セミナー・発表会・公開授業

愛徳学園中・高校NIE公開授業 参加者の感想

 中川 透・兵庫県立川西明峰高校校長(兵庫県NIE推進協議会特任アドバイザー)
 NIEを実践する上で、悩ましい課題がいくつかある。
 ①新聞を読む習慣の欠如
 ②新聞の厖大な情報量
 ③全員に配付する新聞の確保
 これらの解決のヒントとなるのが、「週刊国語表現」の発行である。1週間の記事からいろんなジャンルのものを切り抜き、プリントにして毎週配っておられるのだ。授業者のフィルターを通した資料とはなるが、限られた時間で授業を展開する上では大変有効なツールである。米田先生手作りの資料は、生徒の視野や興味・関心を確実に広げていることがうかがえた。
 愛徳学園では6年前から学習支援アプリの「ロイロノート」を全校で導入し、すべての教科・科目で活用しているという。先述の「週刊国語表現」は「ロイロノート」でデータ配信するので、生徒はそれらの記事を自由に切り取って添付することができる。以前のものもアーカイブとなっているのでいつでも取り出せるのだ。これからはこうした授業がスタンダードとなる日が来るのではとの思いも抱いた。
 この授業の年間計画は「発表する」ことに力点が置かれている。本時でも、自分が選んだ3大ニュースを4人のグループ内で発表し合う時間があった。授業後の意見交換会での、「OUTPUTすることで情報が知識となる」という米田先生のことばが印象的であった。

 福田 浩三・兵庫県立伊川谷高校教諭
新聞の活用というアナログに思える授業を想像していたが、その授業内容はiPadによるロイロノートを活用したデジタルな授業であった。授業で鉛筆やノートを一切使わず、その分、生徒は思考に費やす時間が増え、50分の授業にかかわらず非常にテンポよく授業が進んでいた。NIEの活用+ICTの効果的活用という、二面を一つの授業で見ることができた。
授業の最後には、生徒同士で班内においてプレゼンテーションを行っていた。人に話すためにはあらかじめ自分の頭の中でよく考える必要があり、それを聞いて質問するためには人の発表をしっかり聞く必要がある。このサイクルが非常によい感じで回っていた。
 意見交換会では、新聞以外にWebからの情報収集の可能性について質問があった。そこで出た「Webを使うと生徒は答えを取りに行ってしまう」という意見に共感するところがあった。
 本校も次年度から本格的にNIEの活動を行っていく予定であるため、今回は実践校の活動を見させていただき、とても多くを学ばせていただいた。

    岩橋  達彦・兵庫県立尼崎北高校教諭
    ①授業に集中している
 ②情報機器に長けている
 ③様々な知識を習得している
 情報収集時には一言もしゃべらなかった生徒たちが、発表時にはにぎやかに話し出す。普段から発表に慣れている様子がうかがえ、自分の言葉で語り合う。聞き手は傾聴を示し、話し手に安心感を与えながらも、知識を吸収する。
 皆がiPadの使用に長け、展開の速さに慣れていた。そんな中、彼女たちは情報を共有し合いながら、発表者の気持ちも共有し合う。対面ならではの温かみがそこにあり、この間の切り替えがとても早い。
 きっと、毎回の発表から、さまざまな知識を吸収しているのだろう。終わってから、生徒に質問してみると、瞬時に答えが返ってきた。その言葉から、新聞をかなり読み込んでいる様子もうかがえた。
 この完成度の高い授業に驚きを隠せない。

 岸本 佳子・産経新聞社神戸総局長
 今回初めて、NIE公開授業を見学しました。新聞と、ロイロノートスクールという授業支援アプリがどのように融合するのか、非常に興味がありました。
 正直なところ、難しいのではないかと思っていたのですが、生徒たちが、すいすいと記事を整理し考え、発表する様子に感心しました。同時に、自らの感覚の古さを反省しました。考えてみれば、例えば座標軸を用いて記事分類しようとすれば、記事を読んで理解し大意をつかむ必要があるわけです。新聞を活用した学びはデジタルツールによって一層深めることもできるのだろうと期待します。
 今回、Zoomでの視聴でしたが、こちらの機器の問題なのか、音声が聞き取りにくく、生徒たちの反応などがよくわからなかったのが残念です。

 山本直樹・岡山県NIE推進協議会事務局長(山陽新聞社読者局NIE推進部長)
 愛徳学園中・高校の公開授業は、タブレットを活用して紙面を取り込み、分類して重要度を考え、グループでプレゼンまで行い合う、濃密な内容だった。それぞれの過程で、読解力や分析力、価値判断力、発信力を育てる、素晴らしいNIEになっていた。生徒たちは、普段から新聞に接しているためかニュースを読み取る能力が高い上に、タブレットの使い方も非常に速く、習熟度に驚かされた。
 オンラインでの公開だが、定点カメラに加えて自由に動くカメラで生徒の様子を見ることができた。臨場感があり、タブレットの操作まで詳しく見て取れた。今後、岡山でオンライン公開授業を行う際の参考にしたい。
    残念だったのは音声。グループ内のプレゼンで、他の話し声などが混ざり合って発言者の声が聞き取れなかった。オンライン用のマイクを用意するなどの改善が必要ではないだろうか。
 全体的には、10月、淡路市の小学校であったオンライン公開授業に比べて、視聴状況が格段に良くなっていたと思う。関係の皆さまのご努力に敬意を表したい。