもない、こうでもない」と読み合い、内容を吟味し合う姿が見られるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染症による感染予防の観点から、対面によるグループワークは避けなければいけない。しかも2度目の緊急事態宣言の発出である。もう、今回は一切生徒間の会話をしない授業を行おう、ということで腹をくくった。そして、2学期開始とほぼ同時に1人1台端末となったタブレット型端末(Chromebook)を活用し、生徒が画面上で語り合い、複数の記事を画面上で共有するというスタイルをとることとなった。

 私が国語の授業で生徒たちに心がけて欲しいと考えていることは一つ。さまざまな文章を、いろいろな方向から読み、思考することだ。「雪がとけると何になる?」の解答が「水になり、春になる」と言えるような生徒の育成である。

 今回の授業でも同様に「事実は一つだが、考え方はたくさん」という見地に立っている。各々の班で興味関心のあるニュースを3紙から選び出し、「この新聞はどんなふうに報じているのだろう」「この新聞は肯定的な意味合いで捉えているけど、こっちの新聞は否定的な感じがするなぁ」「あれ? この記事同じことが書いてある、なぜだろう?」といったように各々の疑問や発見を1カ所に蓄積してゆく。ICTを活用することで、協働学習の形態をとっているが、個人で表現する活動が大幅に増え、それぞれが課題や活動に没頭するため、より深く、主体的な学びへとつながってゆく。その上、データや成果物を共有しているので、進行の度合いなども相互に確認でき、他の班員が手伝い、班全体で読み比べを進めることができた。授業では新聞に出てきた漢字の読み方や難解な用語を、画面上で相互に共有し、教えあう姿も散見された。

 公開授業後に班での発表活動を行ったが、どの生徒も感じたことや読んで気づいたことを端的にまとめ、画面を共有しながら他の班に分かりやすく伝える姿を見ることができた。また、人前に立つことを得意としない生徒や、話すことが苦手な生徒も、画面を通じての活動なので、あまり他の生徒の視線や自分の状況を意識せずに発言ができていたように思う。

 今回、新聞を中心に据え、ICTのネットワーク機能やデジタルホワイトボード(Jamboard)の共同編集機能を活用した授業を行った。そこで、「まわしよみ新聞」をはじめとする新聞記事の共有や新聞を活用した探究活動に関して、ICTとの親和性は非常に高いと感じた。また、同じ情報を扱うツールとして、もっと活用や研究の余地があるとも感じた。今後も生徒の主体的な学びに直結するような授業デザインを研究し深めていきたい。

井上佳尚(姫路市立豊富小中学校後期課程教諭)(1月31日)

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    新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)の公開授業が1月26日、姫路市豊富町の小中一貫校、市立豊富小中学校で開かれた。

 同校は一貫校になる前の2019年度から、NIE実践指定校になっている。この日は、井上佳尚教諭による7年生(中学1年)の国語の授業が、ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」で全国に中継され、教育関係者ら約50人が視聴した。

 生徒たちは全国紙2紙と地方紙1紙から気になったニュースを読み比べ、表現の違いや書き方について考えたことを、パソコンを使って項目ごとに色分けし、電子黒板に書き込んだ。

 奥田裕亮君(13)は「写真やグラフがどんな意味で記事につけられているかに注目した。それぞれの新聞に違った視点があることがわかった」と話した。=27日付読売新聞朝刊姫路版

[写真説明]新聞を読み比べて気づいたことをパソコンに打ち込む生徒たち(姫路市で)

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、複数の新聞を比較して違いをまとめる公開授業が1月26日、姫路市豊富町御蔭の豊富小中学校であった。中学1年にあたる7年生29人が3~4人の班に分かれ、関心のある記事3本について意見を交わした。

 新型コロナウイルス対策のため見学はオンラインで行われ、県内外の教育関係者ら約50人が参加した。生徒たちも口頭での議論を控え、各自がパソコンの学習支援アプリに意見を書き込んで共有した。

 授業に先立ち、班ごとに同じ日付の全国2紙と地元紙が配られており、この日は事前に選んできた記事の表現を比較。金田元佑(けんすけ)さん(13)は昨年11月にオーストリアの首都ウィーンで起きた銃撃事件に関心を持ったといい、「これまではどの新聞も同じことを書いていると思っていた。どう伝えるかで読者の持つ印象や考えが変わることもあると思う」と話していた。

 担当した井上佳尚(よしひさ)教諭(37)は「複数の新聞を読み比べることで、いろいろな角度から物事を見る力を身に付けてほしい」と話していた。(安藤真子)=28日付神戸新聞朝刊姫路版

[写真説明]新聞記事を読み比べ、気付いた違いをパソコンに打ち込む生徒ら=豊富小中学校

 生徒の感想 井川美紅さん(13) ANAの過去最大赤字予想の記事を比較して「数値の変化に焦点を当てた記事や、コロナの影響を書いた記事があった。同じことを違った角度から分析していると知った」

 ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を、「セミナー・発表会・公開授業」に参加者のみなさんの感想を掲載しています。

 日本新聞協会NIEサイトにも公開授業のリポートが掲載されています。リポートはこちら

  読売新聞教育ネットワーク(読売新聞の教育ポータルサイト)にも記事が掲載されています。記事はこちら

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 NIE(教育に新聞を)の一環として、西宮市立浜脇中学校で1月22日、毎日新聞阪神支局の稲田佳代記者が「新聞記事ができるまで」と題して全校生徒に出前授業をした。新型コロナウイルス感染防止のため、代表の生徒9人の前で話す様子を撮影し、その他の生徒約680人は各教室のモニター画面を通じて同時視聴した。

 授業では、稲田記者が過去に取材した東日本大震災や社会問題の記事を基に、取材方法や原稿の書き方を紹介した。続いて、生徒からの質問にも回答。「取材に新型コロナの影響はあったか」「記者をしていて楽しいことは」との問いに、「外出自粛で家庭の中に問題が潜んで外から見えにくい状態となった。専門家に聞き、統計を手掛かりに取材した」「いろいろな人から貴重な話を聞かせてもらえること」と話した。終了後は、「一つの記事にたくさんの人が関わっていることを初めて知った」などの感想が寄せられた。【岸桂子】=23日付朝刊毎日新聞阪神版

[写真説明]新聞記者の仕事について説明する稲田記者の話を、各教室にある大型モニターを通して聞く西宮市立浜脇中の生徒たち

 生徒の感想 永倉慎一朗さん(2年)「新聞記者に必要なスキルは『好奇心』と聞いて心に残った」、泉祐希さん(2年)「読者に情報をしっかりと伝えるため聞きづらいことも聞く姿勢に感銘した」

   ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。

■神戸市立六甲アイランド小学校(1月21日、対象・5校生53人) 神戸新聞報道部の太中麻美記者が授業を行い、新聞記者の仕事について話した。新型コロナ報道では「安心情報を届けるためクラスター(感染者集団)の状況や拡大防止策を詳しく取材している」と話した。質疑応答では多くの児童が手を挙げた。

児童の感想一覧

■兵庫教育大学付属中学校(1月18日、対象・全校生279人) 神戸新聞阪神総局の名倉あかり記者とNIX推進部の三好正文シニアアドバイザーが阪神・淡路大震災をテーマに講演した。震災の年に生まれた名倉記者と当時取材した三好アドバイザーが「伝える意義」を強調。生徒も加わってパネル討論もあった。

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 NIE(教育に新聞を)活動の一環として、新聞社と新聞記者の仕事を学ぶ授業が1月21日、六甲アイランド小学校(神戸市東灘区向洋町中2)であり、5年生53人が参加した。

 同校は日本新聞協会のNIE実践指定校。講師を務めた神戸新聞報道部の太中麻美記者は、事件・事故や行政ニュース、動物園や学校の話題など、さまざまな出来事を取材する記者の仕事について紹介した。

 新型コロナウイルス感染症の報道については「読者に安心情報を届けるため、クラスター(感染者集団)の状況や、拡大防止策などを詳しく取材している」と説明。また、17日に発生から26年を迎えた阪神・淡路大震災の現場写真を見せながら、「災害の記録」を次代に伝える意義を強調した。

 授業の後は質疑応答も。越智爽介君は「取材を工夫して多くの記事を生み出す話に興味を持った」、武田春香さんは「小さな記事にも大切な情報が詰まっている新聞に興味を持った」と話していた。(三好正文)=22日付神戸新聞朝刊神戸版

[写真説明]新聞記者の仕事について学ぶ児童ら=六甲アイランド小学校

 ※「わたしの感想NIE」に児童のみなさんの感想を掲載しています。

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 阪神・淡路大震災が起きた時期に毎年、防災学習を行う兵庫教育大付属中学校(加東市山国)で、1月18日、震災報道に携わる神戸新聞の記者2人が「伝える意義」をテーマに講演した。生徒も参加したパネル討論では、次代へ語り継ぐ大切さについて理解を深めた。

 同校は本年度の日本新聞協会のNIE(教育に新聞を)実践指定校。防災学習はその関連事業として企画した。NIE活動の一環として、神戸新聞NIX推進部の三好正文シニアアドバイザーと阪神総局の名倉あかり記者が登壇した。

 名倉記者は1995年生まれで震災を知らない。「知ったふりはできない」と、葛藤を持ちつつ遺族取材をした体験を振り返った。長い年月を経てようやく語り始めた遺族もいるといい「発せられた声を次の世代にどうつないでいくか、一生をかけて考えていくものだと思う」と話した。

 三好アドバイザーは震災当日は宿直明けの勤務で、壊滅的な街を取材したことを伝えた。「安全安心の情報発信と市民を励ます記事が必要だった。備えにゴールはなく、一つ一つの災害から、学び取ることが大事」などと述べた。

 生徒3人と幼児の頃に震災に遭った教諭も加わったパネル討論では、記録する大切さや、災害に備えて想定、想像する必要性も話し合われた。(中西大二)=19日付神戸新聞朝刊ひょうご総合面

[写真説明]神戸新聞記者らとともに防災について話し合ったパネル討論=兵庫教育大付属中

 生徒の感想 宮下雄次さん(2年)「震災で犠牲になった多くの方がいる。私たちは震災の教訓を生かしていく使命があると強く思った」、森美紘さん(2年)「犠牲者の人生を伝えるためご遺族の言葉を引き出すことが大切だと思った」

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 授業直前、神戸新聞阪神総局・北摂総局のTwitterで「今から防災学習を始めます」と動画とともに紹介。北播総局のアカウントでもリツイートし、名倉記者の過去記事のリンクを掲示した。

 ※「わたしの感想NIE」に生徒のみなさんの感想を掲載しています。